バスク地方旅行記(ブログ) 一覧に戻る
写真はロンセスバジェス(Roncesvalles)にある教会である。<br />ここには巡礼者用の大きなアルベルゲがある。<br />ピレネー越えをした巡礼達はひとまずここで一泊して翌日に<br />ピレネー山を下りパンプローナに向かうことになる。<br /><br /><br />7月21日(21日目)は朝8:00にValcarlosのアルベルゲを出発した。<br /><br />いつもより遅い。<br /><br />この理由を以下で説明する。<br /><br />私は今朝4:00に起床しすべての旅立ちの準備をし、<br />簡単な朝食を済ませ、<br />外のベランダで準備体操をし、<br />7:00には出発できる体制を整えて、<br />6:30に教授の部屋のドアをノックした。<br /><br />ドアの中から「Tomoありがとう。」と<br />いう教授の声が聞こえてきた。<br />私は「教授も早く起きて出発する準備をしていたのだ。」と<br />思っていた。<br /><br />私はベランダのテーブルの前に座って<br />教授の出てくるのを待っていた。<br /><br />7:00過ぎても教授が部屋から出てこないので<br />再びドアをドアをノックしてみた。<br /><br />暫くして教授が「なに?」と言いながら部屋のドアを開けた。<br /><br />教授は昨夜と同様、ローマの元老院のように<br />白いバスタオルを体に斜めに巻いていた。<br /><br />朝シャワーをかかっていたのだ。<br /><br />仕方がないと思ってまたベランダの外で待っていた。<br /><br />暫くすると共用リビングで物音がするので<br />ドアを開けてみると教授が<br />ピンク色の旅行用ケースの中身を詰めていた。<br /><br />「今日このケースを次の町まで送らなくてはいけないんだ。」<br />と言っている。<br /><br />「昨日の夜に準備をしていなかったのだ。」と<br />思って更に待つことにした。<br /><br />7:45頃になってようやく教授がベランダに出てきた。<br /><br />丁度その時、アルベルゲのご主人が来て<br />搬送する旅行用ケースはベランダの外に<br />出すようにと教授に言っている。<br /><br />教授はご主人と何かを話している。<br /><br />私は教授の旅行用ケースを<br />共用リビングからベランダに運び出した。<br /><br />ご主人が私の顔を見て<br />「大丈夫か?」と目で言っている。<br /><br />私は少し苦笑いをしながら<br />「何とかね!」という視線を送った。<br /><br />教授は後ろを振り返って旅行用ケースが<br />ベランダに出ているのを見て<br />「これは誰が出したんだ?」<br />と言っている。<br /><br />8:00になりようやく出発できる状態となる。<br /><br />教授が私に<br />「Tomo、今日はスティックを持っていた方がいいかなあ?」<br />と聞くので<br />「アルベルゲの外から緩やかだが長いスロープが<br /> 続いているからスティックは持って行った方が<br /> いいだろう。」と答えた。<br /><br />アルベルゲの外に出て私は杖を使いながら<br />ゆるやかな坂道を歩き始めた。<br /><br />後ろを振り返ると教授はスティックを<br />肩に担いで歩いている。<br /><br />私は「スティックを持って行った方がいいよ。」<br />と確かに言った。<br />これは「坂道が続くからスティックを使った方がいいよ。」<br />という意味で言ったつもりだったが<br />うまく伝わらなかったのだろうかと考えた。<br /><br />上手にコミュニケーションを図ることは難しい。<br />(日本語でも同じだが)<br /><br />教授の話しはさらに続く。<br /><br />次回はZubiriの町からPamplonaの街を越え、<br />難所のAlto del perdonの山を越えUterga村まで約40キロを<br />歩いた様子を説明する。<br />そこには楽しい巡礼仲間やアルベルゲでのかわいい女の子との<br />出逢いがあった。<br /><br /><br />(インターネットからの参考)<br /><br />denden mushi no kanashimi<br />「でんでんむしのかなしみ」(その3)<br />The Sorrow of a Snail<br /><br />Niimi Nankichi<br />新美南吉<br />by Niimi Nankichi<br /><br /><br />koushite otomodachi wo jun-jun ni tazunete iki mashita ga<br />こうして、お友達を順々に訪ねて行きましたが、<br />And after that, yet still to more friends, proclaiming the same grief.<br /><br />dono otomodachi mo onaji koto wo iu no de ari mashita<br />どのお友達も、同じことを言うのでありました。<br />However, he kept getting the same response.<br /><br />toutou hajime no denden mushi wa ki ga tsuki mashita<br />とうとう、始めのでんでんむしは、気がつきました。<br />So, finally, the snail noticed something…<br /><br />kanashimi wa daredemo motteiru noda watasi bakari de wa nai noda<br />「悲しみは、誰でも持っているのだ。わたしばかりではないのだ。<br />“Everybody is full of sorrows. It’s not just me…<br /><br />watashi wa watashi no kanashimi wo koraete ikanakutya naranai<br />わたしは、わたしの悲しみを、こらえていかなきゃならない。」<br />…I’m just going to have to bear my sorrow.”<br /><br />soshite kono denden mushi wa m?・ nageku no wo yameta node arimasu<br />そして、このでんでんむしは、もう、嘆くのをやめたのであります。<br />And so, from that day forward, the snail left off his lamenting.<br /><br />「でんでんむしのかなしみ」は子供向けに作られた童話だが<br />私の年齢になっても考えさせられる内容の話しだと思う。<br />  

還暦一人旅(巡礼21・22日目)ピレネー越え、間一髪で来た嵐 でんでんむしのかなしみ(その3)

21いいね!

2015/07/21 - 2015/07/27

55位(同エリア223件中)

2013tomo

2013tomoさん

写真はロンセスバジェス(Roncesvalles)にある教会である。
ここには巡礼者用の大きなアルベルゲがある。
ピレネー越えをした巡礼達はひとまずここで一泊して翌日に
ピレネー山を下りパンプローナに向かうことになる。


7月21日(21日目)は朝8:00にValcarlosのアルベルゲを出発した。

いつもより遅い。

この理由を以下で説明する。

私は今朝4:00に起床しすべての旅立ちの準備をし、
簡単な朝食を済ませ、
外のベランダで準備体操をし、
7:00には出発できる体制を整えて、
6:30に教授の部屋のドアをノックした。

ドアの中から「Tomoありがとう。」と
いう教授の声が聞こえてきた。
私は「教授も早く起きて出発する準備をしていたのだ。」と
思っていた。

私はベランダのテーブルの前に座って
教授の出てくるのを待っていた。

7:00過ぎても教授が部屋から出てこないので
再びドアをドアをノックしてみた。

暫くして教授が「なに?」と言いながら部屋のドアを開けた。

教授は昨夜と同様、ローマの元老院のように
白いバスタオルを体に斜めに巻いていた。

朝シャワーをかかっていたのだ。

仕方がないと思ってまたベランダの外で待っていた。

暫くすると共用リビングで物音がするので
ドアを開けてみると教授が
ピンク色の旅行用ケースの中身を詰めていた。

「今日このケースを次の町まで送らなくてはいけないんだ。」
と言っている。

「昨日の夜に準備をしていなかったのだ。」と
思って更に待つことにした。

7:45頃になってようやく教授がベランダに出てきた。

丁度その時、アルベルゲのご主人が来て
搬送する旅行用ケースはベランダの外に
出すようにと教授に言っている。

教授はご主人と何かを話している。

私は教授の旅行用ケースを
共用リビングからベランダに運び出した。

ご主人が私の顔を見て
「大丈夫か?」と目で言っている。

私は少し苦笑いをしながら
「何とかね!」という視線を送った。

教授は後ろを振り返って旅行用ケースが
ベランダに出ているのを見て
「これは誰が出したんだ?」
と言っている。

8:00になりようやく出発できる状態となる。

教授が私に
「Tomo、今日はスティックを持っていた方がいいかなあ?」
と聞くので
「アルベルゲの外から緩やかだが長いスロープが
 続いているからスティックは持って行った方が
 いいだろう。」と答えた。

アルベルゲの外に出て私は杖を使いながら
ゆるやかな坂道を歩き始めた。

後ろを振り返ると教授はスティックを
肩に担いで歩いている。

私は「スティックを持って行った方がいいよ。」
と確かに言った。
これは「坂道が続くからスティックを使った方がいいよ。」
という意味で言ったつもりだったが
うまく伝わらなかったのだろうかと考えた。

上手にコミュニケーションを図ることは難しい。
(日本語でも同じだが)

教授の話しはさらに続く。

次回はZubiriの町からPamplonaの街を越え、
難所のAlto del perdonの山を越えUterga村まで約40キロを
歩いた様子を説明する。
そこには楽しい巡礼仲間やアルベルゲでのかわいい女の子との
出逢いがあった。


(インターネットからの参考)

denden mushi no kanashimi
「でんでんむしのかなしみ」(その3)
The Sorrow of a Snail

Niimi Nankichi
新美南吉
by Niimi Nankichi


koushite otomodachi wo jun-jun ni tazunete iki mashita ga
こうして、お友達を順々に訪ねて行きましたが、
And after that, yet still to more friends, proclaiming the same grief.

dono otomodachi mo onaji koto wo iu no de ari mashita
どのお友達も、同じことを言うのでありました。
However, he kept getting the same response.

toutou hajime no denden mushi wa ki ga tsuki mashita
とうとう、始めのでんでんむしは、気がつきました。
So, finally, the snail noticed something…

kanashimi wa daredemo motteiru noda watasi bakari de wa nai noda
「悲しみは、誰でも持っているのだ。わたしばかりではないのだ。
“Everybody is full of sorrows. It’s not just me…

watashi wa watashi no kanashimi wo koraete ikanakutya naranai
わたしは、わたしの悲しみを、こらえていかなきゃならない。」
…I’m just going to have to bear my sorrow.”

soshite kono denden mushi wa m?・ nageku no wo yameta node arimasu
そして、このでんでんむしは、もう、嘆くのをやめたのであります。
And so, from that day forward, the snail left off his lamenting.

「でんでんむしのかなしみ」は子供向けに作られた童話だが
私の年齢になっても考えさせられる内容の話しだと思う。
  

旅行の満足度
4.5
ホテル
4.0
グルメ
4.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
15万円 - 20万円
交通手段
徒歩
旅行の手配内容
個別手配

PR

  • Valcarlosの町を暫く歩くと町はずれにレストランがあった。<br /><br />教授はここで朝食を食べると言う。<br /><br />でもまだ営業時間前なので<br />レストランのドアは閉まっている。<br /><br />教授は<br />「昨日、レストランの主人に話はつけている。<br /> 私が電話をすればドアを開けてくれることになっている。」と言う。<br /><br />しかし教授が携帯電話をしてもレストランの主人が出てくる気配はない。<br /><br />教授がドアをガチャガチャ開けようとしても<br />ドアはしっかり閉まっていた。<br /><br />私は<br />「こういう話しの行き違いは良くあることです。<br /> 今日も暑くなるかもしれないのでもう行きましょう。」<br />と出発を促した。<br /><br />教授は<br />「私にとって朝食は特別なものだ。<br /> さらに私は水を持っていない。」<br />と言う。<br /><br />「水だったら私が4リットル持っていますので、半分お分けしますよ。」<br />(2リットルあればロンセスバジェスまでの<br /> 14キロを歩けると考えていた)<br />と言うと教授は<br /><br />「私は新鮮な水(ミネラルウォーター)でないとダメなんだ。」と言う。<br /><br />私は「私が今朝トイレの洗面台の水道からペットボトルに<br />水を入れたのが教授にバレたのか。」と思った。<br /><br />教授はレストランの主人がやって来るまで待つと言う。<br /><br />私は教授とそこで一緒に待つわけにも行かないので<br /><br />「先に行きます。<br /> ロンセスバジェス(Roncesvalles)の教会のミサ会場で会いましょう。」<br />といって先に出発した。<br /><br />教会のミサは夜の8時からだから<br />教授が12時にレストランを出発して時速3キロで歩いても<br />午後5時前にはロンセスバジェス(Roncesvalles)に<br />到着すると思っていた。<br /><br />教授の方は<br />「Tomo、後で君に追いつくから一緒に歩こう。」と言っていた。<br /><br />私は教授とそこで別れた。<br /><br />そこから巡礼路は山道に入った。<br /> <br />

    Valcarlosの町を暫く歩くと町はずれにレストランがあった。

    教授はここで朝食を食べると言う。

    でもまだ営業時間前なので
    レストランのドアは閉まっている。

    教授は
    「昨日、レストランの主人に話はつけている。
     私が電話をすればドアを開けてくれることになっている。」と言う。

    しかし教授が携帯電話をしてもレストランの主人が出てくる気配はない。

    教授がドアをガチャガチャ開けようとしても
    ドアはしっかり閉まっていた。

    私は
    「こういう話しの行き違いは良くあることです。
     今日も暑くなるかもしれないのでもう行きましょう。」
    と出発を促した。

    教授は
    「私にとって朝食は特別なものだ。
     さらに私は水を持っていない。」
    と言う。

    「水だったら私が4リットル持っていますので、半分お分けしますよ。」
    (2リットルあればロンセスバジェスまでの
     14キロを歩けると考えていた)
    と言うと教授は

    「私は新鮮な水(ミネラルウォーター)でないとダメなんだ。」と言う。

    私は「私が今朝トイレの洗面台の水道からペットボトルに
    水を入れたのが教授にバレたのか。」と思った。

    教授はレストランの主人がやって来るまで待つと言う。

    私は教授とそこで一緒に待つわけにも行かないので

    「先に行きます。
     ロンセスバジェス(Roncesvalles)の教会のミサ会場で会いましょう。」
    といって先に出発した。

    教会のミサは夜の8時からだから
    教授が12時にレストランを出発して時速3キロで歩いても
    午後5時前にはロンセスバジェス(Roncesvalles)に
    到着すると思っていた。

    教授の方は
    「Tomo、後で君に追いつくから一緒に歩こう。」と言っていた。

    私は教授とそこで別れた。

    そこから巡礼路は山道に入った。
     

  • 木々が多く巡礼路は落ち葉に覆われているので<br />分かりにくかった。<br /><br />でも要所には標識があったのでこれを頼りに<br />歩いて行った。

    木々が多く巡礼路は落ち葉に覆われているので
    分かりにくかった。

    でも要所には標識があったのでこれを頼りに
    歩いて行った。

  • 山道を登り続けると巡礼路は開けた所に出た。<br /><br />近くにピレネーの山々が見える。

    山道を登り続けると巡礼路は開けた所に出た。

    近くにピレネーの山々が見える。

  • 峠の上には目印の教会が見えてきた。<br /><br />あとはここからロンセスバジェス(Roncesvalles)まで<br />坂道を下るだけだ。<br /><br />

    峠の上には目印の教会が見えてきた。

    あとはここからロンセスバジェス(Roncesvalles)まで
    坂道を下るだけだ。

  • 1時間近く一般道路の坂道を下り続けた。<br /><br />もしかしたら他に巡礼路があったのかもしれないが<br />途中にロンセスバジェス(Roncesvalles)行きという<br />道路標識があったのでそのまま下り続けた。<br /><br />暫く行くとようやく町の入口の標識である小さな聖母子像<br />が現れた。<br /><br />これを過ぎると左眼下にロンセスバジェス(Roncesvalles)の教会<br />があり、巡礼達がベンチに座っているのが見えてきた。<br /><br />私はピレネー山を越えたのだ。

    1時間近く一般道路の坂道を下り続けた。

    もしかしたら他に巡礼路があったのかもしれないが
    途中にロンセスバジェス(Roncesvalles)行きという
    道路標識があったのでそのまま下り続けた。

    暫く行くとようやく町の入口の標識である小さな聖母子像
    が現れた。

    これを過ぎると左眼下にロンセスバジェス(Roncesvalles)の教会
    があり、巡礼達がベンチに座っているのが見えてきた。

    私はピレネー山を越えたのだ。

  • 写真はロンセスバジェス(Roncesvalles)にある教会で<br />観光情報センター側から撮影したものである。<br /><br /><br />ロンセスバジェス(Roncesvalles)の村に着くとまず観光情報センター<br />を尋ねた。<br /><br />そこでこの町の資料とこれからのスペイン巡礼の<br />ルート情報を仕入れた。<br /><br />教会内部のあるアルベルゲを訪れるとまだ午前中だったせいか<br />チェックインをする巡礼者は少なかった。<br /><br />受付事務局のスタッフは少しオッカナイ感じの女性だったが<br />人数が少なかったせいか親切に対応してくれた。<br />更にこれから歩くスペイン巡礼マップもプレゼントして頂いた。<br />(実はこの地図がこれから大変役に立つのだ)。<br />夕食代込で25ユーロ位だった。<br /><br />アルベルゲの部屋に入れるのは<br />14:00からなので近くのレストランで<br />昼食を食べることにした。<br /><br />レストランではいつものように<br />冷たいビールとスペイン風トルティーヤ<br />を注文し外のテラスで食べていた。<br /><br />空には雲が少し出てきたが日差しの強い昼下がりだ。<br /><br />レストランのマスターとお喋りしていると昨日はこの村は<br />大嵐で大変だったそうだ。<br /><br />「今日は天気で良かったですね。」と言うと<br />「山の天気は変わりやすいからわからない」という返事だった。<br /><br />暫くすると風が吹いてきた。<br /><br />レストランのマスターとウェイターがテラスの天幕をたたみ、<br />椅子を片づけ始めた。<br /><br />私が「ランチタイムが終了するのですか?」と聞くと、<br /><br />「いや、いまから嵐がやって来る。」と言う。<br /><br />確かに前方から黒くて気味の悪い雲が近づいてくるのが見えた。

    写真はロンセスバジェス(Roncesvalles)にある教会で
    観光情報センター側から撮影したものである。


    ロンセスバジェス(Roncesvalles)の村に着くとまず観光情報センター
    を尋ねた。

    そこでこの町の資料とこれからのスペイン巡礼の
    ルート情報を仕入れた。

    教会内部のあるアルベルゲを訪れるとまだ午前中だったせいか
    チェックインをする巡礼者は少なかった。

    受付事務局のスタッフは少しオッカナイ感じの女性だったが
    人数が少なかったせいか親切に対応してくれた。
    更にこれから歩くスペイン巡礼マップもプレゼントして頂いた。
    (実はこの地図がこれから大変役に立つのだ)。
    夕食代込で25ユーロ位だった。

    アルベルゲの部屋に入れるのは
    14:00からなので近くのレストランで
    昼食を食べることにした。

    レストランではいつものように
    冷たいビールとスペイン風トルティーヤ
    を注文し外のテラスで食べていた。

    空には雲が少し出てきたが日差しの強い昼下がりだ。

    レストランのマスターとお喋りしていると昨日はこの村は
    大嵐で大変だったそうだ。

    「今日は天気で良かったですね。」と言うと
    「山の天気は変わりやすいからわからない」という返事だった。

    暫くすると風が吹いてきた。

    レストランのマスターとウェイターがテラスの天幕をたたみ、
    椅子を片づけ始めた。

    私が「ランチタイムが終了するのですか?」と聞くと、

    「いや、いまから嵐がやって来る。」と言う。

    確かに前方から黒くて気味の悪い雲が近づいてくるのが見えた。

  • 私は教会のアルベルゲに引き返した。<br /><br />アルベルゲは教会横の暗い回廊を右に<br />曲がったところに見えてくる。<br /><br />

    私は教会のアルベルゲに引き返した。

    アルベルゲは教会横の暗い回廊を右に
    曲がったところに見えてくる。

  • アルベルゲは大きな建物で昔の修道院を改造した<br />建物であろうか広い部屋に2段ベッドがズラリと<br />並んでいて全部で何百人もの巡礼者が泊まれそうだ。<br /><br />建物の前には広い中庭があった。

    アルベルゲは大きな建物で昔の修道院を改造した
    建物であろうか広い部屋に2段ベッドがズラリと
    並んでいて全部で何百人もの巡礼者が泊まれそうだ。

    建物の前には広い中庭があった。

  • 建物の入り口前にはアルベルゲのチェックインを待っている<br />巡礼達がベンチに座って待っていた。<br /><br />アルベルゲがオープンする14時が近づいてきて到着する巡礼者が<br />増えてきていた。<br /><br />彼らは早朝にSaint-Jean-Pied-de-Portを出発してきた巡礼者だろう。<br /><br />まだ巡礼路を歩いているであろう教授のことが気になり始めた。<br />(嵐がまもなくやって来る…。)

    建物の入り口前にはアルベルゲのチェックインを待っている
    巡礼達がベンチに座って待っていた。

    アルベルゲがオープンする14時が近づいてきて到着する巡礼者が
    増えてきていた。

    彼らは早朝にSaint-Jean-Pied-de-Portを出発してきた巡礼者だろう。

    まだ巡礼路を歩いているであろう教授のことが気になり始めた。
    (嵐がまもなくやって来る…。)

  • それから突然雷とともに激しい雨が降ってきた。<br />(山の天候は変わりやすい)<br /><br />雨と雷は断続的にやって来て明け方まで続いていた。<br /><br />最初に嵐が来たとき<br />私はこの風雨の中を歩いてくる<br />巡礼達や教授のことが<br />心配になった。<br /><br />私は教会の部屋から飛び出して、<br />アルベルゲに向かう道の前に立ち、<br />巡礼者たちの誘導を行った。<br /><br />巡礼者たちが雨に濡れたポンチョを着て<br />疲れた顔でやって来る。<br /><br />私も雨に濡れながら、彼らに<br /><br />「ロンセスバジェスにようこそ!<br /> アルベルゲの事務局はあの回廊を右に<br /> 曲がってすぐです。<br /> みんなが待っていますよ。」<br /><br />と英語で大きな声で呼びかけた。<br /><br />何人かの巡礼が疲れた顔をしながらも<br />それぞれの国の言葉で「ありがとう。」<br />と言ってくれた。<br /><br />胸が熱くなり勇気を出して<br />雨の中に飛び出して良かったと思った。<br /><br />翌日に巡礼路を歩いているとき<br />私の顔を覚えていてくれたのか、<br />向こうから親しげに声をかけてくれる<br />巡礼者が増えた。<br /><br />私は巡礼者のお世話役(オスピタレロ)の資質を<br />持っているのかもしれない。<br />(あるいは単なる世話焼きかなあ?)<br /><br />夕方まで待っても巡礼者のなかに教授の姿はなかった。<br /><br />Valcarlosのレストランに一人残してきたことが悔やまれた。<br /><br /><br /><br />

    それから突然雷とともに激しい雨が降ってきた。
    (山の天候は変わりやすい)

    雨と雷は断続的にやって来て明け方まで続いていた。

    最初に嵐が来たとき
    私はこの風雨の中を歩いてくる
    巡礼達や教授のことが
    心配になった。

    私は教会の部屋から飛び出して、
    アルベルゲに向かう道の前に立ち、
    巡礼者たちの誘導を行った。

    巡礼者たちが雨に濡れたポンチョを着て
    疲れた顔でやって来る。

    私も雨に濡れながら、彼らに

    「ロンセスバジェスにようこそ!
     アルベルゲの事務局はあの回廊を右に
     曲がってすぐです。
     みんなが待っていますよ。」

    と英語で大きな声で呼びかけた。

    何人かの巡礼が疲れた顔をしながらも
    それぞれの国の言葉で「ありがとう。」
    と言ってくれた。

    胸が熱くなり勇気を出して
    雨の中に飛び出して良かったと思った。

    翌日に巡礼路を歩いているとき
    私の顔を覚えていてくれたのか、
    向こうから親しげに声をかけてくれる
    巡礼者が増えた。

    私は巡礼者のお世話役(オスピタレロ)の資質を
    持っているのかもしれない。
    (あるいは単なる世話焼きかなあ?)

    夕方まで待っても巡礼者のなかに教授の姿はなかった。

    Valcarlosのレストランに一人残してきたことが悔やまれた。



  • その夜、8:00からの教会ミサに参加した。<br /><br />夕食を一緒に食べたカナダのケベック州から来た<br />男性巡礼者フィリップさんと一緒に参加した。<br /><br />かれは産業心理学の資格保持者で<br />経営学を夜間大学で勉強して<br />いまは大手企業の管理者として働いてるとのことだ。<br /><br />フランス巡礼路ではよく出逢ったので<br />お互いに顔見知りであった。<br /><br />年齢も同じくらいであり社会経験も似ていたので<br />話が合い面白かった。<br /><br />時間が過ぎるのも忘れそうであったが<br />フィリップさんが<br />「もうミサが始まるぞ。急いで行こう!」<br />と言ってくれたのでギリギリ間に合った。<br /><br />教会ではミサ会場の中に教授の姿がないか探したが<br />彼は参加していなかった。<br /><br />アルベルゲでは百人以上の巡礼者が宿泊していた。<br /><br />翌日私は朝6時に出発した。<br /><br />嵐は過ぎていたが霧がとても深い朝で<br />辺りはまだ夜のように薄暗かった。<br /><br />巡礼者はグループで出発して行く。<br /><br />しかし今朝は深く白い霧で空気が包まれている。<br />アルベルゲ前の広場を十数メートル<br />行くと巡礼達は順番に濃霧の中に飲み込まれて行った。<br /><br />私は帽子の上にヘッドランプを装着して出発した。<br /><br />今日は約22キロ歩いてZubiri村まで行く予定だ。<br /><br />ぬかるんだ巡礼路をヘッドライトで<br />足元を確認しながら進んで行った。

    その夜、8:00からの教会ミサに参加した。

    夕食を一緒に食べたカナダのケベック州から来た
    男性巡礼者フィリップさんと一緒に参加した。

    かれは産業心理学の資格保持者で
    経営学を夜間大学で勉強して
    いまは大手企業の管理者として働いてるとのことだ。

    フランス巡礼路ではよく出逢ったので
    お互いに顔見知りであった。

    年齢も同じくらいであり社会経験も似ていたので
    話が合い面白かった。

    時間が過ぎるのも忘れそうであったが
    フィリップさんが
    「もうミサが始まるぞ。急いで行こう!」
    と言ってくれたのでギリギリ間に合った。

    教会ではミサ会場の中に教授の姿がないか探したが
    彼は参加していなかった。

    アルベルゲでは百人以上の巡礼者が宿泊していた。

    翌日私は朝6時に出発した。

    嵐は過ぎていたが霧がとても深い朝で
    辺りはまだ夜のように薄暗かった。

    巡礼者はグループで出発して行く。

    しかし今朝は深く白い霧で空気が包まれている。
    アルベルゲ前の広場を十数メートル
    行くと巡礼達は順番に濃霧の中に飲み込まれて行った。

    私は帽子の上にヘッドランプを装着して出発した。

    今日は約22キロ歩いてZubiri村まで行く予定だ。

    ぬかるんだ巡礼路をヘッドライトで
    足元を確認しながら進んで行った。

  • 今朝の巡礼路は昨夜来からの嵐の痕跡を残していた。<br /><br />途中で日本人の熟年カップルに出逢った。<br /><br />私が巡礼路を歩いていると公園の中でテントを片づけている<br />女性が「ブエンカミーノ」と私に声をかけてきた。<br /><br />私が「ブエンカミーノ」と返すと<br /><br />「あっ、日本の方ですか?」と聞いてきた。<br />(私のスペイン語はそんなに日本語なまりが強いのか?)<br /><br />私が「そうです。」と答えて<br />二人に近づいて少し話した。<br /><br />二人は巡礼でなくピレネー山脈を<br />北のビスケー湾から南のリヨン湾まで<br />テント生活で歩いて縦断中と言う。<br /><br />昨夜は嵐で大変な目にあったと言っていた。<br /><br />私のように雨が入り込まない<br />アルベルゲの乾いたベッドでぬくぬくと<br />寝ることが出来たことは恵まれていると思った。<br /><br />仕事の邪魔をしてはいけないと思い<br />「お互いに元気である限り旅を楽しみましょう!」<br />と声を掛け合って分かれた。<br /><br />日本語を話したのはひと月ぶりだった。

    今朝の巡礼路は昨夜来からの嵐の痕跡を残していた。

    途中で日本人の熟年カップルに出逢った。

    私が巡礼路を歩いていると公園の中でテントを片づけている
    女性が「ブエンカミーノ」と私に声をかけてきた。

    私が「ブエンカミーノ」と返すと

    「あっ、日本の方ですか?」と聞いてきた。
    (私のスペイン語はそんなに日本語なまりが強いのか?)

    私が「そうです。」と答えて
    二人に近づいて少し話した。

    二人は巡礼でなくピレネー山脈を
    北のビスケー湾から南のリヨン湾まで
    テント生活で歩いて縦断中と言う。

    昨夜は嵐で大変な目にあったと言っていた。

    私のように雨が入り込まない
    アルベルゲの乾いたベッドでぬくぬくと
    寝ることが出来たことは恵まれていると思った。

    仕事の邪魔をしてはいけないと思い
    「お互いに元気である限り旅を楽しみましょう!」
    と声を掛け合って分かれた。

    日本語を話したのはひと月ぶりだった。

  • 灼熱の巡礼路であったフランス側と異なり<br />ピレネーを越えると<br />スペイン巡礼路は涼しい風が吹き渡っていて<br />歩きやすかった。<br /><br />これは昨日の嵐のお蔭であろうか。

    灼熱の巡礼路であったフランス側と異なり
    ピレネーを越えると
    スペイン巡礼路は涼しい風が吹き渡っていて
    歩きやすかった。

    これは昨日の嵐のお蔭であろうか。

  • 昼を過ぎると空が晴れてきた。<br /><br />何故か早めの秋の訪れを感じさせる<br />スペイン巡礼路だ。

    昼を過ぎると空が晴れてきた。

    何故か早めの秋の訪れを感じさせる
    スペイン巡礼路だ。

  • 巡礼路は舗装されていて歩きやすかった。<br /><br />他の巡礼者は私を追い抜いて行ったので<br />私と歩く連れはいなかった。

    巡礼路は舗装されていて歩きやすかった。

    他の巡礼者は私を追い抜いて行ったので
    私と歩く連れはいなかった。

  • 途中で山道に入ると足元は昨日の嵐で<br />ぬかるんでいた。<br /><br />しかし暑くないので足は前に進んで行く。

    途中で山道に入ると足元は昨日の嵐で
    ぬかるんでいた。

    しかし暑くないので足は前に進んで行く。

  • 巡礼路は水が溢れて川のようになっているところもあった。<br /><br />巡礼者たちは足元に注意しながら渡って行った。<br /><br />すべって転んだらずぶ濡れになる。

    巡礼路は水が溢れて川のようになっているところもあった。

    巡礼者たちは足元に注意しながら渡って行った。

    すべって転んだらずぶ濡れになる。

  • ようやくZubiriの村に到着した。<br />左上はアルベルゲの建物だ。<br /><br />橋を渡っていると先に到着した巡礼達が<br />パンツ一枚になって川の中に体を浸していた。<br /><br />私が手を振ると彼らも手を振りかえしてきた。<br /><br />巡礼仲間だから気持ちが通じ合う。<br /><br />

    ようやくZubiriの村に到着した。
    左上はアルベルゲの建物だ。

    橋を渡っていると先に到着した巡礼達が
    パンツ一枚になって川の中に体を浸していた。

    私が手を振ると彼らも手を振りかえしてきた。

    巡礼仲間だから気持ちが通じ合う。

  • 今日はこの村のペンションに泊まる。<br /><br />約30ユーロだと記憶している。<br /><br />夕食は街の中の食堂で食べた。<br /><br />食事をしていると店の若いセニョーラが<br />「あなたは日本人ですか?」と聞くので、<br />「そうです。<br /> でもどうして聞くのですか?」<br />と尋ねると<br /><br />「私の主人が日本のフアンです。」と言う。<br /><br />暫くしてヒスパニック系らしいご主人が現れた。<br /><br /><br />彼が一生懸命に日本語で私に話しかけてくるので<br />うれしくなった。<br /><br />それではと首に巻いていた<br />水草模様のガーゼの日本式手ぬぐいを外し、<br />丁寧にたたんで彼にプレゼントした。<br />(昨日洗濯してお店に来る直前に首に巻いたので<br />そんなに汚れていないと思う)<br /><br />そして<br />「世の中は狭いね!(El mundo es como un panuelo.<br /> ”世間はハンカチのようだ”という意味)」<br /> Zubiriで日本語を聞けるとは嬉しいよ。」<br />と私がスペイン語で言うと、<br /><br />「日本人がスペイン語を話してくれてうれしい。」<br />と言ってくれた。<br /><br />現地の言葉が少しでも話せると<br />良い人間関係ができることを改めて<br />確認できた。<br /><br /><br />

    今日はこの村のペンションに泊まる。

    約30ユーロだと記憶している。

    夕食は街の中の食堂で食べた。

    食事をしていると店の若いセニョーラが
    「あなたは日本人ですか?」と聞くので、
    「そうです。
     でもどうして聞くのですか?」
    と尋ねると

    「私の主人が日本のフアンです。」と言う。

    暫くしてヒスパニック系らしいご主人が現れた。


    彼が一生懸命に日本語で私に話しかけてくるので
    うれしくなった。

    それではと首に巻いていた
    水草模様のガーゼの日本式手ぬぐいを外し、
    丁寧にたたんで彼にプレゼントした。
    (昨日洗濯してお店に来る直前に首に巻いたので
    そんなに汚れていないと思う)

    そして
    「世の中は狭いね!(El mundo es como un panuelo.
     ”世間はハンカチのようだ”という意味)」
     Zubiriで日本語を聞けるとは嬉しいよ。」
    と私がスペイン語で言うと、

    「日本人がスペイン語を話してくれてうれしい。」
    と言ってくれた。

    現地の言葉が少しでも話せると
    良い人間関係ができることを改めて
    確認できた。


  • 私が泊まったペンションの窓を開けると<br />ローマ時代につくられたという石橋が<br />目の前に見えた。<br /><br />今日はここでぐっすり寝て明日はパンプローナまで歩こう。<br /><br />これで若いころからの夢である<br />ユーラシア大陸横断を達成したことになる。<br />(ロシアの東端ウラジオストックから<br />スペイン西端フィニステーラまでが繋がったことになる)<br />「若き日の夢は老いてのち豊かに実る(ゲーテ)」とは<br />このことだと思った。<br /><br />明日はパンプローナに到着したあと<br />まだ時間と気力と体力が十分残っていれば<br />更に遠くまで歩くことも考えてみることとした。

    私が泊まったペンションの窓を開けると
    ローマ時代につくられたという石橋が
    目の前に見えた。

    今日はここでぐっすり寝て明日はパンプローナまで歩こう。

    これで若いころからの夢である
    ユーラシア大陸横断を達成したことになる。
    (ロシアの東端ウラジオストックから
    スペイン西端フィニステーラまでが繋がったことになる)
    「若き日の夢は老いてのち豊かに実る(ゲーテ)」とは
    このことだと思った。

    明日はパンプローナに到着したあと
    まだ時間と気力と体力が十分残っていれば
    更に遠くまで歩くことも考えてみることとした。

この旅行記のタグ

21いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

スペインで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
スペイン最安 373円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

スペインの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

タグから海外旅行記(ブログ)を探す

PAGE TOP