2016/07/15 - 2016/07/15
4位(同エリア57件中)
玄白さん
ウィーン滞在最終日。この日はメルクの修道院まで足を延ばし、オーストリア・バロックの至宝とまで言われる絢爛豪華な付属教会があるメルク修道院を見学し、ヴァッハウ渓谷をドナウ川クルージングを楽しむ。デュルンシュタインで下船し、この小さな村を散策。夕方はウィーンに戻り、カールス教会でコンサートという、盛りだくさんの予定である。
本編は「メルクの修道院見学とヴァッハウ渓谷ドナウ川下り」に続く後編である。
デュルンシュタインは、周囲を葡萄畑に囲まれ、聖堂参事会修道院教会の青い塔が美しい可愛らしい村である。ここでもホイリゲでワインを味わうランチを楽しんだ。背後の山の上には、プランタジネット朝イングランド国王リチャード獅子心王が幽閉されていたという古城、クエンリンガー城跡が中世の面影を残している。この古城までのミニミニハイキング。
夕方は、ウィーンに戻り、カールス教会でコンサートを堪能。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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クレムス行きの遊覧船を、途中のデュルンシュタインで途中下船。乗客の半数くらいは、ここで下船する。
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イチオシ
船着き場からも、クエリンガー城跡がよく見える。デュルンシュタインで下船したのは、葡萄畑に囲まれた小さな村の散策を楽しむことと、この中世の雰囲気を色濃く残す、この古城へ登るミニミニハイキングである。
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まずは船着き場から旧市街へ続く道を、のんびり歩く。道の両側に続く石垣の上はブドウ畑になっている。
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古い家並みは、中世のまま、時間が止まっているよう。
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村はずれで見つけたホイリゲ。デュルンシュタインのホイリゲは、麦わらのようなもので作られた船の舵のような飾りが見印。
まだ、旧市街にもたどり着いていないのに、ここでひっかかるわけにはいかない。 -
ホイリゲの土塀に絡むブドウの蔓には、果実がたっぷりぶら下がっている。
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イチオシ
古い石壁に、ワインやらリキュールの瓶が展示されている。
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やがて、城壁の門をくぐると村の旧市街に入る。ハウプト通りという唯一のメインストリートだ。
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イチオシ
ハウプト通りに入ってから振り向きざま、城門の全体像を一枚パチリ。この小さな村の旧市街もヨーロッパの歴史ある都市と同様、城壁に囲まれている。おそらく、この城門が唯一、街の中に入れる入口だったのであろう。
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ハウプト通りを、まず一通り端まで歩いてみる。地図でみると、せいぜい400mくらいしかないメインストリートだ。
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古い街によくある壁に取り付けられた鉄製の看板が、このメインストリートでも見られた。看板のマークから、この店は何屋だろうかと想像しながら歩くのが面白い。
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土台は古い家なのだろうが外壁は修復されて、きれいになっている民家が多い。
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あっという間に、通りの西の端まで来た。ここからのドナウ川の眺め。水は濁っていて、「美しく青きドナウ」のイメージとは程遠い。
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イチオシ
ランチをする店を物色しながら、もう一度、通りを戻る。
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聖堂参事会修道院教会も覗いてみたが、中には入らず。
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旧市街をとりまく城壁と石畳に中世の面影を感じる。
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城門の手前30mくらいのところに、クエリンガー城跡に登る入口がある。入口には案内標識があったので、迷うことはない。
先にランチをしてワインなんぞ飲んでしまうと、結構急な登り道で息切れしてしまいそうなので、先に城跡まで行くことにした。30分もあれば行けるようだ。 -
城跡への登り道の途中から見下ろすドナウ川。
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クエリンガー城跡にたどり着いた。これは城門の跡だろうか。
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城門跡の壁に、当時の城の構造、配置を示す図面が掲示されている。
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本丸(?)へは、さらに登っていかなければならない。
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この城は12世紀半ばごろ、キューンリンク家初代ハートマール1世によって築かれたとされる。現在では、石塀だけが残った廃墟となっている。所有者は時代とともに変遷したであろうが、1645年までは、当時の貴族の居城ないしは砦として機能していたようだ。最後の所有者はハプスブルク家である。
1645年、30年戦争末期にプロテスタント側について参戦したスェーデン軍によって破壊されたという。それ以来370年以上、放置されたままになっているのである。 -
この30年戦争、もとはドイツ語圏内のキリスト教新旧両派の宗教内乱戦争だったが、各国の介入により、ヨーロッパ全域の国際紛争に拡大したのである。その対立軸は3つあり、複雑に絡み合って読み解くのも容易ではない世界史の一コマになっている。それは①カトリックとプロテスタントの対立、②神聖ローマ皇帝と傘下の領邦国家群の対立、③主権国家間の対立、特にハプスブルク家とブルボン家との対立。
ともあれ、今回の我が家の旅行中の興味の中で大きな存在だったハプスブルク家は、30年戦争をきっかけに急速に支配力を失っていくことになった。 -
だが、この廃墟と化したクエリンガー城跡を有名にしているのは、30年戦争を遡ること400年以上も前の、リチャード獅子心王幽閉の逸話である。
プランタジネット朝イングランドの2代目君主だったリチャード1世。その勇猛さから獅子心王と呼ばれていたが、第3次十字軍遠征の帰路、かつて辱めを与えたハーベンベルク朝オーストリア公、レオポルド5世の恨みを買って、彼に囚われてしまい、この城に2年間幽閉されてしまった。 -
現代の常識からは想像もつかないことなのだが、レオポルドは幽閉しているリチャード獅子心王を人質にしてイングランドに身代金を要求しているのである。当時の金額で15万マルクで、せしめた身代金でレオポルドは国内の城を新設したり、ウィーンの街の開発に使ったというから、相当な金額であったのだろう。
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イチオシ
リチャードは、イングランド王ではあるが、当時イギリス領だったノルマンディー、アキテーヌなどフランス内の領地経営にあたっていたため、日常語はフランス語で、英語は全く話せなかったという。しかも、十字軍遠征など戦争に明け暮れていて、イングランド国王として10年間君臨していたが、イギリス国内で統治していたのはわずか6ヶ月だったという。
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リチャードは父王ヘンリー2世や兄弟たちと領地争いを繰り返しており、なにかと話題に事欠かない人物だったらしい。
中世イングランドの物語「ロビン・フッド」に謎の黒騎士として登場し、悪役として描かれているジョン王を懲らしめる役回りを演じているのもリチャード獅子心王である。史実として兄弟喧嘩が絶えなかったリチャードとジョンが、このような物語に反映しているのだろう。 -
こんな牢獄らしき洞窟が残っている。ここにリチャード獅子心王が投獄されていたのかどうか?
実際には囚われの身とは言え、大事な身代金を得るための人質であり、しかもイングランドという当時のオーストリアより強大な一国の国王であったので、ある種の客人扱いで、優雅に暮らしていたという説が有力である。この地の名産のワインやアプリコットのデザートを口にしていたかもしれない -
本丸のてっぺんまで昇れるようだ。ただし、いつ崩壊してもおかしくない廃墟なので、「あくまで自己責任で」という注意書きがしてある。
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城壁の前には白い花が咲き乱れている。まさしく「夏草や兵どもが夢の跡」である。
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咲いているのは、こんなヒルガオのような花である。
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崩れかかった城壁越しにデュルンシュタインの新しい集落が見えている。
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ドナウ川沿いに広がるブドウ畑に囲まれて、中世の面影を残すおとぎ話にでてきそうな家並み。
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ドナウ川を遡る大型の遊覧船も見える。
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イチオシ
城跡の真下にはこじんまりしたデュルンシュタイン旧市街が見下ろせる。
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いい眺めである。
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ドナウ川の対岸にある集落も見えている。
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あまりのんびりもしていられない。これから旧市街に戻って遅めのランチだ。
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下る途中からみた聖堂参事会修道院教会の青い塔。
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ランチは目星をつけておいた、このホイリゲで。店の名前は「Altes Presshaus」、古い葡萄圧搾機がある家という意味だそうだ。デュルンシュタインでも最も古いホイリゲらしい。ハウプト通りのほぼ真ん中にある。
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寒くもなく暑くもない、よい天気なのでオープンテラスのテーブルでのランチ。ワインのつまみは、チーズ、サラミ、ハム、ピクルスの盛り合わせ。2人分で13.5ユーロ。
混んでいたので相席である。対面に座っていたのは70~80歳くらいとおぼしき2人組の老婦人。ウィーン郊外の家から、ここまでサイクリングで来たという。元気なおばあちゃんたちである。巨大なステーキ2枚をペロリと平らげ、さらにデザートまで。 -
これが美味しいのよ!といって勧めてくれたのが、これ。丸ごと1個のアプリコットをスフレで包んだものである。甘味はつけてない生クリームを付けていただく。
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中世の面影が色濃く残る可愛らしいデュルンシュタイン旧市街の散策と古い廃墟となった古城、そしてホイリゲでワインを堪能して、ウィーンに戻る。
まずは、バスでクレムスまで行き、そこからフランツ・ヨーゼフ駅行き電車でハイリゲンシュタットで下車、ここでUバーンに乗り換えてカールス教会のコンサート会場へ。
クレムス行きのバスは、しばし葡萄畑の中を走る。 -
見渡すかぎりの葡萄畑。
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カールス教会には開演50分前に到着。演目はヴィヴァルディの「四季」
確保した席は前の方の良い席である。 -
観光客相手のミニコンサートと思っていたが、予想以上に大勢の聴衆が入場を待って長蛇の列。
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昨日たっぷり鑑賞したカールス教会の絢爛豪華な主祭壇の前がステージになっている。
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当然ながら、演奏が始まると写真撮影はできないので、自分の席から堂内を撮影。照明された夜の教会内は、昼間とは違った趣がある。
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ロットマイヤーの天井画も昼間とは違う色彩である。
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何度見ても見飽きない主祭壇。
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すでに通奏低音用のチェンバロがセットされている。楽器編成は、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、チェンバロだが、バイオリン以外は各パート1人といったこじんまりした編成だ。
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だが、教会内は音響効果が素晴らしいので、小規模な楽器編成でも迫力十分。前から2番目の列だったので、コンサートマスターのバイオリン独奏のときには、演奏者の息遣いまではっきり聞こえる迫真の演奏だった。
クラシック音楽の生演奏は何年振りだろうか。素晴らしいひとときであった。 -
余韻冷めやらぬ中、外に出ると、ライトアップされた教会建築が、これまた美しい。
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巨大なペスト記念塔のライトアップ
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教会の前の池に写り込むドーム
一週間のウィーン滞在もあっという間に終わった。明日はプラハに移動である。
以下、チェコ旅行記に続く。
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