2019/01/06 - 2019/01/06
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モボ101さん
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オーストラリア最大の都市シドニーには、1997年に開通した中央駅と西の郊外のダルウイッチ・ヒルを結ぶシドニーライトレールがあり、スペインCAF社製の低床連節車が運行しています。また2020年には、世界遺産のシドニーオペエラハウス近くのフェリー乗り場、サーキュラーキーから都心のタウンホール、セントラル駅を経て南東のランドウイックLRTが開業し、フランス製アルストーム社の低床連節車が導入されました。
そんなシドニーには19世紀に開業し、1962年まで運行していた路面電車がありました。市の南の郊外にトラム博物館があり、動態保存車を運行しているというので行ってみることに。
その1では、動態保存されているトラムへの乗車を中心に、
その2では、展示館内に保存されている各種トラムをご紹介します。
歴代のトラムに加えて、業務用の特殊車両や囚人護送用の刑務所トラムなど興味深い展示をご紹介します。
その1、動態保存されているトラムは、
https://4travel.jp/travelogue/11617304
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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最初に出迎えてくれるのは、1879年に米国のボールドウインが製造した蒸気トラム1A号。車内はにボイラと運転席があり、70人乗りの客車3両を牽引。電車が走るようになってからも、1937年まで蒸気トラムが運行されたのだとか。
シドニー トラム ミュージアム 博物館・美術館・ギャラリー
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290号はこの博物館で一番古い電車。1896年にC型2軸客車1号として製造され、1901年に290号に改番。1910年に電動車化され、1914年(1927年とするデータもあり)には breakdown car 115s号となって1948年まで稼働。その後、290号当時のオリジナルのスタイルに復元されています。正面窓下に方向幕。動態保存車で、特別なイベント時のみ稼働。
breakdown car が何を意味するのかよくわかりませんが、breakdown truck がレッカー車なので、故障車の移動等に使う車両なのかなと思います。 -
車内は木製のロングシートで、最近のバケット型シートのような1人ずつの区切り付き。デッキへの出入り口が偏っているので、ドアの部分の座面が欠きとられています。
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シドニーのC型2軸車29号は1898年製。同じC型の290号に対して、29号は運転席正面の窓、ベスチビュールがありません。29号の方がC型のオリジナルのスタイルではないかと思われます。1915年に290号と同様に breakdown vehicle になり、1958年まで使用。1972年から89年まで、イタリア料理店“オールドスパゲッティーファクトリー”に貸与(日本でも名古屋の同名の店には名鉄揖斐谷汲線の515号が店内に展示されていますね)。1995年に展示用に復元し、2001年から動態保存。
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車内は290号とほぼ同じ。ロングシートに1人ずつの区分はありません。
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シドニーで最初のボギー車として、1900年から1902年に251両も製造されたF型ボギー車。393号は1902年製で、1910年から1929年にF型の多くがLP型に改造された中で、393号は唯一オリジナルのまま1910年に通常輸送業務から退き、1952年まで運転士の教習車として使われました。
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運転台に窓(ベスチビュール)のない車体には、前後に開放室があり、この部分の座席は背ずりが転換式になっています。
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車体の中央部分は窓のある客室で、ロングシート。窓の上段がステンドグラスのよう。
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シドニー728号は1906年に造られたN型ボギー車の最終グループ。両端のオープンデッキの運転席の後ろにも座席があり、中間にはコンパートメントが6室。車内に通路は無く、車掌さんは車外のステップを伝って前から後ろへ通り抜けけたのでしょう。これ以後、この座席配置の車輌の製造が続きます。1949年まで旅客輸送に使われた後、運転士の訓練車として1953年まで稼働しました。動態保存で特別なイベント時のみ稼働。
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シドニーのO型ボギー車805号は、1908年から1914年に626両も製造されたうちの1両で1909年製。1958年まで稼働し、シドニーの中心部にあり科学技術と芸術を展示するパワーハウス博物館が所有して、トラム博物館が借用している車両です。同時期に製造の、K型2軸車の車体を延長したようなタイプで、前後に巻揚げカーテンの付いた2室ずつのオープンのコンパートメント、中央部に両開きドアのある4室のコンパートメントを配置しています。連結運転が可能で正面の窓下、方向幕の上にある丸いのが総括制御用のジャンパ栓。 動態保存で特別なイベント時のみ稼働。
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シドニーのK型2軸車は1913年製。シドニー最後の2軸車として、1956年まで運行しました。
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ドアのあるコンパートメントが2室。ドアの無いコンパートメント2室には、雨天の時に降ろすのでしょうか、巻き上げ式のカーテンを装備しています。前後は運転士の後ろには座席もあるオープンデッキ。
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シドニー以外のオーストラリア他都市のトラムもいます。1908年製の2軸車12号はメルボルンのトラムで、1930年代にバララットに移籍。虎縞の正面は、バララットの塗色です。 動態保存で特別なイベント時のみ稼働。
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車体の前後はオープンデッキで窓にガラスのない客室に木製のロングシート。ドアで仕切られた中央部は床が一段高くなり、窓にガラスが入ってクッションのあるロングシートなので、ここは1等室だったのかなと想像します。
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シドニーのLP型ボギー車154号は、1900年に393号と同型のF型として製造され、1926年に更新(車体新造?)でLP型になり、1949年まで運行しまました。 方向幕が正面窓上に移行。動態保存車。
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車内は通路がなく、7室のコンパートメントが並びます。
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側面の屋根にも方向幕。窓にSMOKINGの表示があるので、喫煙室と禁煙室に分けていたのでしょう。
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シドニーのR1型ボギー車1979号は1936年製。R1型は第二次世界大戦中に55両、戦後に100両が製造された大型車で、1961年の全線廃止まで残ったシドニーのトラムの主力車 で動態保存。トラム博物館は動態保存車も含め多くのR1型を保有しています。
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運転席には直接式の制御器とエアブレーキ、ハンドブレーキのハンドル。
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車内には、転換式のクロスシートを備えています。天井に渡した紐から下がる吊手は、これを引いて停車の合図をするのでしょう。並行して、白い握り棒を設けています。
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パーテーションで通行止めになった奥にもレストア中で非公開の車両が。1920年代に製造されたシドニーのP型ボギー車でしょうか。
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コンパートメントが8つ。窓にSMOKINGの表示があるので、喫煙と禁煙に分けていたのでしょう。その向こうにも同型らしき車両がもう1両。
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パーテーションの奥にレストアを待つ車両が530号と同型がもう1両。オープンデッキにコンパートメントタイプの客室があるシドニーのE型。1903年製の2軸車です。
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その隣にもレストア待ちの車両。塗色は違うけどシドニーのR1型でしょう。
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一般の乗客が乗れない作業用の車両や特殊車両も保存展示されています。
1899年製のD型2軸車112号を1930年に線路のクリーニングカー(スクラバーカー)に改造して134s号に改番。車輪の間には、研磨剤のカーボランダムのブロックを取り付け。600V危険の表示がある金網を張った部屋には、複数の黒い箱を搭載しています。1961年に博物館入りした後、1978から1979年と1983年の鉄道路線開業前や1997年のライトレール(LRT)開業前に、現役に復帰して活躍したのだとか。2019年末にもLRTの新路線が開業してるけど、この時は出番がなかったのかな。 -
貨物用ボギー車24s号は1903年製。1948年まで、業務用の機械や部品の輸送に使われました。2017年に動態復元。
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24s号が履くのは、車輪径の大きく異なるマキシマム台車。ステップでよく見えないものの、同世代の旅客用の車両にもこのタイプが多いようです。日本では、大阪市電の保存車で見かけたような。
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1909年製のボギー車948号には、片方の側面に窓がありません。これは1949年まで囚人の輸送に使われた、世界で唯一の刑務所トラムで、線路は拘置所の中まで引き込まれていたのだとか。
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車内は片側廊下で、外に面して金網を張った6個所の側窓があり、引き戸の付いた6室の独房が並んでいます。
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1920年製の2軸車3号は手前に回転砥石を持ち、変形したり波打ったり、溶接個所を修正するレール研磨車。1920年代に5両製造されたうちの2号車で、1935年にニューキャッスルのトラムに移籍した後、1950年の廃線でシドニーに戻り、1958年にメルボルンのトラムに売却。それまでは両端がオープンで運転席側にはキャンバスをかけていただけだったものが、メルボルンで一端に密閉式のキャビンを取り付けて3号に改番。1971年にシドニーに戻って博物館入りした後も、ニュージーランドはオークランドの交通博物館に行き、メルボルンの姿でレストアされてシドニーに戻り、今に至るという流転の人生。
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連結器が付いて電車に牽引される台車の上にガスボンベが10本。GRASS BURNING IN PROGRESS の標記があるので、走りながら線路に生えた雑草を焼却していく車両のようです。
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頭部がカットされた三角錐に2軸の車輪を取り付けたカウンターウエイト(釣合い重り)のダミーは、1000分の121の急勾配路線の道路の下、地中に施設したトンネル内の線路上の釣合い重りと、電車の後部に連結したこのダミーとをケーブルで繋ぎ、ケーブルカーの原理で電車を丘の上まで安全に押し上げるシステム。1903年の開通から1955年の当該急勾配路線の廃止まで使われたとか。
イタリアのトリエステのトラムでは、カウンターウエイトを使わずに、2台のケーブルカーでつるべ式にトラムを上下するシステムが現役です。
https://4travel.jp/travelogue/11248259 -
バスも所有しています。1952年製の2619号は、ロンドンのルートマスターのようなボンネットタイプの二階建て。出入口はロンドンのような後部ではなく側面に。動態保存で、イベントで運行することもあるそうです。
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19号は1937年製の二階建て、後輪が2軸のトロリーバス。
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オーストラリア以外のトラムも保存展示しています。この近代的な2軸車は、第二次大戦後に分割された東ドイツが大量に製造したゴータカー。旧共産圏各国がチェコスロバキア製のタトラカーに席巻されるまで、東ドイツ各都市の主力車でした。5133号は1969年製のベルリン市電で、壁崩壊後の1996年まで稼働。ドイツからトラム博物館に寄贈され、動態保存車です。
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ゴータカーの運転台。左手の制御器のハンドルで加速と電気ブレーキを操作。停車直前まで電気ブレーキが作動し、最後は右手でハンドブレーキのレバーを手前に倒して止める。
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ゴータカーの車内は、通路を挟んで4人と2人のボックスシート。
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バスの奥に、西ドイツ当時のミュンヘンの3軸車らしき車両が押し込められています。同時代の東ドイツ製に比べると、随分スマート。
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その隣には、イタリアはミラノの旧型車の姿も
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展示館の壁面には、写真とともにシドニーの路面電車の歴史を語るパネルが。
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各種プレート類も展示。
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歴代の切符もあります。
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市内バスの歴史も。
なかなか見ごたえのある博物館でした。
開館は水曜と日曜だけです。訪問されるときは事前にご確認ください。
NSW鉄道博物館のサイトで、トラム博物館の保存車の車内や車両の周辺を歩き回ることができます。
https://highlands-3d.captur3d.io/view/transport-heritage-nsw/sydney-tramway-museum-f-type-tram
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