錦秋の洛北を歩く　４．室町通りから百々町界隈へ

2019/11/21 - 2019/11/21

　京都には季節ごとに違った表情があり、これまで数え切れないほど来ていますが、やはり秋の紅葉の時期は格別です。今年は１１月中旬になって気温がぐっと下がったため例年になく紅葉が美しいと聞き、平日を狙って京都に行きました。

　今回は紅葉に加えて、大好きなＮＨＫ番組「京都人の密かな愉しみ」ゆかりの場所を回ることを目的に、洛北エリアに的を絞りました。このエリアは華やかな東山に比べて鄙びた雰囲気があり、特に御所の西側にあたる西陣、室町は生粋の京都人が暮らす「ディープ京都」です。

　最後は「京都人の密かな愉しみ」の「ロケ地巡り」です。室町通にある町家造りの老舗和菓子屋「俵屋吉富」がメイン舞台になっています。ここから茶道家元が住む百々町界隈にかけては、ロケに使用された趣ある場所が点在しておりこれ等を探しながら歩きました。
　なお、「京都人の密かな愉しみ」は、一見さんには分からない京都の生活文化の奥深さを、京都人の視点からドラマとドキュメンタリーを織り交ぜて歳時記風に描いたＮＨＫの番組で、これまで不定期で８作が放送されています。万歩計にとって、数ある「京都もの」の中の最高峰と推薦する作品です。

エリア 今出川・北大路・北野(京都)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 私鉄 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

　１６：０９　地下鉄今出川駅。
　地上に出るとすぐ前が同志社大学キャンパス。ここからＮＨＫ番組「京都人の密かな愉しみ」に出てきたロケ地巡りに出発します。

今出川駅 駅

　「京都人の密かな愉しみ」は、一見さんには分からない京都の生活文化の奥深さを、京都人の視点からドラマとドキュメンタリーを織り交ぜて歳時記風に描いたＮＨＫの番組です。万歩計にとって、数ある「京都もの」の中の最高峰と推薦する作品です。
　ドラマでは同志社大学は洛志社大学となって、主人公のヒースロー先生はここで文化人類学の講座を持つ客員教授として登場します。

同志社大学 今出川校地 名所・史跡

　第１シリーズは、英国人の文化人類学者エドワード・ヒースロー（演：団時朗）と、彼が興味を持って「観察」している隣家の老舗和菓子屋若女将沢藤三八子（演：常盤貴子）を中心に、日々の生活でおこる数々の出来事に、オムニバスドラマを絡み合わせて進行します。２時間もので合計５作品が放送されました。
　２０１８年からは第２シリーズ「ブルー、修行中」が始まり、現在まで３作が放送されています。
　
　この旅行記を読む前に、ぜひドラマの第１作を見てください。２時間の長い作品ですが、見終わったら万歩計の旅行記の事など忘れること請け合いです。

　第１作動画はここ→　https://www.youtube.com/watch?v=BB9tPyXaj3w

　動画、見て頂きましたか？　ＯＫ！　では、ロケ地巡りに出発。
　烏丸今出川駅前から狭い通りを西へ行くと、一帯は足利将軍家の邸宅「花の御所」があった場所です。大学生が多く歩いています。

　右折すると室町通り。生粋の京都人が暮らす隠れたメインストリートです。

　北に進むとやがて郵便局が見え、その先が和菓子屋「俵屋吉富」でした。ドラマでは２１０年続く老舗和菓子屋「久楽屋春信」室町本店になって、主人公の沢藤三八子はここの若女将です。
　ヒースロー先生の下宿は郵便局の奥の建物ですが、ここからは見えません。

俵屋吉富 本店 専門店

　ドラマでは入口の縦長暖簾だけは「久楽屋春信」にかけ替えられます。しかし屋根の「俵屋吉富」と書かれた燈と、俵の絵が描かれた横長の暖簾はそのまま使われています。

　歴史を感じさせる大きな町家です。
　ドラマでは店の周りには古い町家が並んでいますしたが、実際はブロック塀の空地や低層のマンションです。通りは別の場所で撮影されたようです。

　この勝手口の暖簾をくぐって進むと土間のある台所。その奥が庭のある家人の住居です。この暖簾の下で托鉢の僧（三八子の腹違いの弟）に喜捨をする場面が何度か出てきます。

　ドラマではもう一軒、久楽屋春信寺之内店が登場するのでそちらに。

　室町通から西に進み、新町通と交差した場所に持明院仙洞御所跡。
　平安時代から室町時代にかけて藤原氏の邸宅、および上皇の御所として使われた屋敷跡です。室町時代初期の北朝はここに御所を置き「持明院統」と呼ばれました。

　新町通りは京都らしい風情があります。ドラマでも登場しました。

　新町通りから寺之内通りに曲がると日蓮宗大本山妙顕寺。洛中における日蓮宗最初の寺院ですが、建物は江戸時代中期に再建されたものです。

妙顕寺 寺・神社・教会

　寺之内通りの狭い道を西へ行くと、

　ありました、俵屋吉富 小川店。ドラマでは久楽屋春信 寺之内店です。

俵屋吉富 小川店 グルメ・レストラン

　店の右側の格子戸を入ると明るい空間を持つ喫茶室「茶ろんたわらや」。ドラマではヒースロー先生が、ここで栗ぜんざいに間違えて塩昆布を入れてしまいました。

茶ろん たわらや グルメ・レストラン

　お店に入ります。

　美しい和菓子の数々。土産に小さな箱を買って、ついでに写真を撮らせてもらいました。

　寺之内通りと小川町通りが交差する百々町（どどちょう）界隈は、表千家、裏千家の家元も住む風情のある一画です。俵屋吉富 小川店の前から北に小路が伸びています。この先に茶室があるはず。

　小路わきに立つ小川と百々橋の礎石の説明板
　かつて応仁の乱の激戦地だった百々橋の跡で、川は昭和４０年代に埋め立てられてしまったので、かつてを偲ぶものは残された橋の橋脚と礎石だけ。西軍の総帥山名宗全邸跡はこの近くにありました。

百々橋の礎石 名所・史跡

　小路を歩くと、

　すぐに表千家の不審菴（ふしんあん）。千利休の養子少庵が利休ゆかりの場所に再建した茶室です。

　茶道については表千家、裏千家の名前くらいしか知りません。ここでネットを開きました。

　茶道は千利休を開祖としてスタートするのですが、利休は権力者豊臣秀吉に疎まれ切腹を命じられた。
　二代目に当たる利休の養子少庵は、後に秀吉に許されて京に千家を再興し、「不審庵」などを再建した。
　三代目に当たる少庵の子宗旦は、利休が確立した侘茶の厳しさを深く追求し、晩年には、四畳半より更に狭い約二畳の茶室「今日庵」などを建てた。
　宗旦には三男一女があり、この四代目の時に現在の三千家に分かれた。一翁宗守（次男）の「武者小路千家」、江岑宗左（三男）の、「表千家」、仙叟宗室（四男）の「裏千家」。

　なるほど。
　

　歴史を知ると、通りに一層風情が感じられます。

　この場所はドラマで見覚えがある。

　この一画だけ時が止まったような感じ。

　途中、この女性とすれ違っただけ。

　横の路地を覗き、

　客のいない美術品のお店を横目に、

　歩いた先に三代目宗旦が建てた今日庵（こんにちあん）。裏千家で表千家の分家筋にあたります。

　この奥に二畳の茶室があるのだろうか。

　残りの武者小路千家は、ここから南に下りたところにある武者小路沿に官休庵（かんきゅうあん）があるそうです。

　１７：００　俵屋吉富 小川店前に戻った時は夕暮れ近く。朝から８時間、晩秋の洛北を歩き回りました。
　近年にない素晴らしい紅葉の中で、ちょっとだけ「京都人」の気分を味わった一日でした。

俵屋吉富 小川店 グルメ・レストラン

この旅行記へのコメント （4）

• 唐辛子婆さん 2022/03/09 17:18:28

  私は見ました。

  万歩計さん
  
  普段ドラマは見ない唐辛子婆ですがこれは全部見ました。
  本当に上等な番組でしたね。
  
  京都はあまりに見たいものがありすぎて
  いく前から疲れてしまうような気がして長い間訪問していませんでしたが
  万歩計さんの丁寧な旅行記を拝見して訪れたいと思いはじめています。
  
  またゆっくりお邪魔させてください。
  
  唐辛子婆

  万歩計さん からの返信 2022/03/09 18:30:15

  Re: 私は見ました。

  　唐辛子婆さんさん、こんにちは。
  
  　「京都人の密かな愉しみ」を全部見られたとのこと。共感出来て嬉しいです。これはドラマというよりドキュメンタリーや歳時記といった感じですね。脚本、演出を手掛けた源孝志さん、音楽を担当した阿部海太郎さんは本当に素晴らしいです。
  
  　常盤貴子さん主演の第１シリーズも素晴らしかったが、修行中の若者５人組が主演する現在の第２シリーズはその上を行く出来栄えと思います。多分次回がこのシリーズの完結編になるので、見逃さないように番組表をチェックしています。これに続く第３シリーズも期待したいところですが、既２シリーズを越える作品となると、源孝志さんもかなりプレッシャーがあるでしょうね。その時にはエミリーはんにも再登場してもらいたい。
  
  　他の方の書き込みにも返事しましたが、この番組を見て京都観光の視点が変わりました。有名な観光地巡りから、京都人たちの奥深い生活習慣を感じられる街歩きに魅力を感じます。そのためにはこの番組の他にも関連する本を事前に読んでいく必要がありますが、それだけ京都の懐は深いと思います。
  
  　このロケ地巡りシリーズはこのあと最低５回はアップします。またお越しいただければ嬉しいです。
  
  　　万歩計

• pedaruさん 2020/12/03 06:01:18

  密かな楽しみ

  万歩計さん　おはようございます。
  
  私は自分の動画（リスボンの路面電車）が13分間あるので、かなり遠慮しながら投稿しました。しかし、万歩計さんのご紹介のものは、一体何分になるでしょうか？
  119分でございますぞ！！
  
  ＞　動画、見て頂きましたか？　ＯＫ！　では、ロケ地巡りに出発。
  
  動画見ていただきましたか？って、10秒でいいねを押して退出する人がいるくらいな4トラ旅行記、全部見ようとする者なんてpedaruくらいなもんですよ（笑）。
  
  そんなpedaruですが、今朝は時間がないので、15分だけ見ました、後日、必ず拝見いたします。常盤貴子、いいですねー。また見ます。
  
  pedaru
  
  

  万歩計さん からの返信 2020/12/03 21:32:41

  Re: 密かな楽しみ

  　pedaruさん、こんばんわ。
  
  　ご指摘、ごもっとも。年とともに押しつけがましくなりました!(^^)!
  
  　ただこの番組はとにかく上質で素晴らしい。万歩計はいろんな人に推薦しています。感動して残りの作品も見たいと言ってくる人もいます。ただ、レンタルビデオ屋にあまり置かれていないようで、その場合は手持ちの録画（万歩計はTVの殆どの放送を録画しています）を貸したり、YouTubeのURLを教えています。
  
  　ま、この年になると新しいものに感動するのはいいことです。pedaruさんが、「素晴らしい。残りも見たい」と思っていただけたら、全作品をDiskにコピーして差し上げます。
  
  　　万歩計