2016/10/14 - 2016/10/28
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jijidarumaさん
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2016年10月14日~10月28日の日程で、ドイツの秋にライン・モーゼル・アール・ミュンスターラントを巡った。
その時にミュンスターの町で「伝説:ミュンスターの救世主となった黄金の雄鶏Die Sage vom Goldenen Hahn」の話に出会った。
先の≪黒い森のエーベルシュタイン伯爵家の紋章には黄金の薔薇伝説がある。≫と同様に、時間が無くて、そのままにしていた。
写真はミュンスターの救世主となった黄金の雄鶏
- 旅行の満足度
- 4.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- レンタカー
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
ミュンスターには9世紀初頭、カール大帝によって司教座がおかれたと
云う歴史があり、先日、sanaboさんの「フランスのカルカソンヌ」に
ついての旅行記を拝見した。そこにカール大帝の伝説があった。
引用すると、
「フランク王国国王カール大帝がシテを包囲し兵糧攻めによる侵略を
試み、5年が経過して兵糧が底をつきかけた頃、ダム・カルカスは
残っていた豚に小麦粉を食べさせ丸々と太らせてから城壁外へ投げ
捨てたそうです。 それを見たカール大帝は食料がまだ十分にあると
思い込み、侵略を諦めて撤退したのだとか」
https://4travel.jp/travelogue/11459516
> カール大帝のエピソード、これに似た話は他でよく読みますが、
> 時代は30年戦争当時の事、カール大帝の話が最も古そうで、
> 他の話の原典になったのでしょうね。
とコメントして、ミュンスターの伝説を思い出した。
その事があって、保存していた伝説を訳してみた。
写真はMuensterkarte-ミュンスター地方の地図:ヴェストファーレン条約の締結が行われたミュンスター(カトリック旧教)と、Osnabrueckオスナブリュック(プロテスタント新教)に赤丸をしておいた。
二つの町に集まり、夫々条約が結ばれた。 -
<Muenster:Die Sage vom Goldenen Hahn
伝説:ミュンスターの黄金の雄鶏>
ミュンスターには9世紀初頭、カール大帝によって司教座がおかれた。
13世紀前半に帝国都市特権を獲得し、ハンザ同盟の一員として繁栄を遂げた。
16世紀の宗教改革ではミュンスターの反乱で一時再洗礼派(フルドリッヒ・ツヴィングリの弟子たちから分派した教派:非自覚的な幼児洗礼を非聖書的とみなして,洗礼志願者にあらためて洗礼を施したプロテスタントの一宗派に与えられた通称)が市政を握ったが、まもなく失脚した。
写真はミュンスター市庁舎(右)市庁舎(ミュンスター) 現代・近代建築
-
この地は三十年戦争(1618~48年)の講和条約であるヴェストファーレン
条約の締結地として知られている。
(Osnabrueckオスナブリュックも締結地)
17世紀、Fuerstbischof Christoph Bernhard Graf von Galen
クリストフ・ベルンハルト・ガレン侯爵司教と、皇帝側についた
ミュンスターの町が、帝国自由都市権などの権益で争ったことがある。
写真はMuenster Historisches Rathaus:市庁舎 -
ミュンスターは第二次世界大戦でほぼ全壊してしまったが、旧市街を
はじめとして、昔のままに再建された。
現在のミュンスターの人口は31万人、ヴェストファーレン・ヴィルヘルム
大学(4.4万人の学生が在籍する総合大学)を中心とした大都市です。
写真はMuenster Historisches Rathaus:市庁舎内ホール -
ミュンスターの市役所のFriedenssaal平和の大広間には、多くの不思議な(奇妙な)品々があります。
一つは、高さ42cmの“黄金の雄鶏”で、銀に金メッキされた飲料容器である。
ミュンスターの町がたいへん大事にしている“黄金の雄鶏”は市庁舎の
平和の大広間に鎮座して、ショーケースの中に展示されているのだ。
写真は市庁舎・旧参事官室の平和の広間:ミュンスターの救世主となった黄金の雄鶏のショーケースが中央左に見える。(柵の内側には入れない) -
“黄金の雄鶏”はミュンスターの市参事会員により寄贈されたそうですが、
ニュルンベルクで1600年頃に作られたと云われている。
“黄金の雄鶏”の容器は現在、主に市の賓客の方々の歓迎の為、紳士淑女の
前に置かれ、金色の賓客簿へ記帳した後、黄金の雄鶏の容器に満たされた
ワインを飲むのだと云う。
この賓客歓迎の儀式は既に17世紀の頃から、慣習化されたようである。
でも“黄金の雄鶏”の誕生の謂れはどのようなものなのだろう?
・・・・・
写真はミュンスターの救世主となった黄金の雄鶏 -
Die Sage伝説によると:
“黄金の雄鶏”の伝説は、その昔、ミュンスターの町がクリストフ・
ベルンハルト・ガレン侯爵司教により包囲・攻城戦が行われた時に、
生まれたと伝承されている。
侯爵司教は町の住民が飢えと消耗で、要塞をあきらめる(降伏する)
まで、町を包囲しておくつもりでした。
ミュンスターの町は長い間籠城戦に耐えたが、徐々に台所や食糧倉庫
が空になって、飢餓と窮乏が拡大していった。
写真はミュンスターの救世主となった黄金の雄鶏 -
ある朝、市参事会員が何か食べ物がないかと、町の通りにでた。
猛烈な空腹は彼と彼の家族を苦しめ、もうこれ以上は我慢ができない
と思っていた。
彼が鶏小屋の前を通りかかると、雄鶏がクックッと鳴くのが聞こえた。
彼は慎重に雄鶏の後から捕まえ、肉にしようと小屋に入り込んだ。
だが、彼のぎこちない動きに、すぐ雄鶏は気づいて逃げた。
彼の眼前で大きく一声をあげて、空中に飛んだのだ。
写真はMuenster_Fuerstbischof Christoph Bernhard von Galen (1670)クリストフ・ベルンハルト・ガレン侯爵司教の肖像画 -
それで市参事会員が雄鶏の背後をあえぎながら追い、彼の行動を
見ていた住民たちもあわてて参加して、攻城軍の侵入を防ぐために
しっかり閉ざされた市城門内をあちらこちらに雄鶏を捕まえようと
追っかけ始めた。
町中が雄鶏狩りで騒々しいこととなってしまった。
写真は市庁舎・旧参事官室のFriedenssaal平和の広間:ヴェストファーレン条約の締結場面 -
雄鶏は小尖塔の上に留まり、そこから威張ったように見下し、
集まった連中に大きな鳴き声を浴びせた。
勿論、その光景を市城門前に陣を構えていた攻城軍の兵士たちも見ていた。
写真は市庁舎・旧参事官室の平和の広間:王冠の蝋燭たて -
侯爵司教の指揮官も市城門の高い小尖塔の上を驚いて見上げて、長い間の
籠城戦が続いてきたにもかかわらず、ミュンスターの町にはまだ食糧が
あるという事に気付き、困惑したのだ。
写真は市庁舎・旧参事官室の平和の広間:ヴェストファーレン条約の締結に出席した人たち -
攻城軍の兵士たちは市城門の前に陣を敷きながら、彼らも飢え、
寒いために体も冷え、体力の限界まで疲れていて、ついに彼らが
軍務の続行を放棄しました。
兵士の一人は仲間たちに語り掛けました。
「俺たちはここに長々とただ座って、待つだけで、何もすることが無いな?
俺たちは飢えて、凍えるほどなのに、ミュンスターの町の連中はまだ
十分な食糧を持っているではないか!
もう、(戦いは)あきらめようぜ!」
写真は市庁舎・旧参事官室の平和の広間:ヴェストファーレン条約の締結に出席した人たち -
そんなことで、敵の侯爵司教軍が雄鶏の狡猾さ(策略?)によって
追っ払われてしまったのです。
雄鶏はミュンスターの町を救ったとして、その一生を通して町に
大切にされ、世話をしてもらったと云う。
雄鶏が最後の日を迎えた時、ミュンスターの町全体がその死を悼んだと云う。
そして、救世主・雄鶏のきっかけを為した、当時の市参事会員は
後にミュンスターの市長に選出されたそうです。
写真は市庁舎・旧参事官室の平和の広間:ヴェストファーレン条約の締結に出席した人たち -
“黄金の雄鶏”の容器は市庁舎の平和の大広間という栄誉ある場に
あって、市の賓客の方々を歓迎する為、彼らのグラスにワインを
注ぐのだと云う。
私たちは今も伝説の“黄金の雄鶏”を見ることができるのです。
写真は市庁舎・旧参事官室の平和の広間:諸侯の紋章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2019年3月17日:訳・編集)
さておまけになりますが、城の攻防戦(籠城戦)に関係した伝説は
4Traで掲載した伝説80編の内、本項意外に6編もあります。
ご参考までに。
≪クライルスハイム市長夫人の太ったお尻・ホラッフェン伝説Horaffensage≫
(Crailsheimクライルスハイムとゾンマードルフ水城)
旅行時期 2009/04/17 - 2009/05/01 (2014/01/09投稿)
https://4travel.jp/travelogue/10847690
≪古城伝説:クリープシュタイン城の貞淑なる妻
Die Sage von der treuen Frau von Kriebstein≫
旅行時期 2011/05/13 - 2011/05/27 (2014/03/19投稿)
https://4travel.jp/travelogue/10868161
≪古城伝説:ヴァインスベルクの貞淑なる女房達Die Treuen Weiber von Weinsberg≫
旅行時期 2012/05/15 - 2012/05/29 (2014/06/05投稿)
https://4travel.jp/travelogue/10894553
≪“麺(めん)”の異名が付いた町Kuppenheimクッペンハイム≫
旅行時期 2015/07/14 - 2015/07/28 (2015/06/18投稿)
https://4travel.jp/travelogue/11023104
≪モーゼル・コッヘムの伝説・エンデルト門とワイン樽≫
旅行時期 2016/10/14 - 2016/10/28 (2017/04/30投稿)
https://4travel.jp/travelogue/11236579
≪2018年ドイツの春:番外編・三十年戦争の逸話:フォルヒハイムの“Mauerscheisser” (壁のような糞をする奴!)≫
2018/05/10 - 2018/05/24 (2017/08/13投稿)
https://4travel.jp/travelogue/11388547
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この旅行記へのコメント (2)
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- sanaboさん 2019/03/17 23:00:46
- 「黄金の雄鶏」伝説
- jijidarumaさん、こんばんは
早速「黄金の雄鶏」伝説を翻訳され、旅行記として纏められたのですね。
その早業(!笑)と勤勉で探求熱心でいらっしゃるjijidarumaさんの
姿勢には本当に感服しております。
私の旅行記もご紹介下さり、ありがとうございました。
雄鶏の伝説を楽しく拝読いたしました。
その雄鶏はまさにミュンスターの町の救世主ですね!
後世に語り継がれ、雄鶏の像として鎮座しているのではなく
飲料容器であり、17世紀からの習慣として賓客にワインが
ふるまわれる際に現在も使用されているという点がユニークですね。
攻城軍の兵士たちは自分たちも体力の限界であったため
軍務の続行を放棄したそうですが、武力だけではなく
このような心理戦に勝利することが戦いに打ち勝つための秘策であると
教えてくれる教訓のように感じます。
お話の内容は異なりますが、ローテンブルクのマイスタートゥルンクの
お話を思い出しました。 町を守るための英雄伝や伝説など
楽しいお話が数限りなく残されていると思いますので
またjijidarumaさんの旅行記でご紹介いただけますことを
楽しみにしております。
sanabo
- jijidarumaさん からの返信 2019/03/18 01:23:47
- Re: 「黄金の雄鶏」伝説
- sanaboさん、
こんばんは。
早々と、ご投票とコメントありがとうございました。
やはり、旅行記をじっくり読めば、福来るで、黄金の雄鶏伝説
を訳してみる契機を頂きました。ありがとうございました。
原文を保存しておいても、なかなか振り返って読むこともなく、
多忙にかまけて(実際はもう後期高齢者故、ゆっくりする時期
なのでしょうが)日々過ぎて行ってしまうものですが。
ドイツに限らず、宗教戦争は残った絵画を見ると、実に残虐な行為
が平気でなされたようですが、こうした伝説を読むと、意外と
籠城戦が多く、無駄に戦闘を重ねていたわけでもなさそうです。
何かの予兆(この場合は雄鶏)を機に、適当?に上手い所で双方が
手をひくような事をしていた印象が見られますね。
伝説は似たような話が残っているのも、ある種、教えを人々に
伝えたい気持ちがなせるワザなのでしょう。
ひどい飢えの中にもちょっと笑いを誘う場面があって、結果が
めでたしめでたしで終わる事に妙に感心します。ドイツ人の
生真面目さを知っている所為か、その差に驚くのです。
(日本での籠城戦でこうした伝説を知る事が無いですね)
それではまたの機会に。
jijidaruma
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