9万５千円で２週間、タイの遺跡やラオスを巡り、東南アジア初心者のシニア婦人たちをエスコートする旅（9/22）ムクダハンの変化

2019/08/22 - 2019/08/23

　メコンと聞いて目に浮かぶのは、東南アジアを旅する写真集を飾る、夕日に輝く雄大な流れと、川と共に暮らす人々の姿だ。
　それらはなぜか、鼻の奥をつんとさせる。
　タイを紹介するならば、やっぱりメコンでなければとムクダハンにやって来た。

エリア ムクダーハーン(タイ)

• 交通手段: 徒歩

　遅い昼食を終えて、メコンに向かって歩く。
　ところが、地図を見ているのにあらぬ方向に進んでいる。
　スマホのコンパスが狂ってる？
　泣けてきた。

　余分な距離を歩いたが、どうにか途中にある公園を見つけた。
　ゴールデン・ジュビリー記念公園。

　おばさん方に必要なのはトイレ。
　たえずこの課題を抱える旅行ではあるが、

　海外に出ればある種のスイッチが入り、体調はいたって良好だ。
　フィットネス器具を見つけると、

　やってみるかと意気込んで、年甲斐もなく張り切ると、

　「あれ、意外に身体が動くんだ・・」
　と若返った気分。

　とはいうものの、これ以上続けると筋肉痛を起こしそうで、
　「メコンに行かなくっちゃ！」
　と切り上げる。
　ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきた。

　メコンは思ったより遠く、おばさんたちの顔が無表情になってくる頃、
　屋台の準備が整い始めた通りに差し掛かった。
　ナイトマーケットの始まりか・・

　「あっ、ドリアンじゃない？」
　「そんなに臭くはないね・・」
　果物の王様と呼ばれるドリアンなのに、４人とも食べたことがなく、
　思い切って食べてみる。
　ぼんやりした甘さだった。

　次はココナツジュースだと、ナタで穴を開けてもらったココナツの実に、ストローを突っ込んでチューチューとすすってみる。

　吸い終わると、穴の中から白い果実を取り出してもらって、かじりつく。
　「ナタデココみたい」
　「もしかしたら、ナタデココって、これ？」
　おばさんたちはいつも元気。　　
　日本のイベントなどでココナツを買うと、1000円以上はするが、ここでは120円だ。

　突き当りに、見覚えのある建物が見えてきた。
　船着き場だった気もするが・・
　そして、あの向こう側がメコン川だ。
　近くに行くと、コミュニティセンターだった。

　10年前とは、様子が違っている。
　メコンを眺めようと堤防を探すが、テントの店が隙間なく並び、それがバリケードとなってメコンが見えない。
　テントの裏には金網もある。
　ここは「インドシナマーケット」と呼ばれる市場で、店は半分地下道にあったと思うが、記憶違いなのか？

　10年前の堤防だ。
　同じ場所から撮っていると思えるが、一体どうなったんだろう？

　「変だ、変だよ！」
　と堤防への通路を探していると、本格的な雨となってきて、

　あっと言う間に路面は水浸し。
　急いでひさしの下に避難する。
　風まで吹いてきて、小さな嵐だ。

　おばさんたちは避難しながらもお土産を探す。

　「本当にこの値段なの？」
　「この値札が、これなの？」
　安さに疑いながらも、楽しそうだ。

　「サワディカー」
　お店の子どもにも声をかけてみる。

　雨は小降りとなり、
　センターの裏に回ってみると、

　待望のメコンだ。
　ここだけが展望台となっている。

　ゆっりりゆっくり流れるメコン川。
　水平線のかなたまで、その流れは続いている。
　雄大さに驚嘆の声をあげつつ、
　「水が濁ってるね・・いつもこんななの？」
　と、デコちゃんたちは想像外のようだ。

　雨季のメコンは、上流から肥沃な土砂を大量に運んでくる。
　メコンのメ（メー）は母の意味。
　母なる川がメコンだ。
　

　川向うにラオスの町が見える。
　明日はこの川を越えてあの町に行く。
　真下に渡し船が見えているが、外国人は船では行けない。

　10年前は頻繁に渡し船が行き交いしていて、誰もが簡単に国境を越えれたのに、

　川上に友好橋が完成してからは、外国人はその橋でしか行けなくなってしまった。
　地元の住人たちは、今でもパスポートなしに自由に行き交いしているというが、見るところ船は停留したままで、船頭もいない。

　渡し船だけでなく、観光船や貨物船が往来していた、以前のムクダハンが懐かしい。
　渡し船がなくなっては、国境の町として栄えてきたムクダハンの町そのものの価値が下がるだろう。
　そういえば、町の活気が衰えているようだ。
　巨大な橋を建設し、流通を拡大させてGDPの増強を図ろうとする意図は分かるが、旅行者にとっては旅の情緒がなくなることで、寂しいことだ。

　おばさんたちは、メコンを背景に写真を撮るのに夢中。
　雨の中でも頑張っている。
　ところがトイレに急用ができ、探し回るが見つからない。

　う～ん、ここにもない。

　それらしきものがあったのは、政府機関の事務所。
　しかし仕事が終わったのか、守衛の役人がいるだけで閉庁されている。
　

　頼んでみると役人は親切で、トイレに案内しカギを開けてくれた。
　融通性のある役人に、
　「コップンカー」
　と何度もお礼を言って感謝するおばさんたち。
　「この国は、いい国だね～」

　幸せな気分で、帰り道にはナイトマーケットで、

　それぞれの好きな食料を買い集めて、

　夕食会の始まり。
　ここしばらくこんな食事ばかりで、ガイドブックとはかけ離れた旅となっている。
　

　狭いテーブルの上は、並べきれないほどの食糧がごった返す。
　買い過ぎだ。
　ヤーコがなげく。
　「こっちに来た最初、ウエストポーチがずり落ちるようになったから、
　『痩せたよ！　楽しみにしていてね！』
　と日本にメールを打ったのに、これじゃ嘘になっちゃうよ・・」
　みんな自分の腹回りをさぐり、心配になってあいづちを打つ。