2019/05/26 - 2019/05/26
5位(同エリア327件中)
旅猫さん
『東京そぞろ』の4回目は、北区赤羽の西側に広がる旧稲付村界隈。
現在の地名では、赤羽西と赤羽台となる。
なぜここに決めたかと言えば、26日は、かの太田道灌公の月命日で、稲付城跡にある道灌堂の坐像が公開されるからである。
それに合わせて、坂巡りと気になっていた亀ヶ池弁財天を訪ねることにした。
- 旅行の満足度
- 3.5
- 観光
- 3.5
- 交通
- 3.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- JRローカル 徒歩
-
今回は、赤羽駅から歩き始める。
この駅は、以前、仕事帰りの乗り換えで利用し、構内にあったラーメン屋によく立ち寄ったものだ。
今は、その店も無くなり、乗り換えも不要となったので、縁遠い駅となってしまった。赤羽駅 駅
-
駅の西側へ出てしばらく歩くと、稲付城跡がある。
この城は、戦国時代、武蔵守護代・扇谷上杉氏の家宰であった太田道灌により築かれたとされるもので、江戸城と岩槻城を中継するという重要な役目を担っていた。稲付城跡 名所・史跡
-
現在、城跡は静勝寺の境内となっている。
江戸時代に廃城となった後、道灌の子孫である太田資宗により整備され、太田氏の菩提寺となったらしい。 -
境内は、周囲の喧騒が嘘のように静かで、緑も多く落ち着いた感じだった。
山門の正面奥に道灌を祀る道灌堂があり、その右手に本堂と弁天堂が建っている。 -
道灌堂は、享保20年(1735)に建立されたものだそうだ。
太田道灌公と書かれた提灯が下がっていた。 -
堂内には、厨子に納められた道灌の坐像が置かれ、道灌の月命日である26日に開帳される。
今回この地を歩く一番の目的が、その坐像を拝見すること。
開け放たれた堂内を見ると、頭を丸めた白い顔の坐像だった。
この像は、剃髪後の晩年の姿を映したとされているそうだが、なかなか凛々しいお顔だった。 -
道灌公にご挨拶した後、本堂と弁天堂にも参拝し、稲付城跡を後にした。
それにしても、御開帳日と言うのに、境内は人影も無く、寂しい限りだった。 -
稲付城跡の南側を巻くように坂道が付いている。
静勝寺坂と呼ばれるもので、かなりの急坂だった。
稲付城は、武蔵野台地の北東端で、その東側を流れる荒川に向かって岬のように突き出した場所にある。
三方が崖となっているため、まさに天然の要害であったのだ。 -
その坂に沿って設けられた植栽の中で、もう、紫陽花が咲いていた。
6月前に観られるとは思わなかった。 -
よく見ると、大好きな山紫陽花の仲間も咲いている。
日本の紫陽花は、繊細でとても美しい。
もちろん、手毬のような本紫陽花も好きなのだが。 -
坂を登り切り、さらに南へと向かう。
この辺りは、閑静な住宅街となっている。
突き当りで、また東へと下る坂に出会った。
その角の住宅の壁沿いに、小振りで可愛い薔薇が風に揺れていた。 -
そこには顎紫陽花もあり、何とも言えない風情がある。
花のある風景、しかも変に華やかではない花に彩られた街の景色は好きだ。
多くの街が、再開発により温か味の感じられない街に変貌するのは悲しい。
この界隈でも、都の補助線第86号線の整備が始まる予定で、この静かな街も失われることになる。
多くの住民が反対を表明しているが、結局は強制代執行で用地は取得され、住民は立ち退きを余儀なくされることになる。 -
その東へと下る坂は中坂と呼ばれ、西へと辿れば都道455号線を経て中山道へと繋がっている。
稲付城跡とこの中坂の間は僅か100mほどだが、そこに都道455号線と赤羽駅を結ぶ道を造る必要はあるのだろうか?
しかも、多くの住民の暮らしと赤羽自然観察公園の南側を潰してまで。 -
坂を下りたところは、いかにも拡幅工事が完了しましたという広い道だった。
この道は都道460号線で、江戸時代には脇往還の一つであった日光御成道(岩槻街道)で、ちょうどこの辺りに稲付の一里塚があったらしい。
以前は、その場所に史跡説明板が立っていたとのことだが、道路拡幅工事の影響で撤去されてしまったそうだ。 -
御成道沿いに少し歩くと、住宅街の奥に竜宮門のようなものが見えた。
地図で確認すると、普門寺とある。
少し惹かれたので、立ち寄ってみることにした。
向かう途中の道の脇に、稲付の餅搗唄と書かれた歴史案内板があった。
江戸時代、道灌山稲荷講の人達が、餅搗きの際に唄ったものらしい。
今でも、細々と歌い継がれているようなので、嬉しい限りだ。 -
境内に入ると、思ったよりも広かった。
大きな石積みの塔のようなものまであり、緑も多かった。
そんな緑の中に、簾で囲われたような水鉢が置いてある。
日差しが強くなってきたので、日除けなのか。
ちょっとした手間をかけるのが、日本人の美意識だな。
でも、それが美しいのだ。 -
近くでは、阿修羅らしき石仏が佇んでいる。
人の気配のない境内で、時を経た石仏を眺めていると、ふと、時間が止まったかのように感じる。
この吸い込まれるような感覚は不思議だ。 -
普門寺を後にして、さらに南へと歩く。
すると、角に交番の建つ丁字路から別れる道の傍らに、忘れられたように石仏が佇んでいた。
近くに案内標が立っていたので読んでみると、その石仏は庚申塔で、道標の役割もしていたらしい。
横には、「これより いたはしみち」と刻まれていて、その道が、日光御成道と中山道を結ぶ道だと言うことが分かる。 -
その道を歩いて行くと、途中から上り坂となっていた。
坂の名前は『真正寺坂』で、江戸時代には、北側に真正寺と言う寺があったので、そう呼ばれていたそうだ。
その寺もすでに廃寺になり、今は両側に真新しいマンションが建ち並び、静勝寺から中坂辺りの落ち着いた風情は感じられない。 -
その坂の途中から、いかにも再開発で整備された感が漂う階段があり、見上げれば、何となく、雰囲気が良さそうな感じがしたので、その階段を登ってみることにした。
-
登り切ったところにあった街は赤羽西四丁目。
台地上に広がる街で、昔は鶴ヶ丘と呼ばれるところだったようだ。
今でも、そこかしこに、その地名が残っていて嬉しかった。 -
歩いていると、また坂に出た。
標柱には、三日月坂とあった。
坂の途中には、道灌湯と言う銭湯があったらしいが、すでに廃業しているらしい。
遥か向こうには、赤羽台の団地群が見えていた。 -
もう少し鶴ヶ丘を歩いてみる。
近くの児童遊園では、親子連れが遊んでいて、それをお年寄りがニコニコしながら見守っている。
その並びには、小さな総菜屋があったが、まだ開店前だった。
おでんでも買って、公園で食べたかった。
こんな街が、あるとホッとする。惣菜 すぎもと グルメ・レストラン
-
児童遊園のある四つ辻から、北へと降りる細い坂を下る。
坂の途中には、小さな祠があり、花が手向けてあった。
忘れられずにいる神様は幸せだ。 -
降り切ったところは、古くからある商店街のようだった。
弁天通りと呼ばれているそうだ。
この弁天通りの一部が、かの補助線第86号線になるようだ。
その他の部分も、拡幅工事の真っ最中で、すでに街並みが大きく変わっていた。 -
その通りの名のもとになった社が、道の裏手にあった。
亀ヶ池弁財天と呼ばれるものがそれだ。 -
赤羽駅の西側には、大正時代まで、亀ヶ池と言う大きな池があったそうだ。
その池は埋め立てられてしまったが、弁財天の池としてその姿を僅かに留めていた。
池を覗くと、名前のとおり、亀がたくさん甲羅干しをしていた。 -
参拝後、脇から社殿を眺めたが、赤羽の駅前とは思えないほど静かだった。
鉄製の赤い橋は、太鼓橋を模して造られたのだろう。 -
弁財天から裏道を辿り歩いて行くと、赤羽並木通りと言う広い道に出た。
そこを左へ曲がると、隧道の入口脇を台地へと上がる石段があった。
まだ時間が早いので、登ってみることにする。 -
台地上には、以前、大規模な赤羽台団地が広がっていたが、そこには今、建て替えが進み様変わりした景色があった。
-
それでも、建て替えが終わったのは一部だけで、以前の建物がたくさん残っている。
しかし、すべての建物に人の気配はなく、周囲は壁で囲われ、中には入れなくなっていた。 -
55棟もの建物が建ち並ぶ巨大な団地だが、歩いてみると、まるで人気が無い。
昭和37年に竣工したそうだが、思いのほか古さを感じない。 -
一部建て替えの終わった場所には、僅かに生活感が漂っている。
行き交う人もいたが、服装や年齢などから見ても、新しい住人だとわかる。
街や住む人も、こうして変わって行くのだな。 -
様相の変わりつつある赤羽台団地だが、年を経て趣を増した場所もそこかしこに。
緑も育ち、木陰に入ると涼し気な空気に包まれた。
このような場所も、建て替えが進めば、綺麗に整備されてしまうのだろう。
時を経ることにより醸成される風景というのは、人に優しいものだと思う。
無くすのは簡単だが、取り戻すのは難しい。
同じものは、二度と出来ないのに。 -
歩いていると、すでに取り壊され、これから建設が始まる場所もあった。
長く続く無機質な壁が、街の変貌を物語っている。 -
多くの人が通ったであろう入口の階段も閉ざされている。
住んでいた街でもないのに、この寂しさはどこから来るのか。 -
赤羽台団地のような街と言うのは、これから急速に消えていくのだろう。
いや、もうほとんど残っていないのかもしれない。
無機質な塀に囲われ、ただ解体を待つだけの建物たちが、少し哀れに思えた。 -
塀の途切れたところから、中を覗いてみる。
人が住まなくなってから、まだそれほど時間が経っていないような感じだ。
それでも、雑草はもうかなり大きくなっている。
奥には、建て替えの終わった新しい建物が見えていた。 -
団地の北東の端までやって来た。
そこには、赤羽駅の方へ下る坂があった。
この坂は大坂と呼ばれ、古くからある坂道らしい。 -
坂の途中には、小さな稲荷社があった。
坂に面して、赤羽台団地の2号棟が建っている。
この辺りも、近いうちに様変わりするのだろう。 -
坂の下には、団地が出来た頃からありそうな商店街があった。
一応営業しているようだが、団地の住人が居なくなったので、客足は少なそうだ。 -
団地の移り変わりとともに、消えゆく街だな。
この日は、とても暑かったので、まだ11時を過ぎたばかりだが、これで切り上げることにする。
2時間余りのそぞろ歩きだった。
さて、次はどの街を歩こうか。
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この旅行記へのコメント (10)
-
- 前日光さん 2020/02/09 23:54:03
- オリンピックの影響もあるかも。。。
- 旅猫さん、こんばんは。
すっかりご無沙汰しておりまして。(^^;)
東京そぞろ其の4、味わい深い旅行記ですが、侘びしい感じが漂っているのは否めませんね。
特に「団地」というものは、団地ができてそこに住み着く人というのは、必然的に同年代の人が多いです。
アラフォー世代ぐらいから入居し、最初はそこそこ若いので活気があるのですが、時の流れと共に、皆等しく年老いてゆき。。。子どもたちが独立して団地を出てゆくと、老夫婦の二人暮らしとなります。
夫婦のどちらかが欠けて一人になり。。。そして誰もいなくなった というのが団地の宿命ですね。
住む人が少なくなれば、町は活気を失い。。。
国はなんとかして町の雰囲気を変えようと躍起になって、画一化した町ができあがります。
しかも今年に迫った東京オリンピック、海外の人にも整然とした街並みを見てもらいたいといった意志がどこかで働き、庶民のささやかな日々の暮らしは置き去りにされていくといった悪循環があるのではないでしょうか?
私の住むところも、例に漏れず住民の高齢化が進んでおります。
昔は高台の住宅地だったのですが、歳をとると坂道がつらく引っ越しをされる老夫婦もいらっしゃいます。
やけに整然とした町というのには、人間味が感じられません。
やはり生活のにおいにない町というのは、どこかウソっぽくてつまらないですよね。
時代の流れで片付けるのは、納得できないなぁと。
すみません!
旅行記から話が逸れてしまいましたが、何かと言えばオリンピックで盛り上がっている昨今の風潮には、なんだかなぁと思わずにはいられなくて、グチっぽくなってしまいました。(ーー;)
前日光
- 旅猫さん からの返信 2020/02/10 20:57:48
- RE: オリンピックの影響もあるかも。。。
- 前日光さん、こんばんは。
お久しぶりです(^^)
東京そぞろは、ずっと続けていきたいのですが、なかなか思うように出歩けません。
今年度は、社会人になってから、上位3つに入るくらい気を使う仕事があり、毎日疲れてしまいます。
温泉でも行きたいところですが、今年はまだどこへも行っていません。
赤羽台団地は、とても風情のある団地でしたが、建て替えが急速に進み、綺麗すぎる人工的な街になりつつあります。
同じように、多摩ニュータウンも建て替えが進んでいますが、どちらも高齢化が進んでいるため、新しい世代を入れるために過度にきれいにしている感じがありますね。
まあ、落ち着いた人のぬくもりのある街がいいと思うのは、そこそこ年を重ねないとわかってこないのかもしれませんが。
下町の木造住宅が多いところも、まる悪のように言われて急速に再開発が進んでいますね。
先日、台東区を歩いてきましたが、路地裏で道にチョークで絵を描いたりしている子供たちがいて驚きました。
都内でも、昭和がまだ残っているんですね。
そんな車の入ってこない路地も、東京都の政策により、拡幅工事が各地で進んでいます。
もう、見られなくなるのもすぐでしょう。
オリンピックは免罪符のようなものですからね。
規制がうやむやになって、ひどい状態です。
良くない風潮ですよね。
旅猫
-
- nankoさん 2019/06/07 13:53:32
- 太田道灌
- 旅猫さん、こんにちは。
去年まで太田道灌のゆかりの地に住んでいました。
首塚があるところの近くなんかは徒歩圏内でした。
旅行記を拝見して、そういえばどんな人物だったのかな?と調べてみたら、
築城の名人で知略にも長けた名将だったのですね。
ゆかりの地巡りをしないまま神奈川を去ってしまったのを後悔しました。
それから赤羽は以前親戚が住んでいて、幼いころに1度遊びに行ったことがあります。
そういえばこんな坂道のある町だったなぁというのを数十年ぶりに思い出しました(笑)
旅猫さんのこのシリーズは、綺麗なビルばかりじゃない東京の街並みが見られて興味深く拝見させてもらっています。
- 旅猫さん からの返信 2019/06/08 10:08:53
- Re: 太田道灌
- nankoさん、こんにちは。
書き込みありがとうございます。
所縁の地と言うことは、道灌公が無念の最期を遂げられた伊勢原の辺りですか?
赤羽にもご縁があるようで、道灌公に何やら縁があるのでは。
道灌公は、関東に戦国の足音が聞こえ始めた室町時代、関東管領上杉家の一族であった扇谷上杉氏の家宰として活躍した名将中の名将でした。
実は鎌倉時代から戦国初期の武将に興味があります。
個人的に、最近の再開発はどうも好きになれません。
人が住む温もりのある街が壊されて行くのが、悲しいです。
旅猫
- nankoさん からの返信 2019/06/08 11:49:38
- Re: 太田道灌
- 旅猫さん
そうです、道灌祭りが毎年開催される伊勢原に住んでました~。
さらに調べたら、子供を連れてよく遊びに行ってた丸山城址公園や高部屋神社もゆかりの地でした。
もし太田道灌が大河ドラマの主人公になったらぜひ観てみたいです。
鎌倉~室町時代の武将はあまり知らなかったので、いろいろと勉強になりなりました。
どうもありがとうございます(^^)
- 旅猫さん からの返信 2019/06/08 13:28:58
- Re: 太田道灌
- やはり伊勢原でしたかぁ
一度は訪れてみたいと思います。
大河ドラマの主人公になったらいいですね!
面白そう(^^)
旅猫
-
- まーやんさん 2019/06/06 22:55:53
- あまり大きな声では言えませんが…
- 旅猫さん、こんばんは。
…写真の大部分、どこで撮られたかわかりました(汗)
随分とマイナーな所に、、ありがとうございます。
住宅街、入り組んでいて、迷路のようじゃありませんでしたか?
坂の上り下り、お疲れ様でした!
静勝寺坂の下あたり、以前は猫さんのたまり場だったのですよ。
最近はいなくなってしまったかもしれませんが。
まーやん
- 旅猫さん からの返信 2019/06/08 09:04:23
- Re: あまり大きな声では言えませんが…
- まーやんさん、こんにちは。
書き込みありがとうございます。
何と(笑)
坂が多く、楽しい街歩きでした。
思ったよりも、道はわかりやすかったですよ。
あの静勝寺下には猫が多くいたのですかぁ。
一匹も出会わなかったので、残念です。
旅猫
-
- 墨水さん 2019/06/05 23:21:36
- 栄華は儘ならず。
- 旅猫さん、今晩は。
総ては「栄華は儘ならず。」ですね。
人々の、ささやかな家庭の温もりですら、いずれは滅んでいく定め・・・。
口惜しき限り次第・・・・。
およそ此の世は、常の棲みかでは無い・・・・、証ですね。
墨水。
- 旅猫さん からの返信 2019/06/08 08:57:20
- Re: 栄華は儘ならず。
- 墨水さん、こんにちは。
いつもありがとうございます。
どんなものでも、古びて行きますから、新しくすることは必要でしょうね。
でも、あまりにも最近は綺麗過ぎると言うか、温もりが無いと言うか。
街は、人々が穏やかに暮らせる場所じゃないと。
企業の利益や車優先の街づくりは、もう飽き飽きです。
旅猫
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