2016/04/30 - 2016/04/30
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モボ101さん
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イタリア、オーストリア、ハンガリー、クロアチアと国境を接する東ヨーロッパの小国スロベニアは、ソ連崩壊後の1991年にユーゴスラビア社会主義連邦共和国から独立。クロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナの独立が泥沼の内戦状態に陥ったのに対して、セルビアと接していないこともあってか、連邦軍との独立戦争はわずか10日間で終結。
国内には、人口28万人の小さな首都リュブリャナを中心に、ユーゴスラビア鉄道から分離したスロベニア鉄道の路線網があります。
スロベニアの歴史は複雑で、15世紀にハプスブルク家の所領となり、オーストリア帝国を経て第一次世界大戦でオーストリア=ハンガリー帝国が解体されるとセルビア王国の一部になり、ナチス・ドイツの占領、イタリアやハンガリー、クロアチアによる分割統治の後、第二次世界大戦後はユーゴスラビア社会主義連邦共和国に組み込まれます。
スロベニアに鉄道が開通したのは19世紀半ばオーストリアの時代。首都ウィーンから、今はイタリア領になっているアドリア海の貿易港トリエステを目指してオーストリア南部鉄道が延びてきました。そんなスロベニア鉄道の歴史を伝えるスロベニア鉄道博物館が、リュブリャナ駅から北東に徒歩20分余りのところにあるので、2016年のゴールデンウイークに訪問してみました。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 家族旅行
- 一人あたり費用
- 20万円 - 25万円
- 交通手段
- 鉄道 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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リュブリャナ市内から徒歩で鉄道博物館へ。GoogleMapにGPSを重ねて見ていたものの、住宅地から奥に入る道がわかりづらく、行きすぎたことに気付いて戻ったりして、やっとたどり着いた先に、扇形庫と腕木式信号機が見えてきます。
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古い機関区の施設を鉄道博物館として使用していて、左の扇形庫と右の建物が展示館。
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扇形庫の入口にチケット売り場があり、“向かいの建物にも展示があるのであとで見てね”と、若いお嬢さんが英語で対応してくれます。
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出迎えてくれるのはスロベニア鉄道の蒸気機関車、29型010号機。さすがに標準軌の機関車は大きく、日本のD51とはスケールが違います。
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それでは、端から順番に見ていきましょう。扇形庫の中は狭くて、写真に納めるのに苦労します。また、博物館内には説明の看板等は用意されていなかったので、ネットで情報収集をしています。
03-002号機は、1910年にリュブリャナとトリエステ間の急行列車用として導入されました。オーストリアの機関車の形態上の特徴として、正面がフラットで煙室扉が両開きになっています。 -
後ろから見た03-002号機のスポーク動輪。
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軸配置2Bのオーストリア南部鉄道406号機は、1896年オーストリア=ハンガリー帝国最大の機関車メーカーであったウイーンのWienerNeustädter Lokomotivfabrik製。
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軸配置2Bのオーストリア南部鉄道406号機の足回りは、軸受が動輪の外にあり、さらにその外側にロッドが付く構造。
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軸配置B1のタンク機関車162-001もオーストリア南部鉄道からの引き継ぎで、1880年のFrol製。
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標準軌にしては小さな機関車で、シリンダが後ろ向きでキャブの下にあります。
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その後ろで台車に乗っている軌間760mm、ナローゲージのC型71-012号機は1922年のコッペル製。
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ナローゲージのC型71-012号機の後ろ姿。
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緑色で軸配置Cのテンダ機関車は、オーストリア南部鉄道718号機。オーストリア=ハンガリー帝国の機関車メーカStEG製で、この博物館で一番歴史のある1861年の製造。
スロベニア鉄道124-004号機として使われていたものを、ナンバーも含めオリジナルのスタイルに復元したのでしょう。 -
屋根のないオープンキャブや、上部にフレアの付いたテンダなど、古典的ないでたちです。
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フレア型に上部が広がった718号機のテンダ。
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もう1両、台車に乗っている760mmナローゲージの機関車がいます。軸配置BのK3号機は1892年、オーストリアリンツのクラウス製。
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その後ろは軸配置1C1、1910年StEG製のタンク機116-002号機。
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軸配置Dで、ボックススポーク動輪の73.372号機は、オーストリア=ハンガリー帝国のオーストリア側国営鉄道であった帝立王立オーストリア国有鉄道時代の1906年製。
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テンダーを振り替えたのか、異なるナンバープレートが付いています。
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この扇形庫内で唯一の客車は、ダブルルーフでオープンデッキ、ホイールベースの長い木造2軸車Get821。
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車体の側面には赤十字のマークを付けています。窓には、水筒に加えて救急箱らしきものを肩からぶら下げた兵士の姿も。
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車内には、写真とともにこの客車の用途である傷病者の輸送を説明するパネル展示が。かつては日本でも、傷病兵を鉄道で輸送するための病客車があり、記号は“ヘ”だったとか。
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病客車の説明と写真のパネル。
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軸配置1Eの重量貨物用29-010号機は、Federal Railway of Austria (BBÖ)の81型で、第一次世界大戦後の1923年頃の製造。
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メンテナンス中なのか赤い錆止め塗料を身にまとった36-013号機も、同じく軸配置1Eの重量貨物用。北ドイツからポーランドを支配したプロイセンのG12型として1917年から24年に製造されたうちの1両らしい。オーストリア製と違って、煙室扉は日本と同じ片開き式。
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同じく片開き式の煙室扉を持つ軸配置1C1タンク機の17-006号機。1917年製のハンガリー鉄道(MÁV)342.164号機のようです。
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17-006号機の煙突の途中から両サイドに付いた、羽根のようなものが気になります。
扇形庫内に保存展示されていた車両は以上です。 -
扇形庫の壁際には機関車の煙突やコンプレッサーなどが展示。
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動輪のタイヤらしき部品も。左の機械は何でしょうか。
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ナンバープレート等も展示されています。共産主義の赤い星の付いた羽根車はユーゴスラビア時代のマークでしょうか。
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ケースに入った大型模型。何故かここにスチーブンソンのロケット号がいます。
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説明書きによると、17-006号機の模型は5インチゲージのライブスチームだそうです。そういえば、庫外で模型用の細くて狭い線路を見かけました。
以上で、扇形庫内の見学はおしまい。扇形庫全体が公開されているのではなく、壁で仕切った向こうはワークショップになっているようでした。 -
続いて、扇形庫を出て向かいの建物に移動します。かつて使用されていた手動の信号やポイントの操作レバー。
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手動の踏切遮断機。
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スイッチで操作する駅のポイント切り替え器。
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通信設備の鉄道電話。
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歴代の制服のようです。
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手で漕ぐ軌道自転車。
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エンジンの付いたレールバイク。
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周辺国の一部も含め、オーストリア南部鉄道の開通に始まり、ユーゴスラビアの発足から現在に至る各年代別の鉄道路線の変遷が表示されています。
19世紀中ごろのオーストリア=ハンガリー帝国時代に、オーストリア南部鉄道開通。 -
19世紀末、オーストリア=ハンガリー帝国時代の鉄道網の発展。
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第二次世界大戦後、ユーゴスラビアの発足からスロベニアの独立を経て現在。
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駅長室を再現。
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古い客車内部のモックアップ。
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後ろの壁には歴代の硬券や、食堂車で使われてのでしょうか、什器類の展示もあります。
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階段を上がった2階はギャラリーになっていて、鉄道をテーマにした絵画の展示。
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扇形庫の外に、屋根の下で保存されている緑の蒸機機関車は、帝立王立オーストリア国有鉄道150-003号機。1893製のC型タンク機。
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近くには、軸配置C2の97-028号機が貨車を連結していますが、雨ざらしのために保存状態はイマイチ。
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タンク機関車やタンク貨車、長物車に乗った客車なども、展示ではなく屋外に放置状態。
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軸配置1D1の06-016号機に至っては、第1動輪が抜けた状態で放置されています。1930年製の大型機なんですが。
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太陽の下で赤錆た姿を晒す大型蒸気機関車28-029号機と33-253号機。門鉄デフやテンダの形状からみて、後者は第二次大戦中から戦後にかけて7000両以上が製造されたドイツの戦時型、日本のD52に相当する52型のようです。
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扇形庫の裏に回るとターンテーブルが残っています。本当は、こちら側が表ですね。
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近くには、蒸気機関車の灰を落としたピットや、給水設備も残っています。
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黄色い保線機械も留置されていますが、これらは現役でしょう。どこまでが博物館で、どこからが鉄道の敷地か曖昧です。
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線路のバラストを整備する車両でしょうか。
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木陰にはもう一両、軸配置1Eのドイツの52型33-339号機が朽ち果てようとしています。
これが、リュブリャナのスロベニア鉄道博物館とその周辺に置かれた車両です。その大半は、オーストリア=ハンガリー帝国時代のもので、戦後のユーゴスラビア時代の共産圏、かつての鉄のカーテンの向こう側の珍しい車両があるかとの期待は裏切られました。スロベニアの人々にとって、残したくも思い出したくもない時代なのかもしれませんが。
この日の私の訪問時間中に、鉄道博物館を訪れた人は他には誰もいませんでした。
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