2022/06/04 - 2022/06/04
210位(同エリア4227件中)
+mo2さん
令和2(2019)年10月より施設整備のために1年半ほど休館していた国立西洋美術館。リニューアルオープン記念として、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館の協力を得て、自然と人の対話(ダイアローグ)から生まれた近代の芸術の展開をたどる展覧会が、6月4日より開催となります。開催日の朝一番に早速訪れました。
【国立西洋美術館HPより】
フォルクヴァング美術館と国立西洋美術館は、同時代を生きたカール・エルンスト・オストハウス(1874-1921)と松方幸次郎(1866-1950)の個人コレクションをもとに設立された美術館です。本展では開館から現在にいたるまでの両館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100点を超える絵画や素描、版画、写真を通じ、近代における自然に対する感性と芸術表現の展開を展観します。産業や社会、科学など多くの分野で急速な近代化が進んだ19世紀から20世紀にかけて、芸術家たちも新たな知識とまなざしをもって自然と向き合い、この豊かな霊感源から多彩な作品を生み出していきます。
足元の草花から広大な宇宙まで、そして人間自身を内包する「自然」の無限の広がりから、2つの美術館のコレクションという枠で切り出したさまざまな風景の響き合いをお楽しみください。自然と人の関係が問い直されている今日、見る側それぞれの心のなかで作品との対話を通じて自然をめぐる新たな風景を生み出していただければ幸いです。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 新幹線
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国立西洋美術館は2016年に「ル・コルビュジエの建築作品ー近代建築運動への顕著な貢献ー」の一部として世界遺産に登録されていますが、その際にユネスコから「当初の前庭の設計意図が一部失われている」と指摘されています。休館に際して行われた前庭の改修工事では、植栽は最小限に、柵は透過性のあるものに変更されました。リニューアル後、すぐに常設展を見に来ていますが、今回はリニューアルオープン記念の特別展です。
国立西洋美術館 美術館・博物館
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開幕初日ということもあり、若干混雑はしていましたが、一作品ごとゆっくり鑑賞できる余裕はあり、ゆっくり回りました。そいて特別展としては珍しく、一部(全体の1割程度)の作品を除き写真撮影がOKでした。
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全4章からなる展覧会、まずはブーダンの作品から
ウジェーヌ・ブーダン「トルーヴィルの浜 」1867年 国立西洋美術館
I 空を流れる時間 大気の条件や時間帯、季節によって絶えず光は変化し、その効果の下で自然の外観も変化し続けます。この章は雲を先頭に気象のテーマで始まります。ノルマンディーの海岸で雲がたなびく空を観察し、戸外で制作したブータン。その試みはモネやピサロら印象派の世代へ受け継がれます。 -
「トルーヴィルの浜 」(部分拡大)
トルーヴィルは、ノルマンディー海岸の町でパリの北西に位置にある当時のパリの人々の避暑地として人気のあった場所。そこで憩う人々を描いた作品。全体的にグレーがかった風景に、登場人物たちの衣裳や日傘を、赤や黄のアクセントとして使っています。 -
クロード・モネ「雲の習作 Study of Cloud」制作年不詳 国立西洋美術館
パステル画です。 -
エドゥアール・マネ「嵐の海」1873年 国立西洋美術館
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クロード・モネ「波立つプールヴィルの海 」1897年 国立西洋美術館
モネが生涯を通じて愛したモティーフの一つに、故郷ノルマンディー地方の海と空が形づくる景色があります。これは最初の師ブーダン譲りのモティーフとも言えますが、風俗画的要素を多分に残すブーダンに対して、モネの関心はむしろ風景自体にありました。浜辺の漁師小屋から描かれたこの作品において用いられた手法は、彼の他の多くの風景画と異なり、リズミカルな粗い筆触の交錯であり、塗りは非常に薄くなっています。 -
カミーユ・ピサロ「ルーヴシエンヌの雪景色」1872年 フォルクヴァング美術館
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クロード・モネ「雪のアルジャントゥイユ」1875年 国立西洋美術館
1875年の冬に描かれたこの絵に表わされているのは、まだ整備されて間もない新市街のサン=ドニ大通りと鉄道の駅舎です。 モネは、戸外で絵を描く方法を採り始めてからすぐ雪景色を描いています。他の仲間の画家たちがあまり関心を示さなかったこの題材に対して、モネは積極的に取り組み、白い雪の上に戯れる繊細な光の効果を追求しました。 -
クロード・モネ「セーヌ河の朝 」1898年 国立西洋美術館
1896年から翌々年にかけて、55歳のモネは早朝に起きて、「セーヌ河の朝」というシリーズを制作しました。使用する色の数を抑え、装飾的効果をも狙ったと思われるこの連作の多くは、夏の朝、霧のたちこめるジヴェルニー付近のセーヌ河の風景を描いています。この連作中の一点とみなされる本作品《セーヌ河の朝》もまた、ほぼ同じ時期に同じ場所で制作されています。 -
クロード・モネ「ルーアン大聖堂のファサード(朝霧)」1894年 フォルクヴァング美術館
ローマの時代からセーヌ河による水運の拠点として発展し、かつてノルマンディー公国の首都として栄えたルーアンは、現在もフランス有数の大都市です。また、1431年にジャンヌ・ダルクが火刑に処せられた地としても知られています。 セーヌ河右岸の旧市街の中心の建つノートル=ダム大聖堂は、フランス・ゴシック建築の精華のひとつに数えられています。この大聖堂のファサード(西正面)を、モネは夜明け直後から日没直後のさまざまな時間まで、異なる天候のもとで描き出して、その数は33点にまで及びました。1895年5月には、デュラン=リュエル画廊の個展で、そのうちの20点を発表しています。 -
クロード・モネ「ウォータールー橋、ロンドン 」1902年 国立西洋美術館
モネは1871年以来、ロンドンを数度にわたって訪れています。その中でも、1899年、1900年、1901年の三回の滞在は豊かな収穫をもたらしました。テームズ河畔のサヴォイ・ホテルのバルコニーに画架を据えて、モネは、国会議事堂、ウォータールー橋、チャーリング・クロス橋という三つのモティーフに焦点を合わせて描き続けました。この作品もそのような連作のうちの一点です。 -
クロード・モネ「チャーリング・クロス橋、ロンドン」1902年 国立西洋美術館
1921年12月頃松方幸次郎がモネ本人より購入した作品。 -
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「ナポリの浜の思い出 」1870-72年 国立西洋美術館
19世紀の画家たちにとって、イタリアは憧れの土地でした。コローもイタリアを3度訪れ、戸外スケッチを手がけています。ナポリ滞在は短いものでしたが、画家に強い印象を残したようで、後年も、この地を追想した風景画をいく度か描きました。なかでも銀灰色のニュアンスが散らされた本作品は、コロー晩年の画風をよくあらわしています。この特徴的な縦長の大画面の前に立つと、木立の奥から海風が吹き寄せてくるようです。 -
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「森の外れの騎手」1874-75年 フォルクヴァング美術館
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『コロー、ドービニー、ドラクロワ、ミレー、ルソーによる 40のクリシェ=グラス』1921年出版 国立西洋美術館
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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「夢想者」1854年 国立西洋美術館
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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「ホラティウスの庭園」1855年 国立西洋美術館
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エドゥアール・マネ「ブラン氏の肖像」1879年頃 国立西洋美術館
19世紀フランスの画家マネは、同時代のパリに生きる人々の「今」を描き、近代絵画の道を切り拓きました。印象派の画家たちは彼を範と仰ぎました。グレーのシルクハットに青紫の夏服を粋に着こなし、小道でポーズをとるブラン氏。マネらしい現代性にあふれた作品で、晩年に印象派の画家たちから影響を受けた明るい自然光の表現が顕著です。この肖像画は結局、ブラン氏の手元には渡らず、マネの死後、ドガが入手しています。 -
マックス・リーバーマン「ラーレンの通学路」1898年 フォルクヴァング美術館
ベルリン分離派の創立者でプロイセン芸術アカデミーの総裁を務めるなど、ドイツ画壇の重鎮として知られた画家マックス・リーバーマンの作品。 -
ピエール=オーギュスト・ルノワール「オリーヴの園」1910年頃 フォルクヴァング美術館
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ピエール=オーギュスト・ルノワール「風景の中の三人」1916年 国立西洋美術館
晩年、心身ともに苦境に立たされたルノワールは、それを忘れようとするかのように幸福な充実感とまろやかな絵画性に満ちた作品を生み出していきました。特にこの作品では色彩の諧調がすばらしく、ルノワール晩年のコロリスムの証となっています。3人の人物は自然の風景の中にとけこみ、溢れんばかりの陽光が画面を満たしています。 -
ハインリヒ・キューン「夏の風景」1899年 フォルクヴァング美術館
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今年は、ポーラ美術館で「開館20周年記念展 モネからリヒターへ 」でモネ「睡蓮の池」とリヒター作品の競演を見ていますが、こちらのモネ「舟遊び」とリヒター「雲」も素晴らしい競演です。
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ゲルハルト・リヒター「雲」1970年 フォルクヴァング美術館
6月7日から国立近代美術館でも「ゲルハルト・リヒター展」が始まりますが、楽しみです。 -
クロード・モネ「舟遊び」1887年 国立西洋美術館
最初の妻カミーユを亡くしたモネは、1883年、2人の子供たち、そして後に正式に結婚することになるアリス・オシュデとその子供たちを連れ、ジヴェルニーへ移り住みます。画家はこの地で、自宅近くを流れるセーヌ川の支流エプト川で舟遊びを楽しむ家族の情景を何度も描きます。舟遊びは当時人気の休日の娯楽でした。 本作品は一連の「舟遊び」の作品のなかでも完成度の高いものです。画面いっぱいを占める水面の上半分は明るい空を映した青とバラ色、下半分は小舟と娘たちの影が濃紺や茶、青の筆触で描かれ、人も船も水面と同じ風景となって画面に溶けこんでいます。画家の関心は、揺らめく光と影が作りだす水面の色のハーモニーにあります。川の面を上空から見下ろす視点でとらえ、大胆に右半分を断ち切った小舟を配した構図は、日本の浮世絵からヒントを得たと考えられています。モネは浮世絵のコレクターでした。 -
フランク・ブラングィン「共楽美術館俯瞰図」1918-22年 個人蔵
フランク・ブラングィンは、世紀末の装飾芸術運動を背景に、タブローや壁画、版画から、室内装飾、家具デザインまで幅広く手がけ、国際的に活躍した芸術家であす。海や船、そして造船所や港湾労働者を題材とする絵画を多数残しており、松方がこの画家に魅せられた理由もおそらくそこに見ることができます。松方コレクションには、大型装飾パネルを含む油彩画約80点、素描100点強、版画約400点にのぼるブラングィン作品があったことがわかっていますが、主要作品を含むその多数の作品が1939年の倉庫火災で焼失しました。実現することのない構想ではありましたが、ブラングィンは松方のために「共楽美術館」のデザインを手がけました。今日、ブラングィンによる美術館の設計に関わる図は、平面図や立体図、スケッチなど10数点が知られます。 -
II 〈彼方〉への旅
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ「夕日の前に立つ女性」1818年頃 フォルクヴァング美術館
ドイツのロマン派の画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒによって制作された油彩画。 -
カール・フリードリヒ・シンケル「ピヘルスヴェルダー近郊の風景」1814年 フォルクヴァング美術館
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ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール「ピルニッツ城の眺め」1823年 フォルクヴァング美術館
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カール・グスタフ・カールス「高き山々(カスパー・ダーヴィト・フリードリヒに
もとづく模写)」1824年頃 フォルクヴァング美術館 -
ギュスターヴ・ドレ「松の木々」1850年 フォルクヴァング美術館
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ギュスターヴ・クールベ「波」1870年 フォルクヴァング美術館
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ギュスターヴ・クールベ「波」1870年頃 国立西洋美術館
ノルマンディー地方、エトルタの嵐の海を描いた本作は、1870年ごろに制作されたものです。 -
フェリックス・ビュオ「サン=マロ湾の断崖」1889-90年 国立西洋美術館
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ロドルフ・ブレダン「急流」1884年 国立西洋美術館
ロドルフ・ブレダンは、非常に詳細で技術的に正確な版画と素描で有名な、風変わりで幻想的なフランスの彫刻家、石版画家、エッチャーです。彼の作品の多くは、幻想的、エキゾチック、または不気味な要素を持っていました。彼はリソグラフィーの先駆者であり、他のリトグラファーによる同様の作品に影響を与えた「死の喜劇」などの珍しい作品を制作しました。ブレスディンの作品は、ヴィクトルユーゴー、テオフィルゴーティエ、シャルルボードレールなどの同時代の人々に賞賛されました。 -
ロドルフ・ブレダン「善きサマリア人」1867年 国立西洋美術館
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ロドルフ・ブレダン「魔法の家」1871年 国立西洋美術館
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ロドルフ・ブレダン「森の中の小川」1880年 国立西洋美術館
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テオドール・シャセリオー「アクタイオンに驚くディアナ」1840年 国立西洋美術館
2017年「シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才」開催されましたが、アングル門下の異端児テオドール・シャセリオーは、10代の初めに師に入門を許された早熟の天才です。 -
ギュスターヴ・モロー 「聖なる象(ペリ)」1882年 国立西洋美術館
「聖なる象」は、モローの生前に一度展覧会に出された後ずっと個人の所蔵となって、最近までまともな複製図版さえなかった幻の水彩画です。正面を向いた象が静かに水辺を歩み、その背には東洋風の衣装を身に纏った女性が横たわっています。女性の回りには彼女を囲み礼讃するかのように有翼の人物が5人、宙を舞っています。モローはこの作品の準備デッサンに「ペリ」という書き込みをしており、中央の女性がペリ、すなわちペルシアの妖精であることが分かりますが、具体的な説話などには関わりがないようです。白象を神聖視するヒンドゥー教が想起されるもうひとつの題名《聖なる象》も、モロー自身が文書に書き残したものとはいえ、特定の物語との関連は見いだせません。 -
ギュスターヴ・モロー 「聖女チェチリア」1885-90年頃 国立西洋美術館
チェチリアはローマ時代の殉教者で、16世紀以降音楽の守護者と見なされ、しばしば様々な弦楽器を持った姿で表わされました。この作品では、チェチリアが楽器を弾く後ろで、半獣神たちがその音色に耳を傾けていますが、これはもとの聖女伝説にある逸話ではなく、モロー独自の解釈が重ね合わされたものです。モローの作品では、竪琴をともなった詩人が精神性を、半獣神が自然(物質性)を表わし、両者の対立と精神性の勝利が生涯の大きなテーマとなっています。 -
オディロン・ルドン「『ゴヤ讃』より(2)沼の花、悲しげな人間の顔(2)」 1885年 国立西洋美術館
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オディロン・ルドン『聖アントワーヌの誘惑』(第1集)1888年より
「そして、あらゆる種類の恐ろしい動物達が現れる」国立西洋美術館 -
オディロン・ルドン『聖アントワーヌの誘惑』(第1集)1888年より
「至る所に瞳が燃えさかる」国立西洋美術館 -
オディロン・ルドン「目を閉じて」1890年 国立西洋美術館
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オディロン・ルドン「雲を狙うケンタウロス」1895年 国立西洋美術館
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ポール・ランソン「ジギタリス 」1899年 国立西洋美術館
19世紀末のナビ派の一員として活躍したランソンは、同僚のドニやボナール、ヴュイヤールと同様、装飾的な画面を得意としました。タイトルのジギタリスとは、前景右手に伸びる釣鐘状のたくさんの薄紫の花をつけた植物です。掛け軸にも似た縦長の画面に描かれたこの作品は、いわゆる当時の日本趣味(ジャポニスム)を反映していますが、同時に、装飾性・平面性など、画面の二次元的特性を重視したナビ派の造形原理に基づいています。実現はされなかったもののタピスリー(綴れ織)のための下絵として制作されたという経緯からみても、中世の「花散らし紋様(ミルフルール)」のタピスリーを強く意識して作画されていることは明らかです、また、曲線を多用した表現は、アール・ヌーヴォーの工芸に直結しています。 -
ポール・ゴーガン「海辺に立つブルターニュの少女たち」1889年 国立西洋美術館
ゴーガンは、近代化から取り残され、古代のケルト文化の痕跡をいたるところに残す北西フランスのブルターニュ地方を、好んで訪れました。この絵は、1889年の秋に海辺の村ル・ブールデュで制作された、ゴーガンのブルターニュ時代を代表する作品のひとつです。前年末にゴーガンは南仏アルルで、芸術家の共同体の夢を追ってファン・ゴッホとの共同生活を試み破綻しましたが、ブルターニュにおいては1886年の最初の滞在以来、多くの作家たちと交流を持ちながら、この地方の古い習俗や風景を描き続けました。画面に描かれた少女たちは、裸足で、ブルターニュ地方独特の民族衣装を身にまとった姿でモデルとなっています。背景となっているのは、崖と入り江に囲まれ、野趣に満ちた、ブルターニュ特有の風光明媚な海岸風景です。画面全体を覆う平面的な賦彩と様式化された波の表現、中心軸を外した人物の配置などの表現は、注目に値します。この頃、ゴーガンの中で日本の浮世絵の影響は頂点に達していたのです。こうした大胆な試みは、やがて1891年以降に赴くタヒチ島で、さらに深められていきます。 -
ポール・ゴーガン「扇を持つ娘」1902年 フォルクヴァング美術館
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ポール・ゴーガン「『ノア・ノア』:マナオ・トゥパパウ(死霊が見ている)」1893-94年 国立西洋美術館
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全編を通したテーマとして自然の表象がしっかりと軸になっており、シンプルな構成と見やすい展示方法に仕上げられています。
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ロヴィス・コリント「樫の木」1907年 国立西洋美術館
ドイツの印象派を代表する画家、ロヴィス・コリントの1作です。この画家は、パリのアカデミー・ジュリアンで学んだ経験を基礎とした写実主義的な絵画の数々、フランス印象派の影響が顕著なベルリン分離派参加以降の仕事、さらにその後の表現主義的な作風など、19世紀末から20世紀初頭にかけて多様なスタイルを見せました。本作品では、クールベからモネ、ひいてはセザンヌらまでのフランス人画家たちの樹木の描写を想起させずにはいない構築的かつ躍動的な筆致によって、1本の樫の木をカンヴァス全体に網状に描きだし、かつてのドイツ・ロマン主義に馴染みの絵画主題であったものを、あらたな表現の次元へと押し広げています。 -
クリスティアン・ロールフス「森の中」1901年 フォルクヴァング美術館
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マックス・エルンスト「石化した森」1927年 国立西洋美術館
エルンストはシュルレアリスムの代表的な画家で、彼が生涯を通じて繰り返し描いた重要な主題が森でした。鬱蒼と茂る、荒涼とした森の背後に太陽が透けて見えるイメージは、得体の知れない不安を喚起するような神秘性を持ち、しばしば19世紀ドイツ・ロマン派と結びつけられています。しかし、彼にとって森とは、不安と喜びとを同時に喚起する両義的なものでした。彼自身は森について次のように書いています。「父に連れられて現実の森の中にはいったときの魅力と恐ろしさはいつまでも忘れられなかった。広大な空間の中でゆったりと呼吸することの素晴らしい喜び。それとともにある、木々の檻の中に閉じ込められているという苦悩の感覚。自由であり、囚われてもいる」。この作品には「グラッタージュ」という技法が使われています。絵具を塗ったカンヴァスを、ある物質の上に置き、絵具をパレットナイフで削り落とすことによって、その質感を写し取る技法です。
※写真は本展での撮影ではありません。 -
III 光の建築
ポール・セザンヌ「ポントワーズの橋と堰」1881年 国立西洋美術館
パリから約28km離れ、近代化された町並と田園の風景が融合した町ポントワーズで、セザンヌは1872年から1881年まで、印象派の画家ピサロと多くの時間を共有し、ときにイーゼルを並べ同じ風景を描いています。 -
ポール・セザンヌ「ベルヴュの館と鳩小屋」1890?1892年頃 フォルクヴァング美術館
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フェルディナント・ホドラー「モンタナ湖から眺めたヴァイスホルン」1915年 フォルクヴァング美術館
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テオ・ファン・レイセルベルヘ「ブローニュ=シュル=メールの月光」1900年 フォルクヴァング美術館
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アクセリ・ガッレン=カッレラ「ケイテレ湖」1906年 国立西洋美術館
国際的な評価の高まりを見せるフィンランドの画家アクセリ・ガッレン=カッレラ。本作では、画面の多くが鏡のような湖面で占められ、さざ波を表すジグザグのパターンを配することで大胆な装飾的効果が生み出されています。 -
ポール・シニャック「サン=トロぺの港 」1901-02年 国立西洋美術館
新印象主義からの脱却とフォーヴィスム誕生の準備という、世紀の変わり目におけるシニャックの業績を代表する作品となっています。 -
「サン=トロぺの港 」(部分拡大)
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ポール・シニャック「ポン・デ・ザール」1912-13年 フォルクヴァング美術館
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アンリ・ル・フォーコニエ「風景」1912年 フォルクヴァング美術館
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ピート・モンドリアン「コンポジション X」1912-13年 フォルクヴァング美術館
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ヴァシリー・カンディンスキー『小さな世界』1922年より
「小さな世界 I」国立西洋美術館 -
「小さな世界 Ⅱ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅲ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅳ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅴ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅵ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅶ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅷ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅸ」国立西洋美術館
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「小さな世界 Ⅹ」国立西洋美術館
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「小さな世界 ?」国立西洋美術館
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パウル・クレー「月の出(サン=ジェルマン界隈)」1915年 フォルクヴァング美術館
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優れた近代美術の個人コレクターとして知られる、松方幸次郎(1866-1950)とカール・エルンスト・オストハウス(1874-1921)。それぞれのコレクションを礎に設立された、日独を代表する美術館による初のコラボレーション企画です。
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IV 天と地のあいだ、循環する時間
ジャン=フランソワ・ミレー 「春(ダフニスとクロエ)」1865年 国立西洋美術館
『ダフニスとクロエ』は、古代ギリシャの詩人ロンゴスが書いたとされる恋愛物語であり、農民画で知られるミレーでは珍しい作品ではないでしょうか。 -
モーリス・ドニ「踊る女たち」1905年 国立西洋美術館
ドニはフランクフルト近郊、ヴィースバーデンのミュッツェンベッカー男爵邸内の奏楽室のための装飾(現在は紛失)を手掛けています。《永遠の夏》と題されたこの装飾は、5枚の画面から成り、それぞれには、「オルガン」、「声楽」、「四重奏」、「舞踏」、「オラトリオ」の主題が描かれており、本作の《踊る女たち》は、そのうちの「舞踏」のための習作またはレプリカと考えられます。 -
クロード・モネ「陽を浴びるポプラ並木」1891年 国立西洋美術館
光の戯れと反映を何よりも深く追求したモネは、同一のモティーフを光や色彩あるいは構図を変えて何回か描くという意味での「連作」をいくつも残しています。1890年に着手された「積みわら」、1892-94年の「ルーアン大聖堂」、晩年の「睡蓮」などがその例であり、そこではほぼ同一のモティーフを、朝、白昼、夕方などの異なった時刻において、さまざまな光の効果の下に描き出しています。 本作品は、こうした連作の一つ「ポプラ並木」のうちの一点です。ジヴェルニーにほど近いエプト川左岸のポプラ並木はモネを魅了し、1891年の春から夏にかけて画家は幾度もその姿を画布に描きました。それら一連の作品は、S字型の曲線を空に描き出すポプラ並木を扱っている点ではほぼ共通しているものの、構図と画面効果は微妙に異なっています。この作品においてとりわけ特徴的なのは、大きく前景に描かれた3本のポプラであり、青い空と白い雲、緑とばら色の生みだす晴れやかな印象です。同一構図の作品が他に数点存在することが知られています。 -
ピエール=オーギュスト・ルノワール「木かげ 」1880年 国立西洋美術館
モネやシスレー、ピサロなどの他の印象派の画家たちに比べ、人物を好んで描いたルノワールには、風景画は決して多くありませんが、筆触分割によって明るい外光を捉えようという試みは、いくつかの優れた風景画を生みだしました。ここでは、点描にも似た細かな筆触で、林の緑と大気の存在が、見事に表現されています。 -
ジョヴァンニ・セガンティーニ 「羊の剪毛 」1883-84年 国立西洋美術館
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「羊の剪毛 」(部分拡大)
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カミーユ・ピサロ「収穫」1882年 国立西洋美術館
横長の画面一杯に描かれた麦畑と働く人々。遠くに見える地平線は画面の上方から四分の一程のところに置かれています。画面に見えるのはパリ郊外の静かな村ポントワーズにおける麦の刈り入れ風景です。すでに1840年代から、パリと鉄道で結ばれていたこの付近には若い画家たちが住みはじめていました。1866-68年、1872-82年の二度に渡ってアトリエを構えた印象派の画家ピサロも、そのひとりでした。 ピサロの第二回ポントワーズ滞在の最後を飾る本作品は、第七回「印象派展」に出品されたものです。 -
フィンセント・ファン・ゴッホ「刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール
病院裏の麦畑)」1889年 フォルクヴァング美術館 -
ケーテ・コルヴィッツ「『農民戦争』より(1)耕す者」1907年 国立西洋美術館
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ケーテ・コルヴ「自画像」1915年 国立西洋美術館
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エドヴァルド・ムンク「眼鏡を掛けた自画像」1922年 国立西洋美術館
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エドヴァルド・ムンク「アルファとオメガ」1908-09年 国立西洋美術館
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エミール=アントワーヌ・ブールデル「友愛の鳩」
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フィンセント・ファン・ゴッホ 「バラ」1889年 国立西洋美術館
この作品は、1889年に入院したサン=レミの精神療養院に咲くばらを描いたものです。 -
クロード・モネ 「黄色いアイリス」1914-17年頃 国立西洋美術館
ジヴェルニーに居を定めてからのモネのモティーフは次第にその庭園の内部に限られてゆきますが、その一つである本作品は植物を描いた作品の中でもとりわけ装飾性の強いものです。障壁画を思わせる縦長の大画面は日本趣味を感じさせ、上昇する線がうねるように重なって空間を曖昧にしつつ華麗な効果を生み出しています。 -
クロード・モネ「睡蓮、柳の反映」1916年 国立西洋美術館
本作は、2016年9月にルーヴル美術館内で発見され、17年11月に松方家から国立西洋美術館に寄贈されたものです。しかし作品の上半分が大きく欠損しており修復作業を約1年間かけて実施し、松方コレクション展でお披露目となっています。 -
エンネ・ビアマン「睡蓮」1927年頃 フォルクヴァング美術館
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クロード・モネ「睡蓮」1916年 国立西洋美術館
モネの「睡蓮」の中でも最も優れたものの一つといわれています。 -
「睡蓮」(部分拡大)
本作品の制作時にはすでに20年近く睡蓮が描かれていました。花や水面の影に見られる、細部を大胆に省略した表現は、後の表現主義や抽象絵画にもつながる、モネの革新性を示すものといえます。
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この旅行記へのコメント (1)
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- yamayuri2001さん 2022/06/09 10:00:45
- 解説をじっくり読ませていただくと!
- +mo2さん、こんにちは。
こちらの旅行記も、しっかりと解説を読ませていただきました。
学芸員さんかと思うくらいの詳しい解説に
脱帽すると共に、いつも感動しています。
やはり、作品の背景を知ってから見ると
一層その作品への愛着が湧きますね。
一つ一つ、描いた画家のモチベーションが伝わってきます。
本当にありがとうございます。
yamayuri2001
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