京都 岡崎 熊野神社(Kumano Shrine, Okazaki, Kyoto, JP)

2020/10/28 - 2020/10/28

2020年10月28日(水)午後2時前、夷川(えびすがわ)舟溜から少し北に上がる。丸太町通と東大路通の交差点の北西角に熊野神社がある。京都洛中の多くの交差点は、例えば四条烏丸のように、交差する通りの名前を並べて呼ばれるところが多く、この交差点は東山丸太町で交差点の案内板もそうなっているが(下の写真1)、熊野神社前と呼ばれることが多いように思う。バス停がそうなってるからだろうか。

その名前の由来になっているのが、この熊野神社。45年ほど前に京都に住むようになり、この交差点も何度も通ったことがあったのだが、なんで熊野神社前なのか考えたことなかったし、この神社に来たこともなかったので初めての参拝。

全国に約3,000社ある熊野権現を祭神とする神社で、今熊野の新熊野神社、冷泉通の東端の若王子(にゃくおうじ)社と共に京都三熊野と呼ばれる神社。平安時代初期の811年に日円上人がこの地に紀州熊野大神を勧請したことに始まる。京都三熊野で一番古い。通称権現さん。

平安中期末の1090年には白河上皇の勅願により創建された聖護院の鎮守社となり、別当職を置いて管理するとともに修験道の守護神として崇敬を集めた。更に平安後期の終わりに後白河法皇が熊野権現を篤く信仰し度々熊野詣を行ったが、この熊野神社にも厚く尊信を寄せ、紀州の土砂や樹木を用いて社頭の整備に力を注いだ。1178年には高倉天皇の中宮徳子(建礼門院)が皇子ご安産祈願のため使を遣わされ、無事安徳天皇を出産された。

室町時代に入り、第3代将軍足利義満に社地を寄進され鴨川に至るまでの広大な社域を持ったが、応仁の乱により荒廃した。江戸初期の1666年に再興され、幕末に近い1835年には大修造が行われた。1912年(大正元年)の市電丸太町線の開通、1926年(昭和元年)の東大路通りの拡幅などにより現在の社域となった。

主祭神は伊邪那美命(いざなみのみこと)で、相殿に伊邪那岐命(いざなぎのみこと)、天照大神(あまてらすのおおかみ)、速玉男尊(はやたまおのみこと)、事解男尊(ことさかをのみこと)が祀られている。ご利益は縁結び・安産・病気平癒・鎮火。古くから節分の日に「火の用心のお札」を受ける風習があり、多くの参拝者で賑わう。例祭は5月16日、4月29日は神幸祭が行われる。

丸太町通に面して建つ石の鳥居を抜けると、右手奥、東大路通沿いに手水舎がありで、正面に本殿と続く拝殿。本殿は1835年の大修造時に下鴨神社(賀茂御祖神社)から移築されたもので、代表的な流れ造桧皮葺の建造物。礎石はすべて白川石材を重積したものであり、屋根檜皮は光格天皇のご寄進によるもの。光格天皇は大神輿も寄進されている。

弊殿が1927年(昭和2年)に除却せられ、拝殿を本殿に接続し、前拝所として整備された。その後本殿屋根葺替え及部分の補修が行われ、大祭を前に1959年に改修された。なお、旧拝所は江戸時代初期1629年の建立で保護建造物。

左手には社務所と摂社があり、摂社には春日大神、須賀大神、神倉神と、稲荷大神、金刀比羅大神が祀られている。社務所でお守りを購入。買ってないが、御神燈にも描かれているように(下の写真2)、熊野神社では神武天皇を熊野から大和の樫原まで先導したと伝えられる八咫烏(やたがらす)が信仰されており、サッカー日本代表のシンボルマークにもなっていることから、からす守り・なぎ守りの他にこれをモチーフにしたサッカー守りや絵馬なども揃っている(下の写真3)。

東大路通側に小さな森が残るが、かつてのこの神社の社域は広大で、聖護院の森と呼ばれるうっそうとした森が広がっていた。1879年(明治12年)にこの聖護院村の八ッ橋屋の12代目として生まれた西尾為治は、元禄からの古法を基調に改良を重ね、世界の博覧会にも出品し、1889年(明治22年)のパリ万博では銀賞を受賞し、「京に八ツ橋あり」と世界に知らしめた。その功績を称え、この小さな森に「八ツ橋発祥の地」という石碑が西尾為治の銅像とともに1994年に平安遷都1200年を記念して設置された。

神社を東大路通側に出ると北隣に「八ツ橋発祥の家」という大きな提灯を掲げてある本家西尾八ッ橋の熊野店がある。江戸前期の1689年に聖護院の森の黒谷参道にて八ッ橋屋梅林茶店を創業。本店は1本北の春日北通を少し東に入ったところにある。

この西尾八ッ橋と同じく1689年創業と謳っているのが、東大路通の熊野神社の向かいにある聖護院八ツ橋。この交差点にあるのが総本店で、この地が創業の地。京都には14社が京都八ッ橋商工業協同組合が加盟しているそうだが、この2社に加えて本家八ッ橋が1689年創業としている。この業界、すったもんだが続いているようで、めんどくさそう・・・。白い砂糖を乗せた八ッ橋、霜の橋の小袋を270円で購入。

間を走る東大路通は、明治以降に整備された洛中の東端を南北に貫く幹線道路で、元々は東山通と呼ばれていたため、現在も主要な交差点は東山○○と呼ばれる。昭和初期に北大路通、西大路通が整備された時に合わせて東大路通に改称された(ただし、洛中の環状道路を形成する南側の九条通は南大路通とは改称されなかった)。1943年に北の高野から南の東福寺までの市電東山線が開業し、1978年の京都市電廃止まで走っていた。大学時代に乗ったことがある。通りは高野からさらに北山通まで続いているが、この区間は市電が通ってなかったので、道幅が狭い。

東西に走る丸太町通は平安京の春日小路及び西側では中御門大路に当たる。この通り沿いの西堀川に材木商が多かったため、丸太町通の名がついたと云われている。東は東山の麓の鹿ヶ谷通から西は嵯峨釈迦堂大門町まで伸びるが、西大路の円町から先は1966年以降に延伸された区間で新丸太町通と呼ばれることが多い。1930年に東の天王町から西の円町までの市電丸太町線が全線開業し、1976年3月末まで走っていた。私が大学に通い始めたのはこの年の4月になってからなので、この線が廃止された直後だった。
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エリア 下鴨・宝ヶ池・平安神宮(京都)

写真1 東山丸太町交差点

写真2 拝殿と御神燈

写真3 社務所