重伝建巡り「橿原市今井町」（寺内町・在郷町　奈良県）

2021/02/13 - 2021/02/13

　今日２つ目の重伝建「橿原市今井町」は、「宇陀市松山」から車で西へ３０分の位置にある。ここは２０年ほど前に一度訪れたことがあったが、重伝建とは知らず漫然と歩いただけであまり記憶にない。
　今回マップをもとにじっくり歩いた。特筆すべきは重要文化財の建物の多さ。その後訪れた重伝建の中でも、これだけの数は例を見ない。交通も頗る便利で、南大和の中心都市にあってここだけは時空のバリアに囲まれたような一画だった。

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　重伝建登録地区名：橿原市今井町
　分類：寺内町、在郷町
　奈良盆地南部に位置する今井町は、中世末期に寺内町として成立し、江戸中期までに南大和地方における商業の中心地として発展した。旧環濠で囲まれた保存地区には、中世末期の寺内町形成から近代の在郷町へと発展する市街地形成が良く残っている。近世から近代の質の高いかつ優れた意匠の町家を中心に、重厚で高密度の歴史的市街地になっている。
　～全国伝統的建造物群保存地区協議会発行「歴史の街並み」より

エリア 橿原(奈良)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 5.0
• 交通: 4.0

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 1万円未満
• 交通手段: 自家用車 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

　宇陀松山から今日２つ目の重伝建橿原市今井町に向かっています。

　３０分で到着、紙半豊田記念館の駐車場へ。記念館入場券を買うと無料で駐車できました。

紙半豊田記念館 美術館・博物館

　今井町は称念寺を中心とした寺内町で、中世末期から南大和地方の商業の中心地として発展しました。重厚で高密度な歴史地区の街並みは、平成５年に重伝建に指定されています。

　保存地区の西に残る環濠跡。奈良盆地には中世に造られた集落を堀で囲む「環濠集落」がいくつか残っています。

　少し戻って西口門跡から街歩きスタート。向こうに城のように見える建物は今西家住宅。

　今西家は惣年寄筆頭を務めていた家で、城のような建物は「八つ棟造り」と呼ばれるものです。

　広い地割いっぱいに建つ建物は１６５０年の建築。

　重要文化財に指定されています。

今西家住宅 名所・史跡

　建物をぐるっと一周して、

　向こうの御堂筋に出ます。

　御堂筋を少し行くと豊田家住宅。今西家住宅と並ぶ今井町の上層町家です。

豊田家住宅 名所・史跡

　建物は１６６２年建築で、ここも重要文化財です。

　豊田家住宅の内部。

　ここで街歩きの地図を頂きました。

　帳場には金銭貸付表。豊田家は幕末には大名貸しを行い、藩の蔵元等も務めました。

　使われた家具や什器。

　高価そうな古伊万里焼きの皿

　道を隔てた場所に紙半豊田記念館。歴代の豊田家当主が収集した江戸中期から明治初期までの古美術品や、当時の生活を偲ばせる生活用品が展示されていました。

紙半豊田記念館 美術館・博物館

　紙半豊田記念館の左を見ると、巨大なカイヅカイブキ。

　樹齢２５０～２７０年の古木で、橿原市の景観重要樹木に指定されています。

　商売に使った道具類

紙半豊田記念館 美術館・博物館

　高価な金蒔絵の塗り物

　写楽の浮世絵

　千両箱。千両が入った箱は３０ｋｇの重さ。鼠小僧が千両箱を抱えて屋根を走る、なんて事は絶対できません。

　パンフレットに記載のない建物も重厚でとても立派。

　今井町まちづくりセンター

今井まちづくりセンター 名所・史跡

　趣ある床屋

　今井町まちづくりセンターの筋向いが称念寺。今井町は称念寺の境内地として発達した「寺内町」です。

称念寺 寺・神社・教会

　表門横の太鼓楼は江戸時代末期の建築。

　称念寺は今西家とのかかわりが深く、太平洋戦争で供出された釣鐘を新鋳して寄贈したのも今西家だそうです。

　江戸時代初期の建立と推定される重要文化財の本堂は修復中でした。

　称念寺を出ると斜め前（左側）に大きな建物。重要文化財の中橋家住宅です。

　屋号を「米彦」といい、江戸時代は米屋を営んでいました。

　母屋は１８世紀後半ごろに建てられましたが、１９世紀初頭に正面通りに「厨子二階」が増築されています。

中橋家住宅 名所・史跡

　とにかく大きな建物で、路地の奥行きは３０ｍはありました。

　御堂筋の家並み

　御堂筋の家並み

　御堂筋の家並み

恒岡醤油醸造本店 お土産屋・直売所・特産品

　ちょっと見せて頂きました。

　御堂筋の家並み

　この建物は太閤秀吉が吉野の花見を行った時、本陣として使用されたそうです。

豊太閤本陣跡 名所・史跡

　御堂筋を突き当り、

　中尊坊通りに出ると河合家住宅。建物は１８世紀中頃のもので、これも重要文化財。

河合家住宅 名所・史跡

　河合家は古くから「上品寺屋」の屋号で酒造業を営んでいます。

　河合家横の路地。今井町は規則正しい地割がなされています。

　古い建物をそのままに経済活動に使われています。

　高木家住宅。１９世紀初頭の酒造業者の住宅でこれも重要文化財。これだけ重要文化財の建物が密集している町は滅多にありません。

高木家住宅 名所・史跡

　町の西端から南の通りを東端まで歩いてきました。ここから少し南に行った角に今井町まちなみ交流センター「華甍」がありました。

今井まちなみ交流センター「華甍」 美術館・博物館

　明治３６年に建てられた社会教育施設で、昭和４年から今井町役場として長く使用されていました。

　内部は今井町の歴史に関する展示がありました。

　江戸時代初期の今井町のジオラマは中世ヨーロッパの街を見るよう。東西６００ｍ、南北３１０ｍで周囲に環濠土居を築き９つの門がありました。戸数１１００軒、人口４０００人。

　重伝建地区の東端の道を北へ。

商店や病院も町の雰囲気に合った意匠になっています。

　着物姿で古い街を散策する人もいるのだろう。

休憩処 煎茶のお店 あんて グルメ・レストラン

　「北　奈良、京都　東　長谷、伊勢」

　今井町の北東角にあたる蘇武橋。ここから近鉄八木西口駅までは僅か２００ｍ余り。

　これから北側の筋を通って西に向かいます。

　河合家住宅まで戻り右折。

河合家住宅 名所・史跡

　御堂筋の一つ北の本町筋に来ました。

　蔵造りの郵便局に赤いポストが馴染んでいます。

　本町筋の街並み

　細い路地に入って、

　重要文化財はまだまだあります。中町筋に出ると左側に音村家住宅。　

音村家住宅 名所・史跡

　主屋は１７世紀後半に建てられ、その後随時増築されています。

　音村家は「細九」の屋号で金物問屋を営んでいました。

　音村家住宅と路地を隔てて並ぶのは重要文化財の旧米谷家住宅。

旧米谷家 名所・史跡

　「米忠」の屋号で広く金物商を営んでいました。通行手形をもらってるので内部見学が出来ました。

　旧米谷家住宅

　土間の竈

　帳場

　庭に面しているのは蔵前座敷

　こんな長火鉢は母の実家にもありました。

　中町筋の街並み

　路地を一番北の北尊坊通りへ。

　黒塗りの重厚な建物は山尾家住宅。

　重要文化財ではありませんが、「新堂屋」の屋号で肥料や木綿を商った豪商で、今も子孫が暮らしています。

　江戸時代は幕府の巡見使の本陣になり、明治１０年の天皇行幸の時は木戸孝允や三条実美もここに宿泊したそうです。

　北尊坊通りの街並み

　歩き始めて１時間半、珈琲店を見付けてちょっと休憩。

大川珈琲屋 グルメ・レストラン

　地元の人と思しきお客がカウンターに一人。

　チーズケーキと珈琲

　１７：１３　陽が傾いてきました。

　順明寺か、入ってみよう。

順明寺 寺・神社・教会

　順明寺の境内

　順明寺を出て通りへ。主な建物は見学したので、後は気ままに古い街並みを見て回ります。

　今井町の街並み

　今井町の街並み

　今井町の街並み

　今井町の街並み

今井町 江戸時代の町並み 名所・史跡

　今井町の街並み

　今井町の街並み

　今井町の街並み

　今井町の街並み

　１７：４０　紙半豊田記念館の駐車場に戻ってきました。今井町は重要文化財の建物が当たり前で、評判に違わぬ素晴らしい重伝建地区でした。

紙半豊田記念館 美術館・博物館

この旅行記へのコメント （2）

• ポテのお散歩さん 2021/12/09 19:36:48

  今井町

  万歩計さん　こんばんは。
  
  重伝建巡り、楽しく拝見させて頂いています。
  今回の今井町、30年ほど前に大和高田に住んでいたので　今になって
  一度も行かなかった事に後悔しています。
  少し離れた所へ買い物へ行く時も、時々橿原神宮へ行った時も
  今井町の近くの国道を車で通っていて、古い町並みが残っている今井町を
  横目で見ながら、もったいない事をしたと思います。
  宇陀の方へも、今に比べると近い所に住んでいたのに、一度も行かずです。
  
  こういった、残しておくべき街並みを歩きたいと思うには、ある程度の
  年齢になるまで時間が必要かも知れませんね。
  また、4トラの旅行記を通して再認識させて頂く機会にも恵まれました。
  時間を作って、また奈良を散策したいと思います。
  
  　　ポテ

  万歩計さん からの返信 2021/12/10 11:57:45

  Re: 今井町

  　ポテさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
  
  　日本の重伝建巡りはヨーロッパの古い街並みを見るようで楽しいです。前者は昔話しの世界、後者はお伽話の世界ですね。　
  
  　ただ、重伝建を回っていると、これらがいつまで維持されるか心配になってきます。京都の産寧坂や飛騨高山は観光客で潤っていますが、こんな場所はほんの一部。訪れた場所は殆どは見学者に会うのは稀です。特に山村集落に至っては、重伝建維持の前に集落自体が消滅する可能性が高いです。
  
  　重伝建の維持にどれくらい補助金が出るか知りませんが、やはり興味がある人が訪れてそこでお金を落とすのが一番の支援になるのでしょうね。
  　
  　万歩計