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2022年4月22日(金)1時45分、佐多民子邸と道を挟んである佐多美舟邸庭園へ。この佐多家は知覧島津氏の本筋に当たり、江戸時代は知覧における最高の役所を担う家のひとつだった。江戸時代中期の宝暦年間(1751~64年)の作庭と伝わり、知覧庭園の中で最も豪華で広い庭園と云われる。<br /><br />正門を入って右に折れると庭園の入口。北側の書院の前に庭が広がる。庭園の手前には白砂とサツキの低木の刈り込みがあり、奥の東南隅に鋭い岩を高い峯として見せる枯滝石組があり、それを覆うように刈り込まれたイヌマキがある枯山水庭園。庭園を引きで見ると最奥には母ヶ岳の借景が見え隠れする。<br /><br />知覧庭園の特徴の「鋭い峯」と「それを覆う刈込」は他の庭と同じだが、その中でも最も鋭い石組が見られる。ただし、植栽が多く石組は判別しにくい。石組にも刈込みがあり、かつ白砂に浮かぶ岩島が刈込みに囲まれている。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397609779882383&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br />佐多家の庭園が3つ続いたが、佐多氏は島津宗家がルーツ。鎌倉時代の1318年に4代当主忠宗の三男・忠光が大隅国の佐多を与えられたことにより、「佐多氏」を称したのが始まり。南北朝時代の1358年に足利尊氏により知覧も与えられ、忠光の曾孫の親久の頃に知覧城へと移った。<br /><br />江戸前期に佐多家16代の島津久逵が薩摩藩2代藩主島津光久の子の4代藩主吉貴より島津庶流知覧家として長男家のみであるが島津姓を代々名乗ることを許される。以後の当主は島津を名乗るが、それ以外は変わらず佐多姓(佐多本家家臣格)を名乗っており、3つの庭園の佐多家はその流れと推測される。<br /><br />佐多美舟邸から先に進むと知覧茶専門店の川口茶舗がある(下の写真1)。知覧茶は日本一の生産量を誇る鹿児島県南九州市で生産されているブランド緑茶。南九州市は桜島の火山灰によって造られた水はけがよく肥沃な土壌や、一年を通して温暖な気候、豊富な日照などおいしいお茶を生産する条件が整っている。<br /><br />好条件の環境で育てられた知覧茶の新茶は日本一早い新茶としても有名。知覧茶は品質においても全国茶品評会で農林水産大臣賞を度々受賞するなど、全国的に高い評価を得ている。<br /><br />川口茶舗の隣には高城家住宅にも残されていた知覧型二ツ家を町内から移設して休憩所にしているところがある。部屋の中には入れないが、オモテとナカエの中の様子を覗き込むことが出来、宅地内にある売店で知覧茶とお菓子を買って、庭の腰掛で一服することが出来る。入口の辺りの通りでは大河ドラマ「西郷どん」のロケが行われたそうで、入口に案内が立っていた(下の写真2)。見てないんだよな、ジャマイカにいたので。<br /><br />知覧型二ツ家だが、鹿児島に独特だといわれる二ツ家の中でも二つの屋根の間に小棟をおいてつなぎとした造りのもの。民家建築文化史の上からも貴重なものとされている。居住用のオモテと台所のあるナカエの建物が別棟となっている分棟式民家は、生活上不便が多く、次第に近づけるようになった。知覧型二ツ家は、その分棟式の建物であるオモテとナカエが合体したもので、知覧大工によって創作された知覧独特のもの。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397622383214456&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br />その先、通りがクランク状に曲がっているところに石敢當(せっかんとう)と呼ばれる魔除けの石。中国から琉球を経て伝わったもので、西からの武家屋敷通りの突き当りに建てられ、武家屋敷内に魔物が入って来るのを防いでいる。この場所には江戸時代後半、郷土子弟の教育の場である稽古所があったので、稽古所跡の石碑も建つ(下の写真3)。<br /><br />クランクから少し先に進むと右手に平山亮一邸庭園。平山家は上述した知覧領主の佐多氏が知覧に移る前、大隅国の佐多の地の領主だった古い時代から仕えていたと伝わる旧家で、この庭園は江戸時代中期の1781年の作庭と伝わる。<br /><br />ここには知覧庭園の特徴である「鋭い峯」と「それを覆う刈込」と云うのがない。石組みが全くない、大刈り込みだけのシンプルな庭園。イヌマキの生け垣は長く連なる波形の刈り込みで、借景の母ヶ岳や周囲の山々を写したかのような曲線を見せ、前面にあるサツキの大刈り込みが築山のよう。極端に簡素化された名園として称賛されている。<br /><br />初夏にはサツキの刈込が一斉にピンクの花を咲かせ、写真で見るとすごく美しい。また刈込の手前にほぼ等間隔に置かれた10個の切石は、琉球庭園で盆栽を乗せるために置かれるもの。昔はサツキの季節以外はこの切石に盆栽を載せて楽しんだようだ。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397632259880135&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br />平山亮一邸の少し先には同じ平山姓の平山克己邸庭園。こちらの平山家もルーツは同じだが、こちらの作庭の方が少し早い明和年間(1764-71年)。<br /><br />母ヶ岳の優雅な姿を取り入れた枯山水の借景庭園。どこを切り取っても一つの庭園を形づくり、表現と調和に優れている。大海原に無人島が浮かび、遠くには緑の大陸が望めるような景観など、見る人のイマジネーションが広がる。<br /><br />「鋭い峯」と「それを覆う刈込」と云う知覧庭園の特徴を踏まえた庭園で、手前に白砂とサツキの低木の刈り込み、庭園の奥には鋭い岩を高い峯として見せる枯滝石組とそれを覆うように刈り込まれたイヌマキで構成される。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397645966545431&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br />7庭園の最後は平山克己邸の斜め向かいの西郷恵一郎氏庭園。江戸末期の文化文政年間(1804~29年)に作庭された、7庭園の中で最も新しい庭園。西郷家は江戸時代に肥後西郷家から薩摩藩へ宮司武家として知覧に転入した子孫のようだ。<br /><br />「鋭い峯」と「それを覆う刈込」という知覧庭園の特徴を踏まえた枯山水庭園。庭園手前に白砂とサツキの低木の刈り込み、庭園の奥には鋭い岩を高い峯として見せる枯滝石組とそれを覆うように刈り込まれたイヌマキ、そして庭園を引きで見ると最奥には母ヶ岳の借景が見え隠れする。<br /><br />庭園は主屋の南に開け、東南の隅に枯滝石組を置き、三層石塔を配している。石組みの高い峰から低く高く刈り込まれたイヌマキは遠くの連山を表現している。縦に高い石組は「鶴」を、低い位置にあるサツキ+庭石は大海に注ぐ谷川の水辺に遊ぶ「亀」を表現した「鶴亀の庭園」であるとも解釈されている。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397655376544490&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br /><br />麓公園に足を伸ばすが、続く

鹿児島 南九州 知覧武家屋敷後半(Samurai Residence Gardens,Chiran,Kagoshima,Japan)

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2022/04/22 - 2022/04/22

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ちふゆ

ちふゆさん

2022年4月22日(金)1時45分、佐多民子邸と道を挟んである佐多美舟邸庭園へ。この佐多家は知覧島津氏の本筋に当たり、江戸時代は知覧における最高の役所を担う家のひとつだった。江戸時代中期の宝暦年間(1751~64年)の作庭と伝わり、知覧庭園の中で最も豪華で広い庭園と云われる。

正門を入って右に折れると庭園の入口。北側の書院の前に庭が広がる。庭園の手前には白砂とサツキの低木の刈り込みがあり、奥の東南隅に鋭い岩を高い峯として見せる枯滝石組があり、それを覆うように刈り込まれたイヌマキがある枯山水庭園。庭園を引きで見ると最奥には母ヶ岳の借景が見え隠れする。

知覧庭園の特徴の「鋭い峯」と「それを覆う刈込」は他の庭と同じだが、その中でも最も鋭い石組が見られる。ただし、植栽が多く石組は判別しにくい。石組にも刈込みがあり、かつ白砂に浮かぶ岩島が刈込みに囲まれている。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397609779882383&type=1&l=223fe1adec

佐多家の庭園が3つ続いたが、佐多氏は島津宗家がルーツ。鎌倉時代の1318年に4代当主忠宗の三男・忠光が大隅国の佐多を与えられたことにより、「佐多氏」を称したのが始まり。南北朝時代の1358年に足利尊氏により知覧も与えられ、忠光の曾孫の親久の頃に知覧城へと移った。

江戸前期に佐多家16代の島津久逵が薩摩藩2代藩主島津光久の子の4代藩主吉貴より島津庶流知覧家として長男家のみであるが島津姓を代々名乗ることを許される。以後の当主は島津を名乗るが、それ以外は変わらず佐多姓(佐多本家家臣格)を名乗っており、3つの庭園の佐多家はその流れと推測される。

佐多美舟邸から先に進むと知覧茶専門店の川口茶舗がある(下の写真1)。知覧茶は日本一の生産量を誇る鹿児島県南九州市で生産されているブランド緑茶。南九州市は桜島の火山灰によって造られた水はけがよく肥沃な土壌や、一年を通して温暖な気候、豊富な日照などおいしいお茶を生産する条件が整っている。

好条件の環境で育てられた知覧茶の新茶は日本一早い新茶としても有名。知覧茶は品質においても全国茶品評会で農林水産大臣賞を度々受賞するなど、全国的に高い評価を得ている。

川口茶舗の隣には高城家住宅にも残されていた知覧型二ツ家を町内から移設して休憩所にしているところがある。部屋の中には入れないが、オモテとナカエの中の様子を覗き込むことが出来、宅地内にある売店で知覧茶とお菓子を買って、庭の腰掛で一服することが出来る。入口の辺りの通りでは大河ドラマ「西郷どん」のロケが行われたそうで、入口に案内が立っていた(下の写真2)。見てないんだよな、ジャマイカにいたので。

知覧型二ツ家だが、鹿児島に独特だといわれる二ツ家の中でも二つの屋根の間に小棟をおいてつなぎとした造りのもの。民家建築文化史の上からも貴重なものとされている。居住用のオモテと台所のあるナカエの建物が別棟となっている分棟式民家は、生活上不便が多く、次第に近づけるようになった。知覧型二ツ家は、その分棟式の建物であるオモテとナカエが合体したもので、知覧大工によって創作された知覧独特のもの。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397622383214456&type=1&l=223fe1adec

その先、通りがクランク状に曲がっているところに石敢當(せっかんとう)と呼ばれる魔除けの石。中国から琉球を経て伝わったもので、西からの武家屋敷通りの突き当りに建てられ、武家屋敷内に魔物が入って来るのを防いでいる。この場所には江戸時代後半、郷土子弟の教育の場である稽古所があったので、稽古所跡の石碑も建つ(下の写真3)。

クランクから少し先に進むと右手に平山亮一邸庭園。平山家は上述した知覧領主の佐多氏が知覧に移る前、大隅国の佐多の地の領主だった古い時代から仕えていたと伝わる旧家で、この庭園は江戸時代中期の1781年の作庭と伝わる。

ここには知覧庭園の特徴である「鋭い峯」と「それを覆う刈込」と云うのがない。石組みが全くない、大刈り込みだけのシンプルな庭園。イヌマキの生け垣は長く連なる波形の刈り込みで、借景の母ヶ岳や周囲の山々を写したかのような曲線を見せ、前面にあるサツキの大刈り込みが築山のよう。極端に簡素化された名園として称賛されている。

初夏にはサツキの刈込が一斉にピンクの花を咲かせ、写真で見るとすごく美しい。また刈込の手前にほぼ等間隔に置かれた10個の切石は、琉球庭園で盆栽を乗せるために置かれるもの。昔はサツキの季節以外はこの切石に盆栽を載せて楽しんだようだ。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397632259880135&type=1&l=223fe1adec

平山亮一邸の少し先には同じ平山姓の平山克己邸庭園。こちらの平山家もルーツは同じだが、こちらの作庭の方が少し早い明和年間(1764-71年)。

母ヶ岳の優雅な姿を取り入れた枯山水の借景庭園。どこを切り取っても一つの庭園を形づくり、表現と調和に優れている。大海原に無人島が浮かび、遠くには緑の大陸が望めるような景観など、見る人のイマジネーションが広がる。

「鋭い峯」と「それを覆う刈込」と云う知覧庭園の特徴を踏まえた庭園で、手前に白砂とサツキの低木の刈り込み、庭園の奥には鋭い岩を高い峯として見せる枯滝石組とそれを覆うように刈り込まれたイヌマキで構成される。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397645966545431&type=1&l=223fe1adec

7庭園の最後は平山克己邸の斜め向かいの西郷恵一郎氏庭園。江戸末期の文化文政年間(1804~29年)に作庭された、7庭園の中で最も新しい庭園。西郷家は江戸時代に肥後西郷家から薩摩藩へ宮司武家として知覧に転入した子孫のようだ。

「鋭い峯」と「それを覆う刈込」という知覧庭園の特徴を踏まえた枯山水庭園。庭園手前に白砂とサツキの低木の刈り込み、庭園の奥には鋭い岩を高い峯として見せる枯滝石組とそれを覆うように刈り込まれたイヌマキ、そして庭園を引きで見ると最奥には母ヶ岳の借景が見え隠れする。

庭園は主屋の南に開け、東南の隅に枯滝石組を置き、三層石塔を配している。石組みの高い峰から低く高く刈り込まれたイヌマキは遠くの連山を表現している。縦に高い石組は「鶴」を、低い位置にあるサツキ+庭石は大海に注ぐ谷川の水辺に遊ぶ「亀」を表現した「鶴亀の庭園」であるとも解釈されている。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.24397655376544490&type=1&l=223fe1adec


麓公園に足を伸ばすが、続く

  • 写真1 川口茶舗

    写真1 川口茶舗

  • 写真2 「西郷どん」ロケ地

    写真2 「西郷どん」ロケ地

  • 写真3 稽古所跡の石敢當

    写真3 稽古所跡の石敢當

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