2018/12/08 - 2018/12/08
5位(同エリア46件中)
Islanderさん
- IslanderさんTOP
- 旅行記216冊
- クチコミ74件
- Q&A回答13件
- 469,996アクセス
- フォロワー176人
およそ3,000の島々が散らばる瀬戸内海。瀬戸内に面する街で育った自分にとって、瀬戸内は海の原風景。少年時代に眺め、何時かは行きたいと思っていた島々。それからうん十年、橋が通った島、芸術の島、世界遺産の島、時の流れとともに変わりゆく。
今回の旅は、ハンセン病の患者が隔離された歴史を持つ長島へ。現在も長島にはハンセン病の元患者が生活する国立療養所が2か所あります。障がいや差別に苦しみ、社会復帰が困難だった元患者(以後、入所者)の方々(約300名、平均年齢は85歳を超えている)が生活しています。今回は見学ツアーに参加し、1930年(昭和5年)に設立された国立療養所、長島愛生園を訪問しました。
ハンセン病は感染力が弱い菌による感染症で、昭和30年代には特効薬が普及、通院と投薬で容易に完治できる病気となっていました。しかし、長らく患者や元患者は人権が侵害され、平成8年のらい予防法が廃止されるまでは患者の隔離が基本とされていました。科学的な根拠を失っていた隔離政策が近年まで続いてきたことは国の責任だけではなく、他人事としてきた社会全体にも責任があるのではないかと、今回の訪問で感じたところです。
ハンセン病の正しい知識と隔離政策などの「負の歴史」を学ぶ場として、近年、見学ツアーが開催され、長島愛生園には多くの人々が訪れるようになっています。瀬戸内の島(長島と大島)にある3つの国立療養所を世界文化遺産への登録を目指す活動も始まりました。
この旅行記は長島を初めて訪問される方への参考になればと思い、まとめたものです。見学ツアーの詳細は長島愛生園歴史館のWEBサイト http://www.aisei-rekishikan.jp/ をご覧下さい。
【旅程】
○12月8日(土)
岡山駅8:58(山陽線、赤穂線)9:23邑久駅9:30<長島愛生園見学ツアー>12:30邑久駅13:34(山陽線、赤穂線)14:01岡山駅
【島データ】
・長島(ながしま) 岡山県瀬戸内市
面積:3.52平方km 周囲:16km 標高:99m 人口:486人(2015年)
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- JRローカル
PR
-
岡山駅から赤穂線の普通列車で約25分。邑久駅に到着。
邑久駅 駅
-
今回は長島愛生園歴史館が月1回実施している見学バスツアーに参加(参加費は無料)。事前予約は必須で、近年は見学希望者が多く、早めに満席になります(長島愛生園HPから予約可能)。邑久駅前からバスに乗り込みます。当日の見学ツアーは満席でした。移動中の車内ではハンセン病や長島愛生園の歴史を説明するDVDを視聴します。
-
長島は本土からわずか30メートルしか離れていない島です。入所者の16年にも及ぶ運動の末、1988年(昭和63年)に完成した邑久長島大橋を渡ります。この橋は「人間回復の橋」とも呼ばれています。
-
右側が本土で左側が長島です。橋が完成するまでは、渡し船で島に渡る必要がありました。
-
長島には長島愛生園と邑久光明園の2つの国立療養所があります。いずれの療養所も本土側とは反対側の場所にあります。沖に小豆島が見えます。
-
邑久駅から約30分で長島愛生園歴史館に到着。平成8年まで療養所の事務所として使われていた建物は、平成15年から歴史館として一般公開されています。園内は学芸員さんによるガイドで回ります。
-
歴史館に入り、まず、ハンセン病についての知識や入所者の生活について学芸員さんから説明を受けます。とてもわかりやすい説明です。
-
資料展示室には昭和30年代の長島愛生園を再現したジオラマがあります。このジオラマは1人の入所者が4年かけて制作したものです。
-
昭和30年代当時は患者の生活エリアは完全に隔離されていました。
-
奈良時代まで遡ってハンセン病に関する歴史が紹介されています。
-
昭和20年代までは入所者は逃亡防止から、現金を持つことは許されず、園内のみで使える通貨に交換させられました。
-
園内には昭和30年から昭和62年の間、高校がありました。当時の備品が展示されています。入所者である生徒から先生に渡されるものは消毒されていました。
-
入所者の投票紙を消毒するために小さな穴が開けられている投票箱。1990年代まで使用されていたとのことです。
写真はありませんが、展示資料室には入所者によるハーモニカバンド「青い鳥楽団」が使用していた楽器、舌読に使われていた点字の本などが展示されています。障がいを乗り越えるべく、懸命な努力をしていた入所者を知ることができます。 -
園長室は当時の様子が再現されています。
-
収容桟橋。新たな入所者が上陸した桟橋の跡。この桟橋は家族との別れの場でした。
-
1930年の開園時に建設された収容所(回春寮)の建物は保存されています。新たな入所者はこの建物で一週間程度過ごし、身体検査や持ち物の消毒などが行われました。
-
収容所の内部。
-
収容所に残されている消毒風呂。新たな入所者はクレゾールの入った風呂に入浴、消毒されることになっていました。
-
監房があった場所に現存する塀。1953年(昭和28年)のらい予防法制定以前は逃走した入所者など懲罰の対象となった入所者は監房に収監されました。懲戒権は園長が持っていました。
-
後遺症で目の不自由な入所者も多くいます。スピーカーからラジオの音声が流れ、場所の位置が分かるようになっています。
-
納骨堂へ。入所者は家族の差別を恐れ、身内と縁を切っている方々が多くいます。この島で亡くなられ、引き取り手のないお骨は園内の納骨堂に祀られています。故郷へ帰ることができなかった3,500名以上の方々を偲び、手を合わせました。
-
納骨堂で案内をして下さった学芸員さんとは別れ、バスに乗り込み邑久駅に向かいます。長島にあるもう一つの国立療養所、邑久光明園の横を通ります。
-
見学ツアーは邑久駅で12時30分に解散。邑久駅から徒歩圏内で飲食ができる場所は限られています。邑久駅の近く(徒歩7分程度)にあるかカフェ、キノシタショウテンでランチにします。
キノシタショウテン グルメ・レストラン
-
本日のコーヒー。産地の説明がありましたが忘れました。
-
地元農家の野菜をふんだんに使ったオープンサンド。新鮮で種類豊富な野菜サラダも付きます。結構なボリュームです。
-
邑久駅から帰途につきました。(おわり)
邑久駅 駅
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
旅行記グループ
瀬戸内あいらんど紀行
-
前の旅行記
盛んな漁業で活気ある島、坊勢島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.17
2017/11/25~
家島
-
次の旅行記
ネコノシマ佐柳島 瀬戸内あいらんど紀行vol.19
2019/12/13~
丸亀・宇多津・多度津
-
瀬戸内あいらんど紀行 vol.1~高島、大飛島編
2016/05/07~
笠岡・浅口
-
瀬戸内あいらんど紀行 vol.2~真鍋島、北木島編
2016/05/08~
笠岡・浅口
-
竹原から大崎下島へ ~瀬戸内あいらんど紀行 vol.3 前編
2016/06/18~
大崎下島・豊島・下蒲刈島
-
瀬戸内国際芸術祭2016を迎えた犬島へ ~瀬戸内あいらんど紀行vol.4
2016/08/06~
岡山市
-
現代アートの聖地、直島へ ~瀬戸内あいらんど紀行vol.5
2016/10/15~
直島・豊島・小豊島
-
瀬戸内国際芸術祭2016を迎えた大島へ ~瀬戸内あいらんど紀行vol.6
2016/10/16~
高松
-
女木島、瀬戸内国際芸術祭2016を追憶 ~瀬戸内あいらんど紀行vol.7
2016/10/26~
高松
-
男木島、瀬戸内国際芸術祭2016を追憶 ~瀬戸内あいらんど紀行vol.8
2016/10/26~
高松
-
瀬戸内国際芸術祭2016を迎えた本島へ ~瀬戸内あいらんど紀行vol.9
2016/11/02~
丸亀・宇多津・多度津
-
瀬戸内国際芸術祭2016を迎えた高見島へ ~瀬戸内あいらんど紀行vol.10
2016/11/02~
丸亀・宇多津・多度津
-
瀬戸内国際芸術祭2016を迎えた伊吹島へ ~瀬戸内あいらんど紀行vol.11
2016/11/05~
観音寺市
-
七不思議とジオパーク、それに美味い魚がある姫島へ ~瀬戸内あいらんど紀行vol.12
2016/12/09~
国東(くにさき)・姫島
-
水仙薫る岡山県最南端の島、六島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.13
2017/01/28~
笠岡・浅口
-
大飛島を再訪、小飛島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.14
2017/01/28~
笠岡・浅口
-
錦秋の小豆島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.15
2017/11/23~
小豆島
-
播磨灘の離島、家島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.16
2017/11/24~
家島
-
盛んな漁業で活気ある島、坊勢島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.17
2017/11/25~
家島
-
「人間回復の橋」を渡って長島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.18
2018/12/08~
邑久・長船
-
ネコノシマ佐柳島 瀬戸内あいらんど紀行vol.19
2019/12/13~
丸亀・宇多津・多度津
-
NORINAHALLEに乗って風待ちの大多府島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.20
2020/02/24~
備前・日生
-
弓削島から「マンガの島」高井神島と「瀬戸内のどまんなか」魚島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.21
2020/03/28~
しまなみ海道(周辺の島々)
-
牛窓から緑の島、前島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.22
2020/06/19~
牛窓
-
白石島で「瀬戸内アルプス」をハイキング 瀬戸内あいらんど紀行vol.23
2020/07/17~
笠岡・浅口
-
明治の要塞が残る小島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.24
2020/12/20~
しまなみ海道(周辺の島々)
-
みかん色に染まった中島へ(1日目) 瀬戸内あいらんど紀行vol.25
2021/11/03~
松山
-
みかん色に染まった中島へ(2日目) 瀬戸内あいらんど紀行vol.25
2021/11/04~
松山
-
たまねぎの島、津和地島 瀬戸内あいらんど紀行vol.26
2021/11/04~
松山
-
瀬戸内国際芸術祭の会場になった与島へ 瀬戸内あいらんど紀行vol.27
2022/05/15~
坂出・瀬戸大橋周辺
-
伊吹島の瀬戸内国際芸術祭2022を追憶 瀬戸内あいらんど紀行vol.28
2022/10/13~
観音寺市
-
本島でクラフトビール、ほろ酔いで牛島を歩く 瀬戸内あいらんど紀行vol.29
2023/05/04~
丸亀・宇多津・多度津
旅行記グループをもっと見る
この旅行記へのコメント (2)
-
- ねもさん 2021/03/30 08:19:17
- 初めまして
- Islanderさん
私も先日、長島愛生園を訪ねました。遠かったですが、来てよかったと思いました。不謹慎な言い方かもしれませんが、巨大な博物館という印象でしょうか?
Islanderさんの旅行記には、私が見られなかったシーンも多く、ありがたく拝見しました。
- Islanderさん からの返信 2021/04/02 21:58:13
- コメントありがとうございます
- ねもさん
ご丁寧にコメントくださりありがとうございました。長島愛生園は世界遺産を目指して遺構を残す取り組みをしており、博物館は間違った印象ではないと思います。医学の進歩にもかかわらず、差別の歴史が続いた歴史は決して繰り返してはならないもので、歴史の事実として多くの人々に知ってもらうことは必要ですね。瀬戸内の島には長島のほか、香川県の大島にもハンセン病の回復者が生活している大島青松園があります。船でしか行けませんが、瀬戸内国際芸術祭の会場にもなっており、是非足を運んでいただければと思います。
Islander
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったスポット
この旅行で行ったグルメ・レストラン
邑久・長船(岡山) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
旅行記グループ 瀬戸内あいらんど紀行
2
26