2023/10/21 - 2023/10/21
330位(同エリア4231件中)
+mo2さん
20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の芸術家によって生み出されたキュビスムは、西洋美術の歴史にかつてないほど大きな変革をもたらしました。その名称は、1908年にブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来します。
西洋絵画の伝統的な技法であった遠近法や陰影法による空間表現から脱却し、幾何学的な形によって画面を構成する試みは、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から画家たちを解放しました。また絵画や彫刻の表現を根本から変えることによって、抽象芸術やダダ、シュルレアリスムへといたる道も開きます。慣習的な美に果敢に挑み、視覚表現に新たな可能性を開いたキュビスムは、パリに集う若い芸術家たちに大きな衝撃を与えました。そして、装飾・デザインや建築、舞台美術を含む様々な分野で瞬く間に世界中に広まり、それ以後の芸術の多様な展開に決定的な影響を及ぼしています。
本展では、世界屈指の近現代美術コレクションを誇るパリのポンピドゥーセンターの所蔵品から、キュビスムの歴史を語る上で欠くことのできない貴重な作品が多数来日し、そのうち50点以上が日本初出品となります。20世紀美術の真の出発点となったキュビスムの豊かな展開とダイナミズムを、主要作家約40人による絵画を中心に、彫刻、素描、版画、映像、資料など約140点を通して紹介します。日本でキュビスムを正面から取り上げる本格的な展覧会はおよそ50年ぶりです。ということで、10月21日に行ってきました。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 新幹線
PR
-
この日は、SOMPO美術館「ゴッホと静物画 ― 伝統から革新へ」⇒上野の森美術館「モネ 連作の情景」⇒国立西洋美術館の順にまわりました。
国立西洋美術館 美術館・博物館
-
ピカソとブラックが開いた新たな美の扉??初来日作品50点以上を含む約140点を展示する、日本では50年ぶりとなる「キュビスム」の大型展覧会。ポンピドゥーセンターと国立西洋美術館という日仏を代表する国立美術館の共同企画によって、ついに実現します。20世紀美術の真の出発点となったキュビスムの全貌を明らかにします。
-
本展は全14章で構成されます。
前半は、ポール・セザンヌやアンリ・ルソーの絵画、アフリカの彫刻などキュビスムの多様な源泉を探る「キュビスムの起源」から始まり、ピカソとブラックが2人きりの緊密な共同作業によって全く新しい絵画を発明する軌跡を追います。
1章 キュビスム以前ーその源泉
制作者不詳「ダンの戦闘用の仮面(コートジボワール)」1850-90年 -
ポール・セザンヌ「ポントワーズの橋と堰」1881年 国立西洋美術館
パリから約28km離れ、近代化された町並と田園の風景が融合した町ポントワーズで、セザンヌは1872年から1881年まで、印象派の画家ピサロと多くの時間を共有し、ときにイーゼルを並べ同じ風景を描いています。 -
ポール・ゴーガン「海辺に立つブルターニュの少女たち」1889年 国立西洋美術館
ゴーガンは、近代化から取り残され、古代のケルト文化の痕跡をいたるところに残す北西フランスのブルターニュ地方を、好んで訪れました。この絵は、1889年の秋に海辺の村ル・ブールデュで制作された、ゴーガンのブルターニュ時代を代表する作品のひとつです。 -
制作者不詳「ヨンベあるいはウォヨの呪物(コンゴ民主共和国)」不詳
-
2章「プリミティヴィスム」
パブロ・ピカソ「女性の胸像」1907年 ポンピドゥーセンター
キュビスムは、1907年にピカソが描いた「アヴィニョンの娘たち」が起源とされていますが、この作品が公開されたのは1916年のため、“世に出た最初のキュビスム作品”という意味ではブラックの「レスタックの高架橋」となるようです。 -
アンドレ・ドラン「立てる裸婦」1907年 ポンピドゥーセンター
-
ジョルジュ・ブラック「大きな裸婦」 1907年冬-1908年6月 ポンピドゥーセンター
ピカソは1907年夏にパリのトロカデロ民族誌博物館を訪問。アフリカやオセアニアの造形物に衝撃を受け、《アヴィニョンの娘たち》(本展不出品)を完成させました。作品を見たブラックは大いに驚き「まるで麻くずを食べるか、石油を飲んで火を吹けと言っているようだ!」と語ったと伝わります。ブラックはピカソへの応答として《大きな裸婦》を描いています。 -
マリー・ローランサン「アポリネールとその友人たち(第2ヴァージョン)」1909年 ポンピドゥーセンター
-
3章 キュビスムの誕生-セザンヌに導かれて
ジョルジュ・ブラック「レスタックの高架橋」1908年 ポンピドゥーセンター
1908年、セザンヌの「エスタックの海」1878年ー79年頃から影響を受けたブラックは、自身の個展に「レスタックの高架橋」を展示、「彼は形態を軽んじていて、景観も人物も家々もすべてを、幾何学的図式やキューブ(立方体)に還元してしまう」と評されました。これが“キュビスムという名称”の起源です。 -
ジョルジュ・ブラック(左)「レスタックの道」(右)「レスタックのテラス」
1908年 ポンピドゥーセンター -
ジョルジュ・ブラック「楽器」1908年 ポンピドゥーセンター
-
4章 ブラックとピカソーザイルで結ばれた二人(1909?1914)
パブロ・ピカソ「女性の胸像」1909-10年 ポンピドゥーセンター
1909年夏、ピカソとブラックは「分析的キュビスム」の作品に至ります。 -
パブロ・ピカソ「肘掛け椅子に座る女性」1910年 ポンピドゥーセンター
キュビスムの盟友であるブラックとピカソ。両者は1907年に知り合い、1908年の冬には毎日のようにお互いのアトリエを訪ねるほど交流を深めました。
当時の二人の関係について、ブラックは「私たちはザイルで結ばれた登山者のようでした」と回想しています -
パブロ・ピカソ「ギター奏者」1910年 ポンピドゥーセンター
対象物はいくつもの部分に分解され、無数の切子面によって構成されたようなモノクロームの画面が登場しました。 -
パブロ・ピカソ「少女の頭部」1913年 ポンピドゥーセンター
-
パブロ・ピカソ「ヴァイオリン」1914年 ポンピドゥーセンター
-
パブロ・ピカソ「静物、瓶(マール瓶のある静物)」1911年 国立西洋美術館
-
パブロ・ピカソ「男の頭部」1912年 国立西洋美術館
-
ジョルジュ・ブラック「レスタックのリオ・ティントの工場」1910年 ポンピドゥーセンター
「私たちはザイルで結ばれた登山者のようでした」とブラックが語っていた通り、ピカソとブラックは毎日のようにお互いのアトリエを訪ねるほど交流を深め、2人の作品は一時期、見分けがつかなかったほど。 -
ジョルジュ・ブラック「静物」1910-11年 ポンピドゥーセンター
現実の再現にとどまらない、新しい表現を探すためにひた走る粗削りな作品の時期とも言えます。 -
ジョルジュ・ブラック「円卓」1911年 ポンピドゥーセンター
-
ジョルジュ・ブラック「ヴァイオリンのある静物」1911年 ポンピドゥーセンター
-
ジョルジュ・ブラック「果物皿とトランプ」1913年 ポンピドゥーセンター
そして1912年には「総合的キュビスム」の段階を迎えます。
画面には新聞や広告の切り抜きなど異質な素材が取り込まれ、コラージュやパピエ・コレ(貼られた紙)といった、多様な要素を組み合わせて総合するように作品が作られるようになりました。 -
ジョルジュ・ブラック「ギターを持つ女性」1913年 ポンピドゥーセンター
油絵の具でだまし絵のように再現される木目模様や、砂やおがくずを混ぜて作られた粗い絵肌などはいずれもブラックが塗装職人として働いていた経験が基になっているそうです。 -
ジョルジュ・ブラック「ギターを持つ男性」1914年 ポンピドゥーセンター
-
ジョルジュ・ブラック「フォックス」1911年 ポンピドゥーセンター
-
5章 フェルナン・レジェとフアン・グリス
フェルナン・レジェ「縫い物をする女性」1910年 ポンピドゥーセンター
ブラックとピカソが創始したキュビスムは、若い芸術家たちのあいだに広がり、多くの追随者を生みました。 -
フェルナン・レジェ「婚礼」1910-11年 ポンピドゥーセンター
“コントラスト”を制作の原理とし、直線と曲線、色彩同士など多様な要素が織りなす対立的構造によって動的な画面を作り上げたフェルナン・レジェ。 -
フェルナン・レジェ「形態のコントラスト」1913年 ポンピドゥーセンター
キュビスムを大いに発展させたのが、フェルナン・レジェとフアン・グリスです。レジェはセザンヌの大回顧展を見てから、構築的な作品に。グリスも同様にセザンヌを学ぶことから進めていきました。 -
フアン・グリス「ギター」1913年 ポンピドゥーセンター
鮮やかな色面を組み合わせて、対角線や水平線、垂直線を強調した厳格な構成を特徴とする静物画を多く手掛けたフアン・グリス。 -
フアン・グリス「ヴァイオリンとグラス」1913年 ポンピドゥーセンター
-
フアン・グリス「楽譜」1913-14年 ポンピドゥーセンター
-
6章 サロンにおけるキュビスム
アルベール・グレーズ「収穫物の脱穀」1912年 国立西洋美術館
20世紀の初頭の最も革新的な芸術運動はキュビスム(立体派)です。これはピカソとブラックによって創始されました。様式的には、画面が幾何学的に分割され、複数の視点からの眺めを一つにまとめあげていることが特徴です。1912年、パリでは「セクション・ドール(黄金分割)」展が開催され、本作は最重要作品として出品されました。ここで、収穫の場面という伝統的な主題が、キュビスムの新しい造形でやり直されています。 -
7章 同時主義とオルフィスム?ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー
ロベール・ドローネー「パリ市」1910?1912年 ポンピドゥーセンター
初来日となる幅4メートルにもおよぶロベール・ドローネーの「パリ市」は、ポンピドゥーセンターを象徴する大作のひとつです -
ロベール・ドローネー「窓」1912年 ポンピドゥーセンター
色彩によって構成された純粋な絵画「オルフィスム」の発明者と呼ばれたロベール・ドローネーは、妻ソニア・ドローネーとともに、同時主義という概念を打ち立てました。 -
ロベール・ドローネー「円形、太陽 no.2」1912-13年 ポンピドゥーセンター
それは色彩の対比効果を探求する色彩論にとどまらず、異質な要素を同一画面に統合する方法でもあり、サロンに出品されたドローネーの大作《パリ市》は、古代(三美神)と現代(エッフェル塔)、アンリ・ルソー作品からの引用(作品左側の船と橋のモチーフ)など多様な要素が組み合わされています。 -
ソニア・ドローネー「バル・ビュリエ」1913年 ポンピドゥーセンター
同時主義は空間や動きを表す原理でもあり、それはソニア・ドローネーがダンスホールの情景を描いた《バル・ビュリエ》によく示されています。 -
ソニア・ドローネー「シベリア横断鉄道とフランスの小さなジャンヌのための散文詩」1913年 ポンピドゥーセンター
2023.10 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命(2)へ続く・・・
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
旅行記グループ
2023 美術館・博物館
-
前の旅行記
2023.10 ゴッホと静物画 ― 伝統から革新へ
2023/10/21~
新宿
-
次の旅行記
2023.10 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命(2)
2023/10/21~
上野・御徒町
-
山梨県立美術館 今年もお正月にミレー館で写真撮影してきました
2023/01/02~
甲府
-
レオポルド美術館・エゴン・シーレ展とTHE CAVE DE OYSTER、Aqua Park 品川
2023/01/28~
品川
-
ルーヴル美術館展~愛を描く、STING “MY SONGS” JAPAN TOUR 2023
2023/03/11~
有明・新木場
-
国立西洋美術館「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」
2023/03/18~
上野・御徒町
-
THE CAVE DE OYSTERと上野の桜、シーレ展とブルターニュ展
2023/03/18~
上野・御徒町
-
2023.4 山梨県立考古博物館
2023/04/01~
甲府
-
2023.4 埼玉県立近代美術館(MOMAS)
2023/04/29~
浦和
-
東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密
2023/04/29~
水道橋
-
マティス展 Henri Matisse: The Path to Color
2023/05/01~
上野・御徒町
-
SOMPO美術館「ブルターニュの光と風」展
2023/06/10~
新宿
-
特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」(1)古代メキシコへのいざない
2023/06/17~
上野・御徒町
-
特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」(2)テオティワカン 神々の都
2023/06/17~
上野・御徒町
-
特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」(3)マヤ 都市国家の興亡①
2023/06/17~
上野・御徒町
-
特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」(4)マヤ 都市国家の興亡②パレンケ、
2023/06/17~
上野・御徒町
-
特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」(5)アステカ テノチティトランの大神殿
2023/06/17~
上野・御徒町
-
2023.6「恐竜博 2023」へ行ってきました
2023/06/17~
上野・御徒町
-
2023.6 川崎市岡本太郎美術館に行ってきました
2023/06/25~
登戸・新百合ヶ丘
-
2023.6 藤子・F・不二雄ミュージアムに行ってきました
2023/06/25~
登戸・新百合ヶ丘
-
帝都で見る英国・テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ(1)精神的で崇高な光
2023/07/22~
赤坂
-
帝都で見る英国・テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ(2)色と光
2023/07/23~
赤坂
-
2023.9 テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本、山梨ぶどうの旅
2023/09/09~
甲府
-
2023.10 特別展「海―生命のみなもと―」+永遠の都ローマ展
2023/10/08~
上野・御徒町
-
2023.10 モネ 連作の情景
2023/10/21~
上野・御徒町
-
2023.10 ゴッホと静物画 ― 伝統から革新へ
2023/10/21~
新宿
-
2023.10 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命(1)
2023/10/21~
上野・御徒町
-
2023.10 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命(2)
2023/10/21~
上野・御徒町
-
2023.11 妹とイヴサンローラン展、ゴッホ展、京王プラザホテルビュッフェ
2023/11/25~
新宿
旅行記グループをもっと見る
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったスポット
上野・御徒町(東京) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
旅行記グループ 2023 美術館・博物館
0
40