2016/07/06 - 2016/07/21
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motogenさん
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前回ベトナムの列車が楽しかったので、今回はタイの鉄道に乗ってみる。
旅行記を見ると、夜行寝台列車に人気があるようだ。
しかし夜では景色が見えず、寝てしまえば列車に乗った実感も少ない。
それならと朝一番の列車にして、イサーンの景色を思う存分眺めながら、各駅停車の旅を楽しむことにしたのだった。
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-
駅に着くと列車は出発を待っていた。
駅員にチケットを見せて案内を請うと、後方の車両を指示された。 -
チケットの記載はSecond Class(2等席)の10号車両。
最後尾だった。 -
10号車両の後部には開けっ放しのデッキがあって、そこに立てば船の甲板に乗っているような気分になれる。
昭和20年代の日本の列車も、こんなではなかったか・・?
歌にも映画にも、こんなデッキが出てきた気がする。 -
快速136列車は、定刻通りに7時に出発した。
車掌さんがチケットの確認に回り始めた。
私の指定席は通路側で、窓際の方が良かったと残念に思っていたが、いやいや通路側でラッキーだったと思い直すことになった。 -
なぜならば、自分の席と後部デッキとの間を、絶えず行ったり来たりしたからだ。
他の乗客は、何と落ち着きのない人だと思ったことだろう。 -
田園地帯の中を気持ちよく列車は走っていく。
バスからの眺めとは違い、風になって野原の上を滑空していくようだ。 -
まっすぐな線路が地平線のかなたに消えていく。
架線やそのための電柱がなく、柵も有刺鉄線もない原野の中を突っ切って、ゴトゴトと走っていく。 -
快速列車なので、ほとんどの駅に停まっていく。
-
でもそれは、わずらわしくはない。
小さな町、大きな町、活気のある町、さびしい町、そんな町々の姿が面白い。 -
小さくて白いイヌを連れた娘が乗ってきた。
ゲージから子犬を出して、水を与え、ひもで結んで隣の席におくと、ちょこんと座っている。 -
おとなしいイヌだ。
そっとなでると指をなめる。 -
ウトゥンポンピサイの駅に停まった。
聞いたこともないようて駅ばかり。
駅名の書いた案内板を見つけては、地図をのぞく。 -
駅に停まると決まったように、移動販売のお姉さんやおばさんが入ってくる。
これは竹筒で炊いた味付けご飯だ。 -
8:40、フアイタップタン駅。
タイの鉄道時間はいいかげんだと言うのに、時刻表通りに走っている。
-
イサーンの大地は不毛の地だと言う。
土地は痩せ、塩分が多く、作物は育ちにくい。
しかし元々は、密林で覆われた豊かな台地だったと言う。
この地の地質は鉄分が多い。
今のベトナム付近が青銅器時代だった頃、この地は鉄器時代となっていたそうだ。
しかし鉄を製造するために、炭の材料となる密林を伐採し過ぎてしまったのだ。
大地は保水力をなくし、強烈な太陽に照らされると、地下から塩分が浮き出てきて、植物が育ちにくい荒野に変わってしまったというのだ。
知人はバスで旅行中、真っ白に塩か噴いた畑を見たという。 -
このあたりの土地はまだ米が採れるが、サトウキビやトウモロコシ、キャッサバしか採れない畑が多く、それも収穫量が少なくて、タイの中では貧農が多い。
イサーンは哀愁を歌うルークトゥン発祥の地だ。 -
車内では弁当を売る人が、10分おきくらいに回って来る。
停まった駅で乗り込んでそのまま乗車し、次の駅か二つ目の駅で降りるようだ。
しばらくすると顔ぶれが変わっている。 -
サムローンタープ駅・・
-
スィーコラプーム・・と続いていく。
最初の頃は駅名の標識を探してメモしていたが、少し立つとそれはどうでも良くなって、メモはやめた。
なんと34もの駅で止まるのだ。 -
ある駅で乗ってきた女性が、イヌのお姉さんの隣に座って、竹ご飯を食べ始めた。
座席を奪われたイヌは、ゲージの上に縮こまってしょんぼり。
この女性、イヌが嫌いなようで、しきりにイヌを気にしながら、一言二言イヌのお姉さんに文句をつけている。
お姉さんは無視。
静かな女の戦いが始まった。 -
スーリン駅に到着した。
この町には泊まったことがあり、想い出のある特別の町だ。
この駅も見学に来て、このホームに立ったはずだが、はて・・・
ホームはこんなものだっただろうか。
スーリンは象祭りで有名で、駅前には大きな象のオブジェがあったはずだが、ここからは見えなかった。 -
スーリンから4つ目の駅がブリラムだ。
この町の南方に、カンボジアとの国境となる山脈が横たわり、その国境付近にパノンルン遺跡がある。
アンコールワットと原型となったと言われるヒンズー遺跡だ。
この町に泊まってパノンルン遺跡に行ったことが、懐かしく想い出される。 -
遺跡のある山はどこだったのだろう。
南方を眺めてみるが、遠くの山々は霞んでいて見えなかった。 -
田舎の駅には心引かれるものが多い。
このちっこい駅の前にはテントが張られている。
そして田舎駅には不釣合いなほどたくさんの人が降りていく。 -
自分の席に座ったり、デッキに立って過ぎ行く線路を眺めたり、ふらふらと列車内を歩いたりで、飽きることはない。
バスや飛行機にはないこの自由さは、列車の独断場だ。 -
弁当を買った。
20バーツ(60円)と驚きの価格だった。
屋台や市場で買うよりも安いではないか。
ラープに目玉焼き、それにキュウリが添えられている。
なかなか美味い。 -
イヌ嫌いな女性は、車掌と交渉して別の席に移っていった。
ワンちゃんも娘もこれで気が楽になる。
自分の席を確保したワンちゃんに手を差し出すと、喜び勇んでペロペロとなめた。 -
標識にタノンチラ・ジャンクションと書いてある。
ウボンに向かう東北南線とノンカイに向かう東北北線の分岐点となる駅だ。
さすが線路の本数が多い。 -
イサーンの玄関と呼ばれるコラート(ナコンラチャシーマ)に到着した。
東北地方最大の、堀で囲まれた城砦都市の面影が残っている都市だ。
ホームが複数あり、ホームとホームをまたぐ連絡橋まである。
-
切り替えポイントがたくさんある。
子どもの頃は、このメカニズムに震えるような魅力を感じ、踏み切りやホームに立つと、動けなくなったこともある。
タイの線路幅は100cmと、日本の在来線よりわずかに狭い。
そのため安定性に欠け、列車は100km以上のスピードで走ることはめったになく、乗っている列車も最高スピードは90km程度だった。 -
くねくねと曲がりくねる坂道に差し掛かった。
木々の間から湖が見える。
線路に沿ってどこまでも続いている大きな湖だ。
バスで走る国道は湖の南側だが、鉄道は北側に沿っている。 -
周囲は山に囲まれ、列車のスピードは落ちている。
坂を登っているのだ。 -
高原を走る。
この高原が、イサーンの台地とアユタヤ・バンコクの平野とを分ける壁となっている。 -
高原はかなり広い。
-
車内を見て回ることにした。
3等客車は横長シートが向かい合わせになっている。
立っている人もいる。 -
出入り口に座りこんで、風を浴びている人もいた。
-
その奥は2等客車で、そのまた奥は3等客車。
どんな順番で連結されているんだろう・・・
2等客車に乗っていた欧米人は、カメラを構えるとおどけたポーズをしてくれた。
-
山あいの坂道を下っていく。
右へ左へ急カーブの連続で、下り坂というのにスピードは2〜30kmだ。
石灰岩の白い山がチラリと見えた。
削られていく山肌が現れては消える。
山を崩している重機や、岩を運ぶベルトコンベアの姿も見える。
この一帯はセメントの原料の採掘場所として、大規模な自然破壊が進行されている。 -
列車が停止した。
周囲はタンク車だらけだ。 -
何本にも並んだ線路に、数え切れないほどタンク車が待機している。
ここはタンク車の停車場で、駅ではなさそうだ。
石灰岩の採掘に関係しているはずだが、なぜタンク車なんだろう。 -
巨大な工場群が現れた。
高い煙突や塔が立ち並んでいる。
セメント工場に違いない。
こんな山あいに一大セメント工場地帯があったなんて、初めて知った。 -
近くの山頂には、金色に輝く観音様が立っている。
自然破壊の罪滅ぼしに、山々の精霊に祈りを捧げているのかも知れない。 -
その工場地帯を過ぎると坂道もなだらかとなり、カーブもゆるやかになってきた。
通過してきた山や工場が遠ざかっていく。 -
ケンコーイ・ジャンクションまで来ると、もう平らな平野だ。
ブアヤイ線が分岐する駅に止まる。
ブアヤイ線は、、東北線最大の難所であるケンコーイ〜コラート間の急勾配を避けて施設された路線で、この駅とブアヤイを結んでいる。
その途中、バサックダムの湖上を走り、タイ鉄道随一の雄大なパノラマが見られるそうだ。 -
チェンマイまでの北線と合流しているバーンパーチー駅に到着した。
時刻は16時。
定刻だ。
タイの鉄道は時間にいい加減だと言うが、この列車は1分も遅れていない。 -
路線は複線となった。
まっ平らな地平線が、視界360度に広がっている。
遥かかなたを見渡しても、もう通過して来た山は見えない。
いつの間にか、すごい距離を走ってきたことになる。 -
あれっ、この駅はどこかで見たような・・・
欧米人たちが降りていく。 -
アユタヤ駅だった。
ウボンを出発してから9時間半も乗り続けているのに、飽きもせず、眠くもならず、疲れもない。
もうアユタヤなのか・・・
あっけなかったな・・・
そう思えるのは、次々に景色が変わり、自由に歩き回れ、気持ちの良い風を浴びてきたからだろう。
体調も回復している。
バンコクはもうそこだ。
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この旅行記へのコメント (6)
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- まさいさん 2017/09/23 20:07:22
- タイ国鉄
- 楽しく拝見しました。
すごく詳しい説明があって勉強になりました。
わたしもバンコクからウボンラチャタニーまで鈍行列車で行きました。
(口コミアップしてます)
のどかな旅でとても楽しかったです。
いまから思うと、もっと車内販売の弁当を買えばよかったと(笑)
わたしは3等車に乗ったので
向かい合わせの席で、しかもプラスチックの椅子だったので
途中から座布団がわりにタオルを敷いていました(笑)
- motogenさん からの返信 2017/09/24 20:27:56
- RE: タイ国鉄
- ありがとうございます。
列車で旅することはめったにないのですが、ベトナムでハノイからハイフォン、ニンビンからハノイの列車に乗り、それが楽しかったのでタイでも乗ってみました。
列車だと、車内を自由に歩けて、いいですね。
今度の1月に、ハノイから列車でベトナム中央部に行こうと考えていたところ、まさいさんのフエの旅行記があったので、参考にさせていただきます。
チケットはハノイの駅で買おうと思っています。
まさいさんの旅のタイプが、私と共通点があるようで嬉しいです。
-
- ちゃおさん 2016/09/07 10:18:18
- ブリラム
- スリンの次の写真は、タイ語では「ブリラム」と書いてありますね。
昔の遺跡は、「ヒンドウ遺跡」で、「フィンドウ移籍」が誤字になっていました。多分、「ピーマイ遺跡」のことだと思いますが・・
- motogenさん からの返信 2016/09/07 15:30:57
- RE: ブリラム
- ありがとうございます。
訂正しました。
-
- trat baldさん 2016/09/07 08:28:07
- 線〜路は進むよ〜、どこまでも〜♪
- 新幹線が開通した昭和38年頃でも旧国鉄線はこんな感じだったよね!
快速列車は各駅停車なの?町の大きさとホームの佇まいがリンクしてて分かり易いね。
遺跡が多く有る地域は石灰岩が豊富→焼いてセメントを作る→粉末になったセメントをタンク車に積む→タイの重要な輸出品の一つ→分かり易い!!
- motogenさん からの返信 2016/09/07 15:34:48
- RE: 線〜路は進むよ〜、どこまでも〜♪
- タンク車って粉末も入るんですね。
液体だけだと思っていました。
以前、鉄道っていいよと教えていただき、ありがうこざいました。
良かったです。
チケットを買うのに手間がかかるけど、機会があればこれからは鉄道です。
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