昨日、悲別で　ロケ地巡り　※ネタバレ注意※

2021/07/02 - 2021/07/02

「昨日、悲別で」、このTVドラマは最後まで見ていない。シナリオも買ってはみたものの、なんか思ったほど倉本聰らしさを感じ取れずに途中で本を閉じていた。

それが今回４トラのご縁がきっかけで、ツンドク状態だったシナリオを三十数年ぶりに開く事ができた。
ありがたい事です。感謝、感謝。

悲別（カナシベツ）は実在しない架空の町。　モデルとなった地域は北海道の上砂川町と歌志内市（日本で最も小さな市）。　両方とも川沿いに上流から下流へと、かつての鉱区毎に市街地が緩やかなアップダウンを介して、くねくねと連なる典型的な炭鉱の町だ。　もちろん川沿いには石炭輸送用の線路も引かれていた。　平行して走る２本の鉄道（歌志内線と函館本線上砂川支線）の間の最短距離はわずか1km強だった。　歌志内を流れる川はペンケ歌志内川、上砂川を流れる川はパンケ歌志内川。　ペンケ・パンケ（上の・下の）はアイヌの地名であちこちに見られる接頭語の様なものかな？　いずれにしてもこのアイヌ語のウタシュナイ（歌志内）を接頭語を抜いて一括りにすれば、そこが悲別となる様だ。

※注記：以下文中、ドラマのネタバレ多し。
ネタバレとは、ドラマを見てない人に結末をバラしちゃう事です。やばいよ、やばいよ。

エリア 砂川・新十津川(北海道)

すまん、前置きが長くなってしまった。

きっかけは picotabiさんの旅行記
https://4travel.jp/travelogue/11694157

せっかくロケ地が近くにあるのに行かないのは、なんかとても損をしていると言うか、申し訳ないと言うか、そんな気持ちになってしまった。
作品を読んでからの聖地巡り。なんかミーハーっぽいけど、い～じゃないか。

シナリオをなんとか読了。上下二段組。前半は退屈。でも最後は涙腺を締めるのにかなり苦労した。

余韻を残しつつ悲別へと車で向かう‥

道央自動車道の奈井江・砂川ICを下りて国道12号線を北上、砂川の街に入ってきた。
ちょっと余談になるが、ここの西側には以前、東洋高圧という巨大な肥料工場があった。石炭に含まれる硫黄を硫安にしていた。

写真はかつて、その工場があった辺り。見えてる煙突は石炭火力発電所。

田園地帯の中に忽然と現れる工場群、そして巨大なタンク。立ち並ぶ煙突からモクモクと排出さる煙。張り巡らされたパイプラインのうねり。

子供の頃、雨の日に汽車の窓から見た記憶が鮮明によみがえる。空も山も工場も全てがモノクローム。まるで近未来の異空間に紛れ込んだ様で、子供心にもその存在感は圧倒的でテクノロジーの極みだった。

車を走らせ程なくして「ナカヤ菓子店」に到着。昭和23年創業。ロケ地と関係ないけど、ちょっと寄り道。

出川哲朗の充電旅で有名になったアップルパイが旨い店だ。

焼きたて～　￥380 也

旅ネタに購入。

ふふふ～

バターの香りがふわぁ～っと広がる‥

この界隈は昔から菓子屋が多く「すながわスイートロード」と呼ばれている。ジョージ・ハリスンの My Sweet Load に Road をかけた様な洒落れた名前だ。

続いてやって来た処が「お菓子のほんだ」。こちらも昭和23年創業。

林檎ロマン

カミさんのお土産に‥

ワシはアップルパイ、￥430 也

紅玉を使っているので甘酸っぱ～い。

ナカヤより値段が高い分、リンゴもぎっしりだ。
パイ生地はナカヤの方が好みかな。コンポートは ほんだ の方が上手だ。

さて、寄り道しつつもJR砂川駅までやって来た。ここは「昨日、悲別で」のロケでも使われている。
残念、駅舎は化粧直し中だった。

▼以下ネタバレ▼
シナリオの最後はこの駅で、クロード・ルルーシュの映画を彷彿とさせる展開が待っていた。倉本聰が意識してそうしたのかどうかはわからないけど‥
多分パクったんだろうなぁ。

なぜか阿佐ヶ谷姉妹のスキャットが頭をよぎる。

　ダ～バ～ダ　ダバダバダ　ダバダバダ

ダメダメだ。ドラマのイメージ崩れる。

喫茶＆軽食やまいち

砂川駅前にある喫茶店。ドラマでは悲別の喫茶店役としてロケに使われた。劇中の「駅舎」の名前が、あえて消されずにそのまま残されている。

マスターの想いが伝わって来る様で、ファンにはとてもありがたい。

中は郷愁を誘う昭和がそのままに。
かすかなタバコの残り香、そして格子窓。

席に座るとガラスの灰皿を持って来てくれた。

色んな方の色紙が並ぶ。

タバコの煙で燻され、むき出しのまま画びょうで貼られてた色紙。

倉本聰の色紙

愛煙家にふさわしいセピア色だ。

大滝秀治さんのは奥が深い‥

この店はドラマに何度も登場する。最終回の時は店内のBGMに「なごり雪」が使われた。

さてと、廃線跡をたどりつつ

　いざ旧上砂川駅（悲別駅）へ

途中、ドラマのシーンで使われた平歌橋に立ち寄る。

場所は明かさないというのが紳士協定？らしい。実名は知らないが「平歌」は赤平と歌志内のクニ境を意識してつけた仮の名前の様な気がする。でもそのクニ境にこの橋はない。

※ヒントはパンケ歌志内川に架かる橋の内の一つ

木造板張の炭住を探してみたが、見つけられなかった。取り壊されたり、新しい外壁材で化粧直しされたりしている。

写真は昭和30年代に流行ったコンクリートブロック造りの長屋。頑丈だが、冬に押入が結露して布団が壁にしばれ着くのが難点だった。

旧上砂川駅（悲別駅）に到着。

駅舎内にはドラマの写真が展示されている。
さすがに皆んな若い。

▼以下ネタバレ▼
この駅は倉本聰の「駅 STATION」でも使われた。その駅で犯人（根津甚八）が捕まったのは映画では早朝。そして辞世の句

　暗闇の彼方に光る一点を 今 駅舎の灯と信じつつ行く
　　　　　　　　　　　　　（※駅舎はエキと読む）

なんとなく違和感を覚えた。明るい中で逮捕されていたからだ。でも後にシナリオを読んで納得した。シナリオでは真夜中に捕まっていたのだ。

駅舎の向こうに見える立坑。

閉山後はこの垂直700m以上の落差を利用して無重力実験センターが作られたが商業ベースに乗せられずに潰れてしまった。多額の税金が失われた。
完成当時の御披露目のニュースで、落下するカプセルに入れられたのはなんとカエル！
無重力のカエルは、はたしてひっくりガエルのでしょうか！？　と言うアナウンサーの期待を裏切り、カプセルのカエルは‥

両手両足を四方にパッと広げて、なんとスカイダイバー顔負けのフリーフォールポジション！！

生き物の素晴らしさを感じた瞬間。

さて、歌市内の「悲別ロマン座」までやって来た。

ここがロケ地巡り最後の場所。

やってるかな？

・・・・・　^_^;

やっぱし‥

▼以下ネタバレ▼
倉本聰が悲別ロマン座オーナー役の千秋実に、ロマン座の閉館最後の夜に上映させたのは、フレッド・アステアでもジーン・ケリーでもなかった。

なんと、黒澤明の「生きる」をぶつけて来たのだ。しかもスクリーンに映し出されたのは小雪舞う深夜の公園のシーン。ブランコをゆっくりと漕ぎながら、主人公が「ゴンドラの唄」を低く歌うあのシーンだ。

たった一人の上映会。とめどなく流れる涙。スクリーンに見入る往年の名優。完全なパクりじゃないか‥

不覚にも読んでいて思わず目頭が熱くなった。

まいった。これにはしてやられた。それ以上読み進めるには一旦間を置くしかなかった。

「生きる」の主人公を演じた志村喬は「昨日、悲別で」のクランクイン一年余り前に亡くなっていた。千秋実も「生きる」に出演していたし、二人とも「七人の侍」をはじめとする黒澤映画の常連俳優仲間だった。

これが分かっていたから倉本聰はあえて、ロマン座のオーナー役に往年の名優をキャスティングして、最後の上映作品に「生きる」を持って来たのだ。

倉本聰は時に残酷なシナリオを役者に課す。本当の妻を亡くしたばかりの地井武男に、「北の国から」で妻に先立たれた夫役を演じさせたのは有名な話だ。地井さん、顔をぐしゃぐしゃにしながら演じきった。

ドラマにあまりにもリアリティを求めすぎると、見る方も辛くなってやりきれない気持ちでいっぱいになる。

でも、必要な事なのかもしれないな。
特にこのご時世には‥

うたしない　チロルの湯

ここで立ち寄り湯をいただく。

浴室に入った瞬間、ニューヨーク・ニューヨークのイントロが頭の中に流れてきた。悲別の劇中で使われたタップダンスの曲、ライザ・ミネリじゃなくてフランク・シナトラの方。出川哲朗の影響力強しだ。

プラターズよりはテンションが上がる。

※写真はチロルの湯ホームページより拝借

ふうう～　い～湯だ

　It’s up to you　入～浴　入～ゥ～ヨ～～～～ク ♪
　　　チャン チャン チャ～ララン ♪
　　　　　チャン チャン チャ～ララン ♪

※写真はチロルの湯ホームページより拝借

風呂上がりは、施設内のレストランで御当地名物をいただくことに‥

ジャ～ン　その料理の名は？！

　なんこ鍋～！！！

　（パッパカパッパ パッパカパッパ パ～～ン ♪
　　　↑　四次元ポケットファンファーレ～　）

簡単に言えば、馬のもつ煮込みだな。一味じゃなくて、山椒をかけていただくのだ。
ゴールデンカムイにも出てきたぞ。

　ヒンナ　ヒンナ～

次はガタタン食わねば‥

さて、ペンケ歌志内川からコースを外れてやって来た所が「岩瀬牧場」。

アイスクリームが超ウマなのだ

迷うぞな‥

しぼりたて & イチゴ の W ～

まぁ～う～ ^_^

帰りの途中でトイレタイム

クマったもんだ

なんて言ってられなくなって来た

ウチに帰って、さっそく林檎ロマンをいただく。
口に入れた瞬間に、ふわぁ～っと溶ける様な不思議な食感。これは美味いわ。

カミさんに2種類のアップルパイを食べ比べしてもらった。感想は？

「う～ん　やっぱりマックのアップルパイが1番美味しいかな」

だって。

なんだかなぁ‥

この旅行記へのコメント （8）

• Decoさん 2021/07/28 11:12:27

  悲別

  エフサさん、はじめまして。
  
  昨日、悲別にて…昔放映された頃見ていて、全部は見ていなかったけど、とても印象に残るシーンがあったりして、私の中ではずっと気になるドラマでした。後に古本でシナリオを買ったりもしました。
  悲別ロマン座、ずっと昔、写真を見たことがあります。多分ネットの先駆けの頃だったかと思いますが、その頃はまだ現役または営業していなくても現役感がありました。今の写真を見て、寂しいやら懐かしいやら…時の経過を感じます。
  大滝秀治さんのサインにはほろっときました。独特の雰囲気がある俳優さんでした。
  こちらの旅行記を拝見して、ドラマのことを思い出したり、放映当時の若かりし頃の自分の当時の生活を思い出したり…心を動かされた旅行記でした。
  　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Deco

  エフサさん からの返信 2021/07/28 20:43:21

  Re: 悲別

  Decoさん、初めまして。
  この度はコメントありがとうございました。
  
  大滝秀治さんの色紙、タバコの煙で燻されてはいますが、しっかりとした筆圧に込められた彼の思いが伝わってくる様で、そしてまるでたった今書き込ままれたみたいで、いい色紙ですね。
  
  実はこの喫茶店を訪れた日、開店時刻を過ぎても準備中の札が下がったまま。定休日でもない。たまりかねて電話をすると奥さんが出て
  「開いてますからどうぞ」との言葉。
  マスターが通院先から戻っていない。戻り時間も分からない。だから名物のポークチョップも出せないと何度もお詫びをされていました。
  マスターは多分90近く、倉本聰も86、悲別の駅もロマン座もシナリオも残るかもしれませんが、この「駅舎」は残念ながら‥です。今回、お店を拝見させて頂けた自分の幸運に本当に感謝です。

• picotabiさん 2021/07/04 01:11:19

  シナリオライターでしょうか

  エフサさん。悲別駅の中に入れたのですね。コメントに書かれてたお話しがコロナ収束後に特別番組で放送されそう笑
  
  駅舎の喫茶店。大滝秀治さんの色紙みて涙止まらなくなっちゃいました。今の自分に響いてしまったなぁ。色紙の余白がまたすごくイイ。黒澤明の映画のこととかわからないけど、地井さん、ほんとに奥様が亡くなられてたなんて知らなかった。倉本聰、すごいというか告というか。
  
  アップルパイ、青森はラグノオのがワタシは馴染みです。林檎ロマン、気になる。

  エフサさん からの返信 2021/07/04 05:27:31

  Re: シナリオライターでしょうか

  悲別駅の中は、多分picotabiさんがガラス越しに覗かれた雰囲気とあまり変わりがないと思いますよ。唯一見れないのがドラマの写真、結構展示してありました。
  
  大滝秀治さんは本当に味のある役者さんでしたね。「北の国から」でも要所要所で彼の台詞がスーっと入って来ると、深妙な面持ちで聴いてしまいます。石田あゆみの葬儀に遅れてきて、またすぐ帰ってしまう五郎への、誠意が無いと言う批判を聞いて
  
  「それはちがうんじゃないですか」
  　　で始まり
  「おかしいですか、私の話」
  　　で終わるシーン
  
  あそこが一番グッときました。ワシも自分と重なるものがありました。
  
  黒澤明の「生きる」は機会があれば是非見て欲しい映画です。

• マーさん 2021/07/03 09:53:31

  初めまして(^^♪

  「昨日、悲別で」ロケ地　の　タイトルに魅かれて、お邪魔致しました。
  　　
  　　そして、最後の奥様の感想「う～ん　やっぱりマックのアップルパイが1番美味しいかな」　思わず　いいね !　に一票押させて頂きました(笑)
  　　このドラマ　ワタシも放送時にリアル視聴してた世代でしたので
  　とても懐かしく読ませて頂きました。
  「エフサさん」のキャプションのとても、判りやすく素敵だと思いました。
  
  　　そして
  　>ドラマにあまりにもリアリティを求めすぎると、見る方も辛くなってやりきれない気持ちでいっぱいになる。
  
  でも、必要な事なのかもしれないな。
  
  これって !?　本当に仰る通りではないかとワタシも思います。
  倉本ドラマ　「北の国から」は勿論ですが「前略おふくろ様」時代からほぼ
  　　全て視聴しておりますが、ドラマって作り物なんだけど、そこに
  　嘘臭さを感じさせないドラマばかりですので大好きでした。
  
  　それにひきかえ　今のドラマ達　俳優とは名ばかりの「学芸会レベル」の
  　　　オンパレードのような気がして、まったくミル気が・・・・
  
  　出来れば、また北海道を舞台にした　映画、ドラマのロケ地探訪　
  　　　「エフサさん」の視点からｕｐして頂けたらなんて思いました。
  　　　
  
  　　
  
  　　　
  　
  　　　

  エフサさん からの返信 2021/07/03 15:53:54

  Re: 初めまして(^^♪

  マーさん、初めまして
  
  ワシのふざけた旅行記にいいねを頂き、その上コメントまで頂戴致しましてありがとうございました。
  
  「前略おふくろ様」、なつかしいですね。かすみちゃん可愛かった。半妻さんカッコ良かった。
  儲からないと映画もドラマも作れないから、自然と刑事物、医療物、恋愛コメディとなってしまいますね。優れたバイプレーヤー達もいつのまにか姿を消してしまいました。先が思いやられるなぁ。。
  
  学芸会レベルと言えば、ワシの中ではダントツで沢○○子。サワコの朝じゃありませんよ。メルヘン須長に主役やらせたら仮装研の女、絶対に見るんだけどなぁ。
  
  満身創痍の看護師さん。ヘトヘトで帰宅して遅い夕飯を作ってあげた娘は学校で差別を受ける、しかも先生にまで。
  
  仲間と飲み会して無症状スーパースプレッダーになってしまい、家族全員にうつして爺ちゃんを機械につなげたまま亡くしてしまった孫。
  
  路上呑みする若者達に、これらのリアリティが分かるまで、もうちょっと時間がかかりそうですねぇ。
  
  ロケ地巡り、頑張ります　^_^
  ブ、　ラジャー

• ふわっくまさん 2021/07/03 07:12:49

  悲別駅・・

  エフサさん、おはようございます。
  ロケ地巡りの前に、ナカヤ菓子店とお菓子のほんだでアップルパイを購入されたそうで・・
  どちらもスゴクおいしそう！と思って拝見したのですが、帰宅後の奥様のマック・・
  ・・かなり意外に、感じました(笑)
  
  ロケ地近くのレトロな喫茶店には、倉本聰さんや大滝秀治さんのサインが飾られているのですね。
  旧砂川駅は「悲別駅」、悲別ロマン座は「やってない」の看板⇒少し、ウケました。
  
  岩瀬牧場のアイスクリームも、とても美味だったでしょうねー
  トイレでは、クマ注意ですか・・でも、どうやって気を付けたらーと思いますね・・
  　　　　　　　　　　　　　ふわっくま

  エフサさん からの返信 2021/07/03 09:08:45

  Re: 悲別駅・・

  おはようございます。
  夫婦そろって違いのわからない男と女でございます。
  
  クマはですね、確実に増えていますね。つい先日、札幌駅から5km程離れた地下鉄駅近くで人が襲われました。道南ではとても悲惨な事が起きてしまいました。
  ウチの庭もキツネの通り路になっているんですけど、今年は親子連れになっていました。畑の作物がエキノコックスに汚染されないか、ちょっと心配です。
  
  岩瀬牧場は結構田舎の山の中にあるのですが、いつもお客さんが沢山来ています。