「京都人の密かな愉しみ」ロケ地巡り．２１　祇園さんの来はる夏　宵山・昼

2024/07/16 - 2024/07/16

　6年に渡って続けている「京都人の密かな愉しみ　ロケ地巡り」シリーズも、残りの目玉は祇園祭と五山の送り火くらい。いずれも真夏の伝統行事だが、暑さに弱い万歩計は京都の蒸し暑さをに尻込みして、これらの祭りを直接見たことはなかった。しかしこの夏の2大イベントを見ないことには本シリーズは完結しない。

　今日は祇園祭の宵山。高校時代のクラス仲間にお付き合い願い、宵山見物に行った。祇園祭は７月の１カ月にわたって行われ、「京都人の密かな愉しみ　Blue修行中　祇園さんの来はる夏」で詳しく取り上げられている。同シリーズの中でも秀作である。
　宵山の旅行記は昼と夜の２部構成とした。昼の部では八坂神社から山鉾巡行の通る四条通、その後先祭りの山鉾１２基を一人でじっくり見物した。

エリア 二条・烏丸・河原町(京都)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• グルメ: 4.0

• 同行者: 友人
• 交通手段: 私鉄 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

　11:50　祇園四条駅前の京都南座。今日は高校時代のクラス仲間と祇園祭の宵山見物です。

京都四條 南座 (阿国歌舞伎発祥の地) 名所・史跡

　集合は15:00ですが万歩計は人が少ないうちに来て、下見を兼ねた4トラ旅行記のための写真撮影へ。

　最初に巡行を明日に控えた八坂神社にお参りに行きます。

　祇園祭は1100年続く八坂神社の祭礼。「京都人の密かな愉しみ　Blue修行中　祇園さんの来はる夏」では、綾笠鉾の理事をしている甚の父親が、ヒースロー先生に祇園祭の説明をする場面があります。
　

八坂神社 寺・神社・教会

　境内は観光客で大賑わい

　「もともと祇園祭は八坂神社の御祭神素戔嗚尊、その奥さんの櫛稲田姫、御子の八柱御子神の魂を3つの神輿に移して、氏子の暮す町中を通って厄を払うてもらうという神事なんですわ。」

八坂神社 寺・神社・教会

　舞殿に鎮座する三体の神輿

「そやけど人間界は何かと汚れている。先ずは神さんの通らはる道を清めんとあかんやろ、云うことで氏子の町衆が綺麗に飾り立てた山や鉾を先に巡行させて、道中を清める。しかる後、３つのお神輿が同じ道筋を巡る。」

　「キラキラしたもんは邪気を払うて昔の人は考えたんですなー。豪華な飾りつけで練り歩く巡行は、真打ち登場のお膳立てですゎ。」

　八坂神社は「縁結び」にもご利益あり。

　八坂神社の道向かいに祇園会館。ここで毎年11月に祇園東の芸舞妓衆による「祇園をどり」が行われるます

よしもと祇園花月 名所・史跡

　花街祇園東はまだ歩いてなかったので見て行きます。東大路通りから末吉町通りに入ると、昭和に建てられた雑多なビルが並んでいます。

　路地に入ると花街らしい簾を掛けた町家が現れました

　かっては祇園町全体が一つの茶屋町でしたが、明治14年に祇園甲部と祇園東の2つに区分され、この一帯が祇園東となりました。

　定紋は祇園甲部と同じ八個のつなぎ団子。祇園甲部に比べて狭く観光客の姿はありません

　祇園東を出ていよいよ山鉾見物へ。四条大橋から鴨川を見ると納涼床が出ています。

　明日の山鉾巡行で「辻回し」が行われる四条河原町の交差点。
　大きな車輪の下に青竹を敷き水で滑りを良くしたあと、音頭取りの「ヨイ、ヨイ、ヨイトセ、ヨイトセー！」の掛け声に合わせて勢いよく引綱を引っ張る場面は、TVでもお馴染みです。

　四条通りの高島屋近くにある八坂神社御旅所。
　今夜はここで明日の巡行の晴天を祈願する日和神楽が奉納されます。巡行が終わった明晩には、3基の神輿が白装束の氏子たちの「ホイット、ホイット」の掛け声で担がれて八坂神社を出て、氏子の町内を巡って厄を払ったあとここでで鎮座します。

八坂神社御旅所 名所・史跡

　神輿は氏子たちの暮す町中でしばらく過ごし、後祭りの終わる24日の夕刻、八坂神社に戻ります。

　巡行のもう一つの目玉は四条通り麩屋町交差点で行われる「注連縄切り」

　注連縄を張る斎竹（いみだけ）が立ってます。山鉾巡行の先頭を行く長刀鉾には神の使いである生稚児が乗っています。ここに来ると稚児は疫病の退散を祈願する「太平の舞」を披露し、その後太刀を使って注連縄を切ります。

　昨夜一緒に宵山に行ったK君が、翌日の山鉾巡行の写真を送ってくれました。これは函谷鉾

　殿（しんがり）を飾る船鉾

　前置きが長くなりましたが、ここから山鉾見物です。祇園祭の山鉾は全部で34、その中の先祭が23。これから先祭りの山鉾を時間のかぎり見て回ります。

　東洞院通りを南に歩くと保昌山が見えてきました。

　保昌山は「京都人…」でキーになる山鉾のひとつ
　宵山デートの相手を見付けたい釉子は、保昌山の御利益に頼ろうとします。

　保昌山のご神体は会所の二階に見える平井保昌というお公家さん。保昌が和泉式部のために紫宸殿の紅梅を手折ってきた、という故事に因んでいます。

　このため粽のご利益は「縁結び」
　葉菜は釉子のためにこの粽を買いました。しかし釉子は「粽に頼らんでもいけそう」と言い、結局葉菜が持つことになりました。このご利益のためか、後に葉菜は鋭二と結ばれました。

　保昌山の懸装品

　高辻通りを西へ歩く途中に歴史ありそうな建物。廃校になった校舎で現在「市民大学院」に使われれいます。

旧成徳中学校 名所・史跡

　岩戸山。ご神体は天照大神、御利益は「開運」。

　応仁の乱の前からある古い山で、「洛中洛外図屏風」に描かれてい るそうです。

　500円払って山の上へ。

　新町通りには7つの山や鉾が建ち、岩戸山は最も南。すぐ前に見えるのは船鉾。

　天井に吉兆を表す五色の雲

　エキゾチックな懸装品

　船鉾。ご神体は神功皇后。
　妊娠中にもかかわらず男装して出征し、凱旋後に無事出産したことから、御利益は安産。

　船の鉾は２基あり、この船鉾は「出陣の鉾」として前祭の殿を飾ります。もう１基は平成24年に140年ぶりに巡行に復帰した大船鉾。「凱旋の鉾」として後祭の殿を飾ります。

　このことも甚の父親が説明していました。

　明日の巡行を控え懸装品が掛けられています。

　会所に神功皇后を扶けた3人。副将、舵取り、水先案内人。

　ご神体の神功皇后は巡行まで幕の奥にお隠れ。

　ここでちょっと寄り道。

　立ち寄ったのは菅大臣神社。

菅大臣神社 寺・神社・教会

　宵山の夜、釉子は心を寄せる窯の先輩職人甲田くんに妻子があることを知りました。釉子は動転して宵山の人混みをかき分けて、ここまで走ってきました。

　そしてこの場所で祇園祭の神様に出会います。そのくだりは夜の部で。

　この辺りの路地は京都らしい雰囲気があります。

　油小路通りに出ると太子山。
ご神体は聖徳太子、ご利益は知恵・学問成就・身代わり。「身代わり」って？何？

　太子山の会所はNHK「新日本風土記」でも紹介された重要文化財の町家。
　鋭二は一緒に登山中に事故死したタエさんの養子の供養のために、太子山の粽を作っていました。

　ご神体の聖徳太子と粽

　鋭二は今年から太子山を担ぎます。

　狭い町内毎に山鉾があります。最近は山鉾町に住む人が減り、保存会の役員さんは一般の人に後援会に入ってもらうなど、後継者確保が頭痛の種とか。

　油天神山。ご神体は菅原道真、ご利益は学業成就・厄除け。

　油天神山

　町内にある天神さんの小さな祠

　木賊山。ご神体は世阿弥の謡曲「木賊」に登場する翁。

　木賊を刈る翁が生き別れになった子と再会するということで、ご利益は迷子防止・再会。

　木賊山の懸装品

　芦刈山。ご神体は芦を刈る男。

　山のてっぺんに松の木が飾られています。

　「木賊」と同じくこちらも世阿弥の謡曲になっています。妻と離ればなれになった男が3年ぶりに妻と再会を果たすということで、ご利益は夫婦和合・縁結び。

　芦刈山の懸装品

　芦刈山に伝わる安土桃山時代の小袖が2年前に復元新調されました。復元の過程がTVで紹介されていました。

　この狭い地域には町家が多く、そこに太子山、油天神山、木賊山、芦刈山と4基の山が建ち、落ち着いた雰囲気がありました。

　釉子が宵々山デートで甲田くんと待ち合わせ、宵山の夜に甲田くんが妻子と会うのを見て動転するシーンも、この辺りで撮影されました。

　次は綾小路通りを東に歩き伯牙山へ。

　伯牙山。ご神体は中国の伯牙、ご利益は厄除け・疫病除け。

　伯牙は中国の周時代の琴の名人。手に持っているのは斧。

　伯牙が友人鍾子期の死を聞いて、その琴の絃を断ったという故事をあらわしています。

　スタッフのTシャツの背中は琴柱のデザイン。

　伯牙山の懸装品。狭い町内毎に、これだけ豪華な懸装品を持っているのは驚きです。

　伯牙山は重要文化財の杉本家住宅を会所に使っています。ここでは宵山の期間、家宝の屏風や道具を飾る「屏風祭」が行われていました。

杉本家住宅 名所・史跡

　行く手に見えてきたのは綾笠鉾。

　古い鉾の形態である傘鉾で、ご利益は安産・縁結び。巡行では鉾の前で「棒振り踊り」が踊られるのが特徴。

　甚は鉾の伝統を継承するため5才で囃子方に入門し、今や自他ともに認める笛、鉦、太鼓をこなすオールラウンドプレーヤー。そんな甚が急に「棒振り踊り」の太鼓方の大役を任命され、練習に四苦八苦。

　綾笠鉾の会所は町内の氏神である大原神社。吉符入りで理事である甚の父親が、神前で柏手を打つ場面がありました。

　ここから少しマニアックな路地へ。綾小路通りから四条通に抜ける「膏薬辻子」でNHK番組で知りました。

膏薬辻子 名所・史跡

　賑やかな四条通りから少し入った場所だが、信じられない静かさ

　石畳の両側には明治から大正の町屋が並び、それぞれ民家や食べ物屋さんになっています。

　町内で独自で様々なルールを設け、美化運動や景観の維持に努めているそうです。

　膏薬辻子から賑やかな四条通りに出ると郭巨山

　郭巨山のご神体は後漢の人郭巨、ご利益は開運・金運。

　郭巨の手には鍬、子供との間に黄金の釜。
　郭巨は貧困のため老母と３歳になる子を養えなくなり、悩んだ末に妻と子を捨てる決心をしました。子を埋める穴を掘ろうと鍬を振り下ろした時地中から黄金の釜が出て来て、老母・妻子とも養えた、という故事に因んでいます。

　郭巨山の懸装品

　四条笠鉾。綾笠鉾と同じく古い鉾の形態である傘鉾。ご利益は招福・厄除け。

　新町通りに入ると放下鉾。ご利益は厄除け・疫病除け。

　放下鉾は「京都人…」のキーになる鉾。幸太郎はここの笛方を務めています。

　会所は江戸時代末期に建てられた町家。2階に上がることが出来ました。

　そこに見たことのあるイケメンの青年が。聞いたらやはりTVにアップで登場した太鼓方の人でした。ブログにアップすることを了解してもらったので一枚。

　左端には「若林ケント幸太郎」の名札も。

　放下鉾の懸装品

　放下鉾の懸装品

　会所と裏の土蔵は橋で繫がっています。この橋は祇園祭の時だけ架けられ、土蔵から懸装品を出す場面がTVで放送されました。

　鉾に上るのは会所の２階から。

　鉾の入口から見た新町通り。

　14:40　そろそろ時間で集合場所へ。新町通りの放下鉾の北には後祭りの山鉾町がありますが、まだ山は建っていません。

　15:00　Beer Thirty 京都河原町店で会食。メンバーは何時ものTさん、Sさんに加えて、石川県からK君夫妻も初参加。K君とは高校卒業以来55年ぶりの再会でした。

Beer Thirty 京都河原町店 グルメ・レストラン

この旅行記へのコメント （2）

• ポテのお散歩さん 2025/07/15 21:08:58

  ちまき

  万歩計さん　こんばんは。
  
  今夜は宵々山です。
  いつも長刀鉾の『ちまき』を玄関に飾るのですが
  今年は13日の朝8時前に 今年の『ちまき』を買いに行ったのに
  すでに長蛇の列で諦めました。
  四条烏丸から烏丸御池まで並んでました。
  最後尾を見ていないので、どこまで並んでいたのかわかりません(T_T)
  毎年同じことを言っていますが、こんな行列は初めてです。
  
  一度、別の山の『ちまき』を買ったら、病気になってしまいました。
  たまたまなんだと思うのですが、それから やっぱり長刀鉾の『ちまき』に
  守って頂いていました。
  
  仕方が無いので、長刀鉾の 別のお守りを買って家に飾っています。
  これから『ちまき』は、あまり観光客が買わなくて 山や鉾の存続の予算に
  頭を抱えておられる会所のものを買おうと思います。
  長刀鉾は人気があるので、存続については大丈夫ですから(^-^;
  
  旧成徳中学校 の桜は、あの辺りでは一番初めに桜の木が開花します(*^-^*)
  
  　　ポテ
  

  万歩計さん からの返信 2025/07/16 09:47:12

  Re: ちまき

  　ポテさん、おはようございます。
  
  　長刀鉾の『ちまき』を買うのに、四条烏丸から烏丸御池まで長蛇の列！イヤー驚きですね。早速長刀鉾保存会のHPを見たら町内会員名簿に都銀の支店を始め名だたる企業名が並んでいました。数ある山鉾の中でも豊かさではトップなんでしょうね。ましてや巡行では先頭の「籤とらず」で、注連縄切りの大役まであるので絶対存続するはずです。
  　一方、太子山や芦刈山がある地域は山鉾町の規模が小さく、粽が売れなければきっと大変なんでしょう。まぁ、その辺は京都市と山鉾町連合会が上手く仕切っているのでしょうが。
  
  　　万歩計