★アジア冬旅（１６）マレーシア ボルネオ島　サンダカン周辺（前半）

2008/02/09 - 2008/02/09

前編でサンダカンの日本人墓地を訪れてみたSUR SHANGHAIとその旦那。
山崎朋子氏著の『サンダカン八番娼館』や『サンダカンの墓』に書かれていた通り、明治から大正時代にかけてこの地に送り込まれたからゆきさんたちも眠るサンダカンの日本人墓地。
今も草刈りなどの手入れがされているらしいその墓地は、熱帯のジャングルに囲まれてスールー海を静かに見下ろしていた…。

この編ではそれに続いて、サンダカン遺産博物館、アグネス・キースの家、レインフォレスト・ディスカバリー・センター、そしてセピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターを訪れてみます。

表紙の画像は、レインフォレスト・ディスカバリー・センター敷地に翻るマレーシア国旗。

エリア サンダカン(マレーシア)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0
• グルメ: 4.0
• 交通: 3.5

• 同行者: カップル・夫婦
• 交通手段: レンタカー 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

サンダカンの日本人墓地がある丘からサンダカンの町に一旦下りて来たSUR SHANGHAIとその旦那。

サンダカン遺産博物館にはからゆきさん関連の展示もあるんじゃないかと思うので行ってみます。

サンダカン遺産博物館は、サンダカンの町の中心のLEBUH TIGA通り近くにあります。
これがその通りの様子。
サンダカンはサバ州では第２の町ですが、中心部もご覧のようにこぢんまりとしていて、徒歩でも見て回れる大きさ。

上述のLEBUH TIGA通りからちょっと入った所の観光インフォもある建物。

この一画にサンダカン遺産博物館があります。
下段の画像がその入口で、博物館は２階にあります。

開館は金曜日と５月１日を除く９：００〜１７：００　見学無料。



この日は土曜日でしたが、行ってみたところ臨時閉館。

実際に中を見学したのは翌日になりましたが、編集の都合上、この日の旅行記に入れておこうと思います。

サンダカン遺産博物館はとても小さい博物館。

展示物は１９００年代半ば近くからの物がほとんど。
明治から大正にかけてサンダカンに送り込まれてきたからゆきさんたちの資料は気付いた限りではありませんでした。

これは、１９３９年に発行されたというテングザルやオランウータンの絵柄の切手拡大見本。
ちょっと見えにくいですが、≪THE STATE OF NORTH BORNEO（北ボルネオ州）≫や≪BRITISH PROTECTORATE（英国保護領）≫という言葉が出ています。

これらの４セントや１０セント切手の額面が、英語のCENTSのほか、漢字では先、アラビア語らしき文字でも記載されているのも、当時は貿易で栄えて多国籍の人々が出入りしていたサンダカンを物語っていると思います。

サンダカン遺産博物館にあった写真展示。
これは、サンダカンの町を１９００年に撮ったとされるもの。
これはスールー海に面した港のあたりなのだと思います。

１９００年と言うと明治３３年。
サンダカンの娼館の主の一人だった木下クニが、この地で没した身元の分からぬ日本人のために私費を投じて建てた供養塔には≪明治四十一年七月≫、≪熊本県天草郡二江村　木下クニ建之≫の文字もあったので、この頃にはサンダカン八番娼館をはじめとする娼館がすでにあったのではないかと思います。
参照してみたい方は、下記のサンダカンの日本人墓地の旅行記も併せてご覧ください。http://4travel.jp/traveler/casa/album/10254161/

『サンダカン八番娼館』によると、それらの娼館の一つの三番館は「…木で二階に造ってあっての、壁は煉瓦、屋根は赤う塗ったトタン屋根、床は板張りで、…」だったのだそう。
『サンダカンの墓』によると、八番娼館の外観は赤い屋根にクリーム色の壁、緑色の窓枠がある２階建てだったのだそう。
その八番娼館があったのは、港に近い三番街（JALAN TIGA）だったらしいので、この写真にも写っているのかも。

サンダカン遺産博物館には第二次世界大戦前後の写真や当時使われていた生活用品などの展示もありました。

これは、第二次世界大戦前（１９３５年、昭和１０年）のサンダカンの町並みと、第二次世界大戦末期（１９４５年、昭和２０年）に連合軍に爆撃されて壊滅したサンダカンの様子。

『サンダカン八番娼館』の文庫本には上段の写真の一部が昭和１７年頃の写真として出ていました。
ここではサンダカン遺産博物館の表示どおりに記載しておこうと思います。


そのほか、第二世界大戦中にオーストラリア兵やイギリス兵捕虜を収容していたサンダカン捕虜収容所についての展示もありましたが、それはこのあとに続く戦争記念公園の旅行記でご紹介しようと思います。

お次は≪アグネス・キースの家≫へ回ってみたSUR SHANGHAIとその旦那。

アグネス・キースと言うのは、１９３４〜１９５２年に森林局長官としてサンダカンに赴任していたキース氏の夫人。
当時のサンダカンでの生活や人々の様子を綴った『LAND BELOW THE WIND』（日本語版は『風の下の国』）という著書や、その後の捕虜生活を綴った『THREE CAME HOME』（日本語版は『三人は帰った』）という続編もあります。

そのキース一家が住んでいたコロニアル風の民家が復元されていているので行ってみるといいですよ。
日本人墓地への道筋のイスタナ通り脇にあって、標識や看板も出ています。
サンダカン遺跡博物館やサバ・サンダカン・ホテルから車だと、ほんの数分。
市街地から徒歩だと裁判所脇の階段が近道のようですが、この階段では引ったくりが出没するらしいのでお勧めはしません。

で、このゲートの先が≪アグネス・キースの家≫。
あ、じゃあ直接そこでチケットを買うんだな、と思って行くと間違いだった…。^^ゞ

≪アグネス・キースの家≫の玄関先まで行って、チケットはあっちで買って来いと言われたのは、この画像の左手にある建物。
上の画像に出したゲートより手前にあるし、何の表示も出ていなかったので分からなかった…。

普通なら「ホイホイ、分かった。」で往復出来る距離でも、この日は猛暑。
ゲートの所に一言書いておいて欲しかった…。

その≪アグネス・キースの家≫のチケットは１５リンギット。
見学時間は９：００〜１７：００。金曜日と５月１日はお休みだそうです。

これが戦後復元された≪アグネス・キースの家≫。
内部の撮影禁止。

中は冷房が効いているので、一息付けますよ。
アグネス・キース一家が住んでいた当時を再現したインテリアや、キース一家の軌跡を含めた当時の歴史の展示が興味深い場所。
インテリアのうち、１階に置いてある冷蔵庫と２階の浴室の浴槽はオリジナルなのだそう。

著書『LAND BELOW THE WIND』の日本語版『風の下の国』も展示されていました。
第二次世界大戦中に子どもや夫とともに日本軍の捕虜になった際、日本兵の中にはその著書を読んでいた人もいたのだそうです。
その時の捕虜生活を綴ったのが、『THREE CAME HOME』（日本語版は『三人は帰った』）という続編。

≪アグネス・キースの家≫の庭に落ちていたプルメリアの花。

東南アジアではよく見るこの木はキョウチクトウ科プルメリア属で、熱帯アメリカが原産。
フランスの植物学者の名プルミエが由来だそう。
枝を切ると白い液が出てきますが、これは有毒らしいのでご用心。
お寺さんの周りにもよく植えられているので、英語名のTEMPLE TREEにも納得。


今回ボルネオに来る前に行ったラオスの国花はプルメリアで、ラオス国営航空のシンボルマークにもなっていたっけ。
あれ？じゃあマレーシアの国花は？と思ったら、ハイビスカスだそうです。

≪アグネス・キースの家≫を見おわったら、同じ敷地内にある≪イングリッシュ・ティー・ハウス≫で飲み物や食事休憩するのがお勧め。
上の方に出したチケット売り場の画像奥にその建物が見えています。

気持ちのいい芝生の庭や木陰に置かれたテーブル席のほか、屋内席もありました。
ここだけの利用もOKで、その場合には≪アグネス・キースの家≫のチケットは要りません。

≪アグネス・キースの家≫と同じ敷地内にある≪イングリッシュ・ティー・ハウス≫の庭。
お天気がよければ、こんなパラソルの下で飲み物や食事休憩が楽しめます。
ここだけ見ると、サンダカンの小さくてコチャコチャした町並みとは違う優雅さ。

夜もレストランとして営業しているので、夕涼みを兼ねた食事もいいと思います。
≪イングリッシュ・ティー・ハウス≫のサイトはこちら。メニューもお値段付きで載っています。http://www.englishteahouse.org/index.html　英語版

≪イングリッシュ・ティー・ハウス≫内には小さいお土産屋さんもありました。アグネス・キースの著書『LAND BELOW THE WIND』（日本語版は『風の下の国』）は置いていなくてガッカリ。
あとでコタ・キナバルに戻ってからサバ州立博物館に行ってみたところ、入り口そばにあるお土産屋さんで英語版も日本語版も売られていました。
著者の可愛いイラストも多数入って、どちらも４０リンギット。

サンダカンの町やスールー海も木立越しにちょっと見える≪イングリッシュ・ティー・ハウス≫でお昼ご飯。

最初に出て来たシーザー・サラダはおしゃれな盛り付け。
ん？　ちょっと物足りないと思ったら、軽食の積りで頼んだツナ・サンドイッチやクラブ・サンドイッチの方がボリューム満点。
２人で一つでも良かった感じ。
あ、ポテト・ウェッジもおいしいし、いい所を見つけちゃった。


≪イングリッシュ・ティー・ハウス≫でのサンドイッチ類は２０リンギット台。
もう少しきちんとした食事なら３０リンギット台から。
スコーンなどのお茶のお供もありました。

≪イングリッシュ・ティー・ハウス≫の一画から見下ろしたイスタナ通りと木立越しにちょっと見えるスールー海。
あの木立をもう少し手入れすれば、サンダカンの町ももう少しよく見えるんだろうけどな。

この画像だと、イスタナ通りを左手に行くとサンダカン日本人墓地方向。
右手に行くと、サンダカンの町方向やサンダカン空港方向へ行く道にぶつかります。

さて、お次はと言うと、セピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターに行く事にしたSUR SHANGHAIとその旦那。

コタ・キナバルへの道（２２号線）を２０ｋｍほど行くと、オランウータンの像があるサークルがあるのでそこを左折。
この画像のように、JALAN SEPILOK（セピロック通り）と書いた標識も出ています。

セピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターに行ってみると、窓口が閉まっていた。

ん？　何で？

よく見ると、オランウータンの餌付けは午前１０時と午後３時の２回。それに合わせてチケット販売・入場するようになっていて、午前は９：００〜１１：００、午後は１４：００〜１５：３０と出ていた。



午後の開園までちょっと時間があるね。
じゃ、途中にあったレインフォレスト・ディスカバリー・センターに先に行ってみようか。

レインフォレスト・ディスカバリー・センターの開園は毎日８：１５〜１６：４５。　チケット５リンギット。
場所はセピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターの手前２ｋｍくらい。サンダカンの町から車だと３０分程度。

敷地に立てられていた旗が機嫌よく翻る昼下がり。
真ん中の旗がマレーシアの国旗。
左上の黄色い月と星はイスラム教の象徴、赤と白の１４本の線はマレーシアの州とクアラルンプールを表していているのだそう。

レインフォレスト・ディスカバリー・センターは、個人で行っても敷地内の展示ホールや、気軽に歩ける程度のジャングル遊歩道を見て回れるので、お時間があればどうぞ。

その遊歩道で見たきれいなチョウ。

屋内部分にはボルネオの動植物の展示がありました。
見て疲れない展示の量と説明なのがよし。
団体用に環境教育プログラムも組んでいるようです。

レインフォレスト・ディスカバリー・センター内の敷地。

ジャングル内の遊歩道や吊り橋、ボートもあったので、自然観察を兼ねた軽い運動にもいい感じ。



あ、そろそろ時間だね、セピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターに戻ろうか。
ここから２ｋｍくらいしか離れていないから楽勝。

セピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターのロッジで名前を登録して入場料支払い。
１８歳以上３０リンギット、１８歳未満は１５リンギット。（ビデオ鑑賞も含まれます。）
カメラやビデオは別途１０リンギット。
日本語でも注意事項などの説明が出ていました。
防虫スプレーや飲食物は敷地内には持ち込めないので、無料ロッカーに預けていきましょう。
サイトはこちらhttp://sepilok.com/　英語版

ロッジ前の駐車場周辺に食堂、売店、トイレが揃っています。トイレの用事はここで済ませていくのがよし。

上の方でも言ったように、オランウータンの餌付けは午前１０時と午後３時の２回。
それに合わせてチケット販売・入場するようになっていて、午前は９：００〜１１：００、午後は１４：００〜１５：３０と出ていました。

オランウータンの餌付けをする場所までは木の板を渡して作られた遊歩道を歩いて１０分足らず。
遊歩道は平らで階段はありませんでした。

セピロック・オランウータン・リハビリテーション・センター敷地内の遊歩道脇に生えていたイモの仲間の葉っぱ。

右に写っているのはSUR SHANGHAIの旦那の手。
ずいぶんごつい手なんですが、こうやってその葉っぱと大きさを比べるとまるで小人の手のよう。

あちこちでこれと同じ葉っぱを見たけど、こんなに大きいのは初めてじゃないかな。
まだ新しい葉っぱのようで、ゴムの膜のようにピタッと吸い付く感触がちょっと気持ち悪い。

遊歩道入口から１０分も歩かないうちに着いたのは、オランウータンが見られる広場。

え？　ここで行き止まり？　もう少しジャングルの中を歩けるのかと思ってたけど。


あとはただ餌付けが始まるのを待つだけなので、お客さんたちはみんな時間を持て余した感じ。

この画像では分からないと思いますが、この広場は完璧に無風のサウナ状態。
ただ座っているだけで、汗ダクダク。
汗を拭くタオルを持って行くといいですよ。

木々に張り渡されたロープ。

あ、あれを伝わってオランウータンがやって来るんだな。

そうして待っている内に餌付けの時間。
オランウータンはそれを心得ているのか、何か合図があったのか、ジャングルの奥の方から姿を見せた。

大声は出してはいけない事になっているのでご注意を。


セピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターのオランウータンは、親を亡くしたり生き別れになった子どもたちで、自立できるように訓練をしているのだそう。

ジャングルの奥から出て来たオランウータンは、この太い木から周りの様子を一旦伺うらしくて、そこでストップ。


SUR SHANGHAIのこの時のカメラのレンズは１８〜７０ｍｍで、これが精一杯のズーム。

柵の内側にいるお客さんたちがオランウータンにカメラを向ける。

画像左上の木の幹にいるのがこの画像で分かるかな？

木の幹に半分体を隠したオランウータンにSUR SHANGHAIたちは観察されております。


チッ、今日は美人が少ねえ、と思われているかも。^^ゞ

美人が少ないせいか、すねたオランウータンは画像左端の木の陰に身を隠しております。


出て来るのをひたすら待つ西洋からのお客さんたち。
みんな同じ格好なのがおかしい。(｡･ｗ･｡) ﾌﾟﾌﾟｯ

突如、行動を開始したオランウータン。

ロープを伝わって、この画像だと右手にある餌台の方向へと移動中。

その格好もおもしろいけど、それを追ってカメラを構えるお客さんたちの動きもおもしろい。

長い手足のコミカルな格好がおもしろいオランウータン。

それを真剣に追うお客さんたち。

なんか笑える。(｡´∀｀)

さあ、餌係のおじさんが待つ餌台がもうすぐそこ。

ずいぶんすごい格好じゃない？

今日の餌はサトウキビ？

１本だけ取って、さっきの木の幹まで戻って行ったオランウータンを見守る餌係のおじさん。


ん？　見られるのは餌付けだけ？
保護されたオランウータンのリハビリについてもっと具体的に公開しているのかと思っていたので、ちょっと拍子抜け。
餌付けする事がリハビリになるのかな。
そのあたりが気になったSUR SHANGHAI。

あとで知ったのですが、一般に公開されているリハビリは食物を補うためのこの餌付けだけ。
無事にリハビリの全過程を終えたオランウータンたちは、このセピロック・オランウータン・リハビリテーション・センターに隣接するカビリ・セピロック森林保護区へと帰っていくんだそうです。

餌台からサトウキビらしい餌をもらって来たオランウータン。

またあの大きい木の幹に身を寄せて一心不乱に食事中。
その一人（？）で食事をする後姿が侘しげに見えるのは人間と同じだね。

この後も何度か餌台との間を行き来したオランウータン。
もうすぐまた自然のジャングルの中に帰れるといいね。


この後、SUR SHANGHAIたちは戦争記念公園とサム・シン・クン寺のあたりへと向かいます。