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:.。☆ 伝統の宮殿建築と金箔の板絵。中庭から初期イタリア絵画をめぐる旅 ☆.。.:<br /><br />今回のルーヴル美術館の旅は、高いガラス天井から美しい自然光が降り注ぐ中庭からスタートしました。<br /><br />重厚な石造りのファサードや精緻な渦巻き文様をじっくりと眺め、格天井が連なる美しい大廊下を抜けて階段エリアへと歩みを進めました。<br /><br />続いて、中世の神秘的な気品が色濃く残る「初期イタリア絵画展示室へと移動し、まばゆい純金の金箔が施された貴重な木版テンペラ画の世界を鑑賞しました 。<br /><br />巨匠たちによる聖母子像やドラマチックなキリスト受難の物語、そしてルネサンスの写実精神が息づく王女の肖像画など、全体像から細部への完全拡大図へと視線を移しながら、中世から初期ルネサンスへの美しい美術の歩みを贅沢に体感する充実したひとときとなりました。<br /><br /><br />全体の大まかな行程は以下になります。<br /><br />今日は,★☆★です (^^)/<br /><br />4/13(日) 成田⇒ドバイ⇒<br />4/14(月) ⇒アムステルダム フォーレンダム観光<br />4/15(火) アムステルダム,ホールン,エダム観光<br />4/16(水) アムステルダム国立美術館,市内観光<br />4/17(木) ギートホルン観光<br />4/18(金) キューケンホフ観光<br />4/19(土) ザーンセ・スカンス観光⇒ロッテルダムへ移動<br />4/20(日) デハール城,ユトレヒト観光<br />4/21(月) キンデルダイク,デルフト観光<br />4/22(火) ハーグ観光<br />4/23(水) プラハへ移動とプチ観光<br />4/24(木) プラハ観光+コンサート<br />4/25(金) プラハ観光+コンサート <br />4/26(土) プラハ観光<br />4/27(日) プラハ観光<br />4/28(月) プラハ観光<br />4/29(火) チェスキー・クルムロフへ移動⇒観光<br />4/30(水) チェスキー・クルムロフ⇒プラハへ移動<br />5/1(木) パリへ移動,観光<br /><br />★☆★5/2(金) パリ観光<br /><br />5/3(土) ヴェルサイユ宮殿観光<br />5/4(日) パリ観光<br />5/5(月) 体調不良により観光無し<br />5/6(火) 体調不良により観光無し <br />5/7(水) パリ観光<br />5/8(木) シャルトルへ移動・観光<br />5/9(金) パリ観光<br />5/10(土) パリ観光<br />5/11(日) パリ観光<br />5/12(月) ベルノンへ移動・観光,パリ観光<br />5/13(火) パリ観光<br />5/14(水) パリ観光後⇒ドバイへ移動<br />5/15(木) ドバイ観光⇒成田へ向けて出発<br />5/16(金) 成田着

285。*:.。オランダ,チェコ,フランス35日間の旅 ☆パリ-24 ルーブル-21☆.。.:* 

10いいね!

2025/05/02 - 2025/05/02

16340位(同エリア17218件中)

mitsu

mitsuさん

:.。☆ 伝統の宮殿建築と金箔の板絵。中庭から初期イタリア絵画をめぐる旅 ☆.。.:

今回のルーヴル美術館の旅は、高いガラス天井から美しい自然光が降り注ぐ中庭からスタートしました。

重厚な石造りのファサードや精緻な渦巻き文様をじっくりと眺め、格天井が連なる美しい大廊下を抜けて階段エリアへと歩みを進めました。

続いて、中世の神秘的な気品が色濃く残る「初期イタリア絵画展示室へと移動し、まばゆい純金の金箔が施された貴重な木版テンペラ画の世界を鑑賞しました 。

巨匠たちによる聖母子像やドラマチックなキリスト受難の物語、そしてルネサンスの写実精神が息づく王女の肖像画など、全体像から細部への完全拡大図へと視線を移しながら、中世から初期ルネサンスへの美しい美術の歩みを贅沢に体感する充実したひとときとなりました。


全体の大まかな行程は以下になります。

今日は,★☆★です (^^)/

4/13(日) 成田⇒ドバイ⇒
4/14(月) ⇒アムステルダム フォーレンダム観光
4/15(火) アムステルダム,ホールン,エダム観光
4/16(水) アムステルダム国立美術館,市内観光
4/17(木) ギートホルン観光
4/18(金) キューケンホフ観光
4/19(土) ザーンセ・スカンス観光⇒ロッテルダムへ移動
4/20(日) デハール城,ユトレヒト観光
4/21(月) キンデルダイク,デルフト観光
4/22(火) ハーグ観光
4/23(水) プラハへ移動とプチ観光
4/24(木) プラハ観光+コンサート
4/25(金) プラハ観光+コンサート 
4/26(土) プラハ観光
4/27(日) プラハ観光
4/28(月) プラハ観光
4/29(火) チェスキー・クルムロフへ移動⇒観光
4/30(水) チェスキー・クルムロフ⇒プラハへ移動
5/1(木) パリへ移動,観光

★☆★5/2(金) パリ観光

5/3(土) ヴェルサイユ宮殿観光
5/4(日) パリ観光
5/5(月) 体調不良により観光無し
5/6(火) 体調不良により観光無し 
5/7(水) パリ観光
5/8(木) シャルトルへ移動・観光
5/9(金) パリ観光
5/10(土) パリ観光
5/11(日) パリ観光
5/12(月) ベルノンへ移動・観光,パリ観光
5/13(火) パリ観光
5/14(水) パリ観光後⇒ドバイへ移動
5/15(木) ドバイ観光⇒成田へ向けて出発
5/16(金) 成田着

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
同行者
カップル・夫婦(シニア)
交通手段
徒歩
旅行の手配内容
個別手配
  • ここからは、高いガラス天井から自然光が降り注ぐ、宮殿建築の歴史が息づく壮麗な中庭からのスタートです。<br /><br /> 宮殿の歴史を物語る石造りのファサード<br />歴史を感じる、ヨーロッパの宮殿の大きな壁を、正面から、まっすぐ見上げた全体の景色です。<br />きれいに並んだアーチ型の窓がとっても絵になっていて、一番上の三角形の屋根部分に彫られた、細かな神話の彫刻にもパッと目が奪われます。

    ここからは、高いガラス天井から自然光が降り注ぐ、宮殿建築の歴史が息づく壮麗な中庭からのスタートです。

    宮殿の歴史を物語る石造りのファサード
    歴史を感じる、ヨーロッパの宮殿の大きな壁を、正面から、まっすぐ見上げた全体の景色です。
    きれいに並んだアーチ型の窓がとっても絵になっていて、一番上の三角形の屋根部分に彫られた、細かな神話の彫刻にもパッと目が奪われます。

  • 宮殿ファサード上部の神話レリーフ装飾<br /><br />先ほどの大きな壁に、もっと近づいて見上げるようなアングルで撮ったカットです。<br />屋根の下の三角形の部分には、太陽や植物、神様たちが、びっしりと立体的に彫り込まれていて本当に見事な手仕事。<br />ガラスの屋根から、差し込む柔らかな光に包まれていて、中庭ならではの、開放的な雰囲気がきれいに際立っています。

    宮殿ファサード上部の神話レリーフ装飾

    先ほどの大きな壁に、もっと近づいて見上げるようなアングルで撮ったカットです。
    屋根の下の三角形の部分には、太陽や植物、神様たちが、びっしりと立体的に彫り込まれていて本当に見事な手仕事。
    ガラスの屋根から、差し込む柔らかな光に包まれていて、中庭ならではの、開放的な雰囲気がきれいに際立っています。

  •  石壁を彩る精緻な渦巻き文様(クローズアップ)<br /><br />宮殿の重厚な石壁の表面を、グッと間近で写した面白い写真です。<br /><br />よく見ると、まるで波や雲がうねっているような、不思議で細かな渦巻きの模様が、壁一面に刻まれています。<br />石のブロックごとに陰影ができていて、昔の職人さんたちの細部へのこだわりや、温もりが真っ直ぐに伝わってきます。

    石壁を彩る精緻な渦巻き文様(クローズアップ)

    宮殿の重厚な石壁の表面を、グッと間近で写した面白い写真です。

    よく見ると、まるで波や雲がうねっているような、不思議で細かな渦巻きの模様が、壁一面に刻まれています。
    石のブロックごとに陰影ができていて、昔の職人さんたちの細部へのこだわりや、温もりが真っ直ぐに伝わってきます。

  • 格天井が美しい宮殿の連絡通路<br /><br />ここからは、ルーヴル美術館の、歴史的なお城の雰囲気が、たっぷり残る、重厚な「連絡通路の階段エリア」へと進みます。<br /><br />立派なアーチの門越しに、奥へと続いている通路を見下ろした景色です。<br />たくさんの来館者でにぎわう美術館の様子です。

    格天井が美しい宮殿の連絡通路

    ここからは、ルーヴル美術館の、歴史的なお城の雰囲気が、たっぷり残る、重厚な「連絡通路の階段エリア」へと進みます。

    立派なアーチの門越しに、奥へと続いている通路を見下ろした景色です。
    たくさんの来館者でにぎわう美術館の様子です。

  • さらに通路の奥へ進んで、お城の広い廊下を、広く見渡した全景です。<br /><br />天井の、美しい格子模様がずーっと奥まで広がっていて、左側には、神殿にあるような立派な石の柱が、きれいに列をなしています。<br /><br />まっすぐ続く廊下の奥行きと、凛とした静かな美しさに心が落ち着きます。

    さらに通路の奥へ進んで、お城の広い廊下を、広く見渡した全景です。

    天井の、美しい格子模様がずーっと奥まで広がっていて、左側には、神殿にあるような立派な石の柱が、きれいに列をなしています。

    まっすぐ続く廊下の奥行きと、凛とした静かな美しさに心が落ち着きます。

  • 大廊下を、歩いた突き当たりに現れる、素晴らしい彫刻で飾られた、巨大な石の門の前に到着です。<br /><br />『アンリ2世の記念碑的暖炉の飾り門』<br /><br />廊下の先に、ドーンと姿を現す繊細な彫刻が、壁いっぱいに刻まれたとっても大きくて、重厚な石のアーチ門です。<br />柱の装飾や神話の一コマを描いた、浮き彫りが本当に見事で、門の向こう側には、階段を行き交う人たちの姿も見えています。<br />当時のフランス宮殿の、贅沢な職人技に感動しながら、次のお部屋への期待が膨らみます。

    大廊下を、歩いた突き当たりに現れる、素晴らしい彫刻で飾られた、巨大な石の門の前に到着です。

    『アンリ2世の記念碑的暖炉の飾り門』

    廊下の先に、ドーンと姿を現す繊細な彫刻が、壁いっぱいに刻まれたとっても大きくて、重厚な石のアーチ門です。
    柱の装飾や神話の一コマを描いた、浮き彫りが本当に見事で、門の向こう側には、階段を行き交う人たちの姿も見えています。
    当時のフランス宮殿の、贅沢な職人技に感動しながら、次のお部屋への期待が膨らみます。

  • シュリー翼1階・初期イタリア絵画展示室(ルーム380周辺)です。<br /><br />ウゴリーノ・ディ・ネーリオ 『聖母子』<br /><br />14世紀初頭のイタリア・シエナ派の巨匠による大変貴重な木版テンペラ画です。<br />まばゆい純金の金箔が、背景いっぱいに贅沢に施されていて、聖なる領域を象徴する金色のオーラの中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼いキリストを優しくその手に抱きかかえています。<br />ビザンティン美術の厳かな伝統を受け継いだ、少し憂いを帯びたマリアのアーモンド型の瞳や、しなやかで美しい指先、そして母の顔をじっと見上げる幼子キリストの純粋な表情が、とても印象的に描き出されています。<br />よく見ると、幼子キリストが小さな手で母のベールの胸元をそっと握りしめており、母と子の親密な愛のドラマが温かく表現されています。<br />長い歳月を経て、木版の端が少し欠損したプリミティブな質感やひび割れからも、当時の深い信仰心と、気品ある美しさが静かに伝わってきます。<br /><br />※木版テンペラ画:キャンバス(布)が登場する前の時代に、厚みのある「木の板」を土台にして、卵を混ぜて作った特別な絵の具で描かれた貴重な絵画のことです。<br />※ビザンティン美術とは、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)で発達したキリスト教美術です。金箔を贅沢に使ったまばゆい背景や、モザイク画が大きな特徴です。

    シュリー翼1階・初期イタリア絵画展示室(ルーム380周辺)です。

    ウゴリーノ・ディ・ネーリオ 『聖母子』

    14世紀初頭のイタリア・シエナ派の巨匠による大変貴重な木版テンペラ画です。
    まばゆい純金の金箔が、背景いっぱいに贅沢に施されていて、聖なる領域を象徴する金色のオーラの中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼いキリストを優しくその手に抱きかかえています。
    ビザンティン美術の厳かな伝統を受け継いだ、少し憂いを帯びたマリアのアーモンド型の瞳や、しなやかで美しい指先、そして母の顔をじっと見上げる幼子キリストの純粋な表情が、とても印象的に描き出されています。
    よく見ると、幼子キリストが小さな手で母のベールの胸元をそっと握りしめており、母と子の親密な愛のドラマが温かく表現されています。
    長い歳月を経て、木版の端が少し欠損したプリミティブな質感やひび割れからも、当時の深い信仰心と、気品ある美しさが静かに伝わってきます。

    ※木版テンペラ画:キャンバス(布)が登場する前の時代に、厚みのある「木の板」を土台にして、卵を混ぜて作った特別な絵の具で描かれた貴重な絵画のことです。
    ※ビザンティン美術とは、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)で発達したキリスト教美術です。金箔を贅沢に使ったまばゆい背景や、モザイク画が大きな特徴です。

  •  クラス(Calignano)の画家『聖母子と二人の天使』<br /><br />ウゴリーノの作品に続き、同じく14世紀初頭のイタリア・シエナの伝統を伝える、大変美しく厳かな木版テンペラ画です。<br />縦長の細高い木製額縁いっぱいに施された、まばゆい純金の金箔の背景の中で、王座に腰掛けた聖母マリアが、膝の上に幼子キリストをしっかりと抱きかかえています。<br />マリアの頭上の左右には、小さな二人の天使が静かに寄り添い、聖なる家族を優しく見守るように配されています。<br />中世美術の伝統的な特徴である、少し憂いを秘めた聖母の切れ長の瞳や、大人びた顔立ちで「小さな巻物」を大切そうに手にする幼子キリストの姿が、深い紺色とピンク色の衣服のなめらかな色彩で表現されています。<br />背景の金箔に施された格子状の細かな装飾模様や、衣服のひだの柔らかな立体感が、オリジナルの重厚な金色の額縁と見事に調和しています。<br />長い歳月を経て、木版に刻まれた特有の擦れやひび割れからも、当時の人々の深い信仰心と素朴な美しさが、真っ直ぐに、伝わってきます。

    クラス(Calignano)の画家『聖母子と二人の天使』

    ウゴリーノの作品に続き、同じく14世紀初頭のイタリア・シエナの伝統を伝える、大変美しく厳かな木版テンペラ画です。
    縦長の細高い木製額縁いっぱいに施された、まばゆい純金の金箔の背景の中で、王座に腰掛けた聖母マリアが、膝の上に幼子キリストをしっかりと抱きかかえています。
    マリアの頭上の左右には、小さな二人の天使が静かに寄り添い、聖なる家族を優しく見守るように配されています。
    中世美術の伝統的な特徴である、少し憂いを秘めた聖母の切れ長の瞳や、大人びた顔立ちで「小さな巻物」を大切そうに手にする幼子キリストの姿が、深い紺色とピンク色の衣服のなめらかな色彩で表現されています。
    背景の金箔に施された格子状の細かな装飾模様や、衣服のひだの柔らかな立体感が、オリジナルの重厚な金色の額縁と見事に調和しています。
    長い歳月を経て、木版に刻まれた特有の擦れやひび割れからも、当時の人々の深い信仰心と素朴な美しさが、真っ直ぐに、伝わってきます。

  • タッデオ・ディ・バルトロ 『聖フランチェスコの跪くキリストの磔刑』<br /><br />聖母子像から一転して、再び受難の最も劇的な場面へと視線を引き戻す、14世紀末のシエナ派の巨匠による見事な木版テンペラ画です。<br />画面の中央には、十字架にかけられた主イエス・キリストの姿が、中世らしい静けさの中で神聖に描かれています。<br />最大の見どころは、その十字架の足元に深く膝を突き、キリストの受難を直接見つめながら必死に祈りを捧げている、茶色い修道服を着た聖フランチェスコの姿です。<br />十字架の左側には、深い悲しみのあまり気絶しそうな聖母マリアを優しく支える女性たちや、マントをまとって悲嘆にくれる使徒ヨハネの姿が配されています。<br /><br />一方、右側にはゴールドの鎧をまとった古代ローマの兵士や、馬に乗った群衆、そして異教徒たちがひしめき合っており、キリストを巡る対照的な人間ドラマが豊かな色彩で表現されています。<br />背景に贅沢に敷き詰められた金箔のまばゆい輝きと、長い歳月を経て木の板の下部などが擦れて欠損した風合いが、この受難の場面の神聖さと歴史の深みを、真っ直ぐに、伝えてくれます。

    タッデオ・ディ・バルトロ 『聖フランチェスコの跪くキリストの磔刑』

    聖母子像から一転して、再び受難の最も劇的な場面へと視線を引き戻す、14世紀末のシエナ派の巨匠による見事な木版テンペラ画です。
    画面の中央には、十字架にかけられた主イエス・キリストの姿が、中世らしい静けさの中で神聖に描かれています。
    最大の見どころは、その十字架の足元に深く膝を突き、キリストの受難を直接見つめながら必死に祈りを捧げている、茶色い修道服を着た聖フランチェスコの姿です。
    十字架の左側には、深い悲しみのあまり気絶しそうな聖母マリアを優しく支える女性たちや、マントをまとって悲嘆にくれる使徒ヨハネの姿が配されています。

    一方、右側にはゴールドの鎧をまとった古代ローマの兵士や、馬に乗った群衆、そして異教徒たちがひしめき合っており、キリストを巡る対照的な人間ドラマが豊かな色彩で表現されています。
    背景に贅沢に敷き詰められた金箔のまばゆい輝きと、長い歳月を経て木の板の下部などが擦れて欠損した風合いが、この受難の場面の神聖さと歴史の深みを、真っ直ぐに、伝えてくれます。

  • 14世紀後半のベネチア派 『ピエタ(キリストの哀悼)』<br /><br />磔刑図に続き、同じくシュリー翼の展示室で深い静けさを湛える、中世ゴシックの美学が詰まった見事な木版テンペラ画です。<br />画面の中央では、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、十字架から降ろされたばかりの我が子の亡き骸を優しく膝の上にのせ、自らの顔を頬にそっと寄せて深い悲しみにくれています。<br />キリストの細く痛々しい身体には、手足に受難の傷跡(聖痕)が残されており、背景の眩い金箔の輝きの中に浮かび上がる十字架の影、あるいは空中で一緒に悲しみながら舞う、二人の青い天使たちの小さな姿が胸を打ちます。<br />額縁の四隅にある円形枠には聖人たちの姿が配されており、植物模様が美しく刻まれた金色のオリジナル額縁や、長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れが、この聖なる場面の神聖さと歴史の重みを、今も、静かに、漂わせています。

    14世紀後半のベネチア派 『ピエタ(キリストの哀悼)』

    磔刑図に続き、同じくシュリー翼の展示室で深い静けさを湛える、中世ゴシックの美学が詰まった見事な木版テンペラ画です。
    画面の中央では、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、十字架から降ろされたばかりの我が子の亡き骸を優しく膝の上にのせ、自らの顔を頬にそっと寄せて深い悲しみにくれています。
    キリストの細く痛々しい身体には、手足に受難の傷跡(聖痕)が残されており、背景の眩い金箔の輝きの中に浮かび上がる十字架の影、あるいは空中で一緒に悲しみながら舞う、二人の青い天使たちの小さな姿が胸を打ちます。
    額縁の四隅にある円形枠には聖人たちの姿が配されており、植物模様が美しく刻まれた金色のオリジナル額縁や、長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れが、この聖なる場面の神聖さと歴史の重みを、今も、静かに、漂わせています。

  • シエナ派の匿名画家 『聖母子とキリストの磔刑』<br /><br />ピエタに続き、同じくシュリー翼の展示室に佇む、上部が鋭く尖ったゴシック期ならではの美しい形状を持った貴重な木版テンペラ画です。<br />画面下部の主展示エリアでは、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、愛らしいピンク色の衣服を着た幼子キリストを優しくその腕に抱いています。<br />マリアの優しくも少し憂いを帯びた表情や、ふっくらとした幼子キリストが自らの小さな手を口元に当てて母を見上げる愛らしい仕草が、中世美術の洗練されたタッチで生き生きと描かれています。<br />さらにこの作品の素晴らしい見どころは、鋭く尖った上部の尖塔部分にあります。そこには純金の金箔の背景とともに、十字架にかけられたキリストと、その足元で悲しみに暮れながらひざまずく聖母マリアや使徒ヨハネの姿が、小さな円形枠の中に緻密に描き込まれています。<br />背景に贅沢に施された後光の緻密な型押し装飾や、長い年月を経て下部が少し擦れて欠損した木の板のプリミティブな質感が、当時の教会の祭壇を飾っていた頃の神聖な祈りの気配を、今も、静かに、伝えてくれます。

    シエナ派の匿名画家 『聖母子とキリストの磔刑』

    ピエタに続き、同じくシュリー翼の展示室に佇む、上部が鋭く尖ったゴシック期ならではの美しい形状を持った貴重な木版テンペラ画です。
    画面下部の主展示エリアでは、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、愛らしいピンク色の衣服を着た幼子キリストを優しくその腕に抱いています。
    マリアの優しくも少し憂いを帯びた表情や、ふっくらとした幼子キリストが自らの小さな手を口元に当てて母を見上げる愛らしい仕草が、中世美術の洗練されたタッチで生き生きと描かれています。
    さらにこの作品の素晴らしい見どころは、鋭く尖った上部の尖塔部分にあります。そこには純金の金箔の背景とともに、十字架にかけられたキリストと、その足元で悲しみに暮れながらひざまずく聖母マリアや使徒ヨハネの姿が、小さな円形枠の中に緻密に描き込まれています。
    背景に贅沢に施された後光の緻密な型押し装飾や、長い年月を経て下部が少し擦れて欠損した木の板のプリミティブな質感が、当時の教会の祭壇を飾っていた頃の神聖な祈りの気配を、今も、静かに、伝えてくれます。

  • シモーネ・マルティーニ 『キリストの磔刑』<br /><br />14世紀前半のシエナ派を代表する最高峰の木版テンペラ画です。<br />画面中央には、天に向かって高く掲げられた十字架と、そこにかけられた主イエス・キリストの細く悲痛な身体が神聖に描き出されています。<br />背景一面に贅沢に施された純金の金箔のまばゆい輝きが、時の試練を経て独特の赤みを帯びた古色となり、この受難の場面の聖性をいっそう際立たせています。<br />十字架の左側では、我が子の壮絶な姿を前に、深い悲しみのあまり気絶しそうになり、周囲の聖女たちに抱きかかえられている聖母マリアの痛切な場面が描かれています。<br />一方、十字架の右側には、青いマントをまとい、静かに手を胸に当てて祈りを捧げる使徒ヨハネが配され、その後ろには白馬に乗ったローマの百人隊長や、槍や旗を掲げてひしめき合う大勢の兵士、そして異教徒たちの姿が色彩豊かに表現されています。<br />巨匠ならではの洗練された流れるような人物の輪郭線や、登場人物ひとりひとりの感情がダイナミックに交錯する素晴らしい構図が美しく、長い歳月を経て木版の表面に刻まれた特有の擦れが、当時の洗練された宮廷ゴシック様式の気品と歴史の重みを、真っ直ぐに、伝えてくれます。

    シモーネ・マルティーニ 『キリストの磔刑』

    14世紀前半のシエナ派を代表する最高峰の木版テンペラ画です。
    画面中央には、天に向かって高く掲げられた十字架と、そこにかけられた主イエス・キリストの細く悲痛な身体が神聖に描き出されています。
    背景一面に贅沢に施された純金の金箔のまばゆい輝きが、時の試練を経て独特の赤みを帯びた古色となり、この受難の場面の聖性をいっそう際立たせています。
    十字架の左側では、我が子の壮絶な姿を前に、深い悲しみのあまり気絶しそうになり、周囲の聖女たちに抱きかかえられている聖母マリアの痛切な場面が描かれています。
    一方、十字架の右側には、青いマントをまとい、静かに手を胸に当てて祈りを捧げる使徒ヨハネが配され、その後ろには白馬に乗ったローマの百人隊長や、槍や旗を掲げてひしめき合う大勢の兵士、そして異教徒たちの姿が色彩豊かに表現されています。
    巨匠ならではの洗練された流れるような人物の輪郭線や、登場人物ひとりひとりの感情がダイナミックに交錯する素晴らしい構図が美しく、長い歳月を経て木版の表面に刻まれた特有の擦れが、当時の洗練された宮廷ゴシック様式の気品と歴史の重みを、真っ直ぐに、伝えてくれます。

  • リッポ・メミ『聖ペテロ』<br /><br />初期イタリア・ルネサンスの気品高き聖人肖像の世界へと視線を移す、14世紀前半のシエナ派による厳かな木版テンペラ画です。<br />画面中央には、キリストの一番弟子であり、初代ローマ教皇と尊ばれる「聖ペテロ」の堂々とした半身像が描かれています。<br />背景一面に贅沢に施された純金の金箔は、何世紀もの時を経て深みのある温かな輝きを讃え、作品全体に崇高なオーラを与えています。<br />聖ペテロの象徴である、キリストから授かったとされる大きな「天国の鍵」を右手にしっかりと握りしめ、左手には赤く美しい装丁の聖書を大切そうに携えています。<br />教皇の権威を示す黒い十字架が施された白い肩衣を身にまとい、白髪まじりの豊かな髭を蓄えたその表情には、初代教会を率いたリーダーとしての強い意志と深い慈愛が、繊細なタッチで表現されています。<br />頭上の後光に施されたドット状の緻密な型押し装飾や、ゴシック期特有の尖塔型のオリジナル木製額縁、あるいは長い歳月を刻んだ木版のプリミティブな質感が、当時の教会の祭壇を飾っていた頃の厳かな祈りの記憶を、今も、静かに、漂わせています。

    リッポ・メミ『聖ペテロ』

    初期イタリア・ルネサンスの気品高き聖人肖像の世界へと視線を移す、14世紀前半のシエナ派による厳かな木版テンペラ画です。
    画面中央には、キリストの一番弟子であり、初代ローマ教皇と尊ばれる「聖ペテロ」の堂々とした半身像が描かれています。
    背景一面に贅沢に施された純金の金箔は、何世紀もの時を経て深みのある温かな輝きを讃え、作品全体に崇高なオーラを与えています。
    聖ペテロの象徴である、キリストから授かったとされる大きな「天国の鍵」を右手にしっかりと握りしめ、左手には赤く美しい装丁の聖書を大切そうに携えています。
    教皇の権威を示す黒い十字架が施された白い肩衣を身にまとい、白髪まじりの豊かな髭を蓄えたその表情には、初代教会を率いたリーダーとしての強い意志と深い慈愛が、繊細なタッチで表現されています。
    頭上の後光に施されたドット状の緻密な型押し装飾や、ゴシック期特有の尖塔型のオリジナル木製額縁、あるいは長い歳月を刻んだ木版のプリミティブな質感が、当時の教会の祭壇を飾っていた頃の厳かな祈りの記憶を、今も、静かに、漂わせています。

  • トスカーナ地方の匿名画家 『アッシジの聖フランチェスコ』<br /><br />初代教皇聖ペテロに続き、初期イタリア絵画のきわめてプリミティブな伝統を伝える、13世紀末(ルネサンス前夜)に制作された大変厳かな木版テンペラ画です。<br />画面中央には、フランシスコ会の創設者であり、清貧の聖者として名高い「アッシジの聖フランチェスコ」の全身像が描かれています。縦長の細長い画面いっぱいに敷き詰められた金箔の背景は、何世紀もの時を経て深みのある美しい古色を帯びており、聖人の周囲にはラテン語で彼の名が古風な文字でしっかりと刻まれています。<br />茶色く素朴な修道服に身を包んだ聖フランチェスコは、左手に自らの会則や聖書を大切そうに掲げ、右手をそっと胸の前にかざしています。<br />彼の右手の手のひらや、裸足の足元には、キリストが十字架上で受けた傷と同じ「聖痕(スティグマータ)」が、中世美術ならではの素朴かつ象徴的な黒い斑点として克明に描き込まれています。<br />優しくもどこか超越したまなざし、頭上の円形の後光、あるいは長い歳月を刻んで下部が少し欠損した木版の風合いが、キリストの受難に自らの生涯を捧げた聖人の清らかな魂を、真っ直ぐに伝えてくれます。

    トスカーナ地方の匿名画家 『アッシジの聖フランチェスコ』

    初代教皇聖ペテロに続き、初期イタリア絵画のきわめてプリミティブな伝統を伝える、13世紀末(ルネサンス前夜)に制作された大変厳かな木版テンペラ画です。
    画面中央には、フランシスコ会の創設者であり、清貧の聖者として名高い「アッシジの聖フランチェスコ」の全身像が描かれています。縦長の細長い画面いっぱいに敷き詰められた金箔の背景は、何世紀もの時を経て深みのある美しい古色を帯びており、聖人の周囲にはラテン語で彼の名が古風な文字でしっかりと刻まれています。
    茶色く素朴な修道服に身を包んだ聖フランチェスコは、左手に自らの会則や聖書を大切そうに掲げ、右手をそっと胸の前にかざしています。
    彼の右手の手のひらや、裸足の足元には、キリストが十字架上で受けた傷と同じ「聖痕(スティグマータ)」が、中世美術ならではの素朴かつ象徴的な黒い斑点として克明に描き込まれています。
    優しくもどこか超越したまなざし、頭上の円形の後光、あるいは長い歳月を刻んで下部が少し欠損した木版の風合いが、キリストの受難に自らの生涯を捧げた聖人の清らかな魂を、真っ直ぐに伝えてくれます。

  • ボローニャ派『キリストの磔刑と聖母の戴冠、聖なる物語の三連祭壇画』<br /><br />単一の聖人肖像から一転して、複数の聖なる場面が一堂に会する、14世紀中世ゴシック期のきわめて豪華な木版テンペラ画の祭壇画です。<br />中央の最も高い尖塔型の画面には、劇的な「キリストの磔刑」が描かれており、その十字架の真上には、青い円形の後光の中でキリストが聖母マリアに王冠を授ける「聖母の戴冠」の場面が、美しい二層構造で神聖に表現されています。<br />向かって左側の翼板には、大きな紺色のマントを広げて、その下にひざまずく熱心な信者たちを優しく包み込んで守る「慈愛の聖母(守護の聖母)」が配され、右側の翼板には、素朴な小屋の中で誕生したばかりの幼子キリストを愛おしそうに抱く「キリストの降誕」の場面が繊細に描き込まれています。<br /><br />それぞれの板の下部には、色鮮やかな衣装をまとった小さな聖人たちが綺麗に並んで佇んでおり、背景一面に施された金箔の温かみのある輝きと、三枚の木版を繋ぐクラシカルな蝶番の風合いが、当時の教会の祭壇を飾っていた頃の厳かな存在感を、今も静かに漂わせています。

    ボローニャ派『キリストの磔刑と聖母の戴冠、聖なる物語の三連祭壇画』

    単一の聖人肖像から一転して、複数の聖なる場面が一堂に会する、14世紀中世ゴシック期のきわめて豪華な木版テンペラ画の祭壇画です。
    中央の最も高い尖塔型の画面には、劇的な「キリストの磔刑」が描かれており、その十字架の真上には、青い円形の後光の中でキリストが聖母マリアに王冠を授ける「聖母の戴冠」の場面が、美しい二層構造で神聖に表現されています。
    向かって左側の翼板には、大きな紺色のマントを広げて、その下にひざまずく熱心な信者たちを優しく包み込んで守る「慈愛の聖母(守護の聖母)」が配され、右側の翼板には、素朴な小屋の中で誕生したばかりの幼子キリストを愛おしそうに抱く「キリストの降誕」の場面が繊細に描き込まれています。

    それぞれの板の下部には、色鮮やかな衣装をまとった小さな聖人たちが綺麗に並んで佇んでおり、背景一面に施された金箔の温かみのある輝きと、三枚の木版を繋ぐクラシカルな蝶番の風合いが、当時の教会の祭壇を飾っていた頃の厳かな存在感を、今も静かに漂わせています。

  • パオロ・ヴェネツィアーノ『聖母の戴冠』<br /><br />三連祭壇画の上部にも小さく登場していた「聖母の戴冠」というテーマを、四角い画面いっぱいに贅沢なスケールで描き出した、14世紀中頃のベネチア派を代表する美しい木版テンペラ画です。<br />画面の右側では、ピンク色と金色の高貴な衣装をまとった主イエス・キリストが座り、左側で深く頭を垂れて両手を胸の前で交差させる聖母マリアの頭上に、優しく王冠を授けています。<br />マリアがまとう深い紺色のマントには、ベネチア派らしい精緻な金の格子状の刺繍がびっしりと施されており、宮廷ゴシック美術の格調高き美しさが目を引きます。二人の背景には、細かな植物や星のような模様が緻密に織り込まれた豪華なタペストリーが広がり、最上部では三人の天使が優美にその布を掲げています。<br /><br />さらに、左右の端からは光り輝く後光を讃えた聖人や天使たちが、この聖なる戴冠の奇跡を静かに見守るようにひしめき合っており、背景一面の純金の金箔と衣服のなめらかな色彩が調和して、当時のベネチアが誇った豊かな繁栄と深い信仰心を、今も眩しく漂わせています。

    パオロ・ヴェネツィアーノ『聖母の戴冠』

    三連祭壇画の上部にも小さく登場していた「聖母の戴冠」というテーマを、四角い画面いっぱいに贅沢なスケールで描き出した、14世紀中頃のベネチア派を代表する美しい木版テンペラ画です。
    画面の右側では、ピンク色と金色の高貴な衣装をまとった主イエス・キリストが座り、左側で深く頭を垂れて両手を胸の前で交差させる聖母マリアの頭上に、優しく王冠を授けています。
    マリアがまとう深い紺色のマントには、ベネチア派らしい精緻な金の格子状の刺繍がびっしりと施されており、宮廷ゴシック美術の格調高き美しさが目を引きます。二人の背景には、細かな植物や星のような模様が緻密に織り込まれた豪華なタペストリーが広がり、最上部では三人の天使が優美にその布を掲げています。

    さらに、左右の端からは光り輝く後光を讃えた聖人や天使たちが、この聖なる戴冠の奇跡を静かに見守るようにひしめき合っており、背景一面の純金の金箔と衣服のなめらかな色彩が調和して、当時のベネチアが誇った豊かな繁栄と深い信仰心を、今も眩しく漂わせています。

  • ピサ派の匿名画家 『授乳の聖母』<br /><br />きらびやかな戴冠図から一転して、母と子の人間の本質的な絆と深い愛情の世界へと視線を移す、14世紀中頃に制作された厳かな木版テンペラ画です。<br />画面中央には、贅沢に施された純金の金箔背景の中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼い我が子に乳を含ませようとしている「授乳の聖母」の高貴な姿が描かれています。<br />マリアのマントには、ビザンティン美術の伝統を引く細かな金の光の筋が繊細に描き込まれており、聖なる光をまとっているかのような神秘的な美しさが目を引きます。<br />ピンク色の柔らかな衣服をまとった幼子キリストは、母の胸元にそっと小さな手を添えながら、もう一方の手で自らの足を愛らしく握り、優しくこちらを見上げるような純粋な瞳で捉えられています。<br />マリアの少し憂いを帯びたアーモンド型の美しい瞳や細長いしなやかな指先には、キリストが将来迎える受難の運命を予感しているかのような、中世特有の静かな情感が表現されています。<br />頭上の後光や外枠のアーチに施された緻密な型押し植物装飾、あるいは長い歳月を経て木版の端に刻まれた特有の擦れが、当時のプライベートな祈祷所や教会の祭壇を飾っていた頃の深い信仰心を、今も静かに伝えてくれます。

    ピサ派の匿名画家 『授乳の聖母』

    きらびやかな戴冠図から一転して、母と子の人間の本質的な絆と深い愛情の世界へと視線を移す、14世紀中頃に制作された厳かな木版テンペラ画です。
    画面中央には、贅沢に施された純金の金箔背景の中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼い我が子に乳を含ませようとしている「授乳の聖母」の高貴な姿が描かれています。
    マリアのマントには、ビザンティン美術の伝統を引く細かな金の光の筋が繊細に描き込まれており、聖なる光をまとっているかのような神秘的な美しさが目を引きます。
    ピンク色の柔らかな衣服をまとった幼子キリストは、母の胸元にそっと小さな手を添えながら、もう一方の手で自らの足を愛らしく握り、優しくこちらを見上げるような純粋な瞳で捉えられています。
    マリアの少し憂いを帯びたアーモンド型の美しい瞳や細長いしなやかな指先には、キリストが将来迎える受難の運命を予感しているかのような、中世特有の静かな情感が表現されています。
    頭上の後光や外枠のアーチに施された緻密な型押し植物装飾、あるいは長い歳月を経て木版の端に刻まれた特有の擦れが、当時のプライベートな祈祷所や教会の祭壇を飾っていた頃の深い信仰心を、今も静かに伝えてくれます。

  • ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ 『聖母子と天のエルサレム』<br /><br />素朴で厳かな授乳の聖母から一転して、中世ゴシック美術の頂点とも言える、きわめて装飾的で宮廷的な華やかさに満ちた、15世紀初頭の圧倒的な美しさを誇る木版テンペラ画です。<br />画面中央では、金糸で豪華な百合の紋章が織り込まれた深い紺色の豪奢なマントをまとい、ピンク色の洗練された花柄のドレスを着た聖母マリアが玉座に腰掛けています。<br />マリアの頭上には、まるで彫刻のように立体的なドットの型押しが施された大輪の後光が輝き、胸元には神聖なブローチを大切そうに掲げています。<br />その傍らでは、色鮮やかな衣装をまとった幼子キリストが母の膝の上に立ち、愛らしく手を伸ばして、聖母が持つピンク色の薔薇の花に触れようとしています。<br />マリアが首をそっと傾げ、我が子を慈しむように見つめる優美なポーズや細くしなやかな指先には、この時代特有の極めて洗練された宮廷的な気品が宿っています。さらにこの作品の素晴らしい見どころは、マリアの背景の上部に描かれた、まるで童話の城のように精緻なゴシック建築の城壁(天のエルサレムの象徴)にあります。<br />尖塔や窓のディテールまで細かく描き込まれた城壁の後ろには、まばゆい純金の金箔背景が広がり、立体的な木製のゴシックアーチ額縁と完璧に調和して、当時の至高の美の世界と深い信仰心を、今もまばゆく漂わせています。

    ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ 『聖母子と天のエルサレム』

    素朴で厳かな授乳の聖母から一転して、中世ゴシック美術の頂点とも言える、きわめて装飾的で宮廷的な華やかさに満ちた、15世紀初頭の圧倒的な美しさを誇る木版テンペラ画です。
    画面中央では、金糸で豪華な百合の紋章が織り込まれた深い紺色の豪奢なマントをまとい、ピンク色の洗練された花柄のドレスを着た聖母マリアが玉座に腰掛けています。
    マリアの頭上には、まるで彫刻のように立体的なドットの型押しが施された大輪の後光が輝き、胸元には神聖なブローチを大切そうに掲げています。
    その傍らでは、色鮮やかな衣装をまとった幼子キリストが母の膝の上に立ち、愛らしく手を伸ばして、聖母が持つピンク色の薔薇の花に触れようとしています。
    マリアが首をそっと傾げ、我が子を慈しむように見つめる優美なポーズや細くしなやかな指先には、この時代特有の極めて洗練された宮廷的な気品が宿っています。さらにこの作品の素晴らしい見どころは、マリアの背景の上部に描かれた、まるで童話の城のように精緻なゴシック建築の城壁(天のエルサレムの象徴)にあります。
    尖塔や窓のディテールまで細かく描き込まれた城壁の後ろには、まばゆい純金の金箔背景が広がり、立体的な木製のゴシックアーチ額縁と完璧に調和して、当時の至高の美の世界と深い信仰心を、今もまばゆく漂わせています。

  • トスカーナ地方の匿名画家 『聖母子と長い巻物を持つキリスト』<br /><br />華やかなエルサレムの城壁の聖母子像に続き、同じくシュリー翼の展示室に佇む、14世紀イタリアの中世的な力強さと神秘性を伝える、大変美しく厳かな木版テンペラ画です。<br />画面中央には、長い時を経て深い琥珀色へと落ち着いた純金の金箔背景の中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼いキリストを優しくその手に抱きかかえています。<br />マリアのまとうマントの縁には、精緻な金の刺繍模様が繊細に施されており、静かで崇高な存在感を讃えています。<br />最大の見どころは、抱かれた幼子キリストが両手で大切そうに広げている「長い巻物」にあります。<br />幼子でありながら知性を感じさせる大人びた表情で、母マリアをじっと見上げる姿が印象的です。<br />また、キリストの胸元に並ぶ小さな赤い珊瑚のような首飾りは、彼の将来の受難(流される血)を象徴する、中世特有のプリミティブな表現です。<br /><br />聖母マリアの憂いを秘めた切れ長の瞳や、頭上の後光に刻まれた緻密なドット装飾、あるいはオリジナルの重厚な木製金色の額縁に刻まれた歴史の傷跡が、当時の人々の深い祈りの時間を今も静かに漂わせています。

    トスカーナ地方の匿名画家 『聖母子と長い巻物を持つキリスト』

    華やかなエルサレムの城壁の聖母子像に続き、同じくシュリー翼の展示室に佇む、14世紀イタリアの中世的な力強さと神秘性を伝える、大変美しく厳かな木版テンペラ画です。
    画面中央には、長い時を経て深い琥珀色へと落ち着いた純金の金箔背景の中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼いキリストを優しくその手に抱きかかえています。
    マリアのまとうマントの縁には、精緻な金の刺繍模様が繊細に施されており、静かで崇高な存在感を讃えています。
    最大の見どころは、抱かれた幼子キリストが両手で大切そうに広げている「長い巻物」にあります。
    幼子でありながら知性を感じさせる大人びた表情で、母マリアをじっと見上げる姿が印象的です。
    また、キリストの胸元に並ぶ小さな赤い珊瑚のような首飾りは、彼の将来の受難(流される血)を象徴する、中世特有のプリミティブな表現です。

    聖母マリアの憂いを秘めた切れ長の瞳や、頭上の後光に刻まれた緻密なドット装飾、あるいはオリジナルの重厚な木製金色の額縁に刻まれた歴史の傷跡が、当時の人々の深い祈りの時間を今も静かに漂わせています。

  • 14世紀後半~15世紀初頭のイタリアの画家 『聖母マリアとキリストの生涯(連作多翼祭壇画)』<br />

    14世紀後半~15世紀初頭のイタリアの画家 『聖母マリアとキリストの生涯(連作多翼祭壇画)』

  • 『聖母マリアと幼子キリストの生涯(連作多翼祭壇画・左側拡大)』<br /><br />全体像から、物語の始まりを描いた左側のパートへ綺麗に視線を導く、大変美しいクローズアップカットです。<br />縦に3段、横に2列で並ぶ6枚のアーチ型の画面には、キリストの誕生前後にまつわる神聖なエピソードが、14世紀後半の国際ゴシック期ならではの洗練された色彩で生き生きと表現された、見事な木版テンペラ画です。<br />上段の左(聖母マリアの訪問):格子模様の美しい建物の前で、お腹にキリストを宿したマリアと、洗礼者ヨハネを宿したエリサベトが手を取り合って再会を喜ぶ、親密な出会いの場面です。<br />上段の右(キリストの降誕):夜空にひときわ大きく輝く「ベツレヘムの星」の下、岩山のふもとの素朴な小屋で誕生したばかりの幼子キリストを、マリアとヨセフが愛おしそうに見つめています。<br />中段の左(神殿奉献):緑色のドーム状の美しい神殿の中で、幼子キリストを神様に捧げる儀式が執り行われており、大祭司の手へマリアが我が子を優しく手渡しています。<br />中段の右(聖家族の対話):格調高い赤を基調とした厳かなドーム建築の室内で、集まった聖人や異教徒たちがキリストを巡って深い対話をする物語が描かれています。<br />下段の左(エジプトへの逃避):深い緑の森の中、紺色のマントをまとった聖母マリアが幼子を抱いてロバの背に乗り、夫ヨセフに先導されながら緊迫した逃避行を続けるドラマチックな場面です。<br />下段の右(神殿のキリスト):床に広がる格子模様のタイルが素晴らしい室内で、王座のような椅子に座る少年キリストが、学者たちと深い議論を交わしている様子が表現されています.<br />

    『聖母マリアと幼子キリストの生涯(連作多翼祭壇画・左側拡大)』

    全体像から、物語の始まりを描いた左側のパートへ綺麗に視線を導く、大変美しいクローズアップカットです。
    縦に3段、横に2列で並ぶ6枚のアーチ型の画面には、キリストの誕生前後にまつわる神聖なエピソードが、14世紀後半の国際ゴシック期ならではの洗練された色彩で生き生きと表現された、見事な木版テンペラ画です。
    上段の左(聖母マリアの訪問):格子模様の美しい建物の前で、お腹にキリストを宿したマリアと、洗礼者ヨハネを宿したエリサベトが手を取り合って再会を喜ぶ、親密な出会いの場面です。
    上段の右(キリストの降誕):夜空にひときわ大きく輝く「ベツレヘムの星」の下、岩山のふもとの素朴な小屋で誕生したばかりの幼子キリストを、マリアとヨセフが愛おしそうに見つめています。
    中段の左(神殿奉献):緑色のドーム状の美しい神殿の中で、幼子キリストを神様に捧げる儀式が執り行われており、大祭司の手へマリアが我が子を優しく手渡しています。
    中段の右(聖家族の対話):格調高い赤を基調とした厳かなドーム建築の室内で、集まった聖人や異教徒たちがキリストを巡って深い対話をする物語が描かれています。
    下段の左(エジプトへの逃避):深い緑の森の中、紺色のマントをまとった聖母マリアが幼子を抱いてロバの背に乗り、夫ヨセフに先導されながら緊迫した逃避行を続けるドラマチックな場面です。
    下段の右(神殿のキリスト):床に広がる格子模様のタイルが素晴らしい室内で、王座のような椅子に座る少年キリストが、学者たちと深い議論を交わしている様子が表現されています.

  • 『聖母マリアの物語と生涯(連作多翼祭壇画・右側拡大)』<br /><br />連作のもう一方の核心である右側のパートを美しく捉えた、対をなすクローズアップカットです。<br /><br />上段の左(ヨアキムへの告知):緑豊かな岩山のふもとで、ピンク色の高貴な衣装をまとったマリアの父ヨアキムが杖を手に佇み、上空から舞い降りる小さな赤い天使から、神様のメッセージを静かに受け取っています。<br />上段の右(聖母マリアの誕生):格調高い建築の室内で、ベッドに横たわる母聖アンナと、生まれたばかりの幼いマリアを、大切そうに産湯(うぶゆ)に浸けようとする女性たちの親密な姿が描かれています。<br />中段の左右(2枚連作・聖母の神殿奉献):この2画面は左右で1つの大きな舞台となっており、マリアが神様に仕えるために階段を上っていく有名な場面です。<br />左側からは見守る両親や群衆たちが優しく視線を送り、右側の上部では、神殿の厳かなアーチの前で大祭司が優しく小さなマリアを迎え入れています。<br />下段の左右(2枚連作・聖母の結婚):こちらも下の段で2画面が美しく連なっており、美しい格子模様の床タイルの広がりと、上部の光背(マンドルラ)に包まれたキリストとマリアの幻視の下、地上で執り行われる厳かな結婚の儀式が、大勢の聖人や参列者たちとともに色彩豊かに描き込まれています。

    『聖母マリアの物語と生涯(連作多翼祭壇画・右側拡大)』

    連作のもう一方の核心である右側のパートを美しく捉えた、対をなすクローズアップカットです。

    上段の左(ヨアキムへの告知):緑豊かな岩山のふもとで、ピンク色の高貴な衣装をまとったマリアの父ヨアキムが杖を手に佇み、上空から舞い降りる小さな赤い天使から、神様のメッセージを静かに受け取っています。
    上段の右(聖母マリアの誕生):格調高い建築の室内で、ベッドに横たわる母聖アンナと、生まれたばかりの幼いマリアを、大切そうに産湯(うぶゆ)に浸けようとする女性たちの親密な姿が描かれています。
    中段の左右(2枚連作・聖母の神殿奉献):この2画面は左右で1つの大きな舞台となっており、マリアが神様に仕えるために階段を上っていく有名な場面です。
    左側からは見守る両親や群衆たちが優しく視線を送り、右側の上部では、神殿の厳かなアーチの前で大祭司が優しく小さなマリアを迎え入れています。
    下段の左右(2枚連作・聖母の結婚):こちらも下の段で2画面が美しく連なっており、美しい格子模様の床タイルの広がりと、上部の光背(マンドルラ)に包まれたキリストとマリアの幻視の下、地上で執り行われる厳かな結婚の儀式が、大勢の聖人や参列者たちとともに色彩豊かに描き込まれています。

  • シモーネ・マルティーニ 『トゥールーズの聖ルイ』<br /><br />壮大な連作多翼祭壇画のあとに、圧倒的な存在感を放つ高貴な聖人肖像の世界へと再び視線を引き戻す、14世紀前半の国際ゴシック様式への架け橋となったきわめて華麗な木版テンペラ画です。<br />画面中央には、アンジュー家出身の若き司教であり聖人である「トゥールーズ of 聖ルイ(ルイ・ダンジュー)」の半身像が描かれています。<br />背景一面に贅沢に施された純金の金箔は、何世紀もの時を経て深みのある温かな輝きを讃え、作品全体に崇高なオーラを与えています。<br />聖ルイは、宝石や緻密な彫金がびっしりと施された格調高い司教冠を頭部に戴き、左手には精精緻な装飾が輝く司教杖を携えています。<br />身にまとった豪奢なマントには、アンジュー家を象徴する金色の百合の紋章が深い紺地に鮮やかに織り込まれており、宮廷ゴシック美術の頂点とも言える圧倒的な装飾美が目を引きます。<br />さらに、右手に大切そうに掲げた重厚な聖書の表紙に刻まれた細かな金細工の模様や、マントの合わせ目を留める大輪のブローチの立体感、あるいは頭上の後光に施されたドット状の緻密な型押し装飾が、巨匠シモーネ・マルティーニならではの洗練された流れるような輪郭線と完璧に調和しています。<br />長い歳月を刻んだ木版のプリミティブな風合いが、王位を捨てて清貧の修道士、そして司教としての生涯を捧げた聖人の若く清らかな魂を、真っ直ぐに伝えてくれます。

    シモーネ・マルティーニ 『トゥールーズの聖ルイ』

    壮大な連作多翼祭壇画のあとに、圧倒的な存在感を放つ高貴な聖人肖像の世界へと再び視線を引き戻す、14世紀前半の国際ゴシック様式への架け橋となったきわめて華麗な木版テンペラ画です。
    画面中央には、アンジュー家出身の若き司教であり聖人である「トゥールーズ of 聖ルイ(ルイ・ダンジュー)」の半身像が描かれています。
    背景一面に贅沢に施された純金の金箔は、何世紀もの時を経て深みのある温かな輝きを讃え、作品全体に崇高なオーラを与えています。
    聖ルイは、宝石や緻密な彫金がびっしりと施された格調高い司教冠を頭部に戴き、左手には精精緻な装飾が輝く司教杖を携えています。
    身にまとった豪奢なマントには、アンジュー家を象徴する金色の百合の紋章が深い紺地に鮮やかに織り込まれており、宮廷ゴシック美術の頂点とも言える圧倒的な装飾美が目を引きます。
    さらに、右手に大切そうに掲げた重厚な聖書の表紙に刻まれた細かな金細工の模様や、マントの合わせ目を留める大輪のブローチの立体感、あるいは頭上の後光に施されたドット状の緻密な型押し装飾が、巨匠シモーネ・マルティーニならではの洗練された流れるような輪郭線と完璧に調和しています。
    長い歳月を刻んだ木版のプリミティブな風合いが、王位を捨てて清貧の修道士、そして司教としての生涯を捧げた聖人の若く清らかな魂を、真っ直ぐに伝えてくれます。

  • ピエトロ・ロレンツェッティ『聖母誕生の物語(祭壇画プレデッラ)』<br /><br />圧倒的な輝きを放つ聖ルイの肖像から一転して、初期ルネサンスの先駆者たちが挑んだ「空間と人間のリアルな生活描写」の世界へと視線を移す、14世紀前半の貴重な木版テンペラ画です。<br />横長の画面を巧みに使い、当時のイタリアの素朴な家屋の内部と外部が、立体的な箱庭のように表現されています。<br />画面中央の室内では、大きな赤いベッドの前に座る女性たちや、床にひざまずいて産湯の準備をする人物など、生まれたばかりの聖母マリア(あるいは聖なる幼子)を巡る、親密な情愛の場面が穏やかな色彩で描かれています。<br />室内の左端には、頭に赤い頭巾をかぶった男性(聖ヨアキム)が椅子に腰掛け、奇跡の誕生を静かに待ちわびるように佇んでいます。<br />さらに素晴らしい見どころは、建物の右側にあります。<br />そこでは頭上に黄金の後光を讃えた聖なる人物(または天使)が、部屋の小窓からそっと中の様子を覗き込んでおり、その背後には、開いた扉の向こうにトスカーナ地方の美しい並木道や、緑豊かな自然の景色が優雅に広がっています。<br />あえて背景の金箔を少なくし、建物や登場人物たちの自然な仕草、あるいは長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れやひび割れが、当時のシエナ派が誇った先進的な空間表現の息吹を、今も生き生きと伝えてくれます。<br />

    ピエトロ・ロレンツェッティ『聖母誕生の物語(祭壇画プレデッラ)』

    圧倒的な輝きを放つ聖ルイの肖像から一転して、初期ルネサンスの先駆者たちが挑んだ「空間と人間のリアルな生活描写」の世界へと視線を移す、14世紀前半の貴重な木版テンペラ画です。
    横長の画面を巧みに使い、当時のイタリアの素朴な家屋の内部と外部が、立体的な箱庭のように表現されています。
    画面中央の室内では、大きな赤いベッドの前に座る女性たちや、床にひざまずいて産湯の準備をする人物など、生まれたばかりの聖母マリア(あるいは聖なる幼子)を巡る、親密な情愛の場面が穏やかな色彩で描かれています。
    室内の左端には、頭に赤い頭巾をかぶった男性(聖ヨアキム)が椅子に腰掛け、奇跡の誕生を静かに待ちわびるように佇んでいます。
    さらに素晴らしい見どころは、建物の右側にあります。
    そこでは頭上に黄金の後光を讃えた聖なる人物(または天使)が、部屋の小窓からそっと中の様子を覗き込んでおり、その背後には、開いた扉の向こうにトスカーナ地方の美しい並木道や、緑豊かな自然の景色が優雅に広がっています。
    あえて背景の金箔を少なくし、建物や登場人物たちの自然な仕草、あるいは長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れやひび割れが、当時のシエナ派が誇った先進的な空間表現の息吹を、今も生き生きと伝えてくれます。

  • ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ『聖母子と寄進者』<br /><br />素朴な空間描写が魅力的なプレデッラから一転して、中世ゴシックの終わりを告げる「国際ゴシック様式」の、極めて優美で宮廷的な世界へと再び視線を引き戻す、15世紀初頭の美しい木版テンペラ画です。<br />画面中央では、深い紺色の豪奢なマントをまとい、柔らかなピンク色のベールを頭から垂らした聖母マリアが、穏やかな表情で座っています。<br />マリアの膝の上には、光り輝く後光を讃えた幼子キリストが堂々と立ち、右手をそっと掲げて、画面左下で小さくひざまずき両足を合わせて熱心に祈る寄進者に対して、聖なる祝福を授けています。<br />この作品の素晴らしい見どころは、人物たちの背景に広がる、詩的な自然の描写にあります。<br />これまでの平面的な金箔背景とは異なり、青空の下にゆるやかにうねるトスカーナ地方の緑豊かな山々や、点在する白い家々の風景、あるいは草花が咲き乱れる大地の様子が、初期ルネサンスの夜明けを感じさせる豊かな色彩で表現されています。<br /><br />聖母マリアが首をそっと傾げて我が子を見つめる洗練されたポーズや、衣服のなめらかなひだの立体感、あるいは流れるような植物模様が全面に手彫りされたオリジナルの重厚な金色の額縁が完璧に調和しています。<br />長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れや風合いが、当時の貴族たちが愛した至高の美意識と深い信仰のドラマを、今も静かに漂わせています。

    ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ『聖母子と寄進者』

    素朴な空間描写が魅力的なプレデッラから一転して、中世ゴシックの終わりを告げる「国際ゴシック様式」の、極めて優美で宮廷的な世界へと再び視線を引き戻す、15世紀初頭の美しい木版テンペラ画です。
    画面中央では、深い紺色の豪奢なマントをまとい、柔らかなピンク色のベールを頭から垂らした聖母マリアが、穏やかな表情で座っています。
    マリアの膝の上には、光り輝く後光を讃えた幼子キリストが堂々と立ち、右手をそっと掲げて、画面左下で小さくひざまずき両足を合わせて熱心に祈る寄進者に対して、聖なる祝福を授けています。
    この作品の素晴らしい見どころは、人物たちの背景に広がる、詩的な自然の描写にあります。
    これまでの平面的な金箔背景とは異なり、青空の下にゆるやかにうねるトスカーナ地方の緑豊かな山々や、点在する白い家々の風景、あるいは草花が咲き乱れる大地の様子が、初期ルネサンスの夜明けを感じさせる豊かな色彩で表現されています。

    聖母マリアが首をそっと傾げて我が子を見つめる洗練されたポーズや、衣服のなめらかなひだの立体感、あるいは流れるような植物模様が全面に手彫りされたオリジナルの重厚な金色の額縁が完璧に調和しています。
    長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れや風合いが、当時の貴族たちが愛した至高の美意識と深い信仰のドラマを、今も静かに漂わせています。

  • ピサネロ 『エステ家の王女の肖像』<br /><br />神聖な聖母子像から一転して、ルネサンスの精神である「個人の尊厳と写実主義」が見事に結実した、世俗的な女性肖像画の最高峰と言える、15世紀前半の特別な木版テンペラ画です。<br />画面中央には、フェラーラ侯爵家の令嬢(ジネヴラ・デステ、あるいはルチア・デステとされる)の気品あふれる横顔が、メダル彫刻の大家でもあったピサネロ特有の構図によって、非常に緻密な輪郭線で描き出されています。<br />当時のお洒落の最先端であった、額を広く見せるために生え際を剃り上げた独特の髪型や、白いリボンで優雅に結わえられたお団子髪のディテールが目を引きます。<br /><br />身にまとった豪華なドレスの袖には、エステ家の紋章を象徴する意匠や精緻な刺繍模様が、ピンクと白のなめらかな色彩で美しく表現されています。<br />肩にかけられたショールには、エステ家の象徴である花瓶の刺繍が克明に施されており、彼女の高貴な身元を静かに告げています。<br />さらにこの作品の至高の見どころは、王庭を思わせる背景の深い漆黒の生垣にあります。<br />そこには、赤や白の美しいカーネーション(結婚や愛の象徴)やコロンバイン(憂いの象徴)の草花が咲き乱れ、その間を本物と見忘れるほどリアルに描かれた数匹の美しい「蝶」が、優雅に舞い飛んでいます。<br />衣服のなめらかなひだの立体感や、静謐でありながらどこか哀愁を帯びた王女の澄んだまなざし、あるいは洗練された植物模様が全面に刻まれたオリジナルの重厚な金色の額縁が完璧に調和しています。<br />長い歳月を経て木版に刻まれた特有の風合いが、ルネサンスの宮廷貴族たちが愛した至高の美意識と、若くして儚い運命をたどった王女の命の輝きを、真っ直ぐに、伝えてくれます。

    ピサネロ 『エステ家の王女の肖像』

    神聖な聖母子像から一転して、ルネサンスの精神である「個人の尊厳と写実主義」が見事に結実した、世俗的な女性肖像画の最高峰と言える、15世紀前半の特別な木版テンペラ画です。
    画面中央には、フェラーラ侯爵家の令嬢(ジネヴラ・デステ、あるいはルチア・デステとされる)の気品あふれる横顔が、メダル彫刻の大家でもあったピサネロ特有の構図によって、非常に緻密な輪郭線で描き出されています。
    当時のお洒落の最先端であった、額を広く見せるために生え際を剃り上げた独特の髪型や、白いリボンで優雅に結わえられたお団子髪のディテールが目を引きます。

    身にまとった豪華なドレスの袖には、エステ家の紋章を象徴する意匠や精緻な刺繍模様が、ピンクと白のなめらかな色彩で美しく表現されています。
    肩にかけられたショールには、エステ家の象徴である花瓶の刺繍が克明に施されており、彼女の高貴な身元を静かに告げています。
    さらにこの作品の至高の見どころは、王庭を思わせる背景の深い漆黒の生垣にあります。
    そこには、赤や白の美しいカーネーション(結婚や愛の象徴)やコロンバイン(憂いの象徴)の草花が咲き乱れ、その間を本物と見忘れるほどリアルに描かれた数匹の美しい「蝶」が、優雅に舞い飛んでいます。
    衣服のなめらかなひだの立体感や、静謐でありながらどこか哀愁を帯びた王女の澄んだまなざし、あるいは洗練された植物模様が全面に刻まれたオリジナルの重厚な金色の額縁が完璧に調和しています。
    長い歳月を経て木版に刻まれた特有の風合いが、ルネサンスの宮廷貴族たちが愛した至高の美意識と、若くして儚い運命をたどった王女の命の輝きを、真っ直ぐに、伝えてくれます。

  • 14世紀シエナ派の画家 『授乳の聖母とキリストの生涯(プレデッラ付き祭壇画・全景)』<br /><br />王女の肖像から一転して、中世の深い信仰の世界へと視線を引き戻す、美しい木版テンペラ画の組み合わせです。<br />壁面の上部には、金色のゴシックアーチ額縁に収まった、母子の情愛が厳かに表現されている「授乳の聖母」が飾られています。<br />その真下に並ぶ横長のパネル(プレデッラ)には、「ヘロデ王の饗宴」「キリストの磔刑」「聖人の受難」という3つの劇的な場面が、緻密に描き込まれています。

    14世紀シエナ派の画家 『授乳の聖母とキリストの生涯(プレデッラ付き祭壇画・全景)』

    王女の肖像から一転して、中世の深い信仰の世界へと視線を引き戻す、美しい木版テンペラ画の組み合わせです。
    壁面の上部には、金色のゴシックアーチ額縁に収まった、母子の情愛が厳かに表現されている「授乳の聖母」が飾られています。
    その真下に並ぶ横長のパネル(プレデッラ)には、「ヘロデ王の饗宴」「キリストの磔刑」「聖人の受難」という3つの劇的な場面が、緻密に描き込まれています。

  • 14世紀シエナ派の画家 『授乳の聖母(拡大)』<br /><br />全体像から、主役である美しい聖母子像へ完璧に視線を導く、大変素晴らしい拡大クローズアップカットです。<br />ねじり柱や繊細な透かし彫りが施された、金色の華麗なゴシックアーチ額縁にぴったりと縁取られて、中世シエナ派ならではの母子の情愛が画面いっぱいに大きく表現された、貴重な木版テンペラ画です。<br />画面中央では、長い時を経て深みのある琥珀色へと落ち着いた金箔背景の中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼いキリストに乳を含ませています。<br />マリアの優しくも、どこか未来の受難を予感しているかのような憂いを帯びた表情や、ピンク色の柔らかな衣装をまとった幼子キリストが、母の胸元にそっと小さな手を添えながら優しく乳を飲む仕草が、中世美術の洗練されたタッチで生き生きと描かれています。<br />さらに素晴らしい見どころは、鋭く尖った上部の尖塔部分にあります。<br />そこには円形枠の中に、両手を広げて聖家族を祝福する父なる神の姿が、小さなシルエットのように緻密に描き込まれています。<br />頭上の後光や背景に施された緻密なドット状の型押し装飾、あるいは何世紀もの年月を生き抜いてきた木版特有の風合いが、当時の人々の純粋な信仰心と厳かな祈りの記憶を、今も静かに漂わせています。

    14世紀シエナ派の画家 『授乳の聖母(拡大)』

    全体像から、主役である美しい聖母子像へ完璧に視線を導く、大変素晴らしい拡大クローズアップカットです。
    ねじり柱や繊細な透かし彫りが施された、金色の華麗なゴシックアーチ額縁にぴったりと縁取られて、中世シエナ派ならではの母子の情愛が画面いっぱいに大きく表現された、貴重な木版テンペラ画です。
    画面中央では、長い時を経て深みのある琥珀色へと落ち着いた金箔背景の中で、深い紺色のマントをまとった聖母マリアが、幼いキリストに乳を含ませています。
    マリアの優しくも、どこか未来の受難を予感しているかのような憂いを帯びた表情や、ピンク色の柔らかな衣装をまとった幼子キリストが、母の胸元にそっと小さな手を添えながら優しく乳を飲む仕草が、中世美術の洗練されたタッチで生き生きと描かれています。
    さらに素晴らしい見どころは、鋭く尖った上部の尖塔部分にあります。
    そこには円形枠の中に、両手を広げて聖家族を祝福する父なる神の姿が、小さなシルエットのように緻密に描き込まれています。
    頭上の後光や背景に施された緻密なドット状の型押し装飾、あるいは何世紀もの年月を生き抜いてきた木版特有の風合いが、当時の人々の純粋な信仰心と厳かな祈りの記憶を、今も静かに漂わせています。

  • ロレンツォ・モナコ 『ヘロデ王の饗宴(祭壇画プレデッラ・左側部分拡大)』<br />全体像、上部聖母子拡大に続き、下部を飾る物語の幕開けとなる最初の1コマへ完璧に視線を導く、きわめて鮮明なクローズアップカットです。<br /><br />14世紀末から15世紀前半のフィレンツェで大活躍した巨匠ロレンツォ・モナコが、小さな木版の中に、聖書の張り詰めた人間ドラマを驚くほど緻密に描き出した、貴重な木版テンペラ画です。<br />画面中央では、格調高い青い王衣を身にまとい、王冠を戴いたヘロデ王が、白く長いテーブルが置かれた絢爛な宮廷の宴席の主座に腰掛けています。<br />その左側では、バイオリンのような楽器を奏でる音楽家が佇み、右側では給仕の男性がお盆を持って王たちの対話に静かに耳を傾けています。<br />この場面の最も劇的な見どころは、画面右側のアーチ構造の部屋の中にあります。<br /><br />そこには、美しい青いドレスを着たヘロデ王の妻ヘロディア(右)が椅子に座っており、その前にひざまずく娘のサロメ(左)が、自らの妖艶な踊りの褒美として手に入れたばかりの「洗礼者聖ヨハネの生首」が載った黒い大皿を、母へ大切そうに手渡す衝撃的な瞬間が捉えられています。<br />中世美術の伝統を引く、聖なる輝きを讃えたヨハネの黄金の後光が、大皿の上で一際神聖な存在感を放っています。<br />背景に贅沢に施された純金の金箔の輝きと、格子状の細かな幾何学模様が刻まれた美しい天井の梁の奥行き、そして何世紀もの年月を経て木版に刻まれた特有の擦れが完璧に調和しており、この受難を巡る悲劇のドラマが、今も、生々しく、伝わってきます。

    ロレンツォ・モナコ 『ヘロデ王の饗宴(祭壇画プレデッラ・左側部分拡大)』
    全体像、上部聖母子拡大に続き、下部を飾る物語の幕開けとなる最初の1コマへ完璧に視線を導く、きわめて鮮明なクローズアップカットです。

    14世紀末から15世紀前半のフィレンツェで大活躍した巨匠ロレンツォ・モナコが、小さな木版の中に、聖書の張り詰めた人間ドラマを驚くほど緻密に描き出した、貴重な木版テンペラ画です。
    画面中央では、格調高い青い王衣を身にまとい、王冠を戴いたヘロデ王が、白く長いテーブルが置かれた絢爛な宮廷の宴席の主座に腰掛けています。
    その左側では、バイオリンのような楽器を奏でる音楽家が佇み、右側では給仕の男性がお盆を持って王たちの対話に静かに耳を傾けています。
    この場面の最も劇的な見どころは、画面右側のアーチ構造の部屋の中にあります。

    そこには、美しい青いドレスを着たヘロデ王の妻ヘロディア(右)が椅子に座っており、その前にひざまずく娘のサロメ(左)が、自らの妖艶な踊りの褒美として手に入れたばかりの「洗礼者聖ヨハネの生首」が載った黒い大皿を、母へ大切そうに手渡す衝撃的な瞬間が捉えられています。
    中世美術の伝統を引く、聖なる輝きを讃えたヨハネの黄金の後光が、大皿の上で一際神聖な存在感を放っています。
    背景に贅沢に施された純金の金箔の輝きと、格子状の細かな幾何学模様が刻まれた美しい天井の梁の奥行き、そして何世紀もの年月を経て木版に刻まれた特有の擦れが完璧に調和しており、この受難を巡る悲劇のドラマが、今も、生々しく、伝わってきます。

  • ロレンツォ・モナコ 『キリストの磔刑(祭壇画プレデッラ・中央部分拡大)』<br /><br />饗宴のカットに続き、聖書に基づく受難の核心を正面から鮮明に捉えた、素晴らしいクローズアップカットです。<br />小さな画面を三分割するように配置された、高い芸術性と緊迫感が宿る見事な木版テンペラ画です。<br />画面中央には、天に向かって高く掲げられた十字架と、そこにかけられた主イエス・キリストの悲痛ながらも神聖な御姿が描かれています。<br />背景一面に贅沢に施された純金の金箔が、何世紀もの時を経て深みのある古色を帯びて輝き、この受難の聖性を一層際立たせています。<br />キリストの左右には、彼とともに磔にされた「二人の泥棒」の十字架も配されており、キリストを見上げるような独自のうねるような肉体描写が、この時代特有の豊かな表現力を伝えています。<br />十字架の左側では、我が子の壮れた姿を前に、深い悲しみのあまり気絶しそうになり、周囲の聖女たちに優しく抱きかかえられている聖母マリアの痛切なエピソードが描かれています。<br />そのすぐ後ろには、赤頭巾をかぶり天を仰いで嘆き悲しむ使徒ヨハネの姿も見えます。<br />一方、十字架の右側では、白馬に乗ったローマの百人隊長や、槍や旗を掲げてひしめき合う大勢の兵士たちが色彩豊かに表現されています。<br />さらに右端の暗い岩陰の前では、キリストの衣服を誰が手に入れるかを巡って、くじ引きをしたり、ひそひそと議論を交わしたりしている兵士たちのリアルな人間模様が描き込まれています。<br />登場人物たちの激しい感情や劇的なポーズ、あるいは長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れが、重厚な金色の額縁と見事に調和しており、当時のフィレンツェ派の洗練された宮廷ゴシックの気品と歴史の重みが、真っ直ぐに伝わってきます。

    ロレンツォ・モナコ 『キリストの磔刑(祭壇画プレデッラ・中央部分拡大)』

    饗宴のカットに続き、聖書に基づく受難の核心を正面から鮮明に捉えた、素晴らしいクローズアップカットです。
    小さな画面を三分割するように配置された、高い芸術性と緊迫感が宿る見事な木版テンペラ画です。
    画面中央には、天に向かって高く掲げられた十字架と、そこにかけられた主イエス・キリストの悲痛ながらも神聖な御姿が描かれています。
    背景一面に贅沢に施された純金の金箔が、何世紀もの時を経て深みのある古色を帯びて輝き、この受難の聖性を一層際立たせています。
    キリストの左右には、彼とともに磔にされた「二人の泥棒」の十字架も配されており、キリストを見上げるような独自のうねるような肉体描写が、この時代特有の豊かな表現力を伝えています。
    十字架の左側では、我が子の壮れた姿を前に、深い悲しみのあまり気絶しそうになり、周囲の聖女たちに優しく抱きかかえられている聖母マリアの痛切なエピソードが描かれています。
    そのすぐ後ろには、赤頭巾をかぶり天を仰いで嘆き悲しむ使徒ヨハネの姿も見えます。
    一方、十字架の右側では、白馬に乗ったローマの百人隊長や、槍や旗を掲げてひしめき合う大勢の兵士たちが色彩豊かに表現されています。
    さらに右端の暗い岩陰の前では、キリストの衣服を誰が手に入れるかを巡って、くじ引きをしたり、ひそひそと議論を交わしたりしている兵士たちのリアルな人間模様が描き込まれています。
    登場人物たちの激しい感情や劇的なポーズ、あるいは長い歳月を経て木版に刻まれた特有の擦れが、重厚な金色の額縁と見事に調和しており、当時のフィレンツェ派の洗練された宮廷ゴシックの気品と歴史の重みが、真っ直ぐに伝わってきます。

  • ロレンツォ・モナコ 『聖人の生涯の物語(祭壇画プレデッラ・右側部分拡大)』<br /><br />饗宴、磔刑に続き、祭壇画の下部を締めくくる最後の1コマを鮮明に捉えた、素晴らしいクローズアップカットです。<br />洗礼者聖ヨハネを巡る神秘的な奇跡と受難の場面が、国際ゴシック様式特有のうねるような衣服のラインと豊かな色彩で描き出された、実に見事な木版テンペラ画です。<br />左側の半面:重厚な木製の王座に腰掛けたキリストが、右手をそっと掲げて祝福を与えています。<br />その前では、大きな黒い翼を広げた天使が、衣服をまとわない一人の人物の魂を優しく導いており、天上の神聖な世界がまばゆい純金の金箔背景の中に表現されています。<br />右側の半面:ガラリと雰囲気が変わり、劇的な地上の受難の場面へと視線が移ります。<br />中央では、地面に深くひざまずき、まさに斬首に処されようとしている聖人の痛切な瞬間が捉えられています。<br />それを取り囲むように、長いマントをまとった聖人たちや、槍を手に冷酷に見守る古代の兵士、そして群衆たちが、ピンク、緑、青といった国際ゴシックならではの洗練された美しい色彩で配置されています。<br />右奥にはゴツゴツとした中世風の岩山が小さく描かれており、物語の舞台に深い陰影を与えています。<br /><br />今回の初期イタリア絵画をめぐる旅はここで一度区切り、次の旅行記へと同じ展示室の続きからスタートします。<br /><br />つづく

    ロレンツォ・モナコ 『聖人の生涯の物語(祭壇画プレデッラ・右側部分拡大)』

    饗宴、磔刑に続き、祭壇画の下部を締めくくる最後の1コマを鮮明に捉えた、素晴らしいクローズアップカットです。
    洗礼者聖ヨハネを巡る神秘的な奇跡と受難の場面が、国際ゴシック様式特有のうねるような衣服のラインと豊かな色彩で描き出された、実に見事な木版テンペラ画です。
    左側の半面:重厚な木製の王座に腰掛けたキリストが、右手をそっと掲げて祝福を与えています。
    その前では、大きな黒い翼を広げた天使が、衣服をまとわない一人の人物の魂を優しく導いており、天上の神聖な世界がまばゆい純金の金箔背景の中に表現されています。
    右側の半面:ガラリと雰囲気が変わり、劇的な地上の受難の場面へと視線が移ります。
    中央では、地面に深くひざまずき、まさに斬首に処されようとしている聖人の痛切な瞬間が捉えられています。
    それを取り囲むように、長いマントをまとった聖人たちや、槍を手に冷酷に見守る古代の兵士、そして群衆たちが、ピンク、緑、青といった国際ゴシックならではの洗練された美しい色彩で配置されています。
    右奥にはゴツゴツとした中世風の岩山が小さく描かれており、物語の舞台に深い陰影を与えています。

    今回の初期イタリア絵画をめぐる旅はここで一度区切り、次の旅行記へと同じ展示室の続きからスタートします。

    つづく

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