2016/07/05 - 2016/07/08
42位(同エリア113件中)
玄白さん
オーストリア西部の中心都市インスブルックからイタリア国境方面に南下するシュトウバイ谷に沿って、Mutters, Mieders, Telfes, Fulpmes, Neustiftといった村々が点在する。どの村も30分もあればくまなく村内を回れてしまう小さな村だが、家々にはよく手入れされた花が飾られ、静かで落ち着いたたたずまいを見せている。そして、これらの村々に共通するのは、家の外壁に描かれた美しいフレスコ画の壁絵と、どの村の中心部にも必ずある教会が村の規模に不釣り合いなほどに華麗な装飾が施されていることである。
Telfesの貸別荘に滞在して、あちこちの村を拠点にハイキングを楽しんできたのだが、その帰りに、そんな美しい村のいくつかを散策してきた。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 交通手段
- 高速・路線バス
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Fulpmes村。
チロル滞在中に2回、この村を基点にしたSchlick2000ハイキングで訪れた。隣りのNeustift村と並び、夏はハイキング、登山、冬はスキーのメッカである。
写真はSchlick2000ゴンドラ乗り場に向かう途中の高台から見下ろしたFulpmesの街並み。たまねぎ坊主頭の教会の塔が目立つ。 -
ゴンドラ乗り場に向かう途中の、壁絵がある家。壁絵はキリスト像など宗教画っぽい絵が多いが、この家の絵は風景画、鹿とアルプスの風景が描かれている。
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フレスコ画で描かれた窓枠。精巧に描かれているだけでなく、立体的に見えるのである。どうしてだろうとよく見ると、描かれた窓枠の装飾金具に薄く影まで書かれているのである。
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村の中心部を牧草地で刈り取った草を運ぶトラクターが行き交う。冬の牛たちの食料となる干し草作りで酪農家の人々は大忙しなのである。
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こんな巨大な壁絵もある。
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ホテルの部屋の窓もフレスコ画で描かれている。これも影まで描かれていて、立体的に見える。
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ホテルの壁絵
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イチオシ
教区教会。玉ねぎ坊主の尖塔が特徴。
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教会全体像
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敷地の中の墓地もきれいな花で彩られている。
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教会の中に入ってみた。天井も壁も白い漆喰で仕上げられていて・・・
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見事なフレスコ画が天井に描かれている。
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教会入口の真上には可愛らしいパイプオルガンと色鮮やかな天井画。
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主祭壇。
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Fulpmes駅。STBの終点であるが、無人駅だ。STBの駅はすべて無人駅。駅というより、バス停といった感覚だ。
フルプメス駅 駅
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平日、週末に関わらず、ほぼ1時間に一本のダイヤで運行している。
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滞在している村、Telfesの教会
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この教会の窓枠も、これまたフレスコ画で描かれている。
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中に入ってみると、なんと天井画の修復作業中。シュトゥーバイタールの村々の教会は、どこも色鮮やかなのは、こうしてときどき修復作業をしているからのようだ。
このときは、作業している人は居なかったので、足場をよけながら、堂内を見て回る。 -
主祭壇。
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パイプオルガンとステンドグラス
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柔らかなタッチで描かれたフレスコ画だが、描かれているのは何とも凄惨な主題である。聖書の中に洗礼者ヨハネの首を望んだサロメの話があるが、この絵は切り落とした首と血糊が付いたナイフを持つ男の肖像。サロメの望みをかなえるべく、ヨハネの首を切り落とすことをヘロデ王に命じられた男かな?
この絵に限らず、教会を飾る絵画や彫刻でも、キリストの磔刑など生々しく血を流している像がよく見られる。穏やかな農耕民族を祖先に持つ日本人にとっては違和感を感じえない。狩りの獲物や家畜の屠殺で日常生活で血を見ることが普通の狩猟遊牧民の祖先を持つ民族との感性の違いだろうか。 -
7月6日、Elferでのハイキングの後、FulpmesからSTBに乗車したが、まだ午後の時間がたっぷりあったので、Telfesを通り過ぎ、Mutters村まで行ってみた。インスブルックに近いStubai谷入口の村である。
この村は、「チロルで一番美しい村」という称号を2度受けたことがあるというので、はたしてどんな村なのか、興味があったのである。まあ、「チロルで一番美しい村」とは、だれがどんな基準で選んだのか定かではないのだが・・・ -
駅からちょっと歩いたところに教会がある。教会が村の中心であることは、どの村にも共通する。
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ナイルグリーンの屋根の尖塔が印象的だ。
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教会の敷地内の墓地。風景写真で、墓の撮影はタブー視されているのだが、きれいな花で飾られた明るい雰囲気だったので、思わずシャッターを押してしまった。
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教会入口のフレスコ画
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中に入ってみる。この教会もバロック風の天井画や主祭壇の装飾が華やかだ。とはいえ、後に訪れるウィーンの宮廷付属の施設の装飾に比べると素朴さも感じられる。いわば、民衆バロック芸術といったところだろうか。
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説教壇
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パイプオルガンと天井画
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イチオシ
外に出て、もう一度、教会の尖塔をもう一枚パチリ。
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村内のぶらぶら歩きを始める。
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出窓に飾られた花と肖像画の壁絵。正面の肖像の下の文字は[「Andreas Hofer 1809」と読める。Andoreas Hoferとはいかなる人物なのか調べてみた。
19世紀初頭、ナポレオンがオーストリアに侵攻し、ハプスブルク家はフランスに降伏。南ドイツの小国バイエルンはナポレオンと同盟関係にあったので、1805年からチロルは、フランス・バイエルン連合の支配下に置かれていた。しかし、チロルの民衆は、ハプスブルク家が降伏してもフランス・バイエルンの支配に抵抗を続け、農民主体のゲリラ戦を挑み一時は自治権を勝ち取っていたこともある。そのときのパルチザンのリーダーだった人物がAndoreas Hoferだった。だが、彼は友人の裏切りにより、フランス軍に銃殺されてしまった。
そんな歴史から、彼は郷土の英雄とされているということのようだ。 -
木の柱、梁を縦横斜めに組み合わせた木造建築の家。柱の間を漆喰や煉瓦で埋めれば、ドイツやフランス北部地域でなじみのコロンバージュ様式となる。チロルで見られるこの建築様式は、コロンバージュの原始型といえるのかもしれない。
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小さなベランダにいっぱい飾られた花と壁絵。
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右下の壁絵を拡大してみると、馬車の幌に書かれた文字は「Josef Wieshaber」と読める。どんな人物か調べてみたが、こちらの人物については、よくわからなかった。
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イチオシ
村のメインストリート
午後3時ごろだが、通りに人っ子一人いない。 -
と思っていたら、小学校高学年か中学生らしき女の子が、楽しそうにおしゃべりしながら通り過ぎていく。
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花に囲まれて、ヨセフ、マリアと少年時代のイエスを描いた、いわゆる聖家族の壁絵。
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3階のベランダはあふれんばかりの花々。手入れも大変そうだ。
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イチオシ
花をアップで。
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斜めから眺める
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壁に描かれた紋章の文字「15・KOFLER・93」とか・・
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「12・Fam Zager・30」は、この家の苗字と始祖の年代を表しているのだろうか?
ともかく、このドイツ語特有のヒゲ文字は、どこか中世的な雰囲気が感じられる。 -
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これも聖家族の絵
オーストリアでは9割の人がカトリックだそうだが、こうした山間の小さな村の人たちは、いまでも信仰心が篤いのだろう。 -
メインストリートから路地を通って裏に出てみると、牧草地が広がっていて、長閑な風景だ。
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東の方を見ると、7月4日に歩いたPatcherkohel山が見える。
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イチオシ
窓ガラスに写り込んでいるのは、すっかりなじみになったKalkkogelの岩峰だ。
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ところどころに、泉がある。
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左側の壁絵には「St.Frorian」と書かれている。
調べてみると、この人物フロリアヌス(ラテン名)は、3世紀末から4世紀初頭のローマ帝国の現在の東部バイエルン地域(チロルに近い)に駐屯していたローマ軍の司令官であり、消防隊の責任者でもあった。このころのローマはまだキリスト教迫害の時代であったが、フロリアヌスはローマの軍人でありながらキリスト教に帰依していた。そのため、ローマ皇帝ディオクレティアヌスの使者から改宗を迫られたが、拒否したため、首に石をまかれて川に沈められて殉教した。その後、カトリック教会から聖人に列せられた。生前の仕事に関連して消防士の守護聖人ということになっている。
絵をよく見ると、手桶の水を家にかけている。木造建築では、こわいのは火事。そのため、防火の守護聖人への信仰が深いということなのだろう。 -
原始コロンバージュ?とも言える木骨構造の破風
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メインストリートの中心部にあった泉。手桶から水をこぼしている像から、これも聖フロリアヌス(セント・フローリアン)なのであろう。
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出窓からあふれんばかりの花。
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フレスコ画で描かれた日時計の文字盤
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こちらの家にはSt・Katharinaの聖人像が描かれている。聖カタリナという聖人は2人いる。アレキサンドリアのカタリナとシエナのカタリナである。刃がついている車輪と剣が描かれているので、この女性はアレキサンドリアのカタリナだろう。
このアレキサンドリアのカタリナというのは、半ば伝説的な人物で、キリスト教に帰依していたが大変聡明で、当時の一流の学者と議論しても決して負けることなく、その学者たちをも、当時迫害の対象であったキリスト教に改宗させてしまった。皇帝からローマの異教への改宗と側室になることを迫られた彼女は、理想の夫はイエス・キリストであると、断固拒否し、刃がついた車輪で轢かれるという拷問を受けた。だがキリストの奇跡でその傷は癒えてしまった。ついに皇帝は彼女を剣で斬首してしまうが、最後までイエス・キリストを理想の夫として純潔を守り通したという言い伝えがある。そうした知的な人物だったことから、名門オックスフォード大学やパリ大学の守護聖人ということになっているそうだ。
日本でも、知性と純潔の象徴であるカタリナを冠したキリスト教系の女学校が数多くある。
まだ、他にも大勢の聖人の壁絵に出会えたかもしれない。全部写真にとっておき、後で調べてみると面白かっただろうが、この時はそんなことは考えてもみなかった。 -
村の中心部に戻ってきた。
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インスブルックの街並みで見かけたエルカーという出窓とよく似た出窓。背後の山並みは最初にあるいたノルトケッテ山群だ。
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小一時間ほど、のんびりMuttersの村を散策したあと、STBの駅にもどったが、あいにく次のSTBは隣のKreith止まり。
せっかくなので、その電車でKreithまで行って、駅の周辺を散策してみよう。
ここからも冬季オリンピックのジャンプ競技で使われたベルクイーゼル・ジャンプ台が見えている。 -
先ほどまで散策していたMutters村の中心部がすぐ近くに見えている。
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この小さな集落の民家もまた壁絵があり、花が飾られている。
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Kreithの教会。次のSTBが来るので、あまり遠くには行けない。駅周辺から眺めるだけだ。
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FulpmesもMuttersもTelfesもどこが一番美しい村ということではなく、外観のみならず、信仰篤い村人たちの素朴だが心豊かな生活ぶりが伺えるちっぽけではあるが美しい村々であった。
明日からは、この長閑なチロルを離れ、大都会ウィーンでの旅が始まる。
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