2024/09/23 - 2024/09/23
320位(同エリア1583件中)
+mo2さん
サミー・ヘイガーがTHE BEST OF ALL WORLDSと銘打たれた、ヴァン・ヘイレンの楽曲を中心にパフォーマンスするライヴを見に有明アリーナへ行ったのですが、少し時間があったので、国立新美術館の「田名網敬一 記憶の冒険」に行ってきました。あまり期待していなかったのですが素晴らしい展覧会でした。
HPより
近年、急速に再評価が進む日本人アーティスト、田名網敬一。武蔵野美術大学在学中にデザイナーとしてキャリアをスタートさせ、1975年には日本版月刊『PLAYBOY』の初代アートディレクターを務めるなど、雑誌や広告を主な舞台に日本のアンダーグラウンドなアートシーンを牽引してきました。その一方で、1960年代よりデザイナーとして培った方法論、技術を駆使し、現在に至るまで絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションなど、ジャンルや既存のルールに捉われることなく精力的に制作を続け、美術史の文脈にとって重要な爪痕を残してきました。 本展は、現代的アーティスト像のロールモデルとも呼べる田名網の60年以上にわたる創作活動に、初公開の最新作を含む膨大な作品数で迫る、初の大規模回顧展です。
なお、田名網敬一さんは8月9日、くも膜下出血を発症のため88歳で死去されました。逝去は本展の開幕2日後となります。R.I.P.
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 新幹線
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入口からおどろおどろしい「田名網敬一 記憶の冒険」雰囲気です。
国立新美術館 美術館・博物館
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本展は全11章から構成されます。まず会場に足を踏み入れると、高さ約3.5mのインスタレーション「百橋図」があります。
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本展のための新作で、重なり合う橋にプロジェクションマッピングが投影され、独特の世界観を形成しています。
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これと対を成すように、新作の屏風型のコラージュ作品も展示され、田名網が想像する橋の向こうの世界が暗示されています。これから始まる「記憶の冒険」へと鑑賞者を誘うキーピースです。
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1章には、日本最初期のポップ・アートとも評される「ORDER MADE!!」シリーズ(1965)や、幼少期の戦争の記憶と結びついている金魚モチーフが初めて登場した「Gold Fish」(1975)、『Avant Garde』誌(アメリカ)が主催したベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズ(1967)など、60~70年代の作品が壁面を埋めます。
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「Gold Fish」1975年
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アメリカの『Avant Garde』誌が主催したベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズ(1967)
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「NO MORE WAR」1968年
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「サマー・エキサイト・イン・ハイランド」1969年
「卵形」1963年 -
「虚像未来図鑑」1969年
「 KILLER JOE’S」 1968年 -
「モーターサイクル」2008年
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アメコミを思わせる極彩色とはっきりとした輪郭。
そして幼少期に経験されたという戦争の記憶が濃く滲んだ作品の数々は、どれも容赦ないタッチで怒りや畏怖を訴えかけています。 -
会場内を進んでいくと、まず驚くのが絵画の数です。
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作り込まれた鮮やかな絵画が壁一面に並んでいる光景は息を呑むものです。
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アンディ・ウォーホルから影響を受けて制作された日本最初期のポップアートとも呼べる「ORDER MADE!!」シリーズ(1965)
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「ORDER MADE!!」1965年
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「 Sophia on Beach」 1972年
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続く2章の「虚像未来図鑑」では、69年に出版された同名のアーティストブックや日本版月刊『PLAYBOY』、そして70年代のコラージュ作品が紹介。
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「Untitled (Collagebook 8_01)」 1971年頃
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「Untitled (Collagebook 2_13)」 1969年頃
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「Untitled (Collagebook 9_18)」 1973年頃
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3章「アニメーション」では、田名網による60~70年代の映像作品の素材が絵画のように並びます。
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田名網は60年代、グラフィックデザイナーとして活動する傍ら、アニメーション作家・久里洋二のもとで映像制作を学びました。
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「Good-by Marilyn」1971年16ミリフィルム(デジタル版)/4分23秒
制作・アニメーション:田名網敬一、歌:平山三紀「真夏の出来事」
田名網は幼少期から映像への関心を持ち続けており、60年代中頃にアニメーション制作を始めました。70 年代初頭にはテレビ番組から依頼を受け、いくつかのアニメーションを制作します。その一つである本作では、ホットドックやバナナとマリリン・モンローが反復的に登場し、エロティックな光景が4分半にわたって繰り広げられます。自由の女神、ディズニーといったイメージやポルノグラフィの切り抜きも随所に散りばめられ、アメリカ大衆文化の独自な解釈が表現されています。ただタイトルにも暗示されているように、この時期を境に田名網は徐々にアメリカのシンボルから離れ、作品の主題を自身の記憶へと変化させていきます。本作はその過渡期に作られた作品といえます -
『Oh Yoko!』映像素材 1973年
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『Oh Yoko!』映像素材 1973年
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「Oh Yoko!」 1973年 16ミリフィルム(デジタル版)/4分23秒
制作・アニメーション:田名網敬一歌:ジョン・レノン「Oh Yoko!」 -
81年に結核を患い、4ヶ月に及ぶ入院生活を余儀なくされた田名網。薬の強い副作用によって幻覚に悩まされましたが、そのイメージは極彩色かつキッチュな作品へと昇華されていきました。
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4章「人工の楽園」には、その入院以降に制作された絵画群のほか、幻覚のイメージが幼少期の積み木と結びついた「昇天する家」(1987)などの立体作品が、ひとつの街のように空間を構成します。
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4章「人工の楽園」展示風景
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「蓬萊山に百鶴が飛ぶ図」1986年
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「昇天する家具」2004年
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「ハイヒールエレファント」1982年
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近年、田名網は自身の過去の記憶や夢を主題とした作品を数多く制作しています。幼少期に体験した戦争や生死を彷徨った大病の経験を大きなきっかけとし、「人間は自らの記憶を無意識のうちに作り変えながら生きている」という説に基づいて、自身の脳内で増幅される「記憶」を主題に創作活動を続ける田名網。
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「フレデリック・ロイス―臓器の劇場」1987年
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「天使の声」1988年
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1980年代は中国への旅行と1981年に経験した約4か月にわたる入院中に見た幻覚をきっかけにして、東洋的な楽園や奇想の迷宮を思わせるようなイメージを描くようになりました。
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「回廊」1986年
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第5章「記憶をたどる旅」では、1990年代頃から継続して取り組んだという、自身の「記憶の検証」のためのドローイングから展開した絵画作品を展示。
「発光体の謎」1994年 -
「半寝の夢」1994年
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過去の美術作品と田名網の夢のイメージが組み合わさった「蝸牛の迷宮」(1995)
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田名網は70年代アメリカのアンダーグラウンドなインディペンデント映画に影響を受け、実験映像も制作しました。6章「エクスペリメンタル・フィルム」では、印刷技術を映像に取り入れ、新聞や雑誌の網点を拡大し動かした《Why》(1975)などが、いまなお新鮮な驚きを与えてくれます。
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7章「アルチンボルドの迷宮」は、アルチンボルドの作品を引用してつくられた新作の立体《アルチンボルドの迷宮》(2024)を中心に、壁面には色指定原画と完成されたポスター、そしてアトリエのような小部屋があり、田名網の脳内を覗き込むような空間です。
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8章「記憶の修築」は、2012年に発見した過去のコラージュ作品に触発されて制作したキャンバスのコラージュ作品とともに、《記憶の修築》(2020)と題された温室が展示室の中心に佇む。田名網のアイデアの源泉たる夢と記憶。
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「記憶は嘘をつく」2023年
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コロナ禍以降、田名網はピカソの模写である「ピカソ母子像の悦楽」シリーズを手がけており、その数は700点を超えます。9章の壁面はこのシリーズが埋め尽くす。古今東西の様々なイメージを使いこなしたピカソと田名網。時空を超えた巨匠のリンクが見られるます。
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「ピカソ母子像の悦楽」シリーズ 2020?2023年
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「Kiosk Picasso」 2022年
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第10章貘の札
2000年代以降の田名網の根幹にあるのが、自身の記憶の曼荼羅とも言える大画面の作品です。 -
戦闘機から金魚、松などに至るまで、膨大なモチーフがコラージュされるこのシリーズは平面・立体の双方に及んでおり、尽きることを知らない田名網の制作意欲が存分に感じられます。作品に登場する奇形の生き物たちは、「戦争で傷ついた人々であり、恐れることを知らない私たち自身」だという。
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「絶対的存在」2024年
本立体作品では複数の顔が積み重ねられており、それぞれの力強い眼差しがこちらを見つめてきます。ドクロやクモ、ニワトリ、金魚、うねる松の木などが複雑に組み合わされて一体化することで、まるで一つの命を持っている生き物かのように感じられます。 -
「死と再生のドラマ」2019年
極彩色で彩られた本作は、戦争を経験した田名網の幼少期の記憶と強く結びついたモチーフの数々から構成されています。田名網にとって「死」は切り離せない主題であり、創作のエネルギーでもあり続けてきました。本作では多数の戦闘機が海に沈みながら妖怪のような生き物が中空を漂い、輪廻転生を思わせる混沌とした世界が繰り広げられています。また、制作手法において田名網は2000年代以降デジタルでデータを起こすようになり、他のメディアへもイメージを無限に増幅させることが可能となりました。映像作品や立体までへも軽々とイメージを展開させていく様は、田名網の多様なアーティストとしての側面を昨今ますます強調しているといえるでしょう。 -
「迷宮へ誘う橋」2010年
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「骸骨の宴」2011年
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「彼岸の空間と此岸の空間」2017年
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「渡れない反り橋」2011年
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「奇想図」2023年
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「見える闇・見えぬ闇」2016年
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「綺想体」2019年
田名網は作品に頻繁に現れる奇妙な姿形の生き物たちのことを、戦争で傷ついた人々であり、恐れることを知らない私たち自身だと語ります。2000年代からは千手観音などの仏像に着想を得た立体作品を制作しており、「自在に変容する脅威の尊像に興味が尽きない 」と語っています。本作は異形の仏像のようでもあり、田名網が考える極楽浄土の世界の生き物が表されています。 -
「若冲賛歌」2016年
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「世界を映す鏡」2022年
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複数のアニメーションが投影されています。
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「変幻自在 ①」 2024年
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第11章「田名網敬一×赤塚不二夫」では、ほぼ同世代であり敬愛してきた漫画家、赤塚不二夫(1935~2008)が描いたキャラクターらをオマージュした作品群を展示しています。
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「鏡の中の私の顔」2022年
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「魔術の鏡」2022年
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これほどまで時代もジャンルも問わず、縦横無尽の表現と協働を展開できる稀有なアーティストは、後にも先にも、もう現れないのではないか。そう考えずにはいられない。
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エピローグ「田名網キャビネット」
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