上野の東博に入り浸る、おカネの話　＠勝手にフェスティバル14

2025/08/26 - 2025/08/28

貧乏人の悲しさ、お金というと飛びつきます。
富本銭です。
私は学校で、日本最初の貨幣は「和同開珎」と習いましたが、最近の研究では「富本銭」が最初ではないかと言われています。
ただし実際に流通したかどうかは疑問だそうです。

一書に曰く、
カネに恨みは数々ござる。ご～ん
ということで、上野のカネでございます。
お金に思うところのない人は、子供以外いますかね。
お金持ちはお金持ちなりに、貧乏人は貧乏人なりに、思うところのあるものでございますが、さて、日本人が、先祖代々苦労してきた、その源が、これですわ！
By妻

同じ展示室に慶長小判もありました。
江戸時代と飛鳥時代を簡単に行ったり来たり、タイムトラベルを楽しんできました。

投稿日：2025/11/12

エリア 上野・御徒町(東京)

• 旅行の満足度: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 交通手段: JRローカル
• 旅行の手配内容: 個別手配

日本書紀天武天皇12年（683年）4月15日
★詔して、「今後は必ず銅銭を用いよ。銀銭を用いてはならぬ」といわれた。★
（全現代語訳日本書紀下P294／宇治谷孟訳／2018年／講談社）

銅銭というのが富本銭。
ただしこれだと、富本銭以前に銀銭が使われていたことになります。無文銀銭といわれます。これは鋳造ではなく、政府が発行したものではないので、富本銭が最初なのだそうです。

これが無文銀銭。

拡大してみます。確かに文字や文様はないみたいです。
銀のかけらを型に入れて、むりやり叩きつぶしたような感じ。
銀なので、銅の富本銭より輝いています。

富本銭はいっぱい発掘されています。状態のいいものは少ないそうです。そのうち3枚がこれ。さすが東博

中央の1枚です。
四角い穴の上に「富」下に「夲」と鋳られています。
「夲」は「本」の異体字だそうです。
「夲」ははっきり分かります

左の富本銭。
左右のテンテンは五行思想の七曜星ですが、左のテンテンは七つはっきり分かります。

富本銭が実際に流通したかは所説あるそうです。

解説を書き起こします。

★
古代の貨幣
日本で最初に作られた貨幣は富本銭や無文銀銭と考えられています。現在これらは貨幣として使われたとする説とまじない用に作られたとする説があります。
今のところ本格的な流通用の貨幣は708（和銅元）年に作られた和同開珎（わどうかいちん）と考えられています。初期の貨幣は銅銭のほかに、ごく僅かですが金銭や銀銭が作られることもあったようです。その後、奈良時代から平安時代にかけて12種類の貨幣（皇朝十二銭）が作られましたが、律令国家の衰退とともに価値が下がり、中国から輸入された銅銭が使われるようになると、ついには作られなくなりました。
★

和同開珎も2枚展示されていました。

一書に曰く、
富本銭は貨幣というには雑で、まじない説もむべなるかな。
それにくらべると和同開珎はしっかりした出来です。
私たちは学校で和同開珎を「わどうかいほう」と習いましたが、いつからか「かいちん」と読まれるようになりました。
学問の進歩というのでしょうか、
あ～あれから、いろいろ解明されたのねえ。
とは思いますが、なにか腑に落ちない気持ちです。
そう言えば、歯医者さんに行きますと、歯の磨き方を指導されますが、歯は横に磨くのが今流らしいですね。
小学校で習ったように、一生懸命縦に磨いてウン十年。
何やっていたんだ、私。であります。
By妻

これは奈良県明日香村、万葉文化館中庭の飛鳥工房跡のレプリカです。撮影2020年6月。
遺跡はこの地下数メートルに埋め戻されています。
ここのどこかで富本銭が鋳造されました。鋳型や出来損ないの富本銭が発掘されました。

富本銭の時代は戦後でした。壬申の乱（672年）の戦後です。
京都で前の戦争というと応仁の乱だそうです。明日香村では壬申の乱。
やっと天武朝が安定したころです。
8年に吉野の盟約がありました。
10年には草壁皇子が皇太子になりました。
11年3月には後の藤原京建設計画が始まりました。
12年2月に大津の皇子が初めて朝廷に出仕しました。
天武天皇が病気になるのは14年です。大津皇子の変まであと1年ありません。

大津皇子は富本銭や無文銀銭を使ったか。
買い物を自分ですることはない。
奥さんの山辺皇女だって、自分でだんなの好きなお酒を買いに行ったりはしない。
結論、たぶん二人はおぜぜを見たこともない。

一書に曰く、
大津皇子は、もちろん使いました！
買い物とか自分でする必要はなかったけれど、絶対につかいました。
だって、面白いじゃない。
わーいわーいって、使ったに違いない。
消費税導入したとき、竹下首相がデパ地下で、意味なくなんか買ってたもんね。
同じ同じ。
偉そうに、生活に苦労したこともないくせに、
これからは、生活が便利になる。庶民も文化的な生活を過ごせるぞ。
とか言ったんだぜ。きっと。
By妻

時代がぐっと下がって江戸時代、慶長小判。
1601年より90年くらい発行されたそうです。
正直言って、富本銭はあまりほしくはないけど、小判はほしい。

こんなふうに立体的に展示されていました。
縦75㎜、横40㎜

薄いですよ。1㎜くらいじゃないかな。
重さは17.7ｇが標準だそうです。

触ってみたいでしょう・・・
触れるんですよ、レプリカですが。

表。

裏。
ぽっちゃりしたお手てはBy妻。

寸法、重量はオリジナルに同じだそうです。
500円玉が7ｇですから、小判2枚で500円玉7枚くらい。
500円玉7枚、小判2枚くらいなら、財布にいれて普通にもてる重さです。
ただし小判1枚つまり1両の価値は、現在のお金に換算して16万円くらいです。
キャッシュレスのこのご時世16万円を持ち歩く人はあまりいませんが、当時も同じで、日常の買い物は銅銭を使ったそうです。

一書に曰く、
金です。金です。ゴールドです。
黄金の国ジパングです。
秀吉は、銀だの金だのを、諸大名に撒き散らかしたという話がありますが、あの時代、鉱脈を見つける、そういうのはなんていうのかわかりませんが、探査する能力が、飛躍的に向上したのでしょうか。
それとも、地下を掘るということに、初めて目覚めたのでしょうか。
と、申しますのは、鉄砲伝来の種子島は、砂鉄が、地面に現れているそうです。
現在でも、子供が砂遊びのように掘っただけで、砂鉄が出てくるそうですよ。
ということは、金だって、銀だって、ほとんど地表みたいなところにあるものを使っていたのではないでしょうかね。
そういえば、砂金って、川で砂さらってますよね。西部劇の知識ですが。
いくつになっても、知らないことばかりです。

で、ここでは、慶長小判を触らせてくれるのですよ。レプリカですが。
触りまくっちゃったわよ。
結構重かったですよ。
千両箱を担いで逃げる鼠小僧は、超人的な力持ち。
By妻

これが銅銭、寛永通宝。
銭形平次が投げる銭はこれです。

96枚ひもで通してあります。
銭形平次が帯に挟んでいるのはこれです。さっと紐を切って投げます。あのあとどうするんだろう。のこり95枚は散らばります。

なぜかこれを100文とみなすのです。100文の品物を買うときに96枚の寛永通宝で払うということらしい。

手で持つとずっしり重い。

石川英輔によると、19世紀初めの江戸で一人前の大工の年収は26両2分。
月収は月2両ちょっと。32万円くらい。
ただし1両につき銅銭583枚でもらいました。江戸の庶民には、小判はあまり直接生活でお目にかかるモノではなかったようです。

所得税その他の税金はなし。
中流の生活ができました。
健康保険はありませんから、職人は栄養のあるものを食べて健康の維持に努めました。元気ならいくらでも稼げる。
「宵越しの金はもたない」という江戸っ子の気質は、このあたりにあるそうです。
ライフラインのうち、ガス電機代は当然なし。長屋暮らしなら水道代は大家持ちです。
映画に出てくる長屋の井戸は、地下に張り巡らされた木樋で配水された水を貯めた井戸です。
当時の江戸には同時代のパリやロンドンをしのぐ立派な公営水道がありました。明治新政府は、江戸時代の水道のインフラと組織をそのまま引き継ぎました。
（以上石川英輔：大江戸生活事情Ｐ38、ほか大江戸○○シリーズより/講談社文庫）

一書に曰く、
あの頃のパリ、ロンドンは、すごかったのですよ。
お便所がなくて、おまるですまし、それを、窓から道路に投げ捨てたっていうから恐ろしい。
今でも、パリの古い道路が中央がくぼんでいるのは、そういう汚物が集まるように作られたからですってよ。
そういう歴史のせいか、パリはトイレが少ない。いえ、最近は変わったと思いますが、40年前に、母が遊びに来たときは、デパートにトイレがありませんでした。
困って、従業員用のトイレを無理やりに借りました。
フランス人の膀胱は、鍛えてあるのです。
By妻

銅鐸
▲▼

相変わらずカネのお話です。カネはカネでも銅鐸。
レプリカです。
触るどころではなく、叩いていいのですよ。
表側。

裏側です。

ゴーンよりもカーンと高い音でした。
叩くものをおいていないので、爪ではじいて音をだしました。
痛い。

これが叩いていい銅鐸のオリジナルです。こっちは触っちゃダメ。

続日本紀元明天皇和銅6年（713年）7月6日、銅鐸が献上されました。
★高さ三尺口径一尺で、その造りは普通と異なっており、音色は律呂（音のきまり）にかなっている。そこで担当の官司（雅楽寮）に詔して収蔵させた。★
（続日本紀上P143/宇治谷孟訳注/講談社学術文庫）

銅鐸は楽器か祭祀の道具か、今でも議論されています。
8世紀初めでは、銅鐸は楽器だと思われていたのです。2世紀くらいまで作られていました。当時だと、似たようなものがまだ楽器として使われていたんじゃないですかね。

本館「1　日本美術のあけぼの」の入り口に展示されていた銅鐸です。
3尺（約1m）というとこれくらいです。
ずいぶん大きい。細長い釣鐘みたい。

こんなふうにいろいろな大きさの銅鐸ぶら下げて、演奏したんじゃないかと思いました。

一書に曰く、
銅鐸、今では、楽器で祭器ということに決まったようですが、これも、なんだかわからない祭器と言われて、海部族が航海するとき、星を見定めるための道具だという説もありました。
なんだかロマンチックで、好きでしたね。この説。

人間が使った道具なのだから、わかりそうなものなのに、生活が全然違うのだから、わからないのが当然ですわね。
羽釜や洗濯板なんて、わたしのひ孫の時代には、
なぜ、鍋にスカートがついているのか
とか言って、謎の物体になっているのかもしれません。

銅鐸は、叩いていいよって書いてあるので、もちろん叩いてみました。
美しい澄んだ音でした。
銅鐸に大小があるのは、合奏したのではないかと思いました。

お寺の鐘だって、夕暮れの静かな村に、あちらこちらのお寺からの音が、追いかけたり、重なったりしながら響くのは、例えようもない美しいシンフォニーです。

古代人が、その楽しみを知らなかったとは、思えません。
たくさんの銅鐸を並べて、楽人は、どんな曲を奏でたのでしょう。
それに、楽しんだのは、神様だけではなかったことでしょう。

今回の東博は、触ったり、叩いたり、体感できて、楽しかったです。
何しろ、私の中身は、小学生並みですからね。
なんで？なんで？の幼児も楽しめる東博でした。
By妻

お寺の鐘
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夕方に東博を出ました。
だいぶお日様が斜めになって、日陰を選ぶのに苦労しません。
おりから上野の山のお寺から「ご～～～ん」とカネの音。
カラスと一緒にホテルに帰りました。