2018/05/24 - 2018/05/30
45位(同エリア9835件中)
norio2boさん
- norio2boさんTOP
- 旅行記266冊
- クチコミ608件
- Q&A回答23件
- 836,030アクセス
- フォロワー471人
この旅行記のスケジュール
もっと見る
閉じる
この旅行記スケジュールを元に
今日は妻の希望でロンドンアイに乗ります。
ロンドンアイには4年前の一人旅の時に乗りました。
テームズ川の両岸に沿って並ぶロンドンの主要な建造物を360度方向に鳥瞰するのはロンドンの街を理解する意味で良い観光方法だと思います。
ロンドンアイの料金(優先搭乗67ポンド/2人)は高いと思います。
シンガポールのと同じような観覧車があったと思いますがもっと安かった記憶があります。
ロンドンアイは今は、コカコーラが営業権を取得したようです。
旅行前に立てた予定ではナショナルギャラリーに午前中入って15:00の予約のロンドンアイに入るというスケジュールでした。
ナショナルギャラリーからロンドンアイは1.2km徒歩15分です。
午前中にハロッズで買い物したので予定を変更しました。
ハロッズは買物しにくいデパートです。
ブランド(お店)別にフロアが構成されています。
例えばロンドン土産にハンカチが欲しい場合には思いつくブランド(お店)を回ってそれぞれのショップにどんなハンカチがあるか見せて貰って、その記憶でそれぞれを比較する事になります。
さらに、内装がエジプトの古代文明の遺跡のようにデザインされているのも個人的見解ですが違和感がありました。
ホテルに戻って買い物を置いてから直接3時のロンドンアイに向かいました。
ロンドンアイは楽しめました。
その後はナショナルギャラリーではなく、静かな所が良いのでコートールドギャラリーに行く事にしました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
コートールドギャラリーはこれで3回目です。
何度来ても飽きない、新しい発見があるということは素晴らしい所であることの証拠の一つだと思います。
鑑賞者の立場で考えると、進歩とは言えませんが僕も少し変化していることに気づきました。
コートールドギャラリー、ここにはブリューゲル(父)の油彩が2枚(常設展示)と素描が3枚(事前申し込みで閲覧可能)があります。
コートールドギャラリーは2018年9月から大幅な鑑賞方法を含めた改修工事に入ります。約2年間の休館が予定されています。
休館中は
ロンドンのナショナルギャラリー
パリのルイヴィトン美術館
東京の都美術館(巡回展示で愛知県美術館、神戸市立博物館)
に収蔵作品を貸し出しコートールドの冠をつけた展示が行われる予定です。
改修の目的はそもそもの設立の主旨である美術教育と美術調査研究機能の充実にあるとしています。デジタル技術を駆使した収蔵作品のデータベースの整備も進められています。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 鉄道 徒歩
- 航空会社
- ANA
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
昨日からホテルのエレベーターが故障して階段で登り降りしました。
修理人が入っている様子は無くて帰る日も同じ様子でした。
今日は地下鉄を使ってみます。
僕は前回4年前2014年に購入したオイスターカードを使ってみます。
妻は10ポンド分オイスターカード(デポジット含めて)を買いました。
ホテルのコンセルジュの説明ではいちいちチケットを買うよりオイスターカードの方が断然安いとの事です。
エレベーターの故障のお詫びのついでの会話だったので本当なんでしょう。
ホテルから最寄りの駅スローンスクエアステーションまで5分です。
チェルシーフラワーショウが終了したスローンストリートは飾り付けが取り払われて寂しげです。
スローンスクエア駅からウェストミンスター駅まで向かいます。
僕の4年前のオイスターカードは問題なく使えました。
どこかの駅の改札口で駄目な時がありましたが隣の改札口でタッチし直したら問題無く入れました。スローン スクエア駅 駅
-
かたくるしい文章ですのでご関心の無い方はパスして下さい。
<ご参考までに>
旅行を支援する道具としてのスマホの可能性について
この写真はiPhoneのmapでナショナルギャラリーまでを検索した道順の画面です。
スローンスクェア駅までホテルから350m約6分と出ています。
その表示の右側に「詳細」の文字があります。
ここをクリックするとスローンスクェア駅までの道順が表示されます。
スローンスクェア駅からは地下鉄のDistrict Lineで4駅です。
地下鉄や電車で気をつけなくてはならないのは逆乗り(反対の方向に乗ってしまうこと)です。
乗車方向はEastbound Tower Hill、Barking、またはUpminster行きで2~5分毎にくると表示されています。「4駅」の表示をクリックすると4駅の名前が出てきますから正しい方向に乗っているかダブルチェックする事ができます。
これは当初、行こうと思っていたナショナルギャラリーへの道順です。
私はパソコンとかスマホに弱いんでとか、この年になって今更という高齢者の方が多いです。
勿体無いことです。
スマホは高齢者を助ける強力な機械だと実感しています。
旅行の場面でも、スマホは「旅行のやり方や移動の仕方」を革命的に変えつつあると思います。
ーーーーーーーーーーーーー
ご出発前に
最寄りの駅からお住まいのご自宅までのナビをスマホで実験的にでやって見てください。
様子が分かったら次は近距離のまち歩きで更に実験して見てください。
次に次回の自分の旅行先にふさわしいスマホ用のアプリを探してください。各国、都市、交通機関、施設などアプリ(無料アプリの方が利用者が多いので改善されている場合が多いです)が揃って来ています。
スマホの地図アプリの進歩により安全で安心な旅行が実現できると思っています。
車のナビも出始めの時は頼りない物でした。
あの頃と比べると今のナビは格段の進歩です。
スマホは道順を言ってくれます。
胸のポケット入れておけば聞こえます。
地図を見るのが一番だとか
現地の人に聞くのが一番とか
スマホは危ない、みっともないという反対派の方がいらっしゃいますが
使いやすさや信頼性の改良が進み、安全と安心を実現するツールとして旅行中のスマホの利用は普及してゆくと思います。 -
ウェストミンスター駅を上がって来ると観光客で賑やかな世界でした。
ウェストミンスターの時計台は工事中のネットが貼られていました。
車を使った無差別テロの防止対策で写真のように要所要所に頑丈なバリアーが設置されていました。ウェストミンスター橋 建造物
-
工事用のネットを貼られて改修している時計台(Big Ben: Elizabeth Tower)です。
ビッグベン 現代・近代建築
-
テームズ川の向こうに見えている巨大な観覧車、あれがロンドンアイです。
ロンドンアイはブレアが首相の時代にイギリスの2000年事業の一つとして作られました。
当初は5年たったらどこかへ移動する計画だったと言います。
今でもロンドンの有数の観光名所の一つです。ロンドン アイ 建造物
-
テームズ川を渡りきったところの写真です。
ここを左折するとロンドンアイです。
ここにも侵入禁止バリアーがあります。
ロンドンアイの手前の広場のiPhoneで撮影した動画です。
https://youtu.be/kGnU6C1sWyo -
現在の正式名称はコカコーラロンドンアイです。
32個のキャビンは30分で一周します。
写真のように隣のキャビンと高さが同じからもう少しで最高位置になります。
ロンドンアイのキャビンから撮った「コマ落とし」動画です。
https://youtu.be/ulI_FujLuRAロンドン アイ 建造物
-
ロンドンアイを楽しんだ後は、コートールドギャラリーに行くことにしました。
ロンドンアイの周辺の喧騒に疲れて静かな所へ行きたかったのです。
コートールドはロンドンの美術館では珍しく入場料(シニアで7ポンド)を取ります。
ロンドンではナショナルギャラリーをはじめ殆どの美術館は無料です。
ロンドンアイからウォータローブリッジを通りテームズ川を渡ります。
川を渡り切った右側にあるサマーセットハウスの奥がコートールドギャラリーです。
このサマセットハウスの広場は12月にはスケートリンクになります。ウォータールー ブリッジ 建造物
-
サマセットハウスの入り口です。
1796年に建てられたこの建物はイギリスの昔を彷彿とさせる空間です。
いちばん最初に来た2013年春の時には、大がかりな撮影クルーが入っていてヴィクトリア時代のコスチュームを着た役者さんがいて映画の撮影をしていました。
2回目に来た2014年12月の時はサマセットハウスの中庭がアイススケートリンクになっていました。
両側の建物の各部屋はクリスマスシーズン用の商品を売る店が入っていて大勢の人で賑わっていました。サマーセット ハウス 現代・近代建築
-
コートールドギャラリーの入り口です。
10時開館6時閉館(最終入場は5時半)
大人8ポンド
シニア7ポンド
学生は無料
(月曜日無料は廃止されていました)
2018年9月3日から2年間ほどギャラリーの大改造が予定され休館になります。
ここは美術館と言うよりもロンドン大学に附属する美術研究所の一環の施設であると考えた方が理解しやすいと思います。
このコートールド美術研究所はロンドン大学の中で美術についての教育と研究を目的にして1932年に設立されています。
コートールド美術研究所の卒業生たちは各地の美術館の館長に就任しています。
コートールド派閥というか美術界の人脈があるようです。
写真はギャラリーの入り口です。
この反対側が研究施設になります。
常設展示されていない作品もこの研究所の建屋の部屋で見せてくれます。
4年前にはブリューゲルの素描「ホボーケンの縁日」を事前申し込みした見せて貰いました。
その時の旅行記です。
https://4travel.jp/travelogue/11119616コートールド美術館 博物館・美術館・ギャラリー
-
コートールド美術館には素敵なミュージアムカフェがあります。
特に屋外の席は人気で座れたことがありません。
一度、座って見たかったのです。
今日は僕らの他には2組くらいで運よく座れたのです。
スコーンのセットメニュー(2人で14.06ポンド/カード支払い)を頼みました。
女性1人でやっているので忙しそうでした。
お皿を下げるのも大変で、客の残り物を狙って鳩が飛んできて大変でした。
鳩が飛び上がるたびに食べ残しのかけらが飛び散っていました。
客が少ないので鳩たちも我が物顔でした。 -
コートールドの象徴的な画像に上から見たこの中央の螺旋階段があると思います。
この写真は美術館のリフレットや画集の裏表紙に採用されたりしています。 -
美術館の鑑賞は上の階から下へが楽な方法です。
コートールドにはエレベーターがあります。
最上階まで上がって降りて来ながら鑑賞するのをおすすめします。
写真はiPhoneの縦パノラマでの撮影です。
撮影が下手なので歪んでいますが、天井に採光の丸窓があって下に中央の螺旋階段があるのはわかると思います。 -
展示室エリアの天井も今までに気づかない仕組みがありました。
リングが二重になっていて細いケーブルでつなげてあります。
なにを目的にした仕組みなんでしょうか?
サマセットハウスはサーウィリアムチェンバーズ(1723~96)の設計です。
1787年からは毎年「王立芸術協会展覧会」が開催されています。 -
コートールド美術館の設立は1932年とそんなに古くはないです。
-
2002年にはコートールドギャラリーはロンドン大学に付属する美術史を専門とする研究と教育機関として位置づけられました。
正式名称はロンドン大学付属コートールド美術研究所の美術館です。
レベルの高い印象派時代の作家たちの作品が揃っています。 -
ポールセザンヌ(1839~1906)
「まわり道」
1904年頃の作品
カンバスに油彩 73x92cm
享年67歳のセザンヌの65歳の時の作品です。
その頃のセザンヌは朝6時から10時半までアトリエで制作し
昼食の後は写生に出かけ夕方5時に自宅に戻るという毎日だったと言います。 -
作品「まわり道」の中央部分の拡大です。
大昔の事です。
美術部に入っていた高校生の頃は印象派が大好きでした。
ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ベルナール、ユトリロの作品に見せられたものでした。
この印象派の画家たちはその後、それぞれ新しい独自の境地を開いて行きます。
その中で、印象派以降の時代の画家たちに大きな影響を与えたのはセザンヌだと思います。
セザンヌにこんな言葉があります「自然は円筒と球と円錐に分解できる」
この言葉を受け売りする友達がいたのを思いだします。
この作品「まわり道」には垂直の筆使いや塗り残されたキャンバスの白地にセザンヌの哲学的な思考に基づいた制作の姿勢が感じられます。
美術史的に見ると、この考え方「自然は円筒と球と円錐に分解できる」がのちのキュービズムにつながって行くのです。
ーーーーーーーーーーーー
セザンヌは絵を描きながら死にたいと願っていました。
1906年に野外での制作中に大雨に打たれセザンヌは体調を崩します。
セザンヌは1週間後に亡くなりました。 -
アンリドトゥールズロートレック(1864~1901)
「個室にて(ラモールにて)」
1895年
カンバスに油彩 54x45cm
パリのピガール広場にあった店ラモールの個室での風景を描いて作品です。
店の高級娼婦リシュージュールダンをモデルに描いています。
題名の店の名前「ラモール」(Rat Mort)は「死んだネズミ」の意味です。
客と娼婦が飲食する特別の個室をロートレックはいきいきと描いています。 -
エドゥアールマネ(1832~83)
「フォーリベルジェールのバー」
1881~82年 マネ最後の大作
カンバスに油彩 96x130cm
マネというとパリのオルセー美術館にある「草上の昼食」1863年が有名です。
個人的にはマネにはあまり関心がありません。
コートールド美術館のカタログやリフレットにはこの作品「フォーリベルジェールのバー」が代表作として取り上げられています。
あともう一つのコートールドの代表的な作品はゴッホの「耳に包帯をした自画像」です。
この絵はマネの最後の作品です。マネは下絵を描いてバーの雰囲気をあれこれ推敲したようです。
下絵では通常の正しい遠近法で描かれていると言います。 -
「フォーリベルジェールのバー」の中央部分の女性ウェイターの表情のアップです。
1880年に入ると、マネは16歳の時にブラジルで感染した梅毒の症状が悪化し左足の壊疽が進行しました。
その痛みに耐えながらこの大作(96x130cm)を完成させました。
この大作の完成後左足を切断します。
手術の経過は悪化をたどり手術の後10日で亡くなっています。
享年51歳でした。 -
ポールゴーギャン(1848~1903)
「夢」
1897年
カンバスに油彩 95x130cm
「テレリオラ」は「夢」と訳されています。
「TE RERIOA」は1932年にコートールド氏から美術館に寄贈されています。
ゴーギャン49歳の時に描かれたこの作品は1891年の最初のタヒチ行きからパリに戻った後に再度1895年に訪れたタヒチで制作されたものです。
パリでのタヒチでの作品展示は不評で売れませんでした。
タヒチに逃げ戻ったゴーギャンは作品制作よりも現地での植民地社交界で活躍しています。
本来の性格から暴力事件を起こし骨折したり、自暴自棄な生活でゴーギャンの健康状態は悪化してゆきます
1897年には娘さんが亡くなっています。豪華な邸宅を維持できなくなり借金返済に追われています。
そのような境遇にあったゴーギャンはこの作品を仕上げているのです。
同じくこのコートールドにある「ネヴァーモア」も同じ年の作品です。
同じ年にあの有名なボストン美術館にある大型(139x375cm)の大傑作「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」も描いています。
この作品のあとゴーギャンは大量の砒素を飲みますが死にきれませんでした。
株式仲買人から絵の世界に入り
ゴッホとの共同生活は破綻し
印象派を代表する画家の1人となり
タヒチでゴーギャンは印象派から離脱して独自の世界を作ったのです。 -
ゴーギャンの作品「夢」の中央下部分の拡大撮影です。
ここにはゴーギャンのサインがあります。
TE RERIOA
P Gauguin 97 -
ポールゴーギャン(1848~1903)
「メットゴーギャンの肖像」
1879年 大理石 高さ35cm
1873年に株式仲買人だった頃にゴーギャンはこのメットと結婚しています。
当時のゴーギャンは株式仲買人の収入の他に絵画の仲介取引でも同程度の収入があり裕福でした。
この頃(25歳)から自身でも絵を描く始めます。
ピサロとの交流もありサロンで入選したりしています。
この「妻の肖像」と同時に「息子エミール」の肖像も制作していて第4回の印象派展に出品しています。
石工には素人のゴーギャンが作ったとは思われない素晴らしい作品です。
その頃の彼の住んでいた家の家主のジュールエルネストブイヨ(石像に専門的な経験があった)に自分の作った粘土像を渡しブイヨが大理石に仕上げたとするのが妥当だと思います。
この作品は第5回の印象派展に出品されています。
その後、ゴーギャンの妻のメットとその家族の元に置かれていました。
サミュエルコートールドが購入したのは1920年代です。 -
横からの写真です。
株式仲買人だった男が3年後にこんな素晴らしい作品を造形したと思うとゴーギャンの才能に驚かされます。彼が自分のアートの才能に「天狗」になったのも頷けますね。 -
オノレドーミエ(1808~79)
「ドンキホーテとサンチョパンサ」
1870年頃
カンバスに油彩 99x80cm
今では、風刺版画家として知られる作家です。
23歳頃のドーミエは当時創刊された新聞や雑誌の挿絵の注文を得て活躍し始めます。
ドーミエの描く政治諷刺画は識字率の低い一般庶民に大人気となります。
1832年には王政を批判した作品を描き、罰金と半年の服役を受けます。
晩年は失明し生涯を終えています。
ドンキホーテの主題はドーミエが好んで描いたものです。
石版画、油彩と数多くの作品が残されています。
理想や正義や夢に生きるドンキホーテにドーミエは自身の姿を重ね合わせていたようです。
コートールドの作品には従者のサンチョパンザを描かれています。
この油彩画は美術館のプレートでは未完の作品と解説されていましたが、ドーミエの言いたいことは充分表現されていると思います。 -
「ドンキホーテとサンチョパンザ」の拡大写真です。
頭を上げて自分の信じる理想に向かって進んでゆくドンキホーテです。
従者のサンチョパンザは対照的に頭を垂れて沈み込んで進んでいます。
2人の対照的な姿の描きわけにドーミエの卓越した表現力が確認できます。
ドンキホーテが持つ盾が水平に描かれています。
画家が描く時に用いるパレットの様にも見えます。
この絵でもドーミエはドンキホーテの消え入りそうな姿に自分を重ねている様です。 -
ピーターポールルーベンス(1577~1640)
「ヤンブリューゲルと家族の肖像」
1613~1615
板に油彩 125x95cm
ブリューゲル(父)の次男がヤンブリューゲル(1568~1625)です。
父の作品の模写(複製)作業に終始した長男よりも次男の方が絵の才能はあったと思います。
かの有名なルーベンスはアントワープで工房を開き大勢の弟子たちを揃え分業システムによる「絵画の大量生産」を行っています。
教会や貴族たちから殺到する絵の注文に対応するには有効な方法だったのです。
ルーベンスはブリューゲル(父)を画家として尊敬し、作品を愛していたと思います。
このコートールドにある「エジプトへの逃避の途上の風景」やアプトンハウスにある「聖母の死」は一時期ルーベンスの財産目録に計上されていました。
そしてブリューゲル(父)の次男であるヤンブリューゲルは画才を認められアントワープのルーベンス工房で働いていました。
この絵は、私見ですがルーベンスが全て一人で描いた絵だと思います。
惚れ惚れとする絵のうまさです。
ルーベンスが一部を描いたとかルーベンスが下絵だけ描いた様な分業システムの作品の場合には参加した画家の持つ画力の差に起因する画面の不均衡があるのですが、この絵にはそれがありません。 -
母カタリーナを見上げる娘エリザベートの部分の拡大写真です。
顔の表情、巻き毛の髪の毛、衣装と見ていて素晴らしくて飽きません。
王冠の様な頭の飾りや首のから後頭部を飾るレースの表現は嘘のように細密でリアルな表現力です。 -
母カタリーナの顔の部分の拡大写真です。
レースは高価で貴族を中心に使われていました。
この絵の首の周りの蛇腹状のレース(襞襟)の表現、描写は依頼主の支払った対価に比例していると思います。
エルグレコの騎士の絵がプラドにありますが、レースが細密に描かれた絵はそれなりの作品です。
ルーベンスがこの絵を無料で友好の印として描いたのかは不明ですが、丁寧に描きこんでいるのは確かです。 -
絵のガラスが反射するので大分左の斜めからの撮影をして居ます。
ヤンブリューゲルの顔は後から描き加えられたという説がありますが、僕も同意見です。
3枚前の画面全体の写真をご覧ください。
構図としてもヤンブリューゲルが後から描き足しされたのが分かります。 -
やっとブリューゲルの作品の登場です。
ピーターブリューゲル(父)(1525~1569)
「エジプトへの逃避の風景」1563年
キャンバスに油彩 37x56cm
この比較的小さな作品はあの大画家ルーベンスのコレクションであった時期があります。
今回の旅行でロンドン郊外のアプトンハウスで見てきた「聖母の死」もルーベンスは所有していました。
先ほどご紹介したように次男のヤンブリューゲルを自分の工房で雇っていました。
当時のアートの中心だったアントワープの画家ギルドの大先輩としてのブリューゲル(父)に関心があったのだと思います。
「バベルの塔」クラスの大型作品はルドルフ2世のようなブリューゲルの狂信的コレクターに持って行かれています。
このくらいのサイズの小品ならルーベンスでも持つことが出来たのだと思います。
ブリューゲルの画風の人気の秘密について、作品を自分で所有して研究したかったのかも知れません。 -
画面左上の部分のアップです。
この険しい山の輪郭はブリューゲルの生まれ住んだフランドル地方では見られないものです。
1551年にアントワープの画家のギルド「聖ルカ組合」に登録されたブリューゲルは1554年まで3年の間、当時の美術の中心地であったイタリア各地を回り画法を学んでいます。
主流のイタリア風の画法で描けば、当時のメインの注文主である「教会」の評価も高かったと思います。
しかしブリューゲルは自己の表現様式を変えようとは思いませんでした。
イタリアでの絵画研修旅行の成果が反映しているのは、この絵のようには背景の部分に描かれる山の稜線だと思います。
旅行中に描いた多くのけわしいイタリアのやまなみのスケッチが下絵として採用されていると思います。
アントワープや結婚後に住んだブリュッセルでは見られない稜線です。 -
画面の左下の部分です。
黒く描かれているのは、トンネルというか隧道のようなもののようです。
左側に入ってゆく人物が2名描かれています。
右側には大きな荷物を背負った男が座って休んでいます。男は杖をついて休憩しています。高齢者なんでしょうか?
隧道の上端部の右には白い鳥が右に向かってゆったりと飛行しています。
この部分の細密な描きこみはテーマを表現したり、強調するためではないと思います。ブリューゲルは自分の細密画法の画力を示したかったのではないかと思います。 -
隧道の上端部分の右側にゆったりと飛行している白い鳥の部分です。
-
隧道の左側から入って行く二人の男と右側で休憩している老人の超拡大写真です。
-
そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、 ヘロデが死ぬまでそこにとどまっていた。それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。」
マタイによる福音書 2:14-15
この聖書の記述は多くの画家たちが描いた主題です。
教会からの注文でも良く指名される主題でした。 -
ブリューゲルの作品「エジプトへの逃避の風景」の展示されている前の写真です。
ブリューゲルの絵を見ている人たちを見るのもブリューゲル鑑賞のひとつの方法だと思っています。
ブリューゲルの絵の前では、結構時間をかけて鑑賞してる人が多いです。
今日のコートールドではブリューゲルの前は閑散としていました。
多くの来場者たちは印象派の画家たちの作品に夢中です。 -
ブリューゲル(父)(1525~1569)の作品「姦通女とイエスキリスト」1565年 キャンバスに油彩 24x34cm
コートールドにあるブリューゲル(父)の油彩は2枚です。いずれも小品です。それだけにじっくりと鑑賞して欲しいと思います。
この作品はショーケースの中に入っていました。
450年以上前に描かれた作品です、保存には美術館も苦労しているのだと思いました。
前回までは壁にかかっていました。
どちらが見やすいかと言われたら見下ろす感じで見えるこちらの方です。
但し、鑑賞者が殺到するような場合には壁掛け展示の方が良いと思います。 -
ピーターブリューゲル(父)
(1525~1569)
「姦通女とイエスキリスト」
1565年(ブリューゲル(父)40歳の作品です。
1551年にアントワープの聖ルカ組合に加入登録
1554年までイタリア各地で当時最先端のイタリア美術の技法を学ぶ
1563年結婚しブリュッセルへ引っ越し
1564年長男誕生
と幸せな家庭を持ち画家としても円熟期に入った頃の作品です。 -
絵の左下の隅に描かれたブリューゲル(父)のサインと年号です。
この絵のこの部分にブリューゲルのサインがあることに今回初めて気がつきました。 -
ブリューゲルはこの絵をグリサイユという画法で描いています。
グリサイユは13世紀から使われている古典的な画法です。
キャンバスという平面の上にあたかも立体物があるように表現する手法です。
今でも、遊園地なんかで彫刻があると思って近づいたら絵だったというグリサイユ画法の実施例があります。
グリサイユとはフランス語で灰色を意味します。
ベースを白から灰色から黒の階調で描き、更にその上に色を乗せて立体を表現して行きます。
このように線ではなく面で構成して行くのであたかも立体に見える表現が可能なのです。 -
画面の左上の部分のアップです。
イエスキリストが床に文字を書くところを覗き込む人物群像です。グリサイユ画法を用いたブリューゲルの筆は人物一人一人をハッキリと浮かび上がらせています。
ブリューゲルはグリサイユ画法の作品を2枚残しています。
ニューヨークのフリックコレクション
「3人の兵士」1568年
板に油彩 21x18cm
これはまだ見ていません。
ロンドン近郊のアプトンハウスにある
「聖母の死」1564年
板に油彩 36x54cm
アプトンハウスへの旅行記は
https://4travel.jp/travelogue/11363104 -
このグリサイユ画法はほとんどモノクロなのでペン画だと思っていました。
油彩だと分かったのは2013年の最初のコートールド訪問の時です。
一般的にこの主題を多くの画家達は教会で司祭が教徒に説明する場合に使いやすいように描いています。 -
ショーケースに入ったブリューゲルの作品。
改修工事の後はどんな風にディスプレイされるのだろうか?
楽しみですね。 -
ここのミュージアムショップは覗いているだけで楽しいです。
-
コートールドを出てテームズ川の方へ戻りました。
-
カフェネロというコヒー屋さんで休憩しました。
コーヒーとケーキで2人分で10.75ポンドでした。
安くて結構美味しくて大繁盛しているお店でした。カフェ ネロ (カナリーワーフ店) カフェ
-
カフェネロの前はオープンカフェになっています。
来た時と同じに地下鉄で帰りました。
ウェストミンスター乗り換えで帰りました。
ホテルのエレベーターはまだ修理が入る様子はありませんでした。
明日は日本に帰ります。
ホテルから空港までのUberの事前予約を入れました。
今回のロンドンは徒歩と地下鉄とUberで済ませました。
荷物のパッキングをしていたら窓の外は突然の雷と大雨で驚きました。
ロンドン到着以来快晴でした。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
旅行記グループ
ブリューゲルをたずねる旅
-
前の旅行記
ブリューゲルをたずねる旅~2018年2月上野都美術館
2018/02/17~
上野・御徒町
-
次の旅行記
ブリューゲルをたずねる旅~2018年5月アプトンハウス
2018/05/26~
その他の観光地
-
ブリューゲルをたずねる旅~ 2005年ブリュッセル ~ベルギー王立美術館
2005/03/13~
ブリュッセル
-
ブリューゲルをたずねる旅~2005/11月マドリード
2005/11/28~
マドリード
-
ブリューゲルをたずねる旅~2009年 プラハ
2009/11/29~
プラハ
-
ブリューゲルをたずねる旅~2009年ウィーン
2009/12/01~
ウィーン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2009年ブタペスト
2009/12/02~
ブダペスト
-
ブリューゲルをたずねる旅~2012年11月 ニューヨーク
2012/11/06~
ニューヨーク
-
ブリューゲルをたずねる旅~2013年4月ロンドン
2013/04/22~
ロンドン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2014年12月 ロンドン再び
2014/12/12~
ロンドン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2014年12月 パリ~六本木
2014/12/15~
パリ
-
ブリューゲルをたずねる旅~2015年12月 ミュンヘン
2015/12/01~
ミュンヘン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2015年12月 ベルリン
2015/12/05~
ベルリン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2016年1月 ブリュッセル再び+ブリューゲルの家
2016/01/12~
ブリュッセル
-
ブリューゲルをたずねる旅~2016/01アントワープ
2016/01/16~
アントワープ
-
ブリューゲルをたずねる旅~2016年2月ウィーン再び
2016/02/21~
ウィーン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2016年9月 ナポリ
2016/08/31~
ナポリ
-
ブリューゲルをたずねる旅~2017年2月マドリード再訪(新しい発見)
2017/02/14~
マドリード
-
ブリューゲルをたずねる旅~2017年5月ローマ
2017/05/16~
ローマ
-
ブリューゲルをたずねる旅~2017年5月 上野 / 東京都美術館 /東京芸術大学
2017/05/22~
上野・御徒町
-
<動画版>ブリューゲルをたずねる旅~2017年6月スイス ヴィンタートゥール
2017/06/06~
ヴィンタートゥール
-
ブリューゲルをたずねる旅~2017年6月 スイス ヴィンタートゥール
2017/06/07~
ヴィンタートゥール
-
ブリューゲルをたずねる旅~2017年6月ミュンヘン再訪「老農婦の肖像」を見に行きました。
2017/06/11~
ミュンヘン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2017年11月ワシントンDC
2017/11/11~
ワシントンD.C.
-
ブリューゲルをたずねる旅~2017年11月デトロイト
2017/11/15~
デトロイト
-
ブリューゲルをたずねる旅~2018年2月サンディエゴ
2018/02/09~
サンディエゴ
-
ブリューゲルをたずねる旅~2018年2月上野都美術館
2018/02/17~
上野・御徒町
-
ブリューゲルをたずねる旅~2018年5月ロンドン コートールドギャラリー
2018/05/24~
ロンドン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2018年5月アプトンハウス
2018/05/26~
その他の観光地
-
ブリューゲルをたずねる旅~2018年9月 ニューヨークフリックコレクションとメトロポリタン美術館
2018/09/27~
ニューヨーク
-
ブリューゲルをたずねる旅~2018年11月ウィーン美術史美術館ブリューゲル没後450年展
2018/11/22~
ウィーン
-
ブリューゲルをたずねる旅~2018年11月 ブリュッセル ノートルダムドラシャペル聖堂
2018/11/27~
ブリュッセル
旅行記グループをもっと見る
この旅行記へのコメント (4)
-
- milkさん 2018/09/29 00:03:15
- 名作揃い
- norio2boさん、こんばんは。
昨日、ロンドンから帰国しました。
馴染みのある風景に、もうロンドンに戻りたくなりました(笑)
ビックベンはこの時、すでに修復中だったのですね。
一緒に行った友達は初めてのロンドンだったので、見せてあげられなくて残念でした。
地下鉄はやっぱりオイスターカードが一番お得だと思います。
私も滞在中はオイスターカードで地下鉄やバスを使って移動していました。
今回はガイドブックを持って行かなかったので、私も地図はもっぱらスマホを活用。
オフラインでも位置情報は生きているので、とっても楽でした。
ロンドンでは無料の美術館にばかり行っていたので、コートールドギャラリーには行った事がありませんでしたが、名作揃いですね~。
改装中は分散されてしまうようですが、リニューアルオープンしたら行ってみたいものです。
その前に、ナショナルギャラリーに展示されるものは無料で見られるのかしら??
milk
- norio2boさん からの返信 2018/09/29 03:17:28
- Re: 名作揃い
- milkさん
ご無沙汰です。
無事にロンドンから戻られて良かったです。
メッセージありがとうございます。
ロンドンは活気があり変化があり柔軟性があるように思います。
動きの遅い硬直化した日本も何とかして柔軟性を取り戻したいと思います。
昨日からニューヨークに来ています。
フリックコレクションとメトロポリタンのブリューゲルを見に来ました。フリックコレクションの作品はウィーンの美術史美術館で開催される没後450年展に貸し出されて留守でした。
今後ともよろしくお願い致します。
新しい旅行記のアップお待ちしています。
追伸
4Tにmilkさんが何人もいます。
普通だったら同じ名前の登録はないと思いますが?
-
- pedaruさん 2018/09/28 06:22:07
- たいへん参考になる解説
- norio2boさん おはようございます
有名な作家の作品ですが、今まで知らなかった絵の解説を読ませていただきました。
「フォーリベルジェールのバー」は私の持っている本にもあり、よく知られていますが、この美術館にあるのですね。知っていれば訪れて見たかったとおもいました。
この大作を完成後、壊疽で悪化した足の切断、そして51歳での死、凄い話です、初めて知りました。
そして驚いたのは、「メットゴーギャンの肖像」大理石の彫像、これをゴーギャンが製作したのですね、信じられない完成度の高い作品です。
いろいろ教えて頂きました、ありがとうございました。
pedaru
- norio2boさん からの返信 2018/09/28 09:35:53
- Re: たいへん参考になる解説
- Pedaruさん
いつも旅行記楽しく拝読しています。
ありがとうございます。
コートールドはロンドン大学に付属した美術に特化した研究、教育機関ですので美術館の中でも特別な存在のようです。
ロンドンでは数少ない有料美術館です。ロンドン大学付属なら無料でも良いと思っていますが?
コートールドは旅行記の中でもご報告したように9月の頭から休館中です。研究、教育機関としての機能を向上させると言っています。
2年後リニューアルオープンしたら展示もどう改善されたか見学してみたいものです。
ニューヨークのフリックコレクションに「3人の兵士」というブリューゲル(父)の作品が(突然に)あるというので3泊の日程で見に来ています。
今後ともよろしくお願いします。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったスポット
もっと見る
この旅行で行ったグルメ・レストラン
ロンドン(イギリス) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
旅行記グループ ブリューゲルをたずねる旅
4
49