2021/03/06 - 2021/03/06
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+mo2さん
「 アーティゾン美術館」では、2021年2月13日(土)から5月9日(日)まで、「アーティゾン美術館」の新しいコレクションを一堂に集めて紹介する「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」が開催されています。展覧会は14部構成となっていましたが、旅行記③では、5:抽象表現主義の女性画家たちを中心に、6:瀧口修造と実験工房を紹介します。
※作品解説は、HP、図録等より参照しています。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
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5:抽象表現主義の女性画家たちを中心に
STEPS AHEAD展のメインヴィジュアルであるイメージは、エレイン・デ・クーニングによる《無題(闘牛)》(1959年)です。アメリカ抽象表現主義の巨匠ウィレム・デ・クーニングの夫人としても知られている画家です。今、世界の美術界では、抽象表現主義の女性画家たちへの関心がたかまりつつあります。エレインに加え、新収蔵となった、ヘレン・フランケンサーラー、リー・クラズナー、ジョアン・ミッチェルといった抽象表現主義の女性画家たちの作品を初公開するとともに、ウィレム・デ・クーニング、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコら抽象表現主義の作家たちのコレクション、戦後のアメリカで絶大な影響力を誇ったジョアン・ミロによる新収蔵作品も紹介されていました。 -
ヘレン・フランケンサーラー「ファースト・ブリザード」1957年
1950年代のニューヨーク抽象表現主義者を表す「ニューヨーク・スクール」 において、ほぼ唯一の女性アーティストとして名前が挙がるのがこのヘレン・ フランケンサーラーです。アシール・ゴーキー、ヴァシリー・カンディンスキー、ジャクソン・ポロックらの影響を受けながらも、抽象表現主義独自のスタイルを築きました。
1960年代に始まるカラーフィールド・ペインティング(カラーフィールド)の代表的画家の一人であり、下塗りをしていないキャンバスに薄く溶いた絵の具を染み込ませるステイニングの手法を発案しました。その手法はモーリス・ルイスをはじめとする多くの画家に影響を与え、様々なかたちで継承・発展されています。 -
エレイン・デ・クーニング「無題(闘牛)」1959年
エレイン・デ・クーニングは、アメリカの抽象表現主義の画家で「アート・ニュース誌」に多くの記事を寄稿した美術批評家としても知られています。高校卒業後、アート・スクールに通う頃、ウィレム・デ・クーニングの作品を知って多大な関心を持ち、1938年ウィレム本人と会い師弟関係を結びます。それから5年後二人は結婚しますが、1957年には別居します。本作は別居後の作品で、友人で作家のマーガレット・ランダルに連れられてメキシコで闘牛を見ますが、エレインは大きな衝撃を受けました。結果としてそれは新たな創造へ結びつくことになりますが、本作はその中の1枚です。 -
リー・クラズナー「ムーンタイド」1961年
リー・クラズナーは1908年、ニューヨークのブルックリン出身。美術を志し、ユニオン・クーパーの女性美術学校と国立デザイン学校に学んだあと、1937年画家ハンス・ホフマンに師事し、抽象絵画の道を歩み始めます。1942年にニューヨークでの展覧会でともに出品作家であったジャクソン・ボロックと知り合い、結婚。1956年にボロックが自動車事故で没するまで、生活と制作活動をともにしました。ボロックが没した後、彼が使っていたアトリエに移り、1959年から1962年にかけて計24点を数える「アンバー・ペインティングス(赤褐色の絵画)」シリーズを作成していますが、本作はその1つです。 -
「ムーンタイド」(部分拡大)
パートナーの急死に加え、実母も亡くして不眠症に陥っていたこの時期のクラズナーの創作は、もっぱら夜間帯に行われ、そのことを踏まえて、この作品群は「夜の旅」とも称されます。夜間の人工の光の下、用いられる色彩は限られることになりますが、本作品の示すとおり、それによってかえって簡潔にして躍動感に貫かれた強度の高い画面が実現しています。 -
ジョアン・ミッチェル「ブルー・ミシガン」1961年
ジョアン・ミッチェルは、アメリカ・シカゴ出身の画家、版画家です。リー・クラスナーやフランケン・サーラーらとともにアメリカの抽象絵画の第2世代の代表的画家の一人でもあります。抽象表現主義画家のジョアン・ミッチェルの芸術は、自然を忠実に表現したいという想いと、主観的で激烈な表現力の拮抗により構成されています。 -
デイヴィッド・スミス「8月の大鴉」1960年8月11日
スミスは戦後アメリカの彫刻家です。1929年にロシア出身の画家ジョン・D ・グラハムと出会い、西洋の新しい彫刻の動向に詳しい彼によってピカソやフリオ・ゴンザレスに倣った溶接彫刻へと導かれました。1933年に初めて鉄を使った彫刻の制作を開始。以後この素材と技法をもって西洋の彫刻の規範から逸脱した前衛的な立体表現を追求しました。1948年には鳥を主題とした「ロイヤル・バード」のシリーズに着手。1955年には大鴉のシリーズに取り組みました。この作品においては、形態は鴉の姿を残しつつも、断片化された部分の集合が抽象的な形態の美しさをたたえています。 -
アーシル・ゴーキー「無題」1946年頃
ゴーキーはアルメニア人のアメリカで活躍した画家です。フランスから渡米したアンドレ。ブルトンらシュルレアリストたちとの親交を契機に抽象的絵画を制作するようになりました。 -
アーシル・ゴーキー「無題」1946年頃
晩年に描かれたこの作品においては、形の定まらない形態が浮遊物のように画面全体に展開しているように描かれています。繊細かつ自由なクレヨンの線によって有機的形態が画面を覆い、ところどころパステルで色が施されています。中心点を持たない画面構成はのちに興隆する抽象的表現に多大な影響を与えました。 -
ハンス・ホフマン「プッシュ・アンド・プル II」1950年
ホフマンはドイツ出身のアメリカで活動した画家。この作品の画題ともなっている「プッシュ・アンド・プル」とは、ホフマンが美術教師としてアメリカの次代を担う前衛的な芸術家たちに教えた美術理論のうちのひとつであり、自身1950年代の前後にこれと同様なタイトルをつけた連作を試みています。それはすなわち、「面」として浮かび上がる画面内の要素が、押したり、引いたりし合うように見える視覚的効果のことを指します。この作品においては、画面の左右や上下の方向への運動のみならず、三次元、すなわち奥行きまでも暗示する効果を示しています。 -
ジャクソン・ポロック「ナンバー2、1951」1951年
ポロックは、ピカソやシュルレアリスムといったヨーロッパのモダニズムを受容する一方、アメリカ先住民の砂絵やメキシコ壁画運動の影響下に、絵具の滴りを自在に操って画面を埋め尽くす独自の手法によるアクション・ペインティングを創出し、抽象表現主義の旗手となります。この作品が制作されたのは、そのスタイルを離れて、黒の線による絵画を試行していた時期で、余白との緊張のうちに多様な線が展開しています。その中で浮かび上がる複数の紡錘形は、この時期には珍しく色彩が施され、形象へのこだわりもうかがわせます。 -
マーク・トビー「傷ついた潮流」 1957年
マーク・トビーは戦後アメリカの抽象画家です。旅する画家として知られるトビーは1930年代には中国と日本を訪れ、筆と墨の芸術、書の美に出会いました。これらはその後の絵画制作に大きな影響を与えています。
この作品においても絵具と筆による書に通じる繊細な描写が全体を覆い、画面の広がりに光とリズムを与えています。このオールオーヴァーな絵画様式は、抽象表現主義に先駆けるものでした。 -
マーク・ロスコ「無題」 1969年
マーク・ロスコは、1950-60年代にかけてアメリカで興隆した抽象表現主義の代表的な作家です。「カラーフィールド・ペインティング」と称された、色面構成に基づくその様式は、高く評価されました。この作品はロスコ最晩年の作で、縦長の画面に矩形の色面が配された構成は画家の代名詞といえるものです。ふたつの矩形を彩るピンクの色調、そして筆致の差異は、絶えざる凝視を促します。また、複雑に塗り込められて生まれた色彩の深遠な奥行きは、大きな画面と相まって見る者を包み込むように働き、瞑想的な気分をもたらします。 -
ウィレム・デ・クーニング「リーグ」 1964年
ウィリアム・デ・クーニングはオランダ出身のアメリカの画家。抽象表現主義運動で活躍しています。デ・クーニングの代表的な作品である女性シリーズは1950年から始まりますが、彼の描く女性像は、欲望、欲求不満、内面的な葛藤、喜びなどが反映されています。
この作品では、生々しい肉塊を思わせる肌色の裸体の女性がたかも挑発するような姿勢をとっているようです。形態は流動化して背景に同化しようとしています。支持体の新聞紙が透けて見えるうえに、形態は揺れ動いて左に触れ、うなり、飛び散る筆蝕によって流動するような運動感を示しています。 -
ウィレム・デ・クーニング「すわる女」1969-80年
デ・クーニングは、1963年以降ニューヨークの郊外、ロングアイランドのイースト・ハンプトンに移住しアトリエを構えました。晩年になると画面の抽象化は進み、色とりどりの色彩が自由な筆致により画面に展開していきました。1970年代には絵画と並行して彫刻も手掛けるようになりました。この作品では絵画で何度も描いた女性像を主題に、人物が溶解するような形態を立体で表現しています。 -
ジョアン・ミロ「夜の女と鳥」1944年
第2次大戦の勃発後、1941年にグワッシュによるシリーズ「星座」を制作して以降、夜と星のモティーフはミロの作品においてより大きな役割を担うようになりますが、本作品においてもその舞台設定がとられています。星の煌めきを表す記号とその他の天体の散りばめられた画面の中心を占めるのは、タイトルの示すとおり女性でしょう。両腕を大きく広げ、片足を跳ね上げるポーズは大らかにして活気に満ち、ミロのフリーハンドによる的確かつ効果的な描線が際立っています。 -
ジョアン・ミロ「赤と黒」シリーズ 1938年
エッチングの技法に魅了されたミロが、版画の方法論への意識に立って制作したのが、この「赤と黒」シリーズ。全8点のうち石橋財団は1~3点目までを収蔵しています。 -
ジョアン・ミロ「赤と黒」シリーズ 1938年
こちらの3点目は、1点目を反転させ、赤の刷りを重ねたものです。 -
ジョアン・ミロ「赤と黒」シリーズ 1938年
2点目は1936年に勃発したスペイン内戦を主題としており、右端の怪物を思わせる存在を前に、戦き悲嘆する家族の姿が描かれています。 -
ジョアン・ミロ「絵画」1952年
戦後のミロの絵画を特徴づける詩的な抒情性を持った作品です。様々な色彩の層を繊細な筆触により重ねた地に、黒、白、緑、青、赤と原色を交えた色面と大胆な筆触で画面は構成されています。 -
瀧口修造は日本におけるシュルレアリスムを牽引した詩人・美術評論家で、自身でも作品制作を行っています。実験工房は、その瀧口修造のもとに美術家や音楽家など、若手芸術家14人が集まって結成されたグループです。様々な活動を展開する彼らは、芸術の諸領域を結ぶインターメディアの先駆けともいえます。石橋財団は、美術館の開館を前に瀧口と実験工房の作家たちの作品を収集し、重要作品の寄託を受けました。戦後の前衛芸術運動において先駆的な功績を残した彼らの作品を紹介します。
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(左)瀧口修造「無題」1961年
(右)瀧口修造「スプラッシュ」1961年 -
瀧口修造「無題」1961年
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瀧口修造「無題」年代不詳
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(左)瀧口修造「無題」1962年
(右)瀧口修造「無題」1962年 -
瀧口修造,福島秀子「変位図」1974年
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福島秀子「銀の絵」1959年
福島秀子は、1927年生まれの美術家で福島和夫の姉。1948年阿部展也も講師の一人をつとめた日本アヴァンギャルド美術家クラブ主催「モダンアート夏期講習会」を受講した福島は、そこで北代省三、山口勝弘と出会い、以来ともにグループ展をおこなうなど交流を深めます。1951年この同じメンバーが若い美術家や音楽家からなる「実験工房」結成し、福島はグループの中心的メンバーとして主に美術・衣装を担うことになりました。 -
福島秀子「MP」1950年
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福島秀子「無題」1957年頃
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福島秀子「無題」1951年
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北代省三「無題(エントロピー)」1948年頃
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北代省三「無題」1950年代
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北代省三「無題」1951年頃
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北代省三
(左)「北代省三『生きる悦び』舞台模型」1951年
(右)「月の位相-月蝕の夜」1985-95年 -
山口勝弘「ヴィトリーヌ」1950年代
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山口勝弘「ヴィトリーヌ 昇天」1955年
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山口勝弘「無題」1950年代
新収蔵作品 -
山口勝弘「無題」1950年代
新収蔵作品 -
山口勝弘「無題」1950年代
新収蔵作品 -
山口勝弘「無題」1950年代
新収蔵作品 -
山口勝弘「無題」1950年代
新収蔵作品 -
山口勝弘「無題」1950年代
新収蔵作品 -
山口勝弘「無題」1950年代
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山口勝弘「花の方向」1957年
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