2011/12/01 - 2011/12/02
4位(同エリア18件中)
さっくんさん
モロッコのサハラ砂漠を旅した時、その余りにも広大なスケールに圧倒された。
人の存在なんて、ちっぽけに感じた。
しかし人は嘗てこの途方も無い砂漠を渡り、交易をおこなったと言う。
だとしたら、人の持つ可能性も、このサハラ砂漠に負けない程、広大なものに違い無い。
彼等は何を求め、そして何処へ向かったのか?
見届けてみたい!
旅してみたい!
こうしてトンブクトゥを目指した旅が始まった。
遥かなるトンブクトゥ1
https://i.4travel.jp/travelogue/show/11207282遥かなるトンブクトゥ2
https://i.4travel.jp/travelogue/show/11207385
-
未だ夜が明けぬ頃我々は出発した。
モプティ郊外の高級住宅街の一軒に突入。
私が怪訝に思っていると、そこはマリの航空会社の社員の家。
そこで社員が持ってきたノートパソコンで帰りの航空券をゲットした。
続いてマリ軍の駐屯地に向かった。
一人は小銃、一人はショットガンを携えた軍人が仲間に加わった。
その装備を見て少しビビる。
これで準備は整ったが安心は出来ない。
この先ダートを含む500キロの道程。
そしてニジェール川の渡河が待っている。
出発は明日早朝。
日程が押せば真っ暗闇のトンブクトゥしか拝めない確率も高いのだ。 -
ひたすらトンブクトゥを目指す。
我々とは逆に遊牧民が北から南へと移動してくる。
乾期に入った今、家畜の水を求めて続々南下し始めるのだ。 -
ドゥエンザを過ぎると、トンブクトゥへと向かう道はダートに変わる。
アフリカらしい赤土の道。
其処にはバリケードが築かれ検問が行われていた。
軍人が車から降り事情を話すとゲートが開かれた。
軍人を雇っていなかったら門前払いだったかもしれない。 -
途中の村でドゥエンザで買った昼食を食べる。
時間は押しぎみだった。
アリに代わり軍人が運転を変わった。
アリはドライバーだからジェントルな運転を心がける。
でもそれでは間に合わないと判断したのだろう。
まるでパリダカの様に軍人はランクルを操る。
後部に置いた私のバッグが毬の様に跳び跳ねる。
アフリカ独特の赤土が、徐々に白い砂へと変わっていく。
サハラが近づいている。
漸くニジェール川が見えてきた。
でもこれが最後の難関だ。
何故なら渡河には約90分かかる。
船は一隻、行ったばかりのタイミングなら日没は免れない。
祈る様な気持ちでニジェール川に降りていく。
船が見えてきた。
「あったー!」
思わず全員が叫ぶ。
しかし喜びはすぐ絶望へと変わった。
フェリーはどう見ても満車なのだ。 -
車は悔しそうにフェリーすれすれに停まった。
ガタッ。
動き出す。
あれ?
陸地が離れていく。
軍人はなんとフェリーのラダーに無理矢理車を突っ込んだのだ。
なんて無茶苦茶なと思ったが、これでどうやら日没は逃れる事が出来たようだ。 -
無理し続けた運転の後、車から這い出して、皆思い思いに伸びをする。
皆で記念写真。
フェリーの多の乗客も飛び込み参加。 -
ティメの計らいでフェリーの運転席に登る。
-
ニジェール川にはカバが住んでいると言う。
カバは勇敢な動物だ。
アフリカの人はライオン以上にカバを恐れると言う。
マリの語源はカバにあるそうだ。
フランスから独立した時、フランスから国名を頂いたが、それを断って伝統のあるマリと言う国名を選んだのだそうだ。 -
ジンガリベリ・モスク
そして我々は遂にトンブクトゥに到着した。
急ぎ足で見所を回った。 -
シディ・ヒサヤ・モスク
トンブクトゥ…
嘗て塩と金の等価交換貿易で繁栄したマリ帝国。
時の王、マンサ・ムーサはマリで莫大に採れる金を持ち、メッカへ巡礼に出た。
途中立ち寄ったエジプト、カイロで金を喜捨しまくった為、エジプトの経済は大混乱してしまったと言う。 -
サンコーレ・モスク
そのエジプトでの噂が欧州に伝わり黄金の都市伝説が生まれる。
そして数多くの探検家がトンブクトゥを目指し、そして帰って来なかった。 -
探検家ゴードン・ラングの家
初めてトンブクトゥから生還したルネ・カイエだったが、その時彼が見たトンブクトゥは、最早栄光の時代は過ぎ去り、サハラ砂漠に飲み込まれそうな寂れた街だったと言う。 -
探検家ルネ・カイエの家
そんな経緯から欧州ではトンブクトゥと言う言葉は、いつしか「遥かなる大地」と言う意味の代名詞となった。 -
やっと到着したと言うのにあっと言う間に日は暮れる。
ティメにアリに軍人二人にトワレグ族の現地ガイドも加わって、思わぬ大所帯となった今回の旅。
長い道程を共にしただけあって、打ち解けた夜を過ごした。
でも軍人二人は抜からない。
私が用を足しに席を外すとピタリと付いてきて警護を怠らない。
きっと私が旅の疲れでぐっすり眠りに着いた後も。 -
ブレブレだけど、私を守ってくれた面々と最後に写した一枚、忘れられない一枚。私の両隣で警護してくれている軍人さんは、この三か月後、国を守る為アルカイダとの闘いに身を投じたに違い無い。どうか、どうか、生き抜いていて欲しい。
-
翌朝早朝空港に向かった。
しかし誰もいない。
まさか欠航?
だとしたら私は帰国便に乗り遅れる。
しかし此処まで計画が掻き回されて、最早動じない。
ディレイだろうからもう一回街歩きしようと言う事になった。 -
夜が明けた。
-
再びサンコーレ・モスクに戻って来た。
-
ジェンネの街は川の中洲にあった為家が密集しているが、トンブクトゥは砂漠の縁に出来た街なのでゆったりとスペースを取っている。
赤土の泥を利用して作られたジェンネと違って、此方の家は白が基調だ。 -
街角でナンを焼いている風景に出くわした。
ジェンネ等南部はご飯が主食で、パンを食べたとしてもフランス統治時代にフランスが持ち込んだフランスパンだった。
しかしトンブクトゥではアラブ文化のナンが主食となっている。
サヘルを越えて旅すると言う事は、単にサバンナからサハラへと気候帯を越えるに留まらず、ネイティブアフリカの文化からアラブ文化への境界を越える事でもあった。 -
残された時間、噛み締める様にトンブクトゥの街を歩いた。
-
最後に民家の屋上に上がらせて頂き、ジンガリベリ・モスクを眺めた。
-
その先の遠くにサハラ砂漠が見えた。
二年前、モロッコの砂漠で熱い視線で南を見続けた私。
その時の願いが叶って、私は今その場所にいる。
胸が熱くなった。 -
眼下に拡がるトンブクトゥの街並み。
-
その先に拡がるサハラ砂漠。漸くトンブクトゥに辿り着いた実感に浸った。と思ったら、引き返す時間だ。
-
再び空港へ行くと、今度こそ空港は開いていました。
そしてこれまで旅を支えてくれたメンバーともお別れです。
軍人は最後の最後まで抜かりません。
搭乗のゴタゴタのうちに私が狙われない様に特別にアライバルから逆行して飛行機に向かいます。
ティメとアリに大手を降ってサヨナラをし、軍人二人に警護されて飛行機のタラップを登り二人に敬礼を交わします。
なんだか要人にななった気分。 -
飛行機は途中モプティをけ経由します。
モプティ空港で出発を待っていると誰かが私の肩を叩きました。
誰?
振り返ればワイシャツ姿の…。
あ!
トンブクトゥへ行く朝立ち寄って、飛行機のチケットを手配してくれた航空会社の社員さん!
「君がちゃんと戻ってくるか心配で探しに来たんだよ!」
私の我が儘な旅を、みんなが心配し、そして支えてくれている。
旅も最後に来てホロリとしてしまう。 -
飛行機は絶えずニジェール川に沿って南下を続ける。
如何にニジェール川がマリにとって重要な川か、此処でも解る。
車ではあれほど苦労した道程をあっと言う間に飛行機は飛び、眼下に緑が濃くなった頃、バマコに降り立った。 -
バマコに生還した。
-
帰ってきたバマコではムハンマドと言う若いドライバー兼ガイドが私を引率してくれた。
バマコを一望出来る高台へ行った。
旅の念願が成就した想いを噛み締めた。 -
アルチザン・マーケットへ向かった。
「おぉ帰って来たか!帰って来たら買い物してくれる約束したよな?トンブクトゥに行ったのか?大丈夫だったか?」
往きに此処を立ち寄ってから一週間ぐらい経つと言うのに、彼等は私を覚えていてくれた。
時にしつこく感じる時もある彼等だが、今はそれが何故かとても嬉しく感じた。 -
店内で私は驚きの仮面を見つけた。
三猿が彫られた仮面だ。そう日光東照宮にある三猿だ。 -
日光東照宮の三猿。
聞けば此処マリでも日本と同じ意味があると言う。 -
私は以前訪れたシリア、ダマスカスで似た経験をした。
スークの土産屋で見つけた金属製の三猿。
調べれば三猿は日本だけでは無く、日本発祥な訳でも無く、世界中に知れ渡っているそうな。
太古の交易と共に、東の果ての日本、西の果てのマリ迄三猿は旅を続けたのだろう。 -
日本とマリが三猿で繋がった。
私は嬉しくなり、この仮面を手中にした。
三猿は世界を旅するトラベラー。
私の大先輩でもありました。
さて買い物が終わると、ムハンマドがさっくんさんに逢いたがっている人がいるから逢って欲しいと言う。
怪訝に感じながらも私は彼に従った。 -
私を待っていたのは、旅行会社のボス、アマドゥだった。
私は感謝を述べ、アマドゥはそんな私を労ってくれた。
アマドゥ宅で昼食を頂いた。
旅の中で一番美味しいぶっかけ御飯だった。
美味しいを連発しおかわりを頂きがっつく私が一段落するのを待って、アマドゥが私に尋ねた。
「さっくんさん、どうして貴方はそれほどトンブクトゥにこだわったのですか?」
私はモロッコのサハラ砂漠でサハラの広大さに感動し、そしてそれ以上にその広大なサハラさえも渡りきって旅を続けた商人達がいた事実に感動した事。
そしてそんな彼等が命を賭けてまで旅した先を、どうしてもこの目で確かめたかった事、そしてその答こそトンブクトゥだった事を伝えた。
そんな私の話をアマドゥは目をキラキラ輝かせながら聴聞いてくれた。
だけど私も不思議に思う事があった。
何故アマドゥは、採算に合わないだろう、たった一人の旅人の我が儘な願いを、親身になって叶えてくれたのだろう?
政府が撤収の指示を出した場所。
下手すればリスクも伴っただろうに。
「危険ですから中止致します。」
の一言で済んだ筈なのに…。 -
聞かずもがな、アマドゥは熱く語り始めた。
「さっくんさん、私の国は貧しいです。
貴方の国にある様なものはなにもありません。
でも、この国には貴重な歴史遺産が沢山あります。
私は海外から来た旅人達にそれを紹介する事を、誇りにして生きてきました。
でも、こんな事件が起きて、キャンセルの連続です。
悔しいです。
もしこれが紛争に繋がりでもしたら、私達が積み上げてきた全てが壊されてしまいます。
旅行業界だけじゃない。
レストラン、お土産屋、全てが繋がっていて、それが全部壊されてしまいます。
そんな中さっくんさんは勇敢でした。
どうもありがとう!」
もうお互いの顔はクシャクシャだった。 -
私は言った。
「今回の旅は旅立つ前から色々あって、そして到着したその日にあの事件。
歴史上もトンブクトゥは遥かなると言う意味があるそうですが、私にとってもトンブクトゥは遥かなる道程でした。」
アマドゥが口を挟む。
「But you finally at last.」
私が返す
「I have been to timbuktu.」
二人の声が揃った。
「Aaaaaand back!! 」
「全て貴方のお陰だアマドゥ!」
四つの掌がひとつになった。 -
アマドゥの熱烈な見送りを受け、空港へ向かう。
旅の最後もニジェール川の夕陽が見送ってくれた。
またひとつ願いを叶える事が出来た。
また忘れられない素敵な旅となった。
ガイドのティメ、ムハンマドにありがとう!
ドライバーのアリにありがとう!
二人の軍人にありがとう!
航空会社の社員さんにありがとう!
旅の神様にありがとう!
そして何よりアマドゥにありがとう!
誰一人欠けてもこの旅は成就しなかった。 -
旅が終わった三ヶ月後、私が、いやそれ以上にアマドゥが恐れていた事態が発生した。
そのニュースを知った夜、一晩泣き明かした。
一日も早く、マリにトンブクトゥに平和が訪れます様に。
長文、最後までお付き合いくださりありがとうございました。
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この旅行記へのコメント (2)
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- kummingさん 2022/06/27 21:05:12
- 未知の世界♪
- トンブクトウ、初めて耳にした地名です。
だいたい、さっくんさんの訪問地は、私にとって未知の世界ですが。
何年も前に、マリが政情不安で紛争があってた事は、朧げに知っていましたが、まさかその真っ只中に旅⁈ しかも、現地の皆さまの制御の声をものともせず、幾多の難関を乗り越えての初心完徹♪ お見事でございます^ ^
ガイドさん、ドライバーさん、更にはボディーガード的軍人さん2人という、豪華メンバーを率いての旅、ひとえにさっくんさんの熱い想いが伝わっての成果ですね♪
下世話な話、この総勢4人を率いての旅、かかった費用や如何に? まさかみなさん、ただの好意だけでさっくんさんの想いに応えてくれたわけではない、ですよね~?
続編のキリンさんとのツーショット、表紙にしても良かったのでは? と思うほど、素敵です^o^ さっくんさんのきりんさんへの愛が溢れています♪ コレ2011年のブログの続き? 他にもいっぱい隠しているブログありそうなので、この期に一挙蔵出し大放出、楽しみにしています。
素晴らしい写真の数々、ありがとうございます♪
- さっくんさん からの返信 2022/06/28 09:26:51
- Re: 未知の世界♪
- こんにちは
本当様々な障壁があった旅でした。確かに費用は嵩みましたが、秘境系はパックツアーでも目が飛び出る様な料金設定な事が多いので、それと比べれば良心的だったとおもいます。
イスラームはカソリックの様に侵略し、破壊しフランチャイズを築く様な手法では無く、交易で伝わったので御当地の文化がそれぞれ反映されるので面白いです。今回はアフリカの果てで泥作りのモスクを見に向かいました。
4トラベル当初はダイジェスト的に使っていたので、旅の切り取り状態のものも多く、正直何処から手をつければ良いやら…気長にお付き合いくださいm(_ _)m
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