2014/12/07 - 2014/12/07
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ウェンディさん
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今年の冬の2月、海が見たくなった私は横浜へとやって来た。
港の中を冷たい風が吹き抜けていたあの日、私は此処・横浜にいた。
そして、心のかけらを一つ港に置いて帰路に着いた。
今回の横浜への旅は、置いてきた心のかけらを探し出す旅。
同行する友人にも、そのことは話してある。
怖がり屋の彼女が嫌がることも考えていたのだが、彼女はしぶしぶながらも了解してくれた。
私が心のかけらを残してきた場所。
そこは港の片隅にある海上保安庁の小さな施設。
そこに私の心のかけらは転がっていた。
10か月の歳月を経たかけらは多少、角が取れてはいたが、拾い上げるとパズルの最後の1ピースであるかのようにピタリと私に収まった。
そして、彼女は10か月間に見聞きしたことを私に教えてくれた。
それは、いままノホホンと生きてきた私には想像もつかないような世界の話。
でも、それは実際に起こった出来事…。
幼い頃にオトナが話していた難しい話。
その話が現実に起きている出来事として目の前に現れた瞬間だった。
☆★☆★☆★☆★☆★ 横浜 旅行記☆★☆★☆★☆★☆★
Code Nameは“Queen:天蟲”: http://4travel.jp/travelogue/10960418
マリア様のオトナな魅力にノックダウン : http://4travel.jp/travelogue/10959785
海 -記憶・偶然という必然・再会-: http://4travel.jp/travelogue/10861614
ベーカー街の聖夜 & X’masアフタヌーン・ティ:http://4travel.jp/travelogue/11195758
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- グルメ
- 4.5
- 同行者
- 友人
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- JRローカル 私鉄 徒歩
PR
-
港の夜が明ける。
私がみなとみらい駅に降り立ったのは、ちょうど日の出の時刻。
水平線のすぐ真上に太陽が顔を覗かせ、朝の訪れを教えてくれた。
私が今朝家を出たのは、まだ真夜中に近い朝の4時半。
いつもの通勤経路と同じ道を通り、駅へと向かう。
駅までの道すがらにちょっとした飲み屋街があるのだが、早朝の歓楽街は夜の其処とは異世界な雰囲気。
煌びやかな洋服を纏いながらも気怠そうに煙草を燻らす方たち…。
始発で家へと帰るお客様のお見送りをする方たち…。
そんな中を、明らかに場違いな格好した私が足早に通り過ぎる。
どうやら、早朝に通るべき道の選択肢を間違ったようだ。 -
今回、横浜に日の出の時刻というこんなに早い時間に出向いたのには目的がある。
その目的とは、朝日を浴びる赤レンガの倉庫をじっくりと見て、対岸に見える風車がより近く感じられる大桟橋へと行く事。
この日は友人と横浜を巡る約束があり、待ち合わせの時間は9時10分。
それまでに私のミッションを完了しなければならない。
早速、赤レンガ倉庫へと向かう。
朝陽がほぼ真横から当たっているので、壁面の凹凸もくっきりと分かる。
赤レンガ倉庫が現在のようなオシャレな場所となってから私がここへ来るのは2回目だが、訪れているのはいつもお店が営業していない時間帯。
だから、ヒトも少ない。
ゆっくりと壁面の煉瓦を観察する。
2号館正面のファザードの切妻屋根。
ここに気になる模様がある。
まずは観察するために近くへ。横浜赤レンガ倉庫 名所・史跡
-
気になっていたのは、切妻屋根の下にある階段状の煉瓦。
多分、装飾の意味で作られたのだとは思うが、なんだか気になる模様だ。
誰か、この模様の意味を知らないかな…。 -
そして、もう一つ。
赤レンガ倉庫には煉瓦の積み方が一か所だけ違うところがあるという。
赤レンガ倉庫のほとんどの煉瓦は〈オランダ積み:写真左〉と云われるよく見かける積み方だが、1号館の港と反対側の煉瓦の積み方のみ〈ドイツ積み:写真右〉になっているそうだ。
そんな事実があると知ったからには確認しなくては…。
実際に1号館の背面と他の面を比べてみると、確かに煉瓦の組み方が異なる。
オランダ積みは壁面の1段ごとの煉瓦が長短の2層式。小口積みと長手積みを交互に段を違えて積む積み方だ。
ドイツ積みは壁面の煉瓦のサイズは同じサイズ。つまり、壁の化粧面に小口面が出る様に積む積み方だ。
ガイドブックにはまずない情報だが、興味がある方は、是非見に行ってみて♪ -
赤レンガ倉庫の壁には昔使われていた鉄製の錆びたパイプがそのまま残っている。
パイプは床の煉瓦面から突き出して天井付近に達し、そのまま横へ…。
排気管かな?とも思ったのだが…。 -
パイプの先端は、ぷっつりと途切れていた。
どうやらこのパイプは雰囲気を出すために昔の施設時代のモノをそのまま残していた物らしい。 -
赤レンガ倉庫の1号館と2号館の間にはこの時期だけの特設会場がある。
それは、クリスマスマーケット。
勿論、お店はまだ開いていないが、ちょっとその雰囲気を味わいに潜入してみる。
東方の三賢者がキリストの生誕をお祝いする様子や、サンタさん、子供たちが遊ぶ様子…と様々な飾りが飾られているが…若干こども騙しのレベルかも。
心の中のもう一人の私が呟いた。
〈えっ…クリスマスマーケットってこれだけ?? 何とか村レベルの催し物と同レベルなんじゃない…?〉
夕方に見るクリスマスマーケットを期待していたのだが…。
あまり、過度な期待はしないことにする。 -
イチオシ
朝の赤レンガ倉庫を満喫した私が次に向かったのは、横浜の王の座す地。
横浜の王…それは神奈川県の県庁で、通称KINGと呼ばれている。
この建物がKINGと呼ばれる理由には諸説あるらしいが、一説では昭和初期に外国船の乗組員が愛称として呼び始めたのが最初と云われている。
横浜の港町には横浜三塔と云われる3つの塔(KING、QUEEN、JACK)があり、神奈川県庁を正面から眺めると右手に女王の塔、左手に騎士の塔を従えている様に見えることから王と呼ばれたらしい。
横浜三塔は度重なる戦火を潜り抜け、海からやって来る船乗りたちはその優美な姿を目印にして港へと入ってきた。
そんな三塔の一つである神奈川県庁を眺める。
重厚な姿がカッコよく、中に入ってみたい!と強く願うが、あいにくこの日は日曜日。
県庁はお休みの日だ。
時間もまだ8時前なので、どちらにしても入れる時間ではない。
神奈川県庁は月に1回、本庁舎の歴史展示室と屋上展望台の公開日を日曜日に設けている。
次回来るならば、そんな日を選び、中を歩いてみたい。神奈川県庁本庁舎 名所・史跡
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象の鼻パークに向けて歩き出す。
歩きながら後ろを振り返ると、QUEENの優雅な尖塔が見えた。
横浜の女王と呼ばれるこのドーム型の尖塔がある建物は、横浜税関。
イスラムの様式を取り入れた異国風の緑のドームが優美だ。
この横浜税関には、午後に友人と訪れているので、どんなところなのかは旅行記の後半で紹介!横浜税関本関庁舎 名所・史跡
-
象の鼻パークは、横浜港の中の小さな入り江。
防波堤が象の鼻のようなクルンとした曲線を描くところから、その名がついた地区だ。
こんなかわいい名前のついている場所だが、実は此処のエリアが横浜港の発祥の場所。
横浜港が港として始動した場所だ。
現在ある横浜港は、この象の鼻パークを中心にして発達していった。
象の鼻パークから見る赤レンガ倉庫。
太陽の位置も高くなり、煉瓦の色合いが先ほどまでとは異なる。象の鼻パーク 公園・植物園
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象の鼻パークから見える横浜のKING(神奈川県庁)。
やっぱり格好いい。 -
大桟橋へと向かう。
大桟橋は横浜港の国際客船ターミナルだが、その建物の上はウッドデッキになっていて、横浜港の中央付近まで歩いて行ける。
ウッドデッキの上は緩い曲線を描いていて、その形から【鯨の背中】との別名もある。
朝のランニングをする人やお散歩をする人…。
様々な人がここにいるが、みんな太陽の光を浴びて気持ちよさそう。横浜港大さん橋国際客船ターミナル 名所・史跡
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大桟橋の上から見る赤レンガ倉庫。
背景の高層ビルが妙にマッチしている。 -
イチオシ
鯨の背中の先端まで歩くと、海の向こう側には工業地帯が良く見える。
その工業地帯には1本の風車。
2月に横浜へ来たときに、気になっていた風車にまた会うことが出来た。 -
後ろを降り返ると、そこには横浜.三塔の姿が。
左にKING、右にQUEEN、そしてKINGの右後ろに小さく見えるのがJACKだ。 -
イチオシ
鯨の背中には、三脚を立てたカメラマンの方が一人いて、赤レンガ倉庫の方を眺めていた。
何が見えるのだろう…と思い近づいた瞬間、私の目があるモノを捉えた。
日本人であるならばまず知らないコトがないであろう山…富士山。
赤レンガ倉庫の後ろにいるのは白い雪を戴く富士山。
日本一高い山だ。
思わず、カメラマンのオジサマに「あれって富士山ですよね」と確認してしまう程、びっくりしてしまった。
天気が良い日は横浜からでも富士山が見えることは知っていたが、まさかこんなに大きく見えるなんて! -
カメラマンの方によると、これから冬に向かって富士山が見える日が増えてくるが、この日のようにクリアに見える日はなかなかない。朝が冷え込んだ日が狙い目とのことだった。
確かに今朝は、息が白くなり指先がピリピリするほど寒い朝だったが…。
その寒さが素敵なプレゼントを贈ってくれた。 -
折角の富士山の風景、ちょっと遊んでコンデジのミニチュア・モードで。
-
大桟橋の鯨の背中の突き当りにはフェンスがあり、此処には不思議な金属製のモノはぶら下がっている。
ぶら下がっているのは南京錠。
ここは、ハートロックスポットという現代版願掛けスポット。
大桟橋の売店で販売している南京錠を買い(ここが商売上手!)、南京錠に願いと名前を書いて(恋人の場合は二人の名前)を書いて、大桟橋のフェンスにロック。
南京錠にはハートがデザインされているので、願いを書いた方のハートは、きっちりロックされる…ということらしい。 -
時刻は8:30。
友人とは石川町駅で9:10に待ち合わせをしているので、そろそろ歩き出さなければならない。
時間があればどこかのカフェで朝食を…なんて考えていたが、そんな時間は全く無し!
大きな客船の屋根に乗るサンタさんを眺めながら、大桟橋を下る。 -
イチオシ
通りを歩いていて、古い洋館の壁に絡む蔦を見つけた。
時間が押しているのは分かっているが、思わず立ち止まる。 -
この建物は横浜開港資料館。
英国総領事館だった建物を利用し歴史資料展示室としている。
時間があれば立ち寄ってみたい場所だが、今日は外観だけ。
中は次回のお楽しみ。横浜開港資料館 美術館・博物館
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銀杏が紅葉した並木道をかなりの速歩で歩く。
手にはカメラとどら焼き。
私のことだ・・。彼方此方をフラフラ歩くうちに朝食を食べてないことも忘れてしまうのではないかと危惧し、昨晩の内に鞄にどら焼きを1個、放り込んでおいた。
少々お行儀が悪いが、食べながら歩く。 -
息を切らした私と友人は無事に石川町駅で合流し、二人の最初の目的地である山手西洋館【世界のクリスマス2014】へと向かう。
山手の丘の上からは富士山が見えたが、先程よりも若干、靄っているかな。 -
今年の横浜山手西洋館のクリスマスのテーマは【クリスマス、その語り継がれる憧憬】
山手西洋館のクリスマス・コーディネートの様子は↓の旅行記で詳細をどうぞ♪
情熱の赤♪マリア様のオトナな魅力にノックダウン:http://4travel.jp/travelogue/10959785
マリア様の妖艶な赤に心奪われるかも♪
ここでは、各館の概要のみを紹介。
マレー・プラナカンの様式を取り入れたブラフ18番館。
N.Y.の女性をイメージした外交官の家。外交官の家 名所・史跡
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プレセピオがあるエリスマン邸。
情熱の赤のマリア様が誘うベーリック・ホール。
借景が美しい山手234番館。ベーリック・ホール 名所・史跡
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イギリスの田舎をモチーフとした横浜市イギリス館。
和のクリスマスを演出した山手111番館。横浜市イギリス館(旧英国総領事公邸) 名所・史跡
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西洋館めぐりに費やした時間は2時間半。
朝食がどら焼き1個だった私はもうお腹ペコペコ。
朱雀門をくぐって中華街へ。
少しだけ中華街を歩いたが、もう血糖値は急降下中。
何か食べなくっちゃ。
友人と私が食堂を選ぶ基準の優先順位は、観光客が並んでいなくてお値段も庶民的なところ。
歩きながら目星をつけ、結局、熊猫(パンダ)飯店に決めた。
熊猫飯店への決め手は北京ダック。
ランチのコースの中に北京ダックが入っていた。熊猫飯店 グルメ・レストラン
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単品料理、ランチコースの何種類かがあり、私たちが選んだのは9品目のランチ・コース。
中華サラダ、フカヒレ(多分)スープ、春巻き、餃子の点心、エビチリ、北京ダッグ、青椒肉絲、焼飯、杏仁豆腐。
更にぐるナビクーポン利用で食後のコーヒー付で1980円(税抜)。
女性二人ならば、かなりお腹がいっぱいになる量で二人とも大満足。
訪れた日が日曜日ということもあり、二階席は地元の方の予約で埋まっていたようだったが、一階席はそれほど混みあうこともなくゆっくりと食事ができた。
味もお値段以上に美味しいと思う。 -
ゆっくりと食事をした後は、また街歩きの開始。
午後の街歩きの目的地は午前中に遠目でみたレトロな横浜三塔の内の二塔;横浜税関(QUEEN)と横浜市開港記念会館(JACK)だ。
まずは、女王陛下である横浜税関にご挨拶。
横浜税関のシンボルは、ロマネスク様式の白亜の塔の上に輝く異国情緒あふれる尖塔。
まるでイスラムのモスクの様だ。 -
建物入口の柱の装飾やガス灯が素敵なのだが、わんちゃんのマスコットとのミスマッチ感が…。
でもこのワンちゃんは、横浜税関にとって重要なスタッフの一員。
この子は麻薬探知犬だ。 -
中に入ると横浜税関に関する展示が多くあるのだが、興味を引いたのがこちら。
これは、外国の有名な缶ビール。
でも、外国から持ち込まれたこのビールはただのビールでは無い。
この中にあるモノが隠され日本へと持ち込まれた。 -
持ち込まれたのは麻薬。
ビール缶を2缶用いて工作されたこのビール缶の中には、常用性のある麻薬が詰め込まれていた。
その他、様々な手口の密輸の手段が展示されている。
なかなか、面白い…。何かに応用できそうだ。
館内には、貿易に使われた昔の日本のお札や軍票の展示もある。
展示場所には解説のボランティアの方がいるのだが、その方によると、この建物は第二次世界大戦後、ある重要な場所であったという事。
第二次世界大戦で敗戦国となった日本に占領軍のトップとしてやって来たのはマッカーサーさん。
厚木基地に降り立った彼がまず最初に日本に置ける自分の居城として定めたのが、この女王;横浜税関の建物。
そして彼はその後、皇居傍の第一生命社長室へと移ったという話だ。 -
イチオシ
続いて訪れたのがJACKの塔こと横浜市開港記念会館。
正面から見るその風貌は日本離れをしていて、写真だけ見ているとイギリス?と勘違いしてしまいそう。横浜市開港記念会館 名所・史跡
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信号機の色もシックに塗られていて、町角全体が良い雰囲気。
-
建物の内部は全てではないが見学することが出来る。
まずは二階へ。
この段階で、階段の装飾、天井の装飾に目を奪われる。
この建物は大正7年に横浜市民の寄付で作られた建物で、関東大震災でかなりの部分が壊れてしまったものの、建築当時のスタッフが再び集合しほぼ同じ形に復元し、その姿を現在まで残している。
建物の内部は大正末期のインテリア。
そして現在、この建物は横浜市の公民館として会議室やホールとして市民に時間レンタルをしている。
こんな歴史的建造物の中で会議…なんていうのはいいよね♪ -
イチオシ
階段を上がると、ステンドグラスが日の光を浴びて輝いていた。
ステンドグラスの絵柄は純和風。
絵柄は開港当時の交通の様子を現していて、左右は呉越同舟と箱根越えの様子、そして中央の半円形の部分には鳳凰。
二羽の鳳凰の間には横浜市の市章であるハマ菱がデザインされている。 -
ステンドグラスの向こう側には、外から見えていた時計のような窓飾り。
空間をしきる壁の縁かがりの模様も素敵だ。 -
大正時代の階段も残っている。
少し時代は異なるが、モボ・モガが闊歩していた時代はこんなだったのかな…なんて思う。 -
奥には別の階段がある。
階段脇のステンドグラスが表すものはペリー来航の黒船。
県庁は未だ見学できていないので何とも言えないが、三塔の中でここが一番好きかもしれない。 -
ステンドグラスの青が美しい。
-
階段の手すりの模様も職人さんの手彫り。
横浜らしく貝のモチーフだ。 -
そして、床にはこんな素敵なモザイク模様。
皆が土足で歩く床。
其処に惜しげもなくモザイク画が描かれている。 -
ここの建物にもボランティアの解説員の方がいて、その方から興味深い話を教えてもらった。
そのお話の一つが【横浜の3女王】だ。
このJACKの塔;日本語風に置き換えれば;騎士の塔は、大正時代の市民の寄付によって建設された。その総工費は現在の金額に置き換えれば数十億円。並大抵の寄付では集めることの出来ない金額だ。
でも、それだけのお金が集まった。その理由は巨額を寄付してくれた方々が居たから。
その方々は、横浜港で外国への輸出の商売をしていて巨万の富を得ていた方々だ。
彼らにそれだけの財力を与えたもの…。
それは、白き宝石の輸出…。輸出品目は、大正・昭和初期の日本の輸出品第1位を誇るモノ。
このJACKの塔の上にはその輸出品を象徴するものがある。
それを是非見て行って欲しい…と。
その輸出品を象徴するモノを屋根の上に見つけた。 -
白き宝石…とは生糸。
蚕の幼虫が吐き出す絹糸だ。
そして、屋根上にいるこの小さな像は蚕の繭を抱くおかあさん;蚕蛾だ。
蛾…というと一般的には嫌われ者だが、養蚕関連業の方にとっては、蚕蛾こそがQUEEN;女王だ。
この蚕蛾は、JACK(騎士の塔)の上から横浜港を見据えてきた女王。
表向きには横浜港の女王は白亜の塔をもつ横浜税関だが、横浜港の真の意味での女王は、この騎士の塔の上から睨みを利かす白き翅を持つ蚕蛾なのかもしれない。 -
道路を渡り、向かい側からこのJACKの塔をもう一度眺める。
解説員さんが語った横浜市開港記念会館にまつわるトリビアは私に1枚の絵をイメージさせた。
その絵とは、騎士と白の女王。
純白の衣を纏った女王が中世の騎士の肩に手を当て、騎士に祝福を授けている…。
そんな風にも見える彼女が、横浜の2番目の女王だ。 -
解説員の方から教えてもらった情報はまだまだある。
JACKの塔(騎士の塔)から徒歩3分に場所にある横浜地裁の建物。
此処にはカタツムリがいるという。
カタツムリ…とは何のことかと思ったが、行ってみて納得。
建物の本館自体は再建築されているそうだが、このカタツムリの部分は大正(昭和初期かも…)の建築物をそのまま残しているとのこと。 -
解説員さんから聞いた情報はまだ続く。
横浜の3女王。
1番目の女王は、緑の尖塔が美しい白亜の塔の横浜税関。
2番目の女王は、騎士の塔(JACKの塔)に祝福を与える白き翅をもつ蚕蛾。
そして3番目の女王がいるのは、横浜第二合同庁舎の最上部。
横浜第二合同庁舎は、先ほどのJACKの塔からは歩いて5分強の距離にある建物(写真)だ。
この建物の以前の役割は輸出する生糸の品質などをチェックする生糸検査所。
その建物の上に、横浜の3番目の女王がいる。
白い翅を大きく広げた3番目の女王の姿が分かるだろうか。横浜第2合同庁舎[旧生糸検査所] 名所・史跡
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こちらのQUEENはリボンやお花で装飾され、JACKの塔の女王ほど写実的ではなく、蚕蛾がモデルと聞かされていなければ猛禽類をデザインした像にも見えるかも…。
横浜と云うと赤レンガ倉庫や中華街がクローズアップされがちだが、他にも興味深いところはたくさんある。 -
時刻は午後3時過ぎ。
本日の出発点、赤レンガ倉庫へと戻る。
途中の煉瓦張りの道に見つけたタイル装飾。
黒船・赤い靴・建物は何処の建物なのだろう…。 -
夕日を浴びた赤レンガ倉庫は、今朝とはまた異なる色味だ。
煉瓦は、太陽の高度によって色が全然違って見える。 -
赤レンガ倉庫ではクリスマスマーケットが開催されていて、大賑わい。
少しだけお店を覗いてみたが、ソーセージやビールといった一般的な食べ物屋さんが殆どで、東欧の街で開催されるようなクリスマスマーケット;シナモンや柑橘類たっぷりのホットワインや、手作りのクリスマスオーナメントの販売を期待していた私には、拍子抜け…。
朝に感じた感覚は正しかったようだ。
せっかく立地もよいところだし、もう少しクリスマスマーケットの規模を大きくして欧州並みに本格的な内容にすれば、年齢層の高い方たちも取り込めると思えるのだが…。 -
クリスマスマーケットで食べ物を買ったものの食べる場所の確保が出来ない方々は、カフェの前にも座り込んでいる…。
これでは、窓の内側にいるカフェのお客さんたちも港の景色を眺めながらゆっくりとティータイムという雰囲気にはなりにくいと思うのだが…。
興ざめする光景だ…。
クリスマスマーケットは私の想像とは少し違う催し物だったらしい。 -
今回の旅行記の冒頭で、【心のかけらを一つ港に置いてきた】と書いた。
旅の最後に訪れるのは、私が心のかけらを残してきた場所。 -
2月に来た時に心のかけらを残してきた場所。
それは、海上保安庁の工作船資料館。
興味があったのだが、時間外で入館することができなかった。
其処へと向かう。
(写真は朝の風景) -
幼い時の私が時を過ごした場所。
それは日本海に面した小さな田舎町。
大きな事件などほとんど起きない場所だが、時折、神隠し…のようにヒトが消えてしまうことがあった。
家族の中の誰かがある日突然、目の前から姿を消す。
事故や病気で亡くなるのとは異なる別れ。
そんな事件が起きると、周りのオトナはコドモには分からない難解な言葉でヒソヒソと話を交わしていた。
後になって分かったことは、アレは神隠しではなく北朝鮮という国家による誘拐・拉致事件だったという事。
私が7歳の時、一人のお姉さんが見知らぬ誰か捕まえられ無理やり連れて行かれた。
その海岸は、私が住んでいた場所から車で30分位の場所にある浜。
あの当時、誰が連れていかれてもおかしくない状況だったのだと思う。
まだ見つからないあの時のお姉さん。
そのお姉さんのためにもここは見ておきたい…と2月に来た時に思った。
(写真:日本の巡視艇による不審船の船首への威嚇射撃(事前通告の上、人がいない船首部分に向けて威嚇射撃が行われた)により船首に開いた銃弾跡)海上保安資料館横浜館 美術館・博物館
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平成11年12月22日。
九州南海海域で一隻の不審な船が航行しているのが発見された。
その船は、漁船に偽装した北朝鮮の工作船。
(写真;漁船に偽装した工作船の船上部分) -
工作船は巡視艇による停船命令に従わず、逃走した。
巡視艇は、逃走しようとした工作船を挟み込んで停船させようとしたが、工作船の自動小銃による攻撃で被弾し、乗船員が負傷した。
(写真;工作船の船内;船壁には威嚇射撃で壁に開いた穴をふさごうとズボン下が突っ込まれたままになっている) -
やむなく巡視船による正当防衛射撃が実施され、その後しばらくして工作船は自爆と思われる爆発を起こし沈没した。
(写真;工作船沈没後に押収されたロケットランチャーや自動小銃、手りゅう弾など) -
引き上げられた工作船の船体には船名を簡単に偽装できる仕掛け(中国漁船や日本漁船に偽装)も見られた。
(写真;巡視艇の威嚇射撃により船体を貫通した銃痕の出口) -
工作船の船体を正面から見ると、漁船にしては鋭角すぎる船首部分の造り。
高速航行に適した舟型であり、明らかに特殊任務のために作られた船であることが明白だ。
工作船展示館はそんなに広くはなく、10分もあれば見て回ることが出来るが、当時の記録映像や実際に押収された品々を見ていると、今、のほほん♪と旅を楽しんでいる自分もいつこのような事件に巻き込まれるかもしれない…という思いが脳裏をかすめる。
ここは、決してお気楽な気持ちで見て回る場所ではない。
でも、私の心が、見たい・知りたい…と思っていた場所だ。
此処に来ることができてよかった。
因みに工作船展示館の入口には許可なき撮影はできませんという内容の注意書きがある。
では、どうして私が撮影できたのか…。
その理由は私にも分からないが、入口で一眼カメラを鞄にしまっていたら、その様子を見ていた係の方に撮影OKと云われた。私も思わず「入口にダメって書いてありますが…」と聞き返したのだが、係の方の回答は「許可なくはダメですよ。今、許可しました」という返事。
多分だが、基本は撮影OKなのだろう。ただ、不可の事情がある場合も考慮して、あのような許可なき…という書き方になっているのかもしれない。 -
この日の旅はこれでおしまい。
赤レンガ倉庫に始まり、KING、象の鼻パーク、大桟橋、山手西洋館、中華街、QUEEN、JACK、そして工作船展示館。
女子力アップのために美しいものを沢山見て、美味しいものを食べ、横浜港のお母さんにも会い、そして心のかけらを回収した旅。
友人と夕焼けに染まる港を歩き、それぞれの思いに浸った。
時間も早かったので帰りの電車は日曜の帰宅ラッシュ前。
ノンビリ座りながらの帰宅。
途中、中目黒駅近くでの車内放送。
【本日の中目黒のライトアップ−青の洞窟は中止が決定いたしました】というアナウンス。
何か事件でも…と思ったのだが、真相は翌日に判明。
ライトアップ見物の人出が多すぎて警備が追い付かず、やむなく中止となったそうだ。
これからクリスマスに向けて、イルミの場所は何処も混雑するのだろう。
多分、年内の私のお出かけはこれが最終になるだろう。
今年一年、大きな事故もなく無事に旅ができたことを感謝しつつ、来年の旅に向けての準備を始動♪すべき時期が来たようだ。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- 琉球熱さん 2014/12/15 22:18:27
- 工作船
- ウェンディさん
書き込みありがとうございました。
赤レンガのイベントは期待外れでしたか。横浜は一年を通じて様々なインベントが催されていますが、なぜか横浜市自身が絡むモノの方が洗練されているような気がします。
赤レンガも今や単なるショッピングモールですから、クリスマスのイベントもその辺の商業施設の客寄せ・売上増を目的としたものと大して変わらないのでしょうね。
一昨年も飲食の屋台だけだった記憶があります。
工作船の展示館は、実物であるだけに無言の迫力がありますね。私もふらりと立ち寄った時、その迫力に圧倒されました。
非常に貴重な場所、多くの人に見てほしいものです。
(撮影禁止の“裏技”にはびっくりです(笑))
- ウェンディさん からの返信 2014/12/16 20:42:04
- RE: 工作船
- 琉球熱さん こんばんは。
ようやく海保の工作船資料館へ行くことが出来ました。
今回の横浜で一番、行きたかったのが此処でした。
興味…という軽い言葉では語れない展示内容でしたが、せっかく撮影の許可もいただけたので、まだ足を運んだことのない方にも興味を持ってほしい…と旅行記にしました。
今回、横浜を歩くに当たり何冊か市販のガイドブックをパラパラと捲りましたが、どの本にもこの資料館の事は地図上のみの紹介で、その存在や展示内容に言及しているものはありませんでした。
私的には、赤レンガ倉庫のショッピングモール情報よりも、こちらの方が重要度は高いと思うのですが、政治的問題とか色々とあるのかしら…。
ともかく、多くの方に知っていただきたいと思う展示内容であることは確かですね。
ウェンディ
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