2011/04/06 - 2011/04/11
2469位(同エリア6057件中)
kojikojiさん
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- フォロワー151人
ウィーンに滞在した1週間のうちナッシュマルクト周辺には2回立ち寄りました。1度は「セセッション(分離派会館)」を見学した後と、もう1度は蚤の市を見に来た時です。2回ともお昼時だったので市場で食事をすることも出来ました。ヨーロッパの市場は大きな建物があってその中に肉・魚・野菜と分かれていることが多いですが、ここウィーンは長い通りに沿って小さな建物が並んでいました。通りが2本あるので行って返ってってと何度も往復しました。毎日とても賑わっていて、ひやかすだけでも楽しいものでした。またこの市場の脇にオットー・ワーグナーの「マジョリカハウス」と「メダリオンハウス」と「地下鉄駅」があるので建築も一緒に楽しめます。
土曜日は市場の先の駐車場は蚤の市会場になりますが、我々はお昼過ぎに行ったのでもう半分は店仕舞していました。見る限り掘り出し物が並んでいるとは思えませんでした。思い返してもパリのクリニャンクールの蚤の市みたいにドキドキしたマーケットにはなかなか出会えません。お昼は「ノルド・ゼー」というシーフードの店に入りましたが、その後パリやザルツブルグなどで何度か利用したチェーン店です。2回目は旅も中盤になって日本食が恋しくなり、すし屋に入りました。食事の後はウィーンの伝統的なカフェである「カフェ・シュペール」で一休みして、今回最後のクリムトの作品であるストックレー・フリースを観に「応用美術館MAK」にも行きました。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 4.5
- ショッピング
- 4.5
- 交通
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩
- 航空会社
- アエロフロート・ロシア航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
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2度目の「セセッション(分離派会館)」の見学も済んで、妻の数十年来の念願を叶えることもできました。
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セセッションの斜め前から数百メートルにも及ぶ「ナッシュマルクト」というウィーンの市場に移りました。1番手前に「ノルド・ゼー」という名前の魚屋兼イートインの店があります。ここはチェーン店なのでケルントナー通りやウィーン西駅、ブダペストでも見掛けましたし、後の旅で行ったパリやブリュッセルやザルツブルグでも利用しました。
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常設の小さな建物が並び、感じの良いオイスターを食べさせる店などもありました。ちょっと高級な店も並んでいます。
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その先は八百屋や果物屋が多く並ぶエリアです。この市場は1774年に開かれたウィーン最大のマーケットです。
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ベリー類も種類が豊富ですが、それほど安いという印象は受けません。イチゴは日本に比べたら酸っぱいという印象があって買いませんでしたが、後にベルギーで食べたらとってもおいしくて安くてびっくりしたことがあります。思い込みで判断したらいけないということです。
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ハンガリーが近いからかパプリカの種類も多いし値段も安いです。
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フランスのマーケットで初めてシイタケを見て驚いたのは、名前がシイタケ(SHII-TAKE)のままでしたが、ウィーンでもシイタケ(CHITAKE)でした。柿もヨーロッパの国々ではKAKIという名前で売っています。
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この時期のヨーロッパはアスパラガスの美味しい時期です。八百屋には沢山並んでいます。白アスパラは米ぬかで茹でた記憶があるのですが、こちらではどうやって調理するのでしょう。
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平日のお昼過ぎは買い物に来る地元もお客さんお姿は少なかったです。もちろん観光客が野菜を買うはずもありません。
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春を感じさせるからでしょうか、どこの花屋さんもチューリップが大量に並んでいます。そして値段は日本を基準に考えるととても安いです。オランダから陸路を運ばれてくるのでしょうか。
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イースターリースもヒノキの葉とオリーブの葉と猫柳をベースにアレンジするようです。
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フラスコに入ったビネガーはいろいろなフレーバー入りです。黒スグリやメロンやパプリカ味なんてどんな料理に使うのでしょうか。
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ずいぶん丸っこいズッキーニです。初めて見ましたが日本の茄子もいろいろな形がありますよね。
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巨大なグリーンアスパラは1本でも自立しそうです。こんなに太いと硬そうですが、ヨーロッパのアスパラは柔らかいですよね。値段は白アスパラの方がちょっと高いです。
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お昼は市場の一番北側にあるノルド・ゼーにしました。「北の海」なんて名前は海の無いオーストリアでは魅力を感じます。この店はチェーン店で市内や西駅やブダペストにもありました。
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市場にあるこの店は魚も売っています。新鮮で美味しそうです。
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料理は持ち帰りも出来ますが、店の中でもいただけます。
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セルフサービスなので注文は簡単ですし、好きなものも注文できます。窓からセセッションの建物を眺めながら食事が出来るのは贅沢です。
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魚貝のマリネをビールのつまみにしました。久し振りにシーフードを食べたので美味しかったです。
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こちらは熱々の揚げたてのヒラメのフライとポテトです。こちらもビールに合わないわけがありません。
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挽き立ての香ばしい香りのする珈琲豆屋さんは、店先でローストして挽いてくれます。世界で最初にコーヒーハウスが誕生したのはトルコでした。 1554年にシェムジとヘケムというふたりのアラブ人が、コンスタンティノープル(現イスタンブール)でそれぞれコーヒーハウスを開業しています。
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オーストリアに初めてのコーヒーハウスが生まれた経緯は、ちょっと変わっています。 1683年に30万のオスマン・トルコによって神聖ローマ皇帝の居城であるウィーンが包囲された時のこと、ポーランド軍の応援によりトルコ軍が敗走した後に様々な物資が残されていました。しかし大量に置き去りにされた「奇妙な豆」だけは誰も引き取り手がなく、最後まで残ってしまいました。
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そこで名乗り出たのがポーランド軍に援軍を要請しに行ったフランツ・ゲオルグ・コルシツキーでした。トルコ人の生活や習慣に通じたコルシツキーは、その豆の価値を知っていたのです。 コルシツキーはこの戦利品のコーヒー豆を使って、ウィーンにトルコ風のコーヒーを飲ませる店をオープンしました。 ウィーンのカフェ文化はここから始まっています。
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イースターにはシンボルとなるものがいくつもあります。
「たまご」は永遠なる生命の象徴として最も重要で、特に赤いたまごはイエス・キリストの流した血を意味します。
「赤い色」は血を表し一般に生命を意味します。また冬を悪としてとらえるなら魔よけの色ともいえます。
「ウサギ」ゲルマン神話によると、もともと鳥から姿を変えたものとされます。
「ネコヤナギ」つぼみを持つことから春のシンボルとされます。 -
ウィーンには1週間の滞在だったので、チューリップの花束を買ってもよかったなと思いました。上海に1週間ほど滞在したときは花市場で花瓶と夜来香(イエライシャン)を買って、ホテルの部屋に飾って夜になると香りが出るか試したことがありました。
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イタリアの旅だとホテルで果物を食べることはできないのでフルーツを買うことが多いのですが、中欧の旅ではホテルの朝食が充実しているので特に買いたいとは思いませんでした。
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オリーブは種類も豊富で値段も日本に比べれば安いので買いたかったのですが、まだまだ旅は続くので諦めました。
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ドイツ語でパイナップルはアナナスです。20年前の旅でチューリッヒからウィーンに戻ってきた西駅で最初に行ったのはホテル探しでした。ガイドブックに掲載されていたアナナスというホテルに行ってみると自分の予算とはかけ離れていたので、駅の裏にあったフーシェというキツネがトレードマークの安宿に泊まりました。パイナップルを見てそんなことを思い出しました。
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トルコかギリシャの食材も売っていました。仲が悪い国同士ですが、食べ物が似ているのでどちらかは分かりません。
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チーズに生ハムを巻いたものやトマトにチーズを詰めたものなど美味しそうです。この総菜屋さんの料理は買いたくなりました。
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Obstは果物、Gemuseは野菜、Sudfruchteは南の何かと思ったらトロピカルフルーツでした。
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市場を抜けると駐車場が広がります。平日は空いていますが、土曜日は蚤の市の会場になるのでもう一度来る予定にしています。
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ここからは「マジョリカハウス」と「メダリオンハウス」が綺麗に見えました。
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今日のお目当ては花屋の屋台の後ろにあるビルです。
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オットー・ワーグナーの「メダイオンハウス」です。名前の通り女性の顔を形どった金色の9つのメダイオンは、ウィーン分離派のデザイナーであるコロマン・モーザー(コロ・モーザ)が手がけたものです。
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この建物はオットーヴァーグナーが自らのプランとコンセプトを実現したものです。
ウィーン都市計画の一環でウィーン川の河川工事が行われますが、それに合わせて中心のカールスプラッツからシェーンブルンまでの区間にこのような豪華な建物を建てていくという構想でした。 -
側面のメダルが埋められた写真は良く紹介されていますが、角のファサードの方がオットー・ワーグナーらしさを感じさせます。屋上には天に向かって叫ぶような女性の像が通りに面して2体づつあり、そちらも郵便貯金局やアム・シュタインホフ教会を思い出させて印象的です。
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角部屋の一番上の階にはどんな方が住んでいるのでしょうか?現在も集合住宅なので中に入ることはできません。
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屋上で叫んでいる女性像はワーグナーの建築には必要なディティールです。これもアム・シュタインホーフ教会や郵便貯金局と同じオトマー・シムコヴィッツの作品だと思います。
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コロマン・モーザーの女性のメダイオンが並びます。9個の全てが違うデザインです。
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軒下の意匠にはエジプトの影響を受けますし、壁面の装飾にはギリシャの影響を感じさせます。
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細かいディティールまで確かめていくと建物の中がどうなっているのか見て見たくなります。
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38番地の「メダイヨンハウス」の隣が40番地の「マジョルカハウス」です。外観の仕上げと庇の意匠が違いますが、建物本体の開口部の窓枠の大きさや階高は同じだと分かります。
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オットー・ワーグナーはこの通りを美しいアール・ヌーヴォーの建築で埋め尽くしたかったようですが2棟で終わってしまいました。
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今回初めて気が付きましたが、両サイドのくぼんだ部分もマジョリカハウスの一部でした。
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美しいマヨルカ焼の薔薇のタイルで埋め尽くされた建物です。このマヨルカタイルからマジョルカハウスという名前になったわけです。
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建物同士の接点も美しい装飾で飾られています。同じ建築家の作品だからこそできるのでしょう。ピンクの薔薇の花を両サイドの緑色のタイルがあることによって引き締まったように感じました。
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ナッシュマルクトの市場はカールスプラッツ駅から始まってちょうど1駅分の長さです。こちらのケッテンブリュッケンガッセ駅もオットー・ワーグナーの設計です。
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こんな美しい地下鉄駅が現在も残っていて羨ましく思います。扉付きの入り口が冬の寒さを感じさせます。また、キャノピーを支える柱も美しくデザインされ、構造材とデザインが融合した美しさを感じます。
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ケッテンブリュッケンガッセ駅の内部も少しはくたびれていますが、当時のままのようです。1969年の地下鉄の開通にともないヒーツィンク駅とシェーンブルン駅、ケッテンブリュッケンガッセ駅とシュタットパーク駅、ロスアウアー・レンデ駅などのいくつかの古い駅舎が往時のままにリノベートされていますが、そのあとも手を入れられているようです。
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もちろん現役の駅舎なのでチケットに打刻して、地下のプラットフォームに降りられます。
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駅舎の見学を終えて表に出てきたら妻はくたびれて座っていました。
旅も折り返し地点の10日も過ぎ、お互いに疲れも溜まってきました。 -
駅名のケッテンブリュッケンガッセはU4の線路に沿って流れるウィーン川に架かる鎖橋に由来するそうです。
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通りの反対側にマーケットオフィスの建物がありました。これだけ大きな市場なのですから管理も必要なのでしょう。オットー・ワーグナーのデザインのようにも見えますが、詳しくは分かりません。
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この後リンクシュトラーゼをぐるっと歩いて「郵便貯金局」まで歩くつもりでしたが、疲れるので地下鉄で移動する事にしました。年齢と共に自分で組んだ予定通りに旅をすると疲れるようになりました。
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ナッシュマルクトへは週末の土曜日の蚤の市の見学とお昼を食べるためにもう一度立ち寄りました。
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毎日どこかの美術館でクリムトの絵画を見続けていると、こんな花束もクリムトの絵に見えてきます。
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先日の平日とは違い、土曜日のお昼時はすごい人出でした。
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天気が良いのでどの店もテラス席から埋まっているようでした。旅の折り返しに差し掛かり、日本食が食べたくなったのですし屋さんに入ってみることにしました。Tokoriという日本語なのか解からない店の名前です。
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テラス席は混んでいたので店内の席に座りました。ヤマサの醤油に日本の割りばしですが、オーストリア人のマネージャー以外はアジア系のスタッフが働いています。まずは生ビールを注文して一息つきます。エーデルヴァイスビールはザルツブルグ近郊のカルテンハウゼンというアルプスの麓にある小さく牧歌的な村で醸造されています。1475年にザルツブルク市長と裁判官ヨーハンエルセンハイマーによって設立された「Kalte Brauhaus」が今日のブランドの始まりです。
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すっきりとした飲み口のビールはお寿司によく合いました。パリなどではサーモンの刺身と寿司くらいしかお目に掛かれませんが、この店は本格的な握り盛り合わせといった感じです。
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お任せ10貫と4ロール、さび抜きなので別添えですがガリも美味しかったです。
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妻はかっぱ巻きとお新香巻きと少なめの注文です。お客さんはほとんどが地元の人のようでしたが、上手に箸を使っていました
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天気も良いので食事の後は賑わう市場を歩いてみます。
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どうしてもイースターの飾りに目が行ってしまいます。日本ではあまり見かけることのないイースターの飾りなので家の飾りのための勉強にもなります。
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ラベンダーも良い香りを放っています。
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レストランエリアはほぼ満席ですね。
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食べたいものばかり写真に撮っていたら前日と同じようなものになりました。
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妻は目ざとく香辛料の店を発見して、日本で買ったり高かったり、手に入らないものを物色中です。籠まで持って買う気満々です。
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妻と一緒に旅していると、一緒に食べた料理を家で再現してくれるので旅が2度楽しめます。さすがにシンガポールのバクテーは香辛料セットが必要ですが、カオマンガイ(チキンライス)やトムヤンクン、ボルシチなどもビーツが手に入れば簡単に作ってくれますし、今回の旅でもレパートリーが増えました。
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このシェフの格好をしたメニューボードは兄弟が沢山いるようで、ベルギーやフランスやドイツでよく見かけます。ラトビアにもいました。
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さて肝心の「蚤の市」ですが、お昼をだいぶ過ぎてしまったので半分くらいは店じまいした後でした。今回は特にアンティークを探す予定も無かったので、雰囲気だけ味わえれば良いので充分です。
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残っていたお店はフリーマーケットのような感じが強いですが、よく見るとレーダーホーゼンというドイツ南部のバイエルン州からオーストリアのチロル地方にかけて男性に着用される肩紐付きの皮製の半ズボンも売っています。
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村上作品は初期の作品「回転木馬のデッド・ヒート」に「レーダーホーゼン」という短編があることを思い出しました。妻の友人の母親がドイツに住む妹を尋ねるためにでドイツを1人で旅することになり、夫からお土産としてレーダーホーゼンを買ってくるように頼まれます。妹から情報を得てハンブルグ郊外の店に行くと、その店の方針がズボンを履く人に合わせて作るという完全オーダーメイド制をとっていて、履く人がいないとズボンは売れないと言われます。
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仕方ないので彼女は夫と同じような体型のドイツ人を店に連れて行って30分ほどかけて採寸してもらいます。その間に自分がどれほど夫を憎んでいるかを初めて知り、離婚を決意してしまいます。帰国したのち元の家には帰らず夫に離婚届を送りつけて娘と夫を一方的に捨ててしまいます。娘は母親のことを許すことができなかったが、半ズボンの話を母から聞いて母を憎む気持ちが和らいだという話です。
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ちなみに私の母も個人旅行でドイツを旅したことがあり、行く先々の資料を日数分作って持たせました。そのお礼に「お土産は何がいい?」と聞かれたので「お土産はいらないけど、毎日絵葉書を1枚送ってほしい。」と頼みました。
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その当時はまだ実家にいたので父と私宛に絵葉書が30枚ほど届きました。母は面倒だと思わなかったのだろうかと思い返しましたが、母の旅行以前に父は登山用に自分でレーダーホーゼンを買って持っていたことに気が付きました。
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旅をしているといろいろなことを思い出して、1人で思い出し笑いしてしまい妻に怪訝そうな顔をされることがあります。
商売しているのか日光浴をしているだけなのか判断が難しい光景で、そんなことを考えていました。 -
ナッシュマルクトから通りの反対側へ渡って、マジョルカハウスの下を散歩を続けます。日本人らしい子供連れの方が入っていきましたが、ここに住んでいるのでしょうか?我々に気が付いているようなそぶりだったので、お願いしたらエントランスホールくらい見せてくれたかもしれません。
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以前バルセロナを旅していてガウディの集合住宅の外観ばかりを訪ねていて、中に入れないことにフラストレーションを感じたのですが、ウィーンでも同じ思いでした。
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マジョルカハウスからメダリオンハウスの下を通ってリンクシュトラーゼ方面へ戻ります。
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ここの角でナッシュマルクト市場とオットー・ワーグナーの建築ともお別れです。
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次の目的地はミュージアム・クォーター方面に向かう途中にある「カフェ・シュペール」でした。静かな住宅街の中にあるので土曜日は普段以上に静かな雰囲気です。
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この建物は1880年にリンクシュトラーゼの建築家グロスとジェリネクの設計に基づいて建設されました。1884年にアドルフ・クラトチウィラがオーナーとなり、その後シュペール氏が引継ぎ現在の「カフェ・シュペール」の名前となりました。このカフェを利用した人の中には建築家や芸術家、ミュージシャン、や俳優や歌手、将軍や高官まで多岐にわたります。常連の中には大公のジョセフ・フェルディナンドとカール・フェルディナンド、そして首席補佐官のコンラッド・ヘッツェンドルフがいました。
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特に注目すべきは「7人クラブ」のオットー・ワーグナーを中心にしたヨーゼフ・マリア・オルブリッヒ、ヨーゼフ・ホフマン、コロマン・モーザー、マックス・ファビアーニ、フリードリヒ・ピルツ、ヤン・コチュラらもこのカフェの常連でした。彼らが後の分離派結成の先駆けになります。
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今回の旅におけるウィーンはルドルフ2世の足跡も大切でしたが、クリムトやオットー・ワーグナーらの分離派について学ぶことも大きなテーマでした。
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日当たりの良い席に案内されましたが、妻の希望で入り口脇のボックス席にしていただきました。
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入り口の正面は銭湯の番台のようなカウンターがあり、ご主人らしいおじいさんが店番をしています。
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建物の角から入ると左右にV型に客席が広がります。
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創業当時は芸術家の溜まり場でヨーゼフ・ホフマンやコロマン・モーザー、オットー・ワーグナーやグスタフ・クリムトがこの店に集っていたと思うと感無量です。
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奥に置かれたビリヤード台にはカバーが掛けられ、新聞置き場になっています。観光客が歩くコースから外れているので、静かな午後のひと時を楽しめました。ウィーンのカフェの三種の神器といえばビリヤードとチェスと新聞だったそうですが、今ではビリヤード台まである店は少ないそうです。
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疲れた体には甘い物も必要です。メランジュ(カフェ・ラテ)はソフトクリーム並みに生クリームが乗っていました。
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ウィーンのカフェは銀のお盆にお水とスプーンが一緒に乗ってくるのが嬉しいですね。
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先日行った「カフェ・ツェントラル」は観光客もたくさんでしたが、ウィーンに来て観光客ばかりでない街の素顔を見たような「カフェ・シュペール」でした。
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一休みした後はリンクシュトラーゼを2人でブラブラ散歩して、「ウィーン市民公園」までやってきました。目的は公園の先の「応用美術館MAK」なのですが、道路を渡って公園を散歩する元気はありません。
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春先の柔らかい午後の日差しにあたった街路樹の影を見ただけで良しとします。
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古いトラムが通過していきます。ウィーンのリングシュトラーセは1857年に放棄され、1858年よりかつてオスマン帝国による包囲戦に耐えた市壁の取り壊しが始まり、環状道路に姿を変えていきます。そんな環状道路の中でもこの辺りが一番落ち着いていて雰囲気が良いと思います。
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ウィーン川と平行に走っているのがストゥーベンリングで、ここに面したレンガの建物が「応用美術博物館MAK」です。併設された「応用美術大学」はこの建物の裏手にあり、グスタフ・クリムトやオスカー・ココシュカが教鞭をとり、多くのデザイナーを生み出しています。この建物は建築家ハインリヒ・フォン・フェルステルが手掛けたネオ・ルネサンス様式の建物で、吹き抜けの玄関ホールは2階にの回廊に続き、バルコニーに巡らされたアーチを描いた柱とボールト天井が素晴らしいです。ここの受付には日本人の女性の方が働いていらっしゃいました。ドイツ語訛りの日本語ってあるのか分かりませんが、長く住まわれているのだと感じました。
入場時にガイドブックを買うと非常に安く購入できます。(非常に重いですが内容は充実しています。) -
応用美術博物館Museum fuer angewandte KunstはMAKと省略されて呼ばれ、この博物館では主に19世紀末から第2次世界大戦前までの美術工芸品や家具、テキスタイルやガラスや磁器製品などのデザイン作品が展示されています。19世紀前半のビーダーマイヤー調家具もあり、アジア部門では日本の漆器や中国の陶磁器なども見られます。
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「ヴェルンドルファー・フリーズ」マーガレト・マクドナルド
「青い鳥」で有名なメーテルリンクの「7人の王女たち」をモチーフにしたパネルで、フリッツ・ヴェルンドルファー邸の音楽サロンのために制作されました。 -
この美術館で強烈に印象に残るのが椅子の展示です。広大なスペースにトーネット兄弟やヨーゼフ・ホフマンやアドルフ・ロースのオリジナルの椅子が並ぶ姿は壮観です。
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「スライド式テーブル」コロマン・モーザー
制作はカスパー・ラッディルで、カエデ材の無垢と化粧板の染色で構成されています。この当時の家具によくみられる脚部のニッケルのカバーが付いています。 -
「肘掛け椅子」フランツ・ジンガー
カエデの無垢材とブナ材の羽目板は赤く染色され、ベルト状に織り込まれた布が印象的です。 -
「装飾戸棚」ローザ・クレン
寄せ木細工はアドルフ・フランツ、指物はフロリアン・フラーバル、カエデ材と縞模様の強烈な木材と真鍮の金物の組み合わせが現在にも通じるデザインを感じます。 -
「ヴェルンドルファー家のためのライティングデスク」コロマン・ローザー
マッカサル黒檀とマダガスカル黒檀の寄せ木細工とツゲ材、象牙にべっ甲の象嵌と真鍮の金物の組み合わせが美しいです。 -
レオポルド美術館にもコレクションがたくさんありましたが、応用美術館にも工芸作品がたくさん陳列されていました。それらを陳列する陳列台が巨大でインパクトがありました。この「ティーセット」はヨーゼフ・ホフマンのデザインをコンラート・コッホが制作し、銀製のボディにサンゴと黒檀のつまみが可愛らしいです。
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「花瓶」レッツ・オーストリアという名前の花瓶は2段に弧を描いた3本の握り手がいかにもアール・ヌーヴォーのデザインです。
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「鉢」ヨーゼフ・ホフマン
青みを帯びたオパールガラスに緑の色ガラスを被せたシンプルなデザインです。 -
「鉢」ヨーゼフ・ホフマン
紫色のガラスにカットを施したシンプルなデザインです。 -
「花瓶」ヨーゼフ・ホフマン
ウィーン工房の委託でベーメン地方で造られた花瓶で、400個ほど制作されたそうです。フォレストガラスを思わせる薄いグリーンの色が美しいです。 -
「ボウルセットの一部」ヨーゼフ・ロジパール
透明ガラスに赤いガラスを被せてカットが施されてあります。 -
「コショウとパプリカ入れ」ヨーゼフ・ホフマン
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「屏風」コロマン・モーザー
制作はウィーン工房のカール・バイトゥルとテレーゼ・トゥレタンで、木製の枠と金箔とコラージュがジャポニズムを感じさせます。 -
「フルフィルメント」グスタフ・クリムト
ストクレー邸のダイニングホールのモザイクフリーズであるフルフィルメントは、ベートーヴェンフリーズの最後のセクション「楽園の天使たちの合唱団」のテーマを作り直し、「接吻」より前に制作された作品です。男の背中が絵を観る者の方を向いて、恋人の体を覆います。男性の頭は女性と同じ高さになるように曲げられています。 -
グスタフ・クリムト後年を代表する作品「ストックレー・フリーズ-生命の樹」です。本作は裕福な実業家で富豪アドルフ・ストックレーがウィーン分離派を代表する建築家ヨーゼフ・ホフマンに建築を依頼し、ブリュッセルのテルフューレン通りに建築させた邸宅(ストックレー邸)の食堂の左右と正面の壁の装飾するために発注しました。
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中央に非常に抽象的な「狭き壁面(抽象的装飾)」、左壁面には「生命の樹」を中心に「薔薇の茂み」と「期待」を、右壁面も左壁面同様「生命の樹」を中心に「薔薇の茂み」と「成熟(抱擁)」を配する構想を練り、この装飾原図を元にしストックレー邸の壁画をモザイク画として、ヨーゼフ・ホフマンが主催する建築デザイン集団「ウィーン工房」が施工いています。ストックレー邸の内装全てがこのウィーン工房によって施工されています。
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また幹部分には「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 1」や「接吻」でも用いられた円形と三角形による装飾が施されており、この生命の樹の表情をより豊かなものとしています。さらに枝には1羽の隼(又は鷹)が留まっており、クリムトが装飾のモチーフとして用いたエジプト美術で古代から図案化されていた天空と太陽の神ホルスとの関連性も指摘されています。
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この絵を観たからではありませんが、後にベルギーとオランダの旅で立ち寄ったブリュッセルではストックレーの見学にも行きました。もちろん外観を見ることしかできませんが、ヨーゼフ・ホフマンの重厚な外観を眺めながらこのクリムトの壁画を思い出しました。
ブリュッセルのアールヌーヴォー建築:https://4travel.jp/travelogue/11024419 -
「薔薇の灌木を象った生命の樹」グスタフ・クリムト
モザイク制作のための工房用の下絵です。金箔や銀箔が施され、制作がしやすいようにグリッドが描かれ、手書きによる指示も書き残されています。
「左から6番目の部分:花はモザイクではなく、茎はモザイクで、蝶はモザイクでは無く指示する素材で、灌木と花と花柄も合わせモザイクではない別の素材で…。」と細かい指示があったようです。 -
「美術史美術館」と「レオポルド美術館」、「ウィーンミュージアム・カールスプラッツ」と「セセッション(分離派会館)」と「ベルヴェデーレ宮殿」と巡ってきたクリムト巡礼もこの「応用美術館MAK」で締めくくる事が出来ました。
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(6)カフェ・ツェントラルとパッサージュ・フライウングからウィーンのカフェ巡りを始...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(7)「ロイヤル・オーケストラ/モーツァルト&ストラウス」コンサートの夜。
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(8)更地になった南駅跡にショックを受けるもベルヴェデーレ宮殿でクリムトと再会し、...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(9)工事中のカールス教会のドームに上がり、セセッシオンとカールス・プラッツ美術館...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(10)ナッシュマルクトと蚤の市からマジョリカハウスとメダイオンハウス、カフェ・シ...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(13)路線バスに揺られてオットー・ワーグナーの最高傑作であるアム・シュタインホー...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(14)ウィーン市内のフラウイングとシェーンブルン宮殿とアム・ホーフ広場のイースタ...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(12)シェーンブルン宮殿からグロリエッテまで散歩して、動物園と日本庭園とパルメン...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(16)シュテファン大聖堂周辺を歩き、フィルグミュラーで巨大なウインナーシュニッツ...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(11)誰もいないオットー・ワーグナーの郵便貯金局のホールで妻とユーゲントシュティ...
2011/04/06~
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中欧3都市周遊の旅ウィーン(15)フンデルトヴァッサーの奇抜なヴァッサーハウスとクンストハウスを再訪し、直線...
2011/04/06~
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