2011/04/06 - 2011/04/11
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kojikojiさん
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オットー・ワーグナー巡りで外すことのできない「郵便貯金局」に行きました。日本と一緒で郵便貯金事業は2005年に民営化されています。現在も金融機関として営業しているので、営業時間中で人が多いと撮影もしにくいので金曜日の午後4時過ぎに行くことにしました。窓口業務は終了していますが、奥に出来たワーグナー・ミュージアムは開館しているからです。案の定写真の通りに訪問者は1人もいません。窓口にも誰もいないので気兼ねなく撮影できますが、こんな広い空間に誰もいないと異次元に迷い込んでしまったような気がしました。20年前に来た時は人も多くてこそこそと写真を撮っていたのが懐かしく思い返されました。以前は無かったオットー・ワーグナーのミュージアムは銀行の窓口のひとつでチケットを買います。その奥に開館当時の窓口などが再現されていました。流石に現在のシステムでは対応できないであろうカウンターです。ワーグナーが生きていたらコンピューターシステムをどう取り込んで改装しただろうかなんて考えたりしました。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 4.5
- ショッピング
- 4.5
- 交通
- 4.5
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩
- 航空会社
- アエロフロート・ロシア航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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カールスプラッツ駅から地下鉄でドナウ運河沿いまで移動しました。考えたら「カイザーバードの水門監視所」も近かったのですが、頭の中からすっかり消えていました。20年前に1度観に行っているので良しとしておきましょう。
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オーストリアの郵便貯金制度が軌道に乗ったとき、近所の建物へ次々と間借りすることにより規模が広げられていましたが、職員数約2000人もの人々が暗くて換気の悪い建物で働き続けることの弊害が指摘されたことをきっかけに、新しい郵便貯金局専用の建物が計画されました。リンクを囲む壁の一部であったシュテューベン保塁が取り壊されることが決まり、その台形の跡地に郵便貯金局の建物を建てる計画が出来ました。
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1903年に公募が始まり第1位となったのがオットー・ワーグナーの設計でしたが、元々彼の設計を採用したい意向が新郵便貯金局建築部に強かったようです。ワーグナーは当時すでに国際的にも著名な建築家であり、比較的低い予算額で芸術性が高く実用的な建物を建設することに長けていたからです。
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正面エントランス側には小さいゲオルグ・コッホ広場があり、その先にはリンクシュトラーセに面した連邦デジタル経済省の重厚な建物が見えます
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史上最も偉大なオーストリアの将軍ヨーゼフラデツキーに捧げられた騎馬像が宮殿の前に建っています。手前の子供のモニュメントでちょっと隠れています。
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外壁は大理石の板で覆われ、細かいアルミの鋲が装飾を兼ねて大理石の板を鉄筋コンクリートの躯体に留めています。これは現物がミュージアムに展示してありました。さらに屋根にはハンガリー生まれのオトマー・シムコヴィッツの手による2体の巨大な天使像が立ち両手を広げています。月桂冠のような輪がオットー・ワーグナーのデザインだと思わせます。
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高さ8階までの建物は台形の街区1ブロック全体を占めています。ファサードは正方形の大理石のスラブと金庫を連想させるアルミニウム・アプリケーションで覆われています。花崗岩のスラブが下層と上層に取り付けられています。
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厚さ10センチの大理石を壁に固定されているように見えるリベットは純粋に装飾であり機能的な強度を持たせているわけではありません。大理石を使用することでメンテナンスと清掃が非常に簡単で安価になり、ワーグナーのデザインにおける重要な機能要素となっています。
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ワーグナーは、オーストリアの化学者カール・ヨーゼフ・バイエルが工業生産のために完成させた新素材であるアルミニウムを高く評価しました。彼はその素材をリベットだけでなく建物の外側と内側にあるポルティコ柱や暖房ファンなどの装飾要素にも使用しました。高さ4.3メートルの彫刻は初めて鋳造アルミニウムで造られて屋根の上に設置されました。ガラス窓の一部はレオポルド・フォルストナーの手によるものです。
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正面玄関の大理石の階段に敷かれた赤い絨毯のセンターを登ります。
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金曜日の午後4時以降は営業時間が済んでいるのですが、奥にある博物館が開いているので中に入る事が出来ます。その時間帯だと空いているだろうと目論んで来たわけです。
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そして扉を開けると途端に明るい空間が広がります。シーンと静まり返り、誰もいないので一瞬入っていいのか戸惑います。
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この空間を貸切り独り占め(2人ですが)という贅沢な時間を楽しみます。キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」のエンディングでポッドに乗ったボーマンがたどり着いた年老いた自分がいるベッドルームを思い出しました。
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この天井は2重のガラス構造となっていて、外からの自然の光がやさしくは入って来ます。床にもガラスタイルが使用されています。オットー・ワーグナーは建築だけでなくインテリアも担当し、椅子や小物や電灯などの細かい部分も自ら設計しています。
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この郵便貯金局の最も素敵な空間はこのカッセンハレで、非常に明るくて洗練されたアトリウムの美しさというのが第一印象でしょうか。真ん中部分が広く取られていて、その両側端に郵便局の窓口が設けられています。アーチ構造の天井が高めで、古典教会建築のバシリカスタイルを思わせます。
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差し込んでくる自然光はデザイン上の理由だけでなく、消費電力のコストを削減するためにも使用されます。床もガラスタイルで構成されていることにより郵便局や郵便物置場のある階下まで自然光が差し込みます。
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エントランス側のコンクリートの柱の前に立つのは空調の吹き出し口です。100年ほど前でセントラルヒーティングの機能が備えられていたのは驚きです。壁の大理石とアルミのリベットのデザインも良く判ります。
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非常に美しいデザインで新しく出来たモスクワの空港も同じような空調のデザインがなされていましたが、オットー・ワーグナーへのオマージュを感じました。
コールマルクト近くエンゲル薬局の隣にある地下の公衆トイレに行く階段の脇にも同じデザインの排気口がありましたが、これもオットー・ワーグナーが関わっていたのでしょうか? -
空間に主張しない細さの支柱ですが、良く見ると照明器具も含め非常に細かいデザインがなされています。これらも新素材のアルミニュームが使用されています。
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妻は歩きすぎてお疲れのようで、オットー・ワーグナーの設計した椅子に座っていますが、カメラを向けたら無理に笑顔を作っていました。
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照明や机や椅子もワーグナーの設計です。こんな貯金局だったらお金を預けてもいいなと思います。限度額以上の預金の利息を放棄するために身分証明書を持って窓口に来いと郵便局から連絡が来た時は驚きました。挙句に契約した母に不利な保険が判明したりと、日本の郵便局は信用できません。
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日本にもこんな郵便局があったら働く人の意識も向上するのではないでしょうか?民営化されても制服をちゃんと着ていなかったり、ワイシャツは腕まくりしてサンダル履きなんて信じられない世界です。プライドを持って仕事をしないといつか痛い目に合うと思います。
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入口から1番奥の左側の窓口でチケットを購入して、左奥のミュージアムの見学に移ります。
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昔の窓口が忠実に再現されています。P.S.K.はOsterreichische Postsparkasseの略です。
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博物館の中にも誰もいませんでした。妻にとってはあまり興味のない分野なので途中で飽きてしまっているようです。
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一応設計については勉強しているので詳細図などが気になります。学生の頃はこういった図面を縮尺を変えてトレースしたことを思い出しました。
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この図面を見ていると屋上のオトマー・シムコヴィッツの天使像も彫刻やオブジェの扱いではなくて建築の一部なのだと思いました。翌日行く「アム・シュタインホフ教会」の模型は前日美術館で見ましたが、図面も見てみたくなります。
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下から見上げるだけでは分からないオトマー・シムコヴィッツの天使像の形もよく分かります。
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ミュージアムはあまり広くなく、再現された窓口カウンターと模型以外は余り展示品も無いので、入場料は内容の割に金額が高く感じました。やはりこのホール空間が1番の見所です。
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1時間近くいましたがミュージアムのチケット売場のおじさん以外誰も来ることはありませんでした。
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銀行としての営業時間は終わっていますが、現在も使われているシンプルなデザインの窓口です。
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午後5時になろうとしているのでトップライトからの太陽光線もだいぶ弱くなってきました。そろそろ次の予定に移ることにします。
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クリムトとシーレの絵画めぐりが終わったとはオットー・ワーグナーの建築巡りになり、最後はフンドレッドワッサーで締める予定です。
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2度目の「郵便貯金局」の見学も終わりました。
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残った反対側のコーナーも一応見ておきます。台形だった保塁の土地の形のままの建物だということが分かります。2回に分けて正面側の建設と裏側を増築したそうですが、見た目はあまり変わりません。
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周囲の街灯に明かりが灯り始めました。郵便貯金局を再び見学して、翌日行くアム・シュタインホーフ教会の見学への期待が膨らみました。
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