令和3年7月に北海道・北東北の縄文遺跡群は世界遺産に登録されており、今年の夏は、青森の三内丸山遺跡へ行ってきました。自分の中で縄文ブームとなっているところに、隣県の山梨県立美術館で「縄文―JOMON―展“縄文王国”山梨の土器・土偶と写真家小川忠博の縄文像」が開催されるということで行ってきました。　<br />縄文―JOMON―展 “縄文王国”山梨の土器・土偶と写真家小川忠博の縄文像の続き（2）です

縄文―JOMON―展 “縄文王国”山梨の土器・土偶と写真家小川忠博の縄文像（2）

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2022/11/03 - 2022/11/03

50位(同エリア1253件中)

エリア

甲府(山梨)

旅行の満足度: 4.5

同行者: 一人旅

交通手段: 自家用車

COOL“JOMON”～UTSUKUSHII
この章では「かわいい」という感性から、もう一歩熟成した感じのする「美しい」という表現がぴったりの遺物を展示しています
深鉢形土器　天神遺跡　前期　山梨県立考古博物館
北杜市天神遺跡から出土した深鉢形土器。
ほぼ完形で、沈線地文の上に結節浮線文が展開し、特に上部にかけては同心円状に展開します。底部から口縁部にかけてのラインは繊細で、全体に優雅で整った形状を示しています
深鉢形土器殿林遺跡中期後葉山梨県立考古博物館
中部高地を代表する、均整のとれた美しさを持つ大型土器。日本固有の原始美術品として海外でも評価が高く、国の重要文化財にも指定されています。丁寧な器面調整と曲線文様の割り付けは見事で、これまでに４度、海外での展覧会に出品されています
深鉢形土器小屋敷遺跡中期後葉（末）北杜市教育委員会
ろくろを使わずに手びねりで作ったとは思えない均整の取れた卵形の美しいプロポーションが目を引きます。
渦巻き文と蕨手状文を組み合わせて描かれた区画の外に縄文を充填させることで、区画文様の美しさを際立たせています
深鉢形土器釈迦堂遺跡中期中葉釈迦堂遺跡博物館
こちらは人体文土器と呼ばれ、胴下部に手を広げた人のかたちをした文様が施されているのが特徴。胴下部に付けられた人間が両手両足を広げたような人体文は、縄文土器の様々な文様の中でも特に不思議な表現です。
指のモチーフに注目すると三本指、四本指で表現されたものがあり、単純に人間の体を表現したものというよりも、蛙の文様もしくは人体と蛙が合体した「半人半蛙」とする考え方もあります。こうした文様は有孔鍔付土器の器面に施される例が数多くみられます

深鉢形土器（埋甕）釈迦堂遺跡中期後葉釈迦堂遺跡博物館
深鉢形土器上小用遺跡中期後葉北杜市教育委員会
深鉢形土器（水煙文系土器）一の沢遺跡中期中葉山梨県立考古博物館
（左）土偶萩の平遺跡（栃木県）栃木県教育委員会
（中）土偶札苅遺跡（北海道）木古内町教育委員会
（右）顔面把手　山梨県内各地
各地の土偶、個性的です

土偶（縄文の女神）西ノ前遺跡（山形県）山形県立博物館
頭身の体を支えるための安定感のある太い脚、それとは対象的な薄い上半身、後方に突き出した臀部が特徴の土偶です。
薄い板状の上半身は無駄な粘土が残らないように削ぎ落とされていること、逆に脚部はパンタロン状に裾を広げ安定させている上に肉厚になる部分は生焼け回避のためか脚部内部の粘土を削りとっていることから、大きさを求めて工夫をしたのではないかと考えられています
土器など
深鉢形土器（水煙文土器）津金御所前遺跡中期後葉北杜市教育委員会
COOL ”JOMON”～KAKKOII
深鉢形土器（水煙文土器）上野原遺跡中期後葉山梨県立考古博物館
この章では、その完成された造形美を「格好いい」と表現し、まさに“COOL JAPAN”の原点と位置付けています
深鉢形土器（水煙文土器）部分拡大
曽利Ⅰ式。盆地部で発見される４単位の把手を持つ水煙土器の代表作。旧中道町のシンボルとして活躍。マンホールにもデザインされました。地元の小学校にもレプリカが展示されるほど地元に愛されています。

深鉢形土器　釈迦堂遺跡　中期中葉　釈迦堂遺跡博物館
深鉢形土器釈迦堂遺跡中期中葉釈迦堂遺跡博物館
土器の器面全体に区画をめぐらす区画文土器。全体に区画をめぐらせ、その中を玉抱き三叉文や三叉文で充填しています。また、ヘビのような文様も多く見られ、さらにキャタピラ文も加飾しており、ありとあらゆる方法で、空白を嫌ったかのような印象を受けます
深鉢形土器釈迦堂遺跡中期中葉釈迦堂遺跡博物館
土器　笹山遺跡（新潟県）
（左）竪穴式住居　真原A遺跡　北杜市
（右）土器

土器
深鉢形土器酒呑場遺跡中期中葉山梨県立考古博物館
深鉢形土器酒呑場遺跡中期中葉山梨県立考古博物館
深鉢形土器酒呑場遺跡中期中葉山梨県立考古博物館
深鉢形土器酒呑場遺跡中期中葉山梨県立考古博物館
土器・土器片　中野谷松原遺跡（群馬県）安中市教育委員会
土器　西原大塚遺跡（埼玉県）志木市教育委員会
土器　一の沢遺跡（山梨県）山梨県立考古博物館
深鉢形土器原町農業高校前遺跡中期中葉山梨県立考古博物館
在地系の新道式土器の特徴の中に北陸系新保式の蓮華文を口縁部の区画の中に組み込ませた折衷型の土器。文化融合のマニアにはたまらない逸品
深鉢形土器釈迦堂遺跡中期中葉釈迦堂遺跡博物館

深鉢形土器　天神堂遺跡　甲州市教育委員会
深鉢形土器　天神堂遺跡　部分拡大
土器
土器
土器
土器
小ぶりの土器でも、あふれるばかりの文様と装飾の突起は大きな土器にも遜色ありません
深鉢形土器石之坪遺跡韮崎市教育委員会
深鉢形土器（大型把手付深鉢形土器）石之坪遺跡韮崎市教育委員会
深鉢形土器石之坪遺跡上から
深鉢形土器（大型把手付深鉢形土器）高松遺跡中期中葉北杜市教育委員会
屈曲した胴部から大きく広がった口縁部には塔状の大型の把手が４つ付けられています

深鉢形土器（大型把手付深鉢形土器）高松遺跡　部分拡大
口縁部や塔状の把手には、半肉彫で見事に渦巻文やＷ字文が施されています
深鉢形土器一の沢遺跡山梨県立考古博物館
井戸尻Ⅲ式の代表的な器形である屈折底と４単位の大型塔状把手をもち、把手の
内部は中空で、先端部には小円筒型突起を有しています。
深鉢形土器一の沢遺跡（部分拡大）
内湾した口縁部には、手を上に掲げでバンザイポーズの上半身のみの人体文が配されています
深鉢形土器突起部（蛇頭状突起）女夫石遺跡中期中葉韮崎市教育委員会
深鉢形土器突起部（梟頭状突起）石之坪遺跡中期中葉韮崎市教育委員会
エピローグ～展開された“JOMON”
エピローグでは、小川忠博氏が開発した写真技術によって、縄文土器の文様の展開写真が展示されています。
深鉢形土器石之坪遺跡の展開写真
深鉢形土器石之坪遺跡中期中葉韮崎市教育委員会
深鉢形土器（人体文土器）一の沢遺跡中期中葉山梨県立考古博物館
口縁部にみみずく把手をもち、胴部には区画文（パネル文）が施され、この
中に重郎原遺跡とよく似た人体文が配されています。左回りで見ていくと、手首を曲げて手を広げ→手を合わせて右向き→回転→手を合わせて左向きといった舞い踊るように流れで表されています
一の沢遺跡土器の展開写真
この展開写真によって、実物を見ただけでは分かりづらい、人や動物などの装飾、同じ渦巻きの連続とみられる文様も、変則的になっているところもよく見え、改めて縄文土器の芸術性と技術力の高さに驚かされます