2022/09/13 - 2022/09/13
17位(同エリア110件中)
さっくんさん
ムザブの谷は、私のイスラームをテーマとした旅の最後の大物と捉えていました。モーリタニアのシンゲッティを見終え、いざと思いきや、3年に及ぶ御預け。遂にその日がやって来ました。
ムザブの谷は千年前、迫害から逃れアトラス山脈を越えてやって来たイバード派の人々が、外界を遮って、厳しい戒律の下伝統を守って暮らして来ました。現在でも部外者は現地ガイドの案内無くして入場は叶いません。
そんな事から、世界で一番往時のイスラームの街並みを現世で感じられる街かと思います。
心して、歩きたいと思います。
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ムサブの谷に出発の朝となりました。私がマグレブでどうしても訪れたかった場所、モーリタニアのシンゲッティを訪れて、さて次は!って思ってから約3年…長かった…何も出来ずにコロナが終息するのを待つしか無い私は、まるで高木ブーの様じゃないかぁ!と筋肉少女帯の名曲を聴きつつ我慢の日々でした。
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アルジェの空港は国内線の方がモダンです。因みに国内線でも、あの忌々しい入出国カードが必要です。ホテル名とホテルの住所は書ける様にしましょう。
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空港到着です。もうこの光景見ただけで興奮してしまいました。
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荒涼とした私の大好きな光景。
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ムザブの谷が見えてきました。イスラームの中でもスンニ派にもシーア派にも属さないイバード派の人々が異端視と迫害を避ける為、アトラス山脈を越え人の寄り付かない過酷な環境のこの谷で、井戸を掘りオアシスを造り、イスラームの清教徒と呼ばれる程厳格な戒律の下、今尚中世の面影を残しながら生活していると言います。
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ムザブの谷は想像より大きいもので谷と言うより、阿蘇のカルデラ(決してカルデラではありません)を彷彿させる広大なスペースがありました。その広大なスペースに5つの(時代と地域が離れた2つを加えると7つ)城壁に囲まれた集落が存在します。(現在では城壁外にも住宅街が広がっています。)
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ガルダイアの集落が見えました。これが見たかったのです!
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此方はメリカの集落です。
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場所を変えて再びガルダイアを眺めます。
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此処でもメリカを眺められます。
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是迄ずっと写真集等で眺め続けていた風景が、今、すぐ其処に、手の届く距離にあります。なんだろう?この胸の鼓動。
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イチオシ
集落はピラミッド状の地形の頂上にモスクを築き、そのミナレットを頂点として、同心円状に家屋が配置されます。
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平等の思想からモスクを含め質実剛健、各々の家屋もほぼ同等の大きさ、同等の色合いで作られています。王政では無いので宮殿に値する建築もありません。国会議事堂もありません。長い歴史の中で、これだけの集落が纏まって暮らす為に、どの様に統治、運営してきたのか不思議です。
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駐車場に到着です。
もう駐車場からの眺めだけで心は踊っています。 -
さて遂にガルダイア市場に向かいます。
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これです!これが見たかったのです。市場の向こうにガルダイアのミナレットが建っています。
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ガルダイアはムザブの谷の中心となる街で、市場も一番賑やかです。5つの集落の中で唯一人物を含めた写真撮影も認められており、閉鎖的なムザブの谷の外界との唯一の窓口とも言えるかもしれません。
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商店の二階からガルダイアを眺めます。
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イチオシ
遥か昔、此処から旅立ったキャラバンがトンブクトゥを目指したかもしれません。シンゲッティやマラケシュから訪れたキャラバンもいたかもしれません。
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中央に聳える独特のシェイプのミナレットが、早く来いよ!と呼んでいます。
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広場を囲むアーケード状のスークを散策します。5つの集落で、この様な賑わいを見せるスークはガルダイアのみです。お土産を買いたい人は此処で決めましょう。
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アーケード内にはビッシリと商品で埋め尽くされていました。
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角々から魅力的な路地がまるで誘うかの様に奥へと伸びています。
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イチオシ
狭い路地からミナレットが覗きます。
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さあて!行くぞぉ!って思うところですが、ちょっと待った!です。何故?
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日中は40度をかるく越える気温となるムザブの谷ではシェスタがあります。市場より奥のローカル・ガイドさんによるガルダイア散策は午後の部になります。
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ホテルに戻って昼食です。オムレツの上にチーズたっぷり…これだけでお腹いっぱいになりそう…。
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写真で見るとそうでも無く見えますが、奥の肉塊のゴツい事。お腹いっぱいになりました。
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ホテルから見えるミナレットはメリカのもうひとつのミナレット。奥に見えるのがオリジナルです。
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此方が宿泊したホテル・ベルベデーレさんです。ムサブの谷を見下ろす位置に建つので見張らしも良好、スタッフさんがフレンドリーです。
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遠くに見えるはガルダイアでしょうか?
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彼方に見えるは間違い無くブーヌーラです。
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良くも水ひとつ無い砂漠から此処までオアシスを広げたと思います。
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ムザブの谷の人々はシェスタ中ですが旅人は無用です。散歩に出かけましょう。
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ブーヌーラが間近に見えてきました。
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ハイウェイ沿いの新市街が見えて来ました。
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新市街の街並みです。
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ワジ(枯れ川)の向こうにブーヌーラの集落。
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ブーヌーラの集落は規模こそ小さめですが、ピラミッド状のシェイプは一番美しく感じました。
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枯れ川が緑地になってました。
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別視点からブーヌーラを眺めます。
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イチオシ
最前列の家が城壁の役割を果たし、城門からでないと出入り出来ない様になっています。
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ブーヌーラ城外のオアシスにもミナレットが聳えています。
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イチオシ
また少し移動したところでベニ・イスゲンの街が見えてきます。目を凝らせていれば、空港を出て初めて目にする事になるだろう街となります。
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所々に見える水色の部分は宗教施設(モスクやマドラサです。)
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遠くに見える黄色い建物がホテルです。思えばこんな遠くまで歩いて来てしまいました。往きはヨイヨイ還りは…。
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ムザブの谷のロータリーには何処もムザブに因んだ彫像が建てられています。
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イチオシ
彼方に聳えるはメリカです。
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ちょっと位置を変えて再びメリカを眺めます。
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賑やかな通りまで戻って来ました。未々ホテル迄半分の道程、残すは登り坂です。
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45度程あります。暑さに強い私もちょっと長距離歩き過ぎて頭がクラクラしてきました。
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猫様もシェスタの様です。
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でもね、只ドライバーさんに連れられて楽チンに移動するだけでは無く、実際自分の足で歩き、街の距離感、街の匂い、街の雰囲気、人々の息吹を自分の肌で感じたいのです。でも今回はチョッピリ頑張り過ぎました。ホテルに到着する頃には朦朧としていました。
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でもいざガルダイア内部訪問の時間が来れば不思議と体力は全快!人間のアドレナリンの力は恐ろしいと思います。ツケは帰国後払います(笑)
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ムザブの谷の5つの集落は例えアルジェリアの観光客でもローカル・ガイドさんの先導無しでは入場出来ません。
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また、肌の露出が多い服では入れない、喫煙の禁止、等、通常モスク内で適用される禁止事項が街全体に適用される事に加え、人物の撮影も禁止。特に既婚者の女性(ハイクと呼ばれる白い布で、片目だけ残し全身を覆っているので簡単に識別出来る。)の撮影は厳禁等数多くの禁止事項があります。
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そう先に述べられると、面喰らう人もいるかもしれませんが、ムザブの人々自体厳格な戒律を守って暮らしている街だから、其処を訪れる我々もそれに敬意を払うのは当然の事ですし、良く思い直せば、各々が快適に過ごす上でどれも大切な事ですよね。(写真はガイドさんで了承済みです。)
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とは言っても写真をバシャバシャ撮っていると、事故ってしまう事もあります。でも私の記事ではハイク姿の女性が写ってしまったものは掲載を自粛させて頂きます。気になる方は別記事でお探しください。
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集落内の通路は特定の幅で作られています。所々トンネル状となっていて道幅は荷を積んだ馬がすれ違える程度。この狭さは厳しい直射日光から歩行者を守る工夫ともなっており、乾燥した気候も手伝って集落内に入れば、外部とは体感気温が全く違い過ごしやすいです。
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道は緩やかに曲がりくねり、家々の扉は決して向き合わない様に設計されています。また通路沿いは、ほんの覗き窓丁寧なの窓しかありません。これはプライバシー保護の為です。
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これは邪視を嫌うイスラーム独特の思想が起因しています。日本では江戸時代、士農工商と言う身分制度がありました。世界的に見ても商人は身分が低く設定されている事が多いです。何故でしょう?それは商人の持つ経済力、即ち金の力を支配者が恐れたからに他なりません。ですが得るものの少ない砂漠で産まれたイスラームは、交易こそが生きる術であったので商人を蔑ろにする訳にはいきません。それにムハンマド自体元はと言えば商人です。
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では商業の欠点は何でしょう?日本でもこの頃良く聞く言葉ですが、貧富の差が生じ易い事です。過度の貧富の差は僻みや妬みを産み、それが積もればコミュニティは崩壊してしまいます。ですから貧富の差が生じ易い商売を中心に活動するイスラーム故に、貧富の差を産まない対策を取る必要がありました。
持てる者は、持たざる者に施す事で徳が積まれるとする喜捨の推奨によるコミュニティ内での弱者救済や、実働を伴わない、利子だけで商売を行う事の禁止等が挙げられます。 -
また「人に羨ましがらせない。」と言う思想も重要な要素となります。例えば日本で家を建てれば、庭は家を囲む様に見せる様に造るかと思います。でもイスラームではそれは御法度で、他人に羨ましがらせない様に中庭を造ります。イスラームは富や美を見せつける事は僻みや妬み、即ち邪視を発生させる事となるので禁じ手なのです。
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富と美はと申しましたが、イスラームの女性がベールでその身を隠すのも、邪視を発生させないと言う思想が大きく関わっています。
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ですからイスラームの街は庭も無く、窓も無く、木訥で質素なイメージを持ちますが、中に入ったらイメージ違い過ぎて呆然となる事があります。勿論女性も然りです。
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そんな、人に見せびらかせない、羨ましがらせてはいけないイスラームの人々と付き合う時には気をつけて欲しいポイントもあります。日本だと人を誉める為についつい「羨ましいです!」って表現で相手を持ち上げますが、イスラームの人々に対しては余り推奨出来ません。それが過度の場合、相手は罪悪心を抱いてしまうかもしれないからです。
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そんな文化背景がありますから、イスラームでは「マウントを取る」様な行為は自殺行為に等しいです(笑)
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これは水汲み場です。イスラームのスーク等で水の入ったサーバーが置いてあるのを見かけます。これは店主の喜捨に相当し、砂漠で水は命に関わる貴重品だからこそ、商売道具として利用するのでは無く、共有するものとするイスラームの考え方でもあります。
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緩やかな坂を登ります。
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イチオシ
吸い上げられてしまいそうな緩い階段が続きます。
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言葉にならない程素敵な空間です。
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荷物の運搬からゴミの搬出迄、集落内では驢馬が大活躍です。
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確か管理施設的な一室だったと思います。アザーンを流す装置等も置いてありました。
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此処にも井戸が設置されていました。
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ミナレットが目前に迫って来ました。ガルダイアの頂点まで後少しです。
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遂にモスクに、即ち集落の頂点に到達しました。
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モスクの中に入れました。
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薄いブルーがムザブの谷では神聖な色の様です。
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プリミティブな神聖さを感じました。
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屋上のテラスに出ました。
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屋上からメリカが見えました。
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大小二つの印象的なミナレットが集落の中心に聳えます。先細りの角柱状のミナレットです。頂点の四隅に突起があるのはマグレブの内陸、サハラ砂漠のモスクに共通するスタイルです。
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此方はモーリタニア、シンゲッティのモスクです。このモスクのミナレットも四隅に突起を持ち、更に駝鳥の卵がトッピングされます。
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此方はマリのトンブクトゥに建つサンコーレ・モスクです。やはり四隅に突起があります。遥か昔の中世に、サハラ砂漠北端のムザブの谷、西端のシンゲッティ、南端のトンブクトゥと言うサハラ交易の重要都市が、交易を通じて文化を共有していたと思うと驚きと感動を覚えます。この4つ角の突起が私がこれまで旅してきた三つの街を結んでいます。
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美しいカリグラフィです。
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これまで幾つもの歴史あるイスラームの街を訪れました。それらの街は先年の間、幾つかの王朝の変遷を経験したり、数々の外敵の襲来が繰り返され、良い意味でも悪い意味でも外界の影響を受けて今日に至ります。
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それに比べ、外界から断絶した地に厳しい戒律の下、先年の時を生き抜いたこの街は、中世イスラームを真空パックしたと言うか、缶詰めにした様な街だとも言えるでしょう。
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閉鎖的なムザブの谷の集落ですが、観光客向けに中を見学出来る家屋が用意されています。
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様々な家具が陳列されていました。
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寝室です。
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台所です。
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振り返りミナレットを眺めました。
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井戸は至る所に設置されています。
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屋根の隙間から裾に広がる街並みを眺めました。
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排他的と言われるムザブの谷ですが、訪れた観光客を案内出来るしっかりとしたガイドさんを常駐させ、観光客に実際の生活を見学出来るスペースを作る等、厳しい戒律の下、出来る限りの事をしてくれている姿勢に感謝感激です。
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ガルダイアの街散策が思った以上に本格的で、メリカに到着した時はもう日没、散策は明日です。
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向こうにガルダイアを見渡せます
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イバード派の聖人シディ・アイサの墓です。
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メリカのミナレットです。
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夕食もゴッツイ肉塊です。私にとって大興奮の1日でした。
本日も最後までご覧になってくださり、ありがとうございました。
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