2016/07/07 - 2016/07/07
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deracineさん
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今回のバルセロナ旅行の大きな目的の一つはモデルニスモ建築の見学です
一般にはサグラダ・ファミリアのガウディが有名ですがTV番組で紹介されたドメネク・イ・モンタネールのカタルーニャ音楽堂に衝撃を受けた私は彼のもう一つの代表作であるサン・パウ病院*も是非見たいと思い見学しました
*欧文の資料では "The Hospital de la Santa Creu i Sant Pau" との表記が一般に使われていますが、ここでは単にサン・パウ病院の名前を使います
また蛇足ですがサン・パウとは英語では St. Paul (聖パウロ)のことです
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サン・パウ病院は多分「世界で一番美しい病院」です
設計者モンタネールは効率を求めるだけでなく「芸術が患者を癒す」病院を目指したのです
見学方法には
自由見学・・・ガイドはつかないが自分の好きな時間に見学できる
ガイド付きツアー・・・時間は決まっているがガイド付き(言語はカタロニア語、フランス語、スペイン語、英語から選択)
の二通りのツアーがあります
料金は前者が10ユーロ(65歳以上シニアは7ユーロ)、後者は16ユーロ(シニアは11.2ユーロ)
なおガイド付きは自由見学では見られない場所も見られるらしい(HPの説明)
またシニア割りの場合大人料金とほぼ同じということともあり、英語のガイドツアーを利用しました
ガイドの英語は分かり易いもので、ほとんどの内容は理解できましたがメモも取っていなかったため大半忘れてしまいました
そのためこの記事はもらったパンフレットやネットで見つけた資料を参考に書きました(日本語ではなかなか詳しいものは少なく英語で紹介されたものが役立ちました)
見学後の印象は結果は表記タイトルの通りで「こんな病院見たことない、是非入院したい」という印象でした
このような芸術性豊かな病院を造ったカタロニアの心と度量の広さにただただ敬服する次第です
なお同病院は同じくモンタネールの設計したカタロニア音楽堂とともに1997年ユネスコの世界遺産に登録されています
-
サンパウ病院の見学方法については以下の二通りあり、英語のHPより英語ガイド付きツアーを予約した
予約すると返信メールにpdfが添付されており、これを印刷したのが上の写真の入場券
1)ガイド付きツアー・・・見学日時を事前指定する、自由見学では見られない管理棟内の特別区域を案内してくれる(HPの説明文) 大人16ユーロ、シニア(65歳以上)11.2ユーロ
2)自由見学・・・・・時間の指定はなく自分で自由に見て回る。 大人 10ユーロ、シニア 7ユーロ -
現地までは二階建てオープンバス・東ルートを利用したが他に降りる客がおらず、1階にいるスタッフに下車する旨を告げなかったため乗り過ごしてしまった
写真はバスの2階席から見たサンパウ病院
一見教会か?と見紛うような外観だ -
オープンバスは一方通行なので一駅分歩いて戻るしかない(これがオープンバスの不便なところです)
道に迷わないように持参したスマホに道案内させた -
途中、名前は知らないがアカシアに似た葉をつけた街路樹が一杯黄色い花を咲かせていた
暑い日ではあったがバルセロナも街路樹が大きく多いので緑陰に入ると涼しかった -
やっとサンパウ病院に着いた
改めて前に立つと堂々たる外観だ
観光客を乗せたタクシーが時々往来する
手前の噴水では暑い日だったのでハトも水辺で群れをなして戯れていた -
南北に走るガウディ通りを挟んで反対側には対峙するようにサグラダ・ファミリアが見えた
これを設計したアントニオ・ガウディは一時期サンパウ病院の設計者ドメネク・イ・モンタネールの生徒だったが今ではすっかり生徒の方が有名になったようだ -
ガウディ通りに面した大きな建物は管理棟で、鳥が大きな羽根を広げたように左右に建物が伸びている
その右翼(=東側)に南側に入場口がある -
左翼の端には喫茶・軽食施設があり、見学者も利用できる
-
見学者入り口上部にあるモザイクタイル画
管理棟のファサードは祭壇の一つとして考えられ多くの同様なセラミックタイル画が描かれている -
中に入り予約時送られてきたメールに添付された文書を印刷したものを提示すると問題なく入れた
持ち物のセキュリティ・チェックがあった
パスすると胸に貼る見学者シールをくれる
なおこの奥にはショップがあった -
入場時説明パンフレットが配布される(A5版、全31ページ、カラー)
日本語も選べるがフォントなど体裁が劣るので英語版をいただいた
(両方欲しいと言ったらダメと言われた)
上の写真は本の2-3ページの内容で、黄線で囲まれた3棟(=管理棟、聖ラファエル棟、聖ジョルディ棟)のみ限定で見学できる
なお以下の本記事も同資料に基づいて作成しました -
入り口を入ってすぐのホールでサン・パウ病院の紹介ビデオを上映していた
確か多言語(カタロニア語、英語ほか)で流していた
<サンパウ病院の歴史>
サンパウ病院の前身はバルセロナのラバール地区にあった古い病院にさかのぼる
ペストや飢饉に苦しめられたため昔からあった古い6つの病院を統合し1401年に "The Hosipital de la Santa Creu"(聖十字架病院) として創立、1930年代まで欧州でも有数の病院として役立った
中世では当たり前のことだが同病院は患者に飲食を与え、苦痛の緩和や感染予防が主な役割だった。病人や精神異常者だけでなく孤児の世話、教育まで面倒を見た
同病院は教育及び科学の中心地ともなり、1760年には王立外科大学が設立された
1801年にはカタロニア医学校が創立され多くのカタロニア医師がここで技術を磨いた
そして1906年ノーベル医学賞を授与された Ramon y Cajel が受賞対象になったニューロンの研究を行ったのも同校の研究室だった
しかしバルセロナの都市化進展とともに手狭になったので1930年閉鎖されることになった
最後の患者の一人にあのアントニオ・ガウディがいた。電車に接触し重傷を負い1926年に亡くなった
おりしも Pau Gil i Serra というのカタロニアの銀行家が1896年パリで亡くなった
独身で子供もいなかった彼は銀行業で得た莫大な遺産の一部を使って新病院を建設せよとの遺言を残してパリで亡くなった
バルセロナ市はサグラダ・ファミリア近くの空き地に新病院を建設、この新病院には彼の名前も追加され "Hospital de la Santa Creu i san Pau”と呼ばれるようになった
1902年に建設開始、1930年に完成した
21世紀になると老朽化対策及び用地拡張のため再度更新の必要性が高まり隣接する北東地区に移転中。このおかげで従来の建物の修復及び改築が可能になった
従来地区(=Art nouveau Site アール・ヌーボー・サイト)はいろいろの国際機関や医療団体の本部として利用するため現在も改造中である -
病院の模型も展示されていた
サン・パウ病院は1902〜1930年にかけてカタロニアのモデルニスム建築のシンボルとして「街の中にある街」として建設された
設計はドメネク・イ・モンタネールによるもので、1997年UNESCOにより同じく彼の設計したカタロニア音楽堂とともに世界遺産に認定されている -
新病院は建築家 Domenech i Montaner(ドミニク・イ・モンタネール)に設計が任され1902年に建設開始
当初の彼の計画では145,000平米の敷地に48棟の医療施設が配置し、患者を保護するべく地下通路でつなげる予定だった
1930年、彼の息子である Pere Domenech i Roure によって完成した
28年もかかった理由は財源の工面に苦労したため
銀行家の遺産すべてを使い果たしても足りず最終的には患者や家族、支援者などから寄付金を募った
最終的に48棟から27棟に削減され、そのうち16棟がモデルニスモ建築を採用した
更にそのうちの12棟はモンタネール自身が、そして残りの4棟は彼の息子が完成させた
敷地内には南北500mに及ぶ幅50mの大通りを、東西には幅30m×300mの通路を配してラテン十字状にし、その交点には教会を建てた
また十字の南端には管理棟を、そして教会と管理棟の中間に手術棟を配した
このように道路を広くとることにより各病棟を隔離、建物の配置は左右対象を基本コンセプトに設計した
また傾斜地に建設するので病棟の高さを揃えるため特別の工夫が施された
ドメネクは設計するにあたり日光と新鮮な空気が患者及び医師の双方にとって最重要と考えた
そのため病棟の入口を南北方向とし、海からの風で病院を換気することにより病気予防に役立てた
患者一人当たり145平米(庭地も含む)のスペースが割り当てられこれは欧州で最良の病院さえも凌駕していた
モンタネールは1病棟あたり二つの庭園を配した
彼は庭園の緑が空気を浄化するだけでなく患者が健康になるためにも快適な環境が必要と考えた -
ガイドは若いスペイン人の男性だった
このガイド付きツアーはあまり人気が無いようで、ツアー客は私以外にはイタリア人家族(夫婦及び子供二人)のみ
このイタリア人がイタリア語でのガイドをリクエストしたためガイドは英語及びイタリア語の両方でしゃべり忙しそうだった
私が少しかじった限りの知識ではイタリア語とカタロニア語とは文法も語彙も似ているので少し勉強すればカタロニア語などすぐ理解できるのに、、、と思った
少なくとも我々がカタロニア語を聞き取るよりはるかに容易なことは間違いない
写真は管理棟から病棟に通じる地下通路
各病棟をつなげるこのような地下通路は総延長が2kmもあり、天気に左右されずに病棟間の迅速な物資、エネルギー輸送及び人の往来を可能にしている
また通路の壁は白いセラミックタイルで覆われており、清掃・殺菌を容易にするとともに外部から差し込む光に神秘的なオーラを与えている -
管理棟裏にあった病棟の配置図
患者を男女別に仕切り敷地の左半分に女性、右半分に男性患者専用の病棟を建設しそれぞれに女性の聖人及び男性聖人の名前が付けられている -
管理棟からの地下通路を上がると手術棟前に出る
その周りはとても一般的なイメージの「病院」からはほど遠い、華麗な装飾を持つ建物群が広がっている
設計者モンタネールは効率的な病院を目指すだけでなく「心と魂を癒すことのできる」病院を心がけたという
写真の建物は病院群の中央に位置する手術棟 -
手術等のアップ写真
このファサードは教会の祭壇の背後の装飾に似ていて、入り口上には二人の天使が見守っている
二頭の翼をもった竜が一階バルコニーを警護し、三階にはいろいろな天使が集まっている
また二階の窓の上にはサンパウ病院の建設資金を提供した Pau Gil のイニシアルがタイルで描かれている -
各病棟の隅にはドーム屋根と大きな窓を持つ"Day Room"(談話室)がある
ここでは寝たきりではない患者が家族とともに寛げるようになっている -
ドーム屋根のアップ
右横の塔は給水塔 -
各病棟に二つずつ配されている庭園には丁度ラベンダーが紫色の花を咲かせていた
きっとラベンダーの香りが患者の目を楽しませ、鎮静効果をもたらしただろう -
病棟の正面入り口の上には聖人の像が飾られている
女性患者専用の病棟には女性の聖人が、男性患者病棟には男性の聖人像が患者を見守っている
写真は女性用メルセ病棟の例で、カタロニアの守護聖女メルセの像が破風に置かれている -
これは聖ラファエル病棟
男性専用の病棟で入口上には翼の付いた聖人ラファエルの像があった
ラファエルとはキリスト教ではミカエル、ガブリエルと共に三人の大天使の一人と考えられている
この病棟のみ中の見学が許されていてガイドとともに入った -
同病棟は1914〜1918年、手術病棟として建設されたもので建設当初の様子がそのまま残されている
なおガイドの話によれば患者が安らげるようにタイルもパステルグリーンを多用しているとのことだった -
Rの文字はラファエルの頭文字?
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聖ラファエル病棟を出て今度は敷地内で一番大きな建物である管理棟を見学した
管理棟は中央部とそこから左右に45度の角度で伸びた両翼部分がある
中央には時計台があり最大地上高は62m
上の写真は管理棟の裏側(=北側) -
管理棟・エントランスホールを階段から見下ろした写真
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エントランスホールには9つのドーム天井があり大理石の柱により支えられている
柱頭はカタロニア音楽堂で目にしたような花の彫刻が咲いていた -
四隅部分(=Shell)は 9×4=36 あるがこれには11種類のシンボルが使われている
それらは以下のとおり
1)カタロニアの紋章 2)バルセロナの紋章 3)サン・パウが住んでいたパリの紋章(ボートと3本のユリの花) 4)建設開始の年号 1905 5)竣工年号 1910 6)サンパウの銀行のスローガン 7)Pau Gil の名前 8)聖十字病院の紋章 9)サン・ジョルディの十字 10)ドメネク・イ・モンタネールデザインのサンパウ病院紋章 11)カテドラルの十字紋章
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Gilの文字やパリの紋章、銀行のスローガンなどがタイルで描かれている
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9つの天井はライラックピンクの小さな四角いタイルで敷き詰められている
そしてドーム天井の四隅部分にはカラータイルを使って文字や紋章が描かれている -
管理棟・エントランスホールの左右には階段があり、この階手すりには華麗な透かし彫りが施されている
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管理棟エントランスホールとそれに隣接する階段室
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吹き抜けの階段室・クーポラ天井はステンドグラス製でカラフルな採光を演出する
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天井ステンドグラスをアップ
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エントランスからの階段は互いに異なる反対方向に向かっている
その一つを上がり中央のホールにつながる廊下を歩くと天井には華麗なセラミックタイルによるモザイク画、窓はステンドグラスで多彩に彩られている -
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次にガイドは Auditorium (会議場、ホール)に改装された部屋に案内した
会議に使うのだろうか映写設備などがあった -
見上げると天井は鮮やかなモザイクタイルで飾られていた
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ツアーの最後には二階中央の高さ18mもあるホールを見学した
一般には「ドミニック・イ・モンタンタネールの間」と呼ばれ、従来サン・パウ病院の大ホールとして利用されていた -
幸い壁に説明パネルがあったので撮影しておいた
この説明によるとここは彫刻、モザイクタイル、絵画などあらゆるアートの極致をふんだんに投入した場所 -
彫刻はカタロニア出身の Pau Gargallo の手になるもの
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このモザイクタイル画に関する説明は見つからなかったがおそらくランの花と何かの葉の組み合わせたデザインと思われる
パンフレットの説明では
・・・・動植物をタイル画や彫刻のテーマにした目的は装飾という目的以外に患者に癒しや人生に対する積極性を与える・・とあった -
反対の壁には絵、その上には文字が描かれた透かし彫りの手すりがあった
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ホールにはバルセロナの守護聖人サン・ジョルディの彫刻像があった
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左がサン・ジョルディ
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傾斜地に建てられているが建物の高さがそろっていて見た感じもスッキリしていた
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外から見た管理棟
中央部の2階にモンタネールの間がある
見終わっての感想だが日本では考えられないような芸術性あふれる美しい病院だった
ガイドの話によると「時の王様がこの病院に住みたい!」と言ったそうだ
サンパウ病院は有名なサグラダ・ファミリアと違って見物客も少なく、外観だけであればゆっくり鑑賞することもできる
この記事を書きながら見落としたところが多いことを後悔している
いずれにしてもバルセロナを代表するモデルニスモ建築であることは確かだ
このような華麗な病院を設計したドミニク・イ・モンタネール及びその建設資金をポンと寄付したサン・パウ氏に心から敬意を表したい
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