2011/04/11 - 2011/04/16
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kojikojiさん
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地下鉄3号線のフェレンツィエクテレ駅とエルジェーベト橋の通りの交差点近く、車の多い通り沿いにある大きなビルの中にひっそり時間が止まったようなアーケードがあります。元々はベルバローシュ貯蓄銀行の社屋でしたが現在は雑居ビルのようです。その1階部分がパーリジ・ウドヴァル(パリの中庭)と呼ばれるパッサージュになっています。英語のガイドブックなどではパリス・コートと案内されています。半分閉められたパイプシャッターを潜って中に入ると温度も照度も下がり、表の喧噪も聞こえなくなり不思議な空間が広がり、まるで時間が止まったような錯覚に囚われます。2年前には本屋や旅行会社など何件か営業している店があったようですが、現在は100%廃墟になっています。一応上階に行く階段やエレベーターがあるので出入りが出来るようになっています。埃を被り荒れるに任せた内装のクオリティは非常に高く、建築当時には莫大な費用がかけられたと思います。精緻な木工はイベリア半島のイスラム建築の様でもあり、ステンドグラスのアーケード部分は名前の通りパリのパッサージュの様でもあり、不思議な雰囲気を醸し出しています。何よりも全ての店が閉鎖されているこの廃退とした澱んだ空気感が何とも言えません。ヴァーツィ通りを光とすると影の部分がこのアーケードかもしれません。2011年当時はこのような状態でしたが、2018年にブダペストを再訪したときには見事に改修されて、ハイアット・アンバウンド・コレクションのホテルに変わっていました。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 5.0
- ショッピング
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 船 徒歩
- 航空会社
- アエロフロート・ロシア航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
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パーリジ・ウドヴァルとはパッサージュ・パーリジ(パリの中庭)の意味で、1913年にできた歩行者用アーケード街でした。
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元々はベルバローシュ貯蓄銀行の社屋でしたが、現在は雑居ビルのようで2階以上は事務所か何かで使われているようでした。
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この建物の建つ前の1817年にミハリー・ポラックとヨゼフ・ブルダーンの計画によって建てられた建物はハンガリーで最初のビジネスビルの1つでした。ポラックは1810年頃に建てられたパリのパッサージュ・デ・パノラマをモデルにして計画を進めたそうです。
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前の建物は19世紀の終わりにほぼ完全に取り壊され、その区画は1906年にベルバローシュ貯蓄銀行によって購入されて新しいビルの計画が進められました。 1907年12月31日の締め切りまでの設計入札に対しては合計43の申請が寄せられました。
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1908年3月27日の理事会においてフロリス・コルブとカルマン・ジエルグル、イェン・ヒューブナーとセベステン・メズナー、ゾルタン・バーリントとラホス・ヤンボルの計画が選出されます。経営陣は隣接するクロティルド宮殿の2つの建物も設計したコルブとグリーグの共同設計が望ましいと考えていましたが、最終的に委員会はヘンリック・シュマールに依頼します。
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すべての許可が得られた1909年5月15日に作業が始まり、残されていた敷地内の他の建物は夏の間に取り壊され、その後実際の建設が始まりまりました。
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隣接する建物から自立した外壁はフェレンチェック広場とペトフィサンドール通りに面しています。シュマールは建物の隅を切り取って作成された「第5の側」にメインのファサードを形成し、そこに銀行の支店へのメインの入り口を設けました。
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シュマールはまた計画の際にその場所の歴史を考慮し、「パリハウス」が90年以上存在していたという事実を考慮に入れ、この役割は「パーリジ・ウドヴァル」という名前で引き継がれました。銀行のオフィスは2階と3階にあり、さらに上層階には賃貸マンションが計画されました。
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巨大なアーケードの入り口には巨大なギロチンの様なシャッターがあります。営業は全くしていませんが、中途半端な半開きになっていて中に入る事が出来ます。
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シャイ所にこの建物を発見したときは中に入ってよいものかどうか躊躇しました。何しろガイドブックにも乗っていないし、全く情報もありませんでしたから。
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建物の建設には多くのハンガリー企業と外国企業が参加しました。 通路の六角形の空間はHaasとSomogyiによって製造されたプレス加工されたガラスとプリズムで覆われており、その準備と組み立てには1年半かかったそうです。
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中に入った途端にスッと涼しくなり、陽射しも遮られた上に通りの喧騒も聞こえなくなり、別の空間に紛れこんだようです。
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目が慣れてくるとマホガニーの寄木細工の様な天井が現れます。
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セラミック張りのファサードはほとんどがドイツの工場から納入され、一部はジョルナイの工場からも納められています。2階のバルコニーとその下のファサードバーのタイルはペーチのジョルナイの工場でのみ作られました。
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シュマールは1909年から1910年の冬にドイツを訪れ、輸送の混乱による調整と取引先を探しました。外国の材料取引先の中にはホールと通路の床材のためにヴィレロイ&ボッホもありました。
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アーケードの中は全ての店が閉鎖されているので人通りも少ないです。ブダペストの市内の一等地で数多く見掛けた空き家の集大成がこのパッサージュのように思えました。唯一ビルの上階へ行く導線だけが生きているような感じがします。
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ムーア様式とゴシック様式が混在する歴史的な折衷主義の建物は第2次世界大戦中に深刻な損傷を受けていませんでしたが、社会主義体制後は1949年に銀行の不動産は国有化され、内部を改築してアパートとしました。
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社会主義体制時代に元の建物の素晴らしさはほぼ完全に失われ、1960年の春にIBUSZに引き継がれる前にフリゲス・シュピーゲルによってデザインされたアールヌーボー様式のインテリアはなくなりました。その後この建物は長い間「イビス・パレス」と呼ばれていました。 1階の店舗の中で1952年にオープンし2015年まで営業していたアイスビュッフェが人気を呼んだそうです。
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1960年代に最初に改修され、その後の1980年代に2度目の改修が行われましたが、1976年に記念建築物と指定された建物の装飾は不可解に破壊されました。ガラスのドームの外側に隠されていたショッピングヤードを照らすライトが解体され、代わりに自然光を取り入れました。
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2回目の改修の際には階段のシャンデリアのガラスが撤去され、階段の装飾は白く塗り込められ、銅の手摺りは黒く塗られました。
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もう一つのドームはガラス天井で、当時の最高の技術で造られたのでしょう。ミラノやナポリのガレリアような巨大で見上げるほどの高さはありませんが気品に満ちています。手入れが行き届いていないのが残念でもありますが、退廃的な雰囲気も嫌いではありません。
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たまに1人2人と通り抜ける人がいるだけです。表通りには地下鉄の乗り場も地下道の出入り口もあるので賑やかなのですが、表の喧噪はここまで届きません。
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開いていれば絶対に昇るであろう美しい階段がありますが、てっぴのは施錠されているので中を見る事は出来ません。
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世界一美しい廃墟だと思います。
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ヴァーツィ通り周辺の世紀末建築では一番印象に残った建物です。
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2001年のミレニアムの年末年始にパリを旅して、パリのパッサージュを数多く見学しましたが、2011年の春の中欧の旅の跡の秋の旅行ではパリの15のパッサージュを再訪し、ナントの3段になった美しいパッサージュの見学にも行きました。
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数日後、妻が午前中半休を取ったために1人で散歩に出かけました。最後にもう一度パリジ・ウドヴァルを見ておこうと再び訪ねました。
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往時はどんなショップが入っていたのでしょうか?
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今日はディテールを見ていきます。ゴシック教会の雨樋いにいるようなゴーガイルがいます。
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古びた電話ボックスは埃まみれです。決して新しくない公衆電話機ですら新品のように見えてしまいます。ジョゼッペ・トルナトーレ監督の「ニューシネマ・パラダイス」の後の映画の「みんな元気」でシチリアのトラーパニを出発した父親(マルチェロ・マストロヤンニ)がナポリのガリバルディのアーケードの公衆電話から末息子に電話を掛けるシーンを思い出しました。
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父親は留守番電話の声を聞くと世界が止まると思っているのですが、息子の留守番電話の声を聞いた途端に巨大なアーケードにいた数千人の人がピタッと止まるシーンが印象的です。実際のナポリのガレリアには公衆電話など置かれてなくて残念に思ったことがありました。
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残念ながら中に入れそうな個所は全て施錠されています。
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しかし見事な木工細工です。今ではこんなものを造れる人はいないのではないでしょうか。
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ガラスと金物と木工の調和の取れたアーケードです。
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このまま朽ち果てると思うともったいない気持ちになります。
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2度目になると誰もいなくても安心して内部の見学ができます。
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いろいろな個所が壊されてしまっているのが残念です。
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もう一度このパッサージュが復活する事はあるのでしょうか。近い将来、この建物が本当に朽ち果てる前にそうなってほしいと思います。
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今回持ってきたソニーのNEX-3は広角レンズは優れていますが、セット販売の望遠レンズでは物足りない物を感じました。今にも動き出しそうな木彫の怪物たちがこちらを見つめていますが、その表情までは分かりません。
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閉鎖された奥にエレベーターがありましたが、階数表示の赤い数字だけが点灯されていて不気味でした。まだ機能的には生きている建物なのだと分かりますが、暗闇に潜む悪魔か何かのようです。
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聞こえてくるのは散歩中の老夫婦の足音だけです。ほんの数メートル先には空港まで続く大きな通りがあるのですが、車の音などは全く聞こえてきません。
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床のタイルもどことなくイスラム風の雰囲気を持っています。ところどころガラスブロックになっているという事は地下があるのでしょうか。確かめる術もありませんが、パリのパッサージュのように地下に暖房設備などがあるのかもしれません。
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ブダペスト建築センターFUGAの入った建物も世紀末建築の美しいデザインでした。
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ラトビアのリガの新市街に残るユーゲントシュティール建築を思い出させます。リガのアール・ヌーヴォー建築もいつか見に行きたいと思いながらまだ願いはかなっていません。ミハエル・エイゼンシュタインの建築のようでした。彼は「戦艦ポチョムキン」を監督したセルゲイ・エイゼンシュテインの父親でもあります。
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廃墟だったパリジ・ウドヴァルの建物は心配していましたが、2018年の暮れにはハイアット・アンバウンド・コレクションのホテルに変わっていました。
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ボロボロだった外観も生まれ変わったような美しさです。
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アーケードの内装がほとんどそのまま残されていることには感動すら覚えます。
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どこを見ても7年前の記憶とつながるので写真を数多く残しておいてよかったと思います。
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この部分はほとんどが木部で構成されているのかと思っていましたが、照明が仕込まれるとそのほとんどが美しいカットガラスだったことが分かりました。
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ブダペストへ3度目の訪問があれば1泊くらいしたいと思いました。
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高級ホテルにはなってしまいましたが、パリジ・ウドヴァルの行く末を確認できてよかったです。
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この旅行記へのコメント (2)
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- ストラトラージヘッドさん 2011/07/01 10:58:27
- やっと読めました
- kojikojiさまはじめまして
ブダペストの世界一美しいアーケード。
「パーリジ・ウドゥヴァル」って読むんですね.....
私も、google earthでその存在を知り、昨年ブダペストを訪れた時に退廃的な美しさに見とれてしまいまい、しばし立ち尽くした記憶があります。
それにしても、kojikojiさまの幅広い知識には感服いたします。
私の底の浅ーーいコメントとは大違い(@_@;)。また、お写真も綺麗なものばかりでみとれてしまいました。また、他の国の旅行記にもおじゃまいたします。
では。
- kojikojiさん からの返信 2011/07/01 12:05:50
- RE: やっと読めました
- こんにちは。
旅行記を見ていただいてありがとうございます。
あのアーケード美しいですよね。行った方で無いと分からない
空気と時間が流れていると感じました。同じ気持ちの方がいらして
嬉しいです。
コメントについては仕事が建築や内装のデザイン関係の仕事をしている
からでしょうか。分からない所は本で確認したりいろいろ検索して確認
している事も多いです。正直。でも調べる事によって分かったりする事も
多くて勉強にもなります。
旅行記も400近くになりました。お時間がありましたらまた覗いてやってください。
コメントを投稿する前に
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