2015/05/01 - 2015/05/09
40位(同エリア4522件中)
ウェンディさん
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- クチコミ2264件
- Q&A回答130件
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古都イスタンブールの地下深く、そこには一人の少女がいる。
少女の名はメドゥーサ(メデューサ)。
メドゥーサは輝く美しい髪、宝石の様に煌めく瞳を持つ女の子で、姉と共に成長したメドゥーサはひときわ美しい少女となり、彼女の姿は一目見る者を虜にした…と云う。
しかし、美しさは、時として物事を良い方向には運んでくれないこともある。
メドゥーサの美貌もまた、彼女へと幸せを運んできてはくれなかった。
メドゥーサはその美貌故に女神アテネの怒りを買い、輝く髪はおぞましく蠢く蛇へ、煌めく瞳はその瞳を見た者を石へと変え殺してしまう魔物へと姿を変えられてしまった。
魔物と化したメドゥーサのその最後は、彼女の輝かしい少女時代からは想像もつかないような残酷な結末。
メドゥーサは、英雄ペルセウスにより首を切られ、その命を失ってしまった。
そして、神々の話を伝承として伝え聞いたニンゲンという種族は、神々の世界をモチーフに様々な絵画を描き、コリント様式の列柱が立ち並ぶ白亜の神殿を建築した。
神殿にはメドゥーサの彫像も飾られ、人々はこぞって美しい神殿へと参拝をした。
しかし長い月日の経過は人々の信仰を変え、神殿の存在は忘れられた。
メドゥーサが祀られた神殿も朽ち果て、背の高い草がその地を覆い尽くした。
朽ちていた神殿に再びスポットライトが当てられたのは6世紀のこと。
東ローマ皇帝ユスティニアヌス1世が聖都コンスタンチノープルの宮殿に水を送る為の施設として巨大な貯水槽を建築することにし、その建築資材としてかつてのギリシア神殿の大理石の柱を用いたのだ。
500年以上もの長い間、人知れず草むらで眠っていたメドゥーサの彫像にも再び活躍の場がやって来た。
が、その場所は、日の当たらない暗く湿った水の中。
コンスタンチノープルの地下深くに建築された地下宮殿、そこがメドゥーサの新しい神殿となった。
仄暗い水の底でメドゥーサの彫像は口を軽く開き、見る角度によっては微笑んでいるかの様にも見える。
彼女が笑っているのは、彼女自身の皮肉な運命なのか、それとも母なるTerraを喰らいつくそうとしているニンゲンという種族なのか…。
それを知るのは歴史という物語だけなのかもしれない。
☆★☆★☆★☆★旅程 2015/5/1〜2015/5/9☆★☆★☆★☆★
□5/1 成田22:30 -TK0053-
□5/2 イスタンブール 04:40 / 09:50 -TK2026- カイセリ11:10
カッパドキア観光
□5/3 カッパドキア観光
□5/4 カッパドキア観光
□5/5 ホームステイ
□5/6 カイセリ6:00 -TK2023- イスタンブール07:25
アヤソフィア、エジプシャンバザール、リュステム・パシャ・ジャミィ、イェニ・ジャミィ、ガラタ塔、セマー
■5/7 トプカプ宮殿、ルナ・テラス、ブルーモスク、グランドバザール、ヴァレンス水道橋、シェフサーデ・ジャミィ、スレイマニエ・ジャミィ、リュステム・パシャ・ジャミィ、ボスポラス海峡クルーズ
■5/8 地下宮殿、カーリエ博物館、テオドシウスの城壁、ミフリマー・スルタン・ジャミィ、 考古学博物館
□5/9 イスタンブール 01:15 -TK0052- 成田18:30
☆★☆★☆★☆★ ファティマとアイシャの旅 旅行記☆★☆★☆★☆★
【1】日本人の知らないカッパドキアへ☆ソーアンルの岩窟修道院:
http://4travel.jp/travelogue/11010564
【2】ウフララ渓谷は赤目溪谷だった!?:
http://4travel.jp/travelogue/11012680
【3】男の村マズにある真実の地下都市とバルーン・ライド:
http://4travel.jp/travelogue/11013325
【4】時に忘れられた村;ジェミルへ:
http://4travel.jp/travelogue/11015647
【5】Forgotten Cave Churches☆ローズ・バレーをトレッキング:
http://4travel.jp/travelogue/11017310
【6】女の修業!度胸でチャレンジ♪ホームステイでお料理教室:
http://4travel.jp/travelogue/11018186
【7】スター・ウォーズの世界へ☆ギョレメパノラマをハイキング:
http://4travel.jp/travelogue/11019510
【8】貌のない天使を探して
http://4travel.jp/travelogue/11024303
【9】スルタンの秘められた世界;狂気を孕む王宮へ
http://4travel.jp/travelogue/11028013
【10】点と線を楽しむイスタンブール街歩き
http://4travel.jp/travelogue/11039360
【11】メドゥーサの微笑み☆美味い話にウラは無い!
http://4travel.jp/travelogue/11050701
【12】マリア様はSuper Girl
http://4travel.jp/travelogue/11094540
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 友人
- 一人あたり費用
- 20万円 - 25万円
- 交通手段
- 船 徒歩
- 航空会社
- ターキッシュ エアラインズ
-
イスタンブール2日目である5月7日。
この日の夕方に母と私が居た場所は、ゆらゆらと揺れる船の上。
港町で見知らぬ男に声を掛けられた私達は、彼の話すオイシイ話に思わず喰いついてしまったのだ。
英語も片言の男だったのだが、ジェスチャーと彼が手にするリーフレットで、彼の言いたいことは簡単に理解できた。
・・・ボスポラス海峡クルーズを特別価格で紹介する・・・
イスタンブールの客引きには、悪い奴も多い…。
そんなことは分かっていた。
だけれど、私にはその男が悪い奴には見えなかった。 -
男に促されて小さなワゴン車に乗り、金角湾を湾の奥方向へと向かい、10分位で小さな船着場に到着した。
そこで、母と私は船に乗せられた。
この間、英語の案内は一切なく全てトルコ語での会話のみ。
トルコ語は全く分からない私達。
雰囲気のみで会話の内容を推測した。
エンジンのかけられた船は小刻みに震え始め、船の上に立つとその振動が体全体に伝わってくる。
私達を載せた舟は、桟橋を離れガラタ橋の下へと向かっていた。金角湾 海岸・海
-
ガラタ橋の上には、橋上から魚を釣る地元の人の姿、橋の下では行き交う船を眺める観光客の姿があった。
屈強な男たちが乗った船の中に、二人の東洋人のオンナの姿。
橋の下からこちらを眺める観光客達が何かを叫ぶが、それは、私の知らない言葉。
母と私には、彼らが何を伝えたいのかは分からない。
気つけろ!そいつらは危ない奴だぞ〜…なのか、良い船旅を〜…なのか。ガラタ橋 建造物
-
そう…。
母と私はユスキュダルへと渡る船着き場で、見知らぬ男に声を掛けられた。
その男は、ユスキュダルへ夕景を見に渡ろうとする私達にこう囁いたのだ。
【ここにボスポラス海峡クルーズのチケットがある。通常ならば20ユーロの運賃だが、最終便の夕陽クルーズをスペシャル・プライスの20トルコリラ(日本円換算で約1000円)で乗せてあげよう】
通常3000円近いボスポラス海峡の2時間クルーズが、半額以下の1000円。
こんなことを聞かされたら、誰だって心が動いてしまうだろう。
私も心が動いた一人だった。
この男が悪い奴で、私達をどこかに連れ行き、売ったり(おばあちゃんとおばちゃんが売れるのかどうかは知らないいが・・・)、運が最悪に悪ければ、紛争地帯の人質用に連れて行かれる可能性も考えられるのが、現在の中東の状況。
何かあったら、母を連れて走れるだけ走って逃げよう…。
そう心に決めて、男に二人分の40トルコリラを支払った。
(船の上からは夕陽に映えるイェニ・ジャミィの輝く姿が見えていた)イェニ ジャーミィ 寺院・教会
-
私達が乗せられた船は、こんな船。
船着き場でボスポラス海峡のクルーズ船…と聞いた時は、前の写真にある様な白い少し優雅な客船の姿をイメージしていたのだが、案内された船は、漁船に2階部分をつけて観光仕様にしてみました的な小さな船。
乗船前に船の形をしばし観察する。
船の船首は尖っていないし、どう見ても人を誘拐する時に使うような高速艇には見えない。
例えこの男たちが悪い奴でこの船で観光客を誘拐したとしても、沿岸警備のパトロール艇の方が圧倒的にスピードも速いだろう。
まあ、パッと見た感じでは、乗組員の人達も悪い奴らではなさそうだ…。
小さな船を見て安心する…と云うのも妙な話だが、この船ならば安心かも…と云う安堵感を持って船に乗り込んだ。 -
船の上に居た乗客たちは、国籍も様々。
だから、聞こえてくる言葉も知らない言葉が多い。
東洋人の数はほとんどなく、中東系の観光客が多い感じだった。
小さな子供を連れた家族連れの姿も見られ、客層から判断してもこの船が観光船であることは間違いなさそうだ。
客層が中東系の方が多いところから考察すると、このクルーズ船は欧米からの観光客よりも中東の旅人向けに営業をしているクルーズ船なのかもしれない。
この日はサンセット・クルーズのチケットの売れ行きが悪く、船着き場に居たあの客引きの男は、乗ってくれそうな旅人を物色していたのだろう。
そして、そんな客引きの彼が見つけたのは、今まさにユスキュダル行きの切符を買おうとしている東洋人の母娘ふたり。
英語もそんなに話せない彼は、決死の覚悟で、目の前にいた東洋人の母娘に声をかけてみることにした。
・・・自分には、難しい交渉は出来ない。だから、一番単純な会話で話しかけてみよう・・・
【20ユーロを20トルコリラにする…だから、クルーズ船に乗らないかい?】
この誘い文句ならば、通貨の単位を変えるだけで、その意味もお得感も理解してもらえるはずだ…と。
そして、彼の目論み通り、カモであった私達は見事にそのエサに喰らいつき、船の上に居る訳だ。 -
イチオシ
桟橋を出航して暫くすると、新市街地の丘の上にそびえたつガラタ塔の姿が見えてきた。
ちょっとした高級住宅風の街並みが斜面いっぱいに広がっている。
高そうなアパートメントに囲まれたガラタ塔は、オシャレなスポット的な感じだ。
ガラタ塔のある地域は日本でいえば山手地区みたいにも見えるが、実はこの瀟洒な雰囲気の地域はガラタ塔地区の全体のほんの一部分にしか過ぎない。
海側からガラタ塔地区の全体像を眺めると、この地域が持つ二面性や問題点が見えてくる。 -
イチオシ
この写真は、1枚前のガラタ塔のある地域の風景を同じ海側からだが、ガラタ橋を挟んで反対側の海より撮影した写真(海峡クルーズの帰路に撮影)で、明らかにガラタ塔の周りに建つ家々の様相が、1枚前の高級住宅街的な雰囲気とは異なっているのが分かる。
どちらかというと下町的な少し退廃的な雰囲気を漂わせる感じだ。
1枚前の写真を撮ったのは、ガラタ橋を挟んで右側のカラキョイ地区の沖から。
カラキョイ地区から登る新市街の斜面は、高級な衣料品を扱うお店や綺麗な家も多い高級住宅が立ち並ぶ地域だ。
だが、この写真は…。
ガラタ橋の左側の地区(金角湾の奥側)から撮影した光景は、先ほどのカラキョイからの景色と比べて、家の色味もダークカラーで、建物自体も老朽化した物が多いように見える。
ガラタ塔地区の裏側にあたるこのダークな地区。
実はここはイスタンブールの中でも微妙な立ち位置にある地域として知られている。
ガイドブックには決して書いてはいないが、この地区はイスタンブールの歓楽街として知られている場所で、夜は、女性は勿論、男性でもあまり近寄らない方がよいとされる地域だ。
裏道には春を売る様な商売をする店もある…らしい。
実は前日の夕方に、ガラタ塔の裏道がそんな道だとは思いもよらぬ母と私は、ガラタ塔の付近を歩いてしまっていた。
何も知らずにガラタ塔の裏道の坂を歩いたのだが、壁に描かれた落書きや、なんとなく退廃的な雰囲気から、その治安の微妙さや空気のピリピリ感を感じはしていた。
こうやって海の上からガラタ塔地区を遠景で眺めてみると、ブティック等が並ぶ観光地区よりの地域と歓楽街が立ち並ぶ地域の様相の違いは一目瞭然に分かる。
(私的には、このちょっとダークな光景の方が好みだったりもするのだが…)ガラタ塔 建造物
-
船は金角湾を出て、マルマラ海と黒海を結ぶボスポラス海峡へと入る。
イスタンブールの新市街地はオスマン朝中期以降から開発された地域で、もともとが大きな丘であった地域に街を作っていった場所だ。
港から丘のてっぺんまで、びっしりと家々が並んでいる。
階段状に並ぶアパートメント。
きっとあそこの部屋からは、マルマラ海の穏やかな青い海が見えているのだろう。
そんな住宅街の丘の中腹に、なんだか雰囲気のあるモスクを発見! -
船が海峡の欧州寄りをゆっくりと進むと、徐々に先ほどのモスクが大きくなってくる。
通常のクルーズ船であれば、「右に見えますのは…、左に見えますのは…」と放送がありそうなものだが、残念ながら1000円のクルーズでは、そこまでを期待してはいけないらしい。
だから、モスクの名前は分からない。 -
船は速度を緩め、夕陽に照らされた階段状の家々の脇を通り過ぎる。
今回、トルコに来るまでに私の持っていたイスタブールのイメージは、平面の町。
テオドシウスの城壁が犀の角の形をした街の周りを取り囲んでいるイメージのみが頭の中に渦巻いていて、こんな風に段々畑のように家が立ち並ぶ風景は予想外。
やはり、百聞は一見に如かず…だ。 -
クルーズ船は黒海方向へと進む。
左岸に見えるのはドルマバフチェ・ジャミイ。
大ドームが一つだけのシンプルなモスクだが、天井がかなり高い。
そして、2階部分の窓の形も独創的。
ちょっと中へ入ってみたい気がするモスクだ。ドルマバフチェ ジャーミイ 寺院・教会
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ボスポラス海峡の左岸(欧州側)には、バロックとオスマン様式が融合した建築物であるドルマバフチェ宮殿(写真下)、昔はスルタンのための夏の離宮として使われ今は高級ホテルケンピンスキーとなっているチュラーン宮殿(写真左)、そしてバロック様式のモスクであるオルタキョイ・メジディエ・ジャミイ(写真右)の姿が見える。
チュラーン宮殿は海から眺めていてもその外壁装飾の豪華さがわかり、19世紀に使われていた頃の華やかさが想像できる姿だった。
オルタキョイ・メジディエ・ジャミイはボスポラス海峡からの採光を取り入れるように設計されたモスクという事だったので今回の旅で訪れたかったのだが、さすがに3日間の滞在ではそこまでは難しく、次回の機会に持越し。
この日は外観を見るまで…となった。ドルマバフチェ宮殿 城・宮殿
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母と私が訪れたイスタンブールはある意味、世界的にも珍しい都市でもある。
イスタンブールの何が珍しいのか…って…。
それは、イスタンブールが一つの都市の中にアジアと欧州という二つの大きな地区を含有している…ということ。
中東には多くの有名な都市があるが、アジアと欧州にまたがっているのはイスタンブールしかない。
イスタンブールのアジア側は主に人々が生活をする住宅街で、欧州側には商業地区が多い。
だから人々は、朝はアジア側で目覚め、仕事のために欧州へと渡り、夕方にはまたアジア側へと戻る。
つまり多くのイスタンブール市民は1日にアジアと欧州の二つの地域を行き来していることになる。
でも、アジアと欧州の境目には海の分かれ目である海峡がある。
どうやって彼らは海峡を渡っているのか。
海峡というと、大きな潮の流れが海の中を渦巻くイメージだが、アジアと欧州を分ける海峡;ボスポラス海峡はそんなに幅広ではなく波も穏やかで、狭いところでは、アジアと欧州間の距離は1.5kmと目と鼻の先。
お互いの地域の岸辺から、対岸の景色が見えてしまう位の距離だ。
泳いででも渡れそうな二つの地域の距離だが、イスタンブールの方たちが毎日の通勤に使っているのが、アジアとヨーロッパを結ぶ橋であるボスポラス海峡大橋だ。
そのボスポラス海峡大橋(第一ボスポラス大橋)が見えてきた。7月15日殉教者の橋 建造物
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ボスポラス海峡大橋を過ぎるころになると、欧州側の雰囲気は、街というよりもリゾート地区に近い感じに変わってくる。
丘の斜面には、ローマ時代の名残の城壁が見えた。 -
岸辺に建つ家々も昔のトルコ式建築様式を取り入れたリゾート地区っぽい造りで、丘の上に立つ家々も、家と家の距離がしっかりととられ、広大な庭を持つ家もあるようだ。
多分、このボスポラス海峡大橋よりも黒海よりの地域は、お金持ちの方達向けの避暑地的な場所らしい。
建物に、庶民的な要素が見られない。 -
リゾート地区を過ぎると現れるのが、石造りの要塞であるルメリ・ヒサール。
15世紀に建てられた要塞で、メフメット二世がコンスタンチノープルを攻略するために僅か4か月で作らせたという砦だ。
砦は、紅色の花を咲かせる木に彩られていた。 -
砦を過ぎると見えてくるのが、二つ目の大橋であるファーティフ・スルタン・メフメット大橋(第二ボスポラス大橋)だ。
私達が参加したのはショートクルーズなので、ボスポラス海峡の遡上は、此処の橋まで。ここから船は、金角湾へ向けて引き返す。ボスポラス海峡 海岸・海
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ボスポラス海峡のショートクルーズの時間は約2時間。
その2時間の間、母と私はただ外の景色を見ていただけではない。
クルーズの後半は、国際交流の時間。
イランから観光に来ているというご家族と仲良くなった。
日本とイランの間を取り持ってくれたモノは、私的には意外なモノだった。
それは、日本の誇る文化であるアニメーション(漫画)。
イランの女子大生であるこのご家族のお嬢さんは、大の日本のアニメ・ファン。
初めは恥ずかしかったからなのか、お父さんを介して私達と会話をしていたのだが、途中からはダイレクトに英語で話をするようになり、仲良くなった。
何でも、彼女はナルト(NARUTO:作者/岸本 斉史)の大ファンで、大学では美術(多分だが、アニメ系の芸術)を専攻しているとのこと。
日本に憧れていて、日本にはいつか行ってみたい…という話だった。
お父さんも私の持つキャノンのカメラに興味津々で、いくらで買ったのか…等の質問攻め。
ご両親と叔母様で旅をしているとても仲の良いご家族だった。
(写真:アジアと欧州の架け橋であるボスポラス海峡大橋を背景に…) -
クルーズ開始から2時間ほどで、ボスポラス海峡巡りの船旅も終わりの時間。
最後の見所は、クズ塔:乙女の塔とも言われるマルマラ海に浮かぶ小さな灯台。
この灯台には悲しい伝説があり、王の最愛の娘が命を落とした場所と云われている灯台だ。
夜に灯台に火が灯ると、闇夜の中に輝く灯台の小さな炎がまるで王女様の涙であるかの様に見える為、乙女の塔…と名がついた…のかどうかは知らないが、多分そんなところだろう。
旅の前情報によると、この乙女の塔の夕景は美しい…という事だったので、結構楽しみにしてきたのだが、午後7時位ではまだ夕景には早すぎて、こんな感じ…。乙女の塔 建造物
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そして私のイメージでは、乙女の塔の灯台は大海原の中にポツンと浮かぶ孤高な塔的な感じだったのだが、実際の映像は乙女の塔の背後にはユスキュダルの町並みがドド〜ンと見えてしまっていた。
乙女の塔は、私の抱いていたイメージとは若干異なる場所だったようだ。
だから、今回のボスポラス海峡のクルーズは、客引きのオジサンの言葉に引っかかって大正解。
乙女の塔だけを見にユスキュダルまで渡し船で渡っていたら、チョッピリがっかりした夕方になっていたかもしれない。ボスポラス海峡クルーズ アクティビティ・乗り物体験
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ボスポラス海峡クルーズが終了したのは19時近く。
埠頭で客引きのオジサンに声をかけられた時は、ウマい話には裏があるのが定石と思ったのだが、今回に限っては、ウマい話にはウラなんてなかった。
客引きのオジサンのお蔭で、ボスポラスの夕景クルーズを楽しむことができ、更に素敵なご家族との出会いがあった。
クルーズからの帰り道に、港沿いのエジプシャン・バザールの近くを通ったので、ちょっと覗いていこうかと思ったらバザールではもう店じまいの準備が始まっていた。
ちょっぴり残念。
私のイメージではバザールは夜10時くらいまで煌々と明かりがついているイメージだったのだが、トルコでは結構早めの時間に終わりとなるらしい。エジプシャンバザール 市場
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時間はもう夕闇が迫る時間だが、これから歩くのは、2日間歩き尽くした旧市街の町並み。
港からホテルまでの道のりならば、もう地図が無くてもルートは頭に入っている。
お土産屋さんを冷やかしながら、散歩気分でホテルへと戻る。
お土産屋さんを冷やかしながら思ったこと。
それは、アラブ(というかイスラム圏)の国々のマネキンの利用の仕方は、どこの国に行ってもとっても個性的だという事。
マネキンの役割は原則的には、着せている洋服を如何に引き立て、消費者に自分にも似合いそうだ…という錯覚を起こさせるか。だと思うのだが、どうやらトルコでもその法則は当てはまらないらしい。 -
お土産屋さんのマネキンも個性的だったが、ビルの二階の窓枠に立つこちらの3体の子供のマネキンたちも、そのアピール用途や効果が不明な奴らだった。
高そうな毛皮のコートやスルタンが着る様なゴージャスな衣装を身に付けてはいるが、首に掛けられているキラキラモールは一体、何のため…?
この3体のマネキンを見て購買意欲が湧く方がいるのだろうか。 -
更に不明だったのが、このマネキンが立っている場所。
そこはなんと銀行の二階の窓枠。
何のためにこの三体のマネキンはこんなところに…居るのだろうか。
全くもって、不思議がいっぱいだ。 -
時刻は夕食時間帯なので、トラム通り沿いのレストランは大賑わい。
こちらのお店はトルコ式のお食事処。
女性たちがギョズレメと呼ばれるチーズ入りのクレープを焼いていた。
私達も夕食をとも思ったのだが、夕食の前にどうしても行っておきたい場所があったので、まずはそちらを優先する。 -
母と私が夕方のこの時間帯に立ち寄りたかった場所。
それは、スルタン・アフメット広場。
スルタン・アフメット広場はアヤソフィアとブルーモスクの間の広場で、イスタンブールの見所の二つを同時に見ることの出来る場所だ。
夜、ブルーモスクとアヤソフィアはライトアップされる。
出来ればその光景を、薄暮の時間帯から眺めてみたかったのだ。
でも、この日の天気予報は夕方から雨。
ボスポラス海峡クルーズの間はなんとか天気は持ってくれたが、空はゆっくりと厚い雲に覆われ始めている。
雨が降り出すのが先か、ライトアップが先か…。
という訳で、雨が降らなければライトアップを見たいという事で、スルタン・アフメット広場に到着した。アヤソフィア 寺院・教会
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アヤソフィアの煉瓦色の壁は、ライトアップにより更に赤味を増している。
そして、日中の明るい光の中ではただの尖塔にしか見えなかった鉛筆型のミナレット。
その塔の先端部分の装飾には光の影が刻まれ、暮れて行く空に浮かびあがる。 -
昼間に見た時には、煉瓦色の色合いとその角ばった外観からゴツイ印象を持ったアヤソフィアだったが、夜にライトアップしたその色合いはどちらかというと艶めいた感じだ。
イスタンブール歴史地区 旧市街・古い町並み
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スルタン・アフメット広場から反対側の景色を眺める。
反対側にあるモノはブルーモスク。
昼間は白く輝いていたその壁は、黄金色にライトアップされていた。 -
イチオシ
観光客で大混雑のスルタン・アフメット広場なのだが、ふとした拍子に人がいなくなる瞬間があり、そんな時を狙って写真を撮る。
スルタン アフメト モスク 寺院・教会
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街灯の模様が昼間に見たトプカプ宮殿のハーレムの牢獄;鳥籠の残像を呼び起こし、なんとなく狂おしい様な気持ちになってしまう。
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夜のブルーモスクのライトアップにはもう一か所、忘れてはならない場所がある。
それは噴水の広場。
昼間は鳩たちの水浴び場と化している噴水だが、夜は噴水がライトアップされ、その噴水越しに見るブルーモスクの光景も夜の観光ポイントの一つだ。
噴水の色は青・緑・黄・赤・水色…と目まぐるしく変わる。 -
夜のイスタンブールというと治安が心配な方も多いだろうが、スルタン・アフメット広場に関しては20時過ぎ程度では、観光客で溢れていて、人が少なくて…と云う面では心配は必要ない状況だった。
却って心配なのはスリかもしれない。
ライトアップの景色に見とれて、貴重品の管理がおろそかに…となるのには注意が必要だ。 -
噴水のライトアップには様々な色があったが、黄金色にライトアップされるブルーモスクと相性が良いのは青のライトだと思う。
この噴水とブルーモスクの饗宴をゆっくりと見ていたかったのだが、そうもいかない事情が生じてきた。
その事情とはこの写真からも分かるのだが、風が出てきたのだ。
私達がライトアップを見ている間にも空の雲の様子はどんどん厚くなり、遠くでは雷鳴が聞こえていた。
そして、風が出てきた…となれば、嵐は近い。
スルタン・アフメット広場からホテルまでは歩いて10分位。
だから、嵐の来る前にはホテルに着くだろう…と思っていたのだが、ホテルに向かって歩いている内にも風は強くなり、街路樹がワサワサと揺れ、頭の上にはパタパタと音を立てて木の葉が落ちてきた。
空気の中にも雨の匂いが混ざり始め、歩き出して5分もしない内にポツポツと地面に斑点が出来始めた。スルタン アフメット パーク 広場・公園
-
予想外の天気の動きの早さに驚きつつも足早に歩いたのだが、地面はあっという間に色が変わり、雨は少しずつ強くなり、もはやここまで…と近くにあったバーガーキングへと飛び込んだ。
そして、店舗に入った1分後、バケツをひっくり返したような豪雨と稲妻の光が町全体を襲った。
かろうじてセーフ。
この時点で、この日の夕食はバーガーキングでの豪華ディナーに決定した。
野菜を食べたかった私達はハンバーガーのセットと特大サラダをお願いする。
外資系のファストフードはトルコの食堂価格から見たら少し高めだと思う。
高いと言っても、ハンバーガー、ポテト(M)、コーヒー、特大サラダをそれぞれ二人分で23トルコリラ(約1150円)程度だが…。 -
翌朝、朝の目覚ましは雨の音。
かなり本降りの雨がホテルの窓を叩く。
この日は金角湾の奥の地域、テオドシウス城壁からエミノニュ港までの古い街散歩を計画していたのだが、この雨足の強さでは歩けば横殴りの雨で全身ビショビショになってしまいそうだ。
古い街散歩は難しいかもしれない。
ホテルの朝食レストランの窓から見えるアヤソフィアも、霞の中に浮かんでいる。
残念な景色かって?
そんなことは無い。
イスタンブールの街自体が霞の中に沈み、幻想的な感じだ。バーキン ホテル ホテル
-
この日は深夜の飛行機で日本へと帰国する日で、イスタンブールで過ごせる最後の1日だ。
まずはホテルのチェックアウトをして、フロントで夕方までの荷物預かりをお願いする。
天気予報によると、この日は1日中雨が降り続く予報。
だから、本日最初の訪問場所は雨に濡れない処から…ということで、メドゥーサが眠る地下宮殿へと向かう。
地下宮殿はどの時間帯でも激混みという話だったので、開館30分前の8時半過ぎにホテルを出発した。
ホテルから地下宮殿までは徒歩5分と近いのだが、雨足が強く、たった5分歩くだけでズボンはビショビショ。
雨を想定してゴアテックス製のジャケットは持参していたのだが、まさかオーバーパンツまで必要となる状況に陥るとは…。
地下宮殿の前には8:40頃に着いたのだが、ここも世界中の旅行者から人気の場所で、イスタンブール市内ツアーのバッジをつけた人たちが既に列を作って並んでいた。
いったい、ツアーの方たちは何時から並んでいるのだろう。
地下宮殿の前にあったのは、トルコ式建築の黄色い家。
開館時間までの待ち時間に、黄色い家を観察する。
よく見ると、黄色い家の玄関部分には赤と白の縞々模様の進入禁止のテープが幾重にも張られている。
もしかして、殺人事件があった家とかなのだろうか…。 -
目を凝らして、更に家の細部を観察する。
遠目には普通の家に見えたのだが、よく見ると外壁の黄色の塗装がはがれ、かなりボロボロな状態。
老朽化が激しく危険だから、立ち入り禁止なのかもしれない。
そして、家の前の青と白の看板に書かれている文字は、なんとPOLIS !!!
もしかしてこの黄色い家は、老朽化した警察署なのだろうか。 -
9時、地下宮殿の開館時間だ。
ツアーの人達はあらかじめチケットを持っているので、なだれ込むように入っていく。
でも、母と私だって負けてはいない。
個人客としては1番目のチケットを入手し、地下へと向かう階段を下りる。
地下への階段の途中から見た光景がこの写真。
地下宮殿という名前からもっと薄暗い場所をイメージしていたのだが、思いの外明るいかも。 -
地下部分に降り立ち、地下宮殿を一望する。
水の中からまっすぐに伸びるコリント様式の柱の足元にはライトが設置され、空間全体を明るく照らし出していた。
地下宮殿の天井部分には柱が作る半円形アーチが連なり、その半円形のリフレインが水面へと映る。 -
イチオシ
地下宮殿はそんなに広くなく、サラッと見てしまったら5分もかからないのではないかと思われる広さだ。
その広さの中に336本もの様々な形の柱が並んでいる。
大理石の柱、普通の石の柱、そして不思議な文様が彫り込まれた柱…。
それらの柱が等間隔で並び、天井部分には天井の重さを分散するために半円形のアーチ構造。
ローマ時代に開発された力を分散する働きのある半円アーチ構造は、現在に至るまでトルコの建物のいたるところで使われている(ローマ水道橋や、カッパドキアのローマ遺跡でも半円アーチ構造が利用されていた)。
この美しい列柱が並ぶ地下宮殿の光景をゆっくりと見学したかったのだが、ちょっとそれは脇に置いておいて…。 -
イチオシ
母と私が地下宮殿の最初の場所として行きたかったところ;メドゥーサの元へと急ぐ。
床は天井から滴り落ちてくる水分で滑りやすく、走るのは危険。
ましてや、母なんて転んだら骨折しかねない年齢だ。
だから、急ぎながらも慎重に木製の床を歩く。
そして、団体様が到着する前にメドゥーサの元へと到着し、会いたかった少女と対面する。
メドゥーサの貌は少女の時のまま。
頬がふっくらとした愛らしい姿で彫刻されている。
メドゥーサの正面に廻り、その逆さまの貌と対峙した。 -
その昔、小学生の頃に初めてギリシア神話を読んだとき、私にとってメドゥーサは“悪”そのものだった。
見る者すべてを石に変えてしまう怖い女;それがメドゥーサだった。
しかし、大人になりギリシア神話を少しだけ詳しく紐解いてみたところ、メドゥーサは悪ではなく、我儘で傲慢だったのは神の側だったと分かり、衝撃を受けた。 -
幼いころから美しい少女だったメドゥーサ。
美しい女性へと成長したメドゥーサの事は人々の噂となり、天上界の神であったポセイドンの元へもその噂は伝わっていった。
そして、ポセイドンはメドゥーサを一目見るなり恋におち白馬へと姿を変え、草原で遊ぶメドゥーサをその背に乗せて飛び去った。
かくしてメドゥーサはポセイドンの寵愛を受ける事となったのだが、ポセイドンが選んだその場所が悪かった。
事も有ろうにポセイドンがその場所として選んだのは、アテネ神殿。
実はポセイドンは妻子持ちのお父さん。
倫理観念が人間界とは異なる神々の世界なので、ポセイドンは自分が妻子持ちであることなんて気にもしていなかったのだが、彼の奥さんは嫉妬深いアムピトリーテー。
そして、ポセイドンがメドゥーサを連れ帰った場所は、ポセイドンの娘アテネの神殿だったのだ。 -
年頃の娘であったアテネにとって、自分の神殿がそんなことに利用されたなんて、まして父の相手が自分よりも美しいと評判のメドゥーサだとは神の威信にかけても絶対に許せないこと。
アテネは怒り狂い、メドゥーサを蛇の髪を持つ魔物へと変えてしまった。
その後、ポセイドンは…自分のやらかしたことを反省したかというと、そんなことはなく、魔物と化してしまったメドゥーサの事は忘れたかのように神のお仕事にいそしんでいたらしい。
地下宮殿の水の中に横向きに置かれた2個目のメドゥーサの彫像。
その目の端が涙で濡れている様に見えるのは、私の目の錯覚だろうか。 -
昔は王宮や宮殿用の水の貯蔵施設であった地下宮殿は、現在は水の貯水施設としての役割を終え、地下宮殿と云う名の観光用の施設となっている。
水の中には魚の姿。
暗闇の地下に棲む魚だから、深海魚のように目がないかも…なんて妙な期待をしていたのだが、普通の魚(でも、日本の川にはいないような感じの魚)だった。 -
地下宮殿の天井に目を向けると、天井部分の装飾はアカンサス柱頭。
アカンサス柱頭は、地下宮殿の建築当時;6世紀に流行した柱の支えの模様であり、どこかの建築現場で使われていたその残りを地下宮殿の天井に流用したらしいという事。
天井や壁には耐火煉瓦が使われ、壁部分ではその煉瓦の厚さは4mもあるというのだから、当時の技術には驚いてしまう。 -
地下宮殿の336本の列柱の中で、1本だけ様子の異なる緑色の柱がある。
この柱は蛇の柱、涙の柱とも呼ばれ、目の玉や火の玉を思い起こさせるような模様が彫刻されている。
天界へと登る魂を表している…と云われても納得してしまうような模様だ。 -
そして、この蛇の柱には願掛けスポットなるものがある。
柱の一か所に窪みがあり、そこに親指を入れ、指を離さずに360度の円をぐるりと描けたら、願いが成就するらしい。
母も願掛けにチャレンジ!
アヤソフィアにも同様の願掛けスポット〈湿った支柱〉があるが、そこよりは簡単に指がクルリと廻る。 -
地下宮中の敷地自体はそれほど広くはないが、天井が高く(水を貯めるために作られた場所なので、深さがあるのは当たり前だが)、その空間の広さは78,000立方メートルの水を十分に貯めることの出来る広さだ。
つまり、地下宮殿の空間は、25mプールが120個入る位の広さある…という事だ。
その空間の中に並ぶ336本もの柱の列柱。
オレンジ色の光の中に浮かびあがる列柱の姿は、見る者を魅了する。 -
列柱の中には、裾がスカートのように膨らんだ形の柱もある。
面白い形だと思ったが、上部の天井との接続部分を見ると、コリント様式の柱とは様相が異なり、かなり近代に手直しされた部分という感じだ。
5世紀から近代にまでの建築様式がごちゃ混ぜになった宮殿だ。 -
立ち並ぶ列柱の光景がいちばん幻想的に見えたのは、貯水槽の中央部に渡された木道から眺めた光景。
-
コリント様式の柱が闇の中に浮かびあがり、黄金色に輝く光景を作り上げていた。
イスタンブル地下宮殿 城・宮殿
-
タップリと1時間弱を地下宮殿の閉ざされた空間の中で過ごし、その雰囲気を満喫した母と私は、最後にもう一度、神の怒りに触れた少女、メドゥーサに会いに行く。
軽く口を開き、歯を見せて微笑む少女の姿。
少女らしいふっくらしたとしたその顔とは対照的に、その髪の毛には蛇がまとわりつき、鎌首をもたげ、少女に会いにくる者を威嚇している。
横たわるメドゥーサが見ているものは何なのか。
メドゥーサの微笑は何を意味しているのか。
微笑とも見える彼女の笑みは、自分の運命を呪う嘲笑なのか。
在りし日の自由であった少女の日々を懐かしむ笑みなのか。
地球に巣喰う人類という種族の行く末を見極め、その愚かさを笑っているのか。
それとも、ロバート・ラングドン教授の運命を、人類のDNAが辿る運命を笑っているのか…。
想像は尽きない。 -
イチオシ
最後に、一番のお気に入りの場所から、地下宮殿を振り返る。
此処に来るまでは、地下宮殿は所詮、観光地として作られた場所、紀元前に彫刻されたメドゥーサに会えれば良いとだけ思っていたのだが、地下宮殿自体も荘厳で見ごたえがあり、此処に来て、この不思議な幻想的な光景に出会えて、本当に良かった。
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〜夜空を見上げて〜
8月の深夜、田舎に帰省した私は何の気なしに無数の星が瞬く夜空を見上げた。
空気が澄み、宇宙の深淵の色を映し出す夜空には、煌めく星がギリシア神話に登場するヒトや獣の姿を描きだしていた。
その中には、秋の星座であるペルセウスの姿もあった…。
夜空に浮かぶメドゥーサの首を手にする勇者ペルセウスとメドゥーサの首から噴き出る血から生まれ出たと云われるペガサスの姿…。
昔ならば、そんな夜空を見つけたら、秋の星座が見えてきた!と地面に座り込み、星の動きを観察しただろう。
でも、この時の私が考えたのは別のこと。
イスタンブールの地下宮殿で眠る少女メドゥーサの事を思い出した。
星の見えない闇夜の地下。
メドゥーサはその闇の中で眠りにつく。
地下宮殿に居る限り、彼女は、空に浮かぶ神々の姿を、自分を殺した殺人者の姿を見ることはない。
東ローマ帝国の皇帝は、女神アテネの逆鱗に触れ、醜い魔物へとその姿を帰られたメドゥーサの運命を哀れみ、彼女がこの先、夜空を見上げなくても済むように、その首を星の見えない、神話時代の神々の姿を見ることもない地下の貯水槽に沈めたのかもしれない…。
少しだけ、そんな風にも思えてきた。
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この旅行記へのコメント (6)
-
- きなこさん 2015/09/08 10:17:15
- メドゥーサ
- こんにちは〜
いやぁ〜今回も凄く勉強になりました
小さい頃にギリシア神話を読んで貰った時 怖くて一人でトイレに行けなかった事を思い出しましたよ
蛇も大の苦手で、まして見るもの全て石に変えちゃうなんて「なんて酷い!」って思っていましたが、この様なお話があったんですね
私も思います地下宮殿はメドゥーサの安楽の地になったんでしょうね
光の加減か角度か、ちょうど目じりにキラッと水がひかり涙の様に見えます
私にもその様に見えるのでしょうか・・・地下宮殿に行ってメドゥーサ見て来ますね、楽しみです
個人旅行ならでわですね、アヤソフィアやブルーモスクが時間・気象条件で素晴らしい色の変化を見させて頂きました
きなこ
- ウェンディさん からの返信 2015/09/08 21:56:44
- RE: メドゥーサ
- きなこさん こんばんは。
メドゥーサのお話は、髪の毛が蛇の化け物の女で、その顔を一目見た者は石と化す…という話が一番有名で、どうして彼女がそんな姿になったかについてはあまり詳しく書いてある子供向けのお話は少ないのでしょうね。
書いてあっても、メドゥーサが自分が美人であることを奢ってしまった為、罰が当たって化け物になってしまった…の様な書きぶりが多いのではないかと思います。
一度、メドゥーサ=蛇女とインプットされてしまうとその印象はなかなか抜けませんが、イスタンブールの地下宮殿で、まだ幼さを残すメドゥーサの顔を見れば、きっときなこさんも自分の持っているイメージとはその表情が異なることに気が付くと思います。
写真で見るよりも、実物はもっと幼い顔をしていますよ。
それゆえに、髪の毛の中から顔を出す蛇の様子が不気味に感じられました。
旅までもう少しだと思いますが、地下宮殿が舞台となっているダン・ブラウンの小説インフェルノは読みましたか。
メイン舞台はイタリアですが、イスタンブールの地下宮殿も重要なポジションで登場します。勿論、彼女も…。(あまり書くとネタバレになってしまうので此処までに…)
来年公開の映画に向けて地下宮殿では撮影も行われているとのこと。
本を読んでから行くと、イスタンブールの1日が、より楽しめるかもしれません。
ウェンディ
-
- aoitomoさん 2015/09/07 12:41:27
- 地下宮殿もフォトジェニック!
- ウェンディさん
『ボスポラス海峡クルーズ』
ボスポラス海峡クルーズの声かけは多いですね〜
大概クルーズ船が小さくて、乗る場所がエミノニュ桟橋から離れているぐらいで、それ程心配は少ないかも知れません。
ワゴン車で移動してくれるのもむしろ助かります。
道が混みだすと船の場所まで歩かされる場合があるのが注意ですが。
船が小ささや、案内が無いのに気にならなければこちらの方が楽しいですね〜
『地下宮殿』
雨の日にはもってこいの観光スポットです。
朝イチも正解ですね。
恐らく雨だと、観光客もなおさらブルーモスクかアやソフィアか地下宮殿などで雨宿り観光を考えるでしょうし。
私も、こんなところに地下貯水池である地下宮殿があるのには驚きました。
また、雰囲気も景観もいいですからね〜
ウェンディさんのメドゥーサの解説にはあっぱれです。
aoitomo
- ウェンディさん からの返信 2015/09/08 21:09:03
- RE: 地下宮殿もフォトジェニック!
- aoitomoさん こんばんは。
aoitomoさんのトルコ旅行記を今日、もう一度拝見しました。
何回も(多分10回以上)拝見していますが、とてもよくできた旅行記ですよね。
見ているだけで、旅に出たくなってしまいます。
旅行記を拝見して気が付いたこと。
地下宮殿の入場料は1年間で倍に値上がりしていました。
1年前のaoitomoさんの旅行時は10TLですが、その1年後の今年の春には、なんと20TL。
トルコの物価上昇率は凄いですね。
ボスポラス海峡クルーズは、始まりはちょっとドキドキでしたが、イランからいらしているご家族と楽しく過ごせたりして、考えていた以上に楽しい船旅となりました。
地下宮殿はもっと観光地チックな雰囲気を想像していましたが、荘厳な空気が広がる場所で行って良かった場所でした。
イスタンブールは都市部でありながら、色々楽しめる場所ですね。
-
- ひろさん 2015/09/07 12:16:24
- ギリシア神話をきちんと読んでみたくなりました
- ウェンディさん こんにちは
メドウーサについて、大変勉強になりました!
そして自分がギリシア神話に疎いことを改めて思い知らされました〜
メドウーサは説として、幾つかあるみたいですね。
ウェンディさんが書かれている説と、メドウーサ自体が傲慢になって、アテナよりも美しいと公言してしまい姿を変えられる説。
きっと私が小さい時に読んだのは、後者の説だったかもと思っていますが、これを機に一度きちんと書かれているものを探して、読んでみようと思いました。
それにしても観光船の話、ドキドキしながら読みましたが、オチを読んで、ほっとした部分と書き手の技術の高さに改めて脱帽しました
ひろ
- ウェンディさん からの返信 2015/09/08 20:16:01
- RE: ギリシア神話をきちんと読んでみたくなりました
- ひろさん こんばんは。
私も子供の頃に読んだギリシア神話は、メデューサは自分の美しさを自慢し、挙句の果てに天の女神よりも美しい!などと言ったものだから、化け物にされてしまった…というお話でした。
ギリシア神話のお話には様々なパターンがあるようですが、お子様向けには“自慢ばっかりしていると痛い目に遭うぞ!”という寓話的な話が良いのでしょうね。
まさか、子供向けの本に“神様は実は好色で夫婦の縁を超えた愛の交換が当たり前だった…”なんて書けないですものね。
という事で、私自身のメドゥーサのイメージは、おっかない蛇女が最初でした。
大人になりギリシア神話の少し詳しい本を読み、ゴルゴン家の3姉妹の悲劇(メドゥーサが化け物にされたことを抗議した二人の姉までもが、アテネ女神により化け物に変えられてしまう)を知り、また、神様の好き勝手し放題の状況を理解し、なんてこった!!!となりました。
まあ、グリム童話同様、子供向けのお話はオブラートに包まれていたのでしょうね。
大人向けに包み隠さずそのまま書かれた神話や童話は、なかなか面白いですよ♪
ウェンディ
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