1992/02/10 - 1992/02/17
10位(同エリア372件中)
旅猫さん
【思い出の旅】第21弾は、極寒の北海道を巡る旅。
(2021.02.13投稿)
1992年の冬、極寒の北海道を体験してみたくなり、上野駅発の寝台特急『北斗星1号』で北の大地へと向かった。
旅程は7泊8日だが、その内、4泊は夜行列車とした。
訪れるのは、小樽、札幌、網走、釧路、函館。
網走では流氷観光船に乗り、釧路では定期観光バスを利用し、道東の冬景色を楽しんだ。
初めての冬の北海道は美しく、この後、冬にも訪れるきっかけとなった旅である。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 3.5
- グルメ
- 3.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 高速・路線バス 観光バス JR特急 JRローカル 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
16時50分に上野駅を出た北斗星1号は、冬の早い夕暮れの中を、一路札幌を目指して走って行く。
今回、2度目の北斗星乗車で初めて個室を取ることができた。
狭いながらも、周りに気を遣わずにのんびりできるのはありがたい。
当時、まだ酒がそれほど好きではなく、コーラなどを飲んでいた。
今では考えられないが、食堂車のパブタイムも利用しなかった。 -
盛岡駅を過ぎてしばらくすると日付が変わり、その後は眠ってしまい、列車は寝ている間に青函トンネルを走り抜け、目が覚めたら、早朝のまだ薄暗い函館駅に停まっていた。
ふと窓に触れてみると、凍るように冷たかった。
外が明るくなると、荒涼とした冬の景色が車窓を流れる。
初めての冬の北海道は、少し寂しいような印象で、旅が不安になる。
そして、終点の札幌には8時53分に到着した。
降り立ったホームは凍て付き、肌を刺すように冷たい風が吹いていた。
寒さから逃れるように階段を降り、構内のの長椅子で一息つく。 -
その後6番線へと向い、9時30分に出る函館行の臨時特急『北斗84号』に乗車。
その列車には、姿を消す寸前だった無骨な古い車両が使われていたこともあり、記念に乗っておこうと思ったのだ。
予約しておいた席に座ってみると、さすがにくたびれた印象は拭えない。
それでも、不思議なほど温かみを感じる。
エンジンの心地よい振動と、窓の外を流れる寂しげな風景が、冬の北海道の旅を印象的なものとしてくれた。 -
途中の東室蘭駅で列車と別れ、時間調整を兼ねて室蘭駅へと向かう。
12時03分発の室蘭行は、1両の気動車だった。
終点の室蘭駅からは、12時39分発の特急『ライラック17号』に乗り、ひとまず札幌駅へと戻った。 -
札幌駅には、14時25分に到着。
札幌では、『札幌雪まつり』がこの日で終わるというので、大通公園へ行ってみることにした。
途中、雪化粧をした時計台の前を通った。 -
会場は、祝日とあって、かなり賑わっている。
中心はホワイトハウスで、その前には舞台もあり、演奏が行われていた。
その後、旧道庁にも立ち寄ってみたが、夏に見たときとはまったく違う印象で、赤いレンガが白い雪に映えて綺麗だった。 -
駅へ戻り、16時29分発の快速『マリンライナー』で小樽駅へと向かう。
銭函駅を過ぎた辺りからは、右手に日本海が迫ってくる。
夜の帳が降りようとする中、鉛色の空と荒波の白さが冬の日本海を強く感じさせてくれた。
そして、17時4分、底冷えのする夜の小樽駅に滑り込んだ。
跨線橋を渡り改札前まで来ると、然別からの列車が雪まみれで到着した。 -
駅から運河のほうへと歩いていく。
最近では、冬でもたくさんの観光客が来るようになったが、当時は、冬の夜ともなると、小樽といえども歩いている人はほとんどいなかった。
頬を刺す冷気の中、街灯に照らされた小樽運河には、誰も居なかった。 -
隣の道路を走る車の音以外は何も聞こえない運河沿いから、さらに港の倉庫街へと歩いてみた。
そこも夏に歩いたことがあるのだが、まったく違う印象だった。
「寂しい」と言う言葉がぴったりである。 -
あまりにも寒いので、早めに切り上げて駅へと戻り、18時59分発の快速列車で小樽駅を後にした。
札幌駅で降り、駅近くにある百貨店の食堂街で夕食。
初日の宿は、札幌駅を22時50分に出る網走行の夜行急行『大雪』であるが、発車時間まで時間を潰すのに苦労した。
定刻に出発した急行『大雪』は、一路網走駅を目指して札幌を離れた。 -
『大雪』は、旭川駅を出ると石北本線へと入って行く。
すると、それまでとは乗り心地が大きく変わった。
時より、雪に乗り上げたような振動があり、とても安心して寝られる状態ではない。
結局、熟睡できないまま、終着の網走駅には6時22分に到着した。
※急行『大雪』は、現在運転されていません。 -
6時44分発の釧網本線の普通列車に乗り換え、とりあえず浜小清水駅まで行ってみたが、何もないので、7時46分発の列車で北浜駅まで戻った。
北浜駅は、オホーツク海に一番近い駅と呼ばれ、ホームからはオホーツク海を望むことが出来る人気の駅である。北浜駅 駅
-
まだ朝焼けの残る空の向こうに、知床連山が見えている。
今回の旅では、流氷を観るのが一番の目的であったが、海を眺めると、その姿はまったく無かった。
この後、流氷砕氷船に乗る予定なので、不安になって来た。 -
9時8分発の列車で網走駅へと向かい、バスで港へと向かう。
そして、10時半出航の流氷観光砕氷船に乗船。
船は港を出て、沖合へと向かうが、流氷の影は無い。
唯々、寒いだけである。 -
それでも、しばらくすると、薄葉氷が浮かんでいる場所があった。
流氷の先遣隊である。
とは言え、流氷を船首で割って進む迫力を体験したかったので、これでは拍子抜けである。
自然相手の旅と言うのは、難しいものだ。 -
網走駅に戻り、13時52分発の特急『オホーツク6号』に乗り、宿のある旭川駅へと向かう。
列車は、途中、雪深い常紋峠をゆっくりと越えて行く。
白滝駅を過ぎると、普通列車が1日1往復しか走っていない区間に入り、秘境感が強くなる。 -
層雲峡への玄関口である上川駅を過ぎてしばらく走ると、旭川駅が近付いて来た。
そして、17時34分に旭川駅に到着した。
この日の宿は、駅のすぐ横に建つ旭川ターミナルホテルである。
翌日、部屋の窓からは、雪に覆われた旭川の街が眺められた。
※旭川ターミナルホテルは、現在、閉館となっています。 -
この日は、北の大地の冬景色を列車の車窓から楽しむ。
旭川駅から、7時47分発の快速『狩勝』に乗車。
列車は、美瑛、富良野を通り、新狩勝トンネルで狩勝峠を越えて行く。
車窓から観る雪に覆われた北の大地は、とても美しかった。
そして、10時53分に新得駅で列車を降りた。 -
新得駅の構内にあった蕎麦屋で、早目の昼食とした。
新得の蕎麦は、北海道でも名の知れたものなのである。
温かい蕎麦で一息ついた後、12時1分発の特急『おおぞら3号』に乗り、釧路駅へと向かった。 -
釧路駅には14時30分に到着。
そこから、14時52分発の釧網本線の列車に乗り、茅沼駅へ移動。
駅からは、歩いてシラルトロ湖へと向かった。
シラルトロ湖では、白鳥たちが羽を休めていた。 -
茅沼駅へ戻る途中、線路脇でつがいの丹頂鶴に出会った。
北海道で観たい野生動物のひとつに偶然出会えて嬉しい。
この後、駅のホームからも1羽の丹頂鶴を観ることが出来た。
16時51分発の列車に乗り、宿のある釧路駅へと戻った。 -
翌朝、釧路の街を少し散策した後、9時発の阿寒バスの定期観光バス『ホワイトピリカ号』に乗り、道東の冬景色を観に行くことにした。
駅前を出たバスは、釧路湿原展望台に立ち寄った後、摩周湖第一展望台に着いた。
そして、展望台から望む冬化粧の摩周湖は、神秘的で美しかった。摩周湖カムイテラス 名所・史跡
-
夏は霧で見えないことが多い摩周湖だが、冬はよく見える。
この日も風がほとんどなく、湖面は鏡の様だった。
周囲の火口壁が映り込み、何とも言えず美しい。 -
バスは摩周湖を後にし、次に停まったのは屈斜路湖の砂湯だった。
そこは、湖岸から温泉が湧き、氷が溶けている。
白鳥や鴨たちがそこに集まり、なかなか賑やかだった。屈斜路湖 砂湯 名所・史跡
-
その後、川湯温泉を通り、硫黄山と向かった。
駐車場から散策路を歩いて行くと、噴気を上げる硫黄山に着く。
雪の白さの中、硫黄の鮮やかな黄色が印象的だった。
バスへと戻る途中、道端で蝦夷鹿と遭遇した。 -
阿寒湖で休憩した後、丹頂の里へと向かう。
近くには、冬の間、丹頂に餌を与えるための施設である阿寒町タンチョウ観察センターがあり、自然に近い姿で丹頂鶴を観ることが出来る。
鶴がいる場所まで距離があるが、望遠レンズや双眼鏡などがあれば、結構楽しめる。
17時半に釧路駅に帰着し、駅構内にあった釧路ステーション画廊に立ち寄り、しばらく美術鑑賞に勤しんだ。
※現在、釧路市の阿寒国際ツルセンターの分館となっています。
※釧路ステーション画廊は、2009年に閉鎖されています。阿寒国際ツルセンター 公園・植物園
-
この日の宿は、釧路駅を22時30分に出る札幌行の急行『まりも』。
二日前に乗った『大雪』とは違い、乗り心地は良かった。
そして、翌朝6時26分に札幌駅に到着。
8分後には、網走駅から来た『大雪』も隣に入って来た。 -
札幌で朝食を摂り、8時1発の普通列車に乗り、小樽駅を目指す。
初日は夜だったので、昼間の景色を観に行くことにしたのだが、乗車した列車は、首都圏では見かけなくなった機関車が引っ張る客車だった。 -
小樽駅から運河へと歩いて行く。
街は思いの外静かで、運河の辺りにも人影は疎らだった。
運河の水面は波も無く、畔に建つ倉庫が綺麗に映り込んでいる。 -
運河周辺を散策した後、駅西側へと歩いて行く。
小樽駅の西側は、かつて映画の撮影が行われた場所で、古い街並みが残っている。
その中で異彩を放っていたのが、富岡教会だ。
昭和4年(1929)に建てられたカトリック様式の教会で、葡萄色の尖塔が特徴的な建築物だった。
※現在、古い建物はほとんど残っていません。小樽カトリック富岡教会 寺・神社・教会
-
小樽散策を終え、札幌駅を13時に出る特急『北斗10号』に乗り、北海道の玄関口である函館駅へと向かう。
学生時代、初めて北海道を訪れた時、最初に降り立ったのも函館だった。
車窓の旅を楽しみ、16時40分に函館駅に到着した。 -
とりあえず、今宵の宿であるホテルニューハコダテへ向かう。
その宿は、昭和7年(1932)に安田銀行函館支店として建てられた建物を再活用した珍しいホテルである。
部屋は、外観からは想像もつかないほど洒落ていた。
※ホテルニューハコダテは閉館し、現在、ホテルHakoBA函館として営業しています。ホテル ニューハコダテ 宿・ホテル
-
部屋に荷物を置き、早速、函館の夜景を観に行く。
ロープウェイで山頂まで登ると、さすがに寒い。
寒風が吹き抜ける展望台は、さすがに人も少なめだったが、空気が澄んでいるので、眼下に広がる夜景は、とても美しかった。 -
北海道最終日は、大沼公園の冬景色を楽しむため、函館駅を7時21分に出る大沼公園行の普通列車に乗り込んだ。
駅から歩いて数分のところにある大沼公園は、一面の雪だった。
大沼の中に島が点在しているのだが、どこが遊歩道なのかよくわからないほどで、注意しないと湖上に出てしまいそうだった。 -
歩いていると、雪の上で犬が遊んでいた。
飼い主も見当たらず、どこから来たのだろうか。
こちらに気付いたその犬は、結局ずっと後を付いて来た。 -
遊歩道を通り抜け、大沼と小沼を隔てる水路に出た。
そこには、白鳥や鴨が泳いでいる。
この辺りだけ氷が融けているので、かなり混み合っていた。 -
そこから線路沿いに歩いて駅へと戻る。
途中で、1両だけの列車が走り抜けて行った。 -
大沼公園駅からは、9時35分発の快速『アイリス』に乗り、函館駅へと戻り、港沿いに歩きながら、函館の街を散策する。
途中からは、港越しに函館山が良く見えた。 -
その先には、煉瓦倉庫が建ち並んでいる。
金森倉庫群と呼ばれるそこは、函館の名所のひとつである。
※現在は、商業施設などになっています。 -
さらに、末広町から弁天町へと歩いて行く。
この界隈には、煙突のある古い民家がまだ残っている。
※現在は、再開発されています。 -
港側には、煉瓦造りの倉庫などもあり、風情があった。
函館を初めて訪れたのは昭和63年(1988)。
あれから4年経っているが、その時と変わらぬ函館に嬉しくなる。
※現在は、街並みが変わっています。 -
重要文化財に指定されている太刀川家住宅店舗の前を通る。
その先で左に曲がると、函館らしい和洋折衷の住宅が建っていた。
函館には、和洋折衷の住宅が数多く残り、独特の街並みを作っている。
※現在、多くの建物が建て替えられ、数が減っています。
写真右側の建物も、現在はありません。 -
歩いていると、函館どっく前電停に辿り着いた。
函館の魅力の一つは、路面電車が走っていることである。
そして、街歩きの足として非常に便利なのである。
だが、今回は利用せずに、そのまま歩いて戻ることにした。 -
途中、幸坂の上にある旧ロシア領事館を外から見学。
そこから振り返ると、函館らしい風景が望めた。
この後、元町地区を通り抜け、函館駅と戻った。 -
函館駅からは、17時20分発の快速『海峡16号』に乗車。
4回目の北海道への旅もこれで終わりである。
終着の青森駅からは、19時11分発の急行『八甲田』で帰京する。
7泊8日の長旅で、移動時間も多かったが、それでも初めての冬の北海道を満喫できた。
寒いとはいえ、冬の北の大地は美しかったので、また訪れたいと思った。
※快速『海峡』及び急行『八甲田』は、現在、運転されていません。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- 前日光さん 2021/03/15 23:41:51
- 冬の摩周湖
- 見せていただきました<(_ _)>
こんばんは。
投票だけして、間が空いてしまいましたが、忘れていたわけではありません。
真冬の北海道!しかも寝台特急北斗星で。
私が初めて北海道に行ったのも、実は北斗星でした。
個室はとれませんでしたが。
職員旅行で3月の函館に行ったのです。
まだまだ寒い早春の北海道、木古内の駅が朝焼けの中に現れて、ああ、ついに北海道に上陸!と感動した遙か昔を懐かしく思い出しました。
それにしても、寒い中をあちこちとエネルギッシュに移動されていますね。
当時、まだそれほどお酒が好きではなくてコーラを飲んでいたとか?
とても信じられません!
旅猫さんと言えば、根っからのお酒好きと思い込んでいましたので、なかなか衝撃の真実でした(苦笑)
7泊8日の旅とはいえ、夜行列車泊もある中を、小樽、札幌、網走、釧路、函館と回るのは、体力がないと実現できませんね。
特に冬の摩周湖、素晴らしいです!
私もついこの間、秋の摩周湖をやっと見ることができましたので、雪景色の摩周湖にはひとしお感慨深いものがあります。
また北浜駅からの知床連山の眺め、私はオホーツクや知床の景色が大好きなので、冬のあの辺りを見られてうれしいです。
かれこれ30年近く前の旅猫さん、どのような青年だったのかなぁと妄想してしまいます。
でも根本的な旅のスタイルは、やっぱり旅猫流、自分では実現できないだけに(いろいろとしがらみも多くて(^_-)、旅の醍醐味を我がことのように感じさせていただきました(^_^)v
前日光
- 旅猫さん からの返信 2021/03/16 15:03:43
- RE: 冬の摩周湖
- 前日光さん、こんにちは。
古くて新しい旅行記を読んでいただきありがとうございます。
就職する前、学生の頃の貧乏旅の記録です。
宿代を浮かすために、夜行列車で寝泊まりしていました(笑)
体力だけはあり余っていたので、楽しかったです。
今やれと言われたら、無理でしょう(^^;
7泊8日も無理ですし、夜行列車も体力もありません。。。
前日光さんは、初渡道で北斗星だったのですね!
私の最初は、急行八甲田でした。
学生時代は、まだお酒を知り始めた頃で、まだサワーくらいしか呑んでいませんでした。
就職して2年目から、悪い先輩にみっちり仕込まれました(笑)
旅でコーラやジュースなど、今では考えられません。
冬の摩周湖はとても綺麗でした。
秋の紅葉の季節も訪れたことがありますが、冬が印象に残っています。
オホーツクや知床の辺りは、北海道らしくていいですよね。
最果て感があります。
この頃は、ひょろっとしていて、よくジョンと呼ばれていました。
ジョンレノンに似ていると言われていたので。
その後、ヨン様と言うあだ名も頂戴したことがあります。
旅の姿は変わっていませんが、容姿は経年劣化しています(^^;
旅猫
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