≪黒い森のエーベルシュタイン城：ヴォルフ伯爵の伝説・運命の跳躍≫

2015/07/14 - 2015/07/28

＜エーベルシュタイン城：ヴォルフ伯爵の伝説・運命の跳躍
　Schloss Eberstein ：die Sage vom ”Grafensprung“＞

“ドイツ黒い森とアルザス・シュヴァーベン地方の旅”
　　　　（2015年の行程）　　　　　　　　　　　

：オーデンの森・黒い森・バーデンワイン街道（カイザーシュトゥール）・
アルザス地方・シュヴァーベン地方・タウヌスとラインガウ・ルール地方： 　
期間　：　2015年7月14日（火）〜7月28日（火）15日間の旅

写真は“ヴォルフ伯爵の跳躍”・フレスコ画Trinkhalle Baden -Badenバーデン・バーデンのトリンクハーレ, 1844年

エリア ドイツ

• 旅行の満足度: 4.5

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 一人あたり費用: 30万円 - 50万円
• 交通手段: レンタカー
• 航空会社: ルフトハンザドイツ航空 ANA
• 旅行の手配内容: 個別手配

Rastattラシュタットから黒い森のTaelerstrasse峡谷街道を走ると、22kmでGernsbachゲルンズバッハの町に着く。

Murgムルグ川から130mの高さにあり、ブドウ畑に囲まれた美しい景観の中にエーベルシュタイン城は立っている。

写真はエーベルシュタイン城をムルグ川から見上げて

この城を伝説の主役Graf Wolf von Eberstein ヴォルフ・エーベルシュタイン伯爵が居城としていた。

花崗岩の岩壁がムルグ川に向かって飛び出ているような斜面があるが、この岩壁は“Grafensprung伯爵の跳躍”の場として知られている。
その伝説の主はヴォルフ・エーベルシュタイン伯爵のことである。

写真はエーベルシュタイン城の俯瞰

≪Der Grafensprung (Sage) 伝説“伯爵の跳躍”≫
Aloys Schreiberアロイ・シュライバー 編
Badisches Sagen-Buch IIバーデン地方の伝説集その②より。

Graf Wolf von Ebersteinヴォルフ・エーベルシュタイン伯爵（1340～1396年）はHeinrich II. von EbersteinハインリッヒII・エーベルシュタイン伯とMargarete von Oettingenマルガレーテ・エッティンゲン夫人の間に長男として生まれ、1362年から1367年の間に、父の領地の半分を受け継いだ。

しかし、その後はかつての有力な勢いも、より有力者への寄付と持参金で財産を費やしたことで影響力を失っていき、遺産争いにも負けてしまった。

写真はかつてのエーベルシュタイン城のスケッチ

更に悪いことに近隣のバーデンとヴュルテンベルクの勢力を拡大してきたことで、ヴォルフ・エーベルシュタイン伯の将来は脅かされていました。

写真は17世紀のエーベルシュタイン城

ヴォルフは長い間、Graf Eberhard II. von Wuerttembergエーベルハルト2世（genannt ”der Greiner“グライナーとも呼ばれた）・ヴュルテンベルク伯爵（1344〜1392年）と敵対関係にあった為、居城であったエーベルシュタイン城はヴュルテンベルク伯の大勢力に攻撃されて落城した。

これでヴォルフは居城と領地を失ってしまった。

写真は1689年エーベルシュタイン城の縄張り

写真はヴォルフの庇護者であったPfalzgrafプファルツ宮中伯・選帝侯のRuprecht Iループレヒト1世

敗残者のヴォルフは反撃の機会をうかがい、ある日、Wildbadヴィルトバート （1990年から Bad Wildbad・保養地）で疲れを取っていたヴュルテンベルク兵を奇襲し、兵たちを捕えてしまおうとした。

しかし、この計画は失敗し、ヴォルフはヴュルテンベルク兵に追われる身になってしまった。
その時、彼は親しい人たちに助けてもらい、何とかエーベルシュタイン城まで逃げたのです。

写真はGraf Eberhard II. von Wuerttembergエーベルハルト2世（genannt ”der Greiner“グライナーとも呼ばれた）・ヴュルテンベルク伯爵・Stuttgart_Stiftskirche

だが、ヴュルテンベルク兵が追尾してきたので、彼はその場に長く隠れているわけにいきませんでした。

もう一度、エーベルシュタイン城からの脱出路を探した。
ヴォルフは夜明けごろに城を脱出したいと思い、速い馬を選び、馬上に武装したまままたがり、その時を待っていたのです。

写真はWildbad-1900ヴィルトバート1900年（1990年から Bad Wildbad・保養地）

写真はBad Wildbadバート・ヴィルトバート・保養地2011年

しかしながら、一晩中、ヴュルテンベルク兵はエーベルシュタイン城の麓の出口からムルグ川にまで一人も逃さぬように見張りの兵で周囲を固め、急こう配の岩壁の下まで敵兵の声が聞こえてくるほど近接してきました。
ヴォルフはもう逃れる道がないように思えたのです。

写真はバーデン・バーデンの保養施設トリンクハーレ

最後に思い付いたのは追っ手の手にかかるよりは、自ら死を選ぶ事でした。
ヴォルフはムルグ川の上に突出している岩壁の頂上に馬を素早く導き、拍車で馬腹を激しく蹴り、泡立つ深淵に向かって人馬共々跳躍したのです。

写真はバーデン・バーデンのトリンクハーレ“Grafensprung伯爵の跳躍”の壁画

しかし、なんと奇跡的にヴォルフ自身は怪我一つせず、助かったのです。ただ、水面に落ちた衝撃で足の骨を砕いた馬は可哀そうに深い淵に沈んでいきました。

写真はバーデン・バーデンの保養施設トリンクハーレと壁画

ヴォルフは首尾よく、向こう岸にたどり着き、そして、ヴュルテンベルク伯の敵対者で、ヴォルフの庇護者であったPfalzgrafプファルツ宮中伯・選帝侯のRuprecht Iループレヒト1世（1309〜1390年：ハイデルベルク大学の創立者）の宮廷まで逃れることができたのです。

現在も人々はヴォルフ・エーベルシュタイン伯が運命を切り開いたともいえる、ムルグ川に向かって人馬共々跳躍した岩壁の上を “Grafensprung伯爵の跳躍”と呼んでいます。

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写真はBaden-Baden-Trinkhalle-Fresko06-Alt-Eberstein　旧エーベルシュタイン城の壁画

後書き：

伝説“Grafensprung伯爵の跳躍”は、バーデン・バーデンの保養施設トリンクハーレの壁画の1つに描かれている。
参考：Die Sagen der Trinkhalleトリンクハーレの伝説集（14の壁画の説明）
von Rika Wettstein, Baden-Baden
http://www.bad-bad.de/sehen/sagen.htm

また、August Kopischアウグスト・コーピッシュ（1799〜1853年・ドイツの歴史画家、作家）は伝説を詩に書いています。
更に初めて知ったことだが、あのゲーテと並ぶドイツ古典主義（Weimarer Klassik）の双璧であった詩人、歴史学者、劇作家、思想家のFriedrich Schillerフリードリヒ・シラーの Gedichte詩にエーベルハルト2世（グライナーとも呼ばれた）・ヴュルテンベルク伯爵を題材にしたものがある。


写真はBaden-Baden-Trinkhalle-Fresko10-Die_Felsen岩壁の壁画

Muggensturmムッゲンスツルムの町（Rasttatラシュット行政区）では通りの名に、多目的ホールの名にWolf von Ebersteinヴォルフ・エーベルシュタインの名が付けられている。

（2015年6月20日：訳・編集・加筆）

以上で旅行前の寄稿を終わります。それではまた。

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写真はBaden-Baden-Trinkhalle-Fresko11-Burg_Windeckヴィンデック城の壁画

Burg Windeck古城ホテル　ヴィンデック城：
D-77815 Buehl/Baden　、Kappelwindeckstrasse 104
http://www.burg-windeck.de/

3星、全21室。バーデンの南20ｋｍにAlt Windeck（＝Burg Windeck）の古城がある。5kmほど急坂の山道を登ると、海抜1064ｍの山上に古城ホテルBurg Windeck（風の曲がり角？）ヴィンデック城の姿が見えた。