2017/11/30 - 2017/11/30
120位(同エリア1008件中)
玄白さん
宇都宮の西郊外の大谷地区は大谷石の産地で、あちこちに巨大な採掘跡の地下空間が広がっている。そのうちの一部は大谷石資料館として一般公開されていて、折に触れて映画のロケやミュージックビデオ収録などにも活用されている。来年4月まで、地下坑内で、世界的映像アーティストと評価が高い長谷川章氏による「デジタル掛軸」という映像イベントが開催されているので、鑑賞してきた。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車
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2014年2月以来の大谷資料館再訪。3年余りで、ずいぶん様子が変わっていた。資料館前の駐車場は一般車侵入禁止で、300mほど離れたところに広い駐車場が整備されていた。駐車場から資料館への道の途中には、レトロな鉄道車両が展示されていた。明治時代、鉄道が敷設された頃、地方では、客車を人が引っ張る人車なるものがあった。栃木県内にも、各地に人車鉄道があったということなので、それの展示かもしれない。
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イチオシ
入場料が\600から\800に値上げされていたり、以前は自由だった三脚持ち込みが禁止になっていたりと、こんなところも変わっている。通路が狭く、入場者増加を見込んでの処置なのだろうが、暗い坑内で三脚が使えないというのは、いささか都合が悪い。そのため、カメラの感度を目いっぱいあげているので、荒い画質の写真になってしまったが、ご容赦のほどを。
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こんなオブジェも3年前はなかった。
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華道家假屋崎省吾氏の作品も展示されていた。これも3年前にはなかったような・・・
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この辺りは、以前のままである。
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常設のギャラリー。展示されているのは写真で、時々入れ替えがされているようだ。今回は、この地下空間で撮影された映画制作の様子を撮影した写真が飾られている。
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3年ぶりに再訪した目的は、この映像イベントを見ること。地下坑内の見学コースの一部を特設会場として仕切って、別に特別入場料¥500を払っての入場である。
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特設会場入り口脇の大谷石壁面にイベントのタイトルが投射されている。日本語、英語、ハングルと3か国語の表示に切り替わる。
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なぜか、高級シャンパン、ドン・ペリニヨンが展示されている。大谷石採掘と何の関係が・・・? 近くの解説プレートによると、ドン・ペリニヨン[P2]1998年ヴィンテージが2014年11月に日本で発売される記念イベントが、発売日前日にここで行われ、主催者のモエ・ヘネシーディアジオ社から贈呈されたエンブレムなのだそうだ。
大谷石採掘坑道内は一年を通じて気温の変化が少なく平均8℃に保たれているので、ワインの熟成に適した環境ではないだろうか。残念ながら栃木県はブドウ栽培はあまり盛んではないので実現は難しいだろうが・・・
余談だが、栃木市に本社がある食肉加工品メーカーの滝沢ハムが、大谷石採掘坑跡で熟成した「大谷の生ハム」を販売している。宇都宮のスーパーでは簡単に手に入り、ときどき食するが、とても美味である。 -
特別会場はそれほど広くないが、大谷石の壁、柱、床、天井一面に極彩色の抽象パターンが投影されている。
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映像は、すべて極彩色の抽象的なパターンで、100万通りのパターンがあるという。
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この様々な抽象的パターンを次から次へと投影する映像インスタレーションは、作者の長谷川章氏によりデジタル掛軸と名付けられている。
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長谷川氏のデジタル掛軸は制作に15年かかったそうだ。全く同じプログラムなのか定かではないが、伊勢神宮、横浜赤レンガ倉庫、大阪城、会津鶴ヶ城、東京都庁など全国の様々なところで開催されている。海外でもストックホルムのノーベル賞受賞晩餐会、ザルツブルク音楽祭、アテネのアクロポリスなどでも上映されていて、国内外150か所以上に及ぶという。
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開催場所によっては無料というケースもあるようだが、ここ、大谷資料館は¥500と有料だった。資料館入場料が¥800なので、けっこう高い映像ショーではある。これを割高と思うか、値段相応の価値があると考えるかは、評価が分かれるところだろう。
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イチオシ
ただ、この映像ショーの性質上、基本的には夜しかできないが、日の光が差し込まない地下空間ゆえ、昼間でもできるというのが、大谷石採掘坑内でやる大きなメリットと言えるだろう。
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投影される映像は徹頭徹尾、抽象的な幾何学模様パターンである。普通のプロジェクションマッピングのような具象的映像ではないので、映像から具体的なイメージ、メッセージを受け取ることはできない。その意味で、つまらないと思う人も相当数いるのではないかと思われる。
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次から次へと、何の脈絡もなく様々なカラフルなパターンが変わっていくのを眺めていると、昔見たSF映画「2001年宇宙の旅」のラストシーンを思い起こした。
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イチオシ
この映画は難解で、当時は必ずしもヒットした映画ではなかったが、現在では名画という評価が固まっている。ラストシーンのあらすじは、モノリスという謎の物体が木星周回軌道上にあり、その探査に向かう途中コンピュータHALが反乱をおこし、ボーマン船長以外は殺害されてしまう。HALの思考回路を遮断したボーマン船長がモノリスに接近すると奇妙な光のカオスに突入し、気がつくと豪華な館風の一室にたたずんでいる。時は流れ、孤独な生涯をここで過ごしたあと、スペースチャイルドという人類を越えた生命体に進化して生まれ変わるというもの。
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モノリスが何か、光のカオスが何なのか、豪華だが生活感が全くない館が何を意味するのか、映画の中では一切語られない。観客は、自分で最後の結末部分を解釈することが求められる。ある人は、人類をはるかに超えた文明を有する知的生命体の存在を想起するだろうし、あるいは人知を超越した神の存在を感じる人もいるかもしれない。
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様々に変化する抽象的な極彩色の幾何学模様を眺めていると、「2001年宇宙の旅」のラストシーンの時と同じ思考作業をさせられている思いがした。
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作者の長谷川章氏は、このデジタル掛軸のコンセプトをこんな風に語っている。
「今までのアートは、立体であったり、フレームの中にあったり、テレビのように始まりと終わりのあったりと、空間や時間軸の中に収まるものであった。僕はそれを全部取り払った。まず枠がない。というのは自然の中に宇宙まで溶け込む広がりがあり、つまり境がないということ。そして色即是空。始まりと終わりがないということ。」 -
氏はさらに次のように続けている。
「デジタル掛軸は基本的には静止画である。なぜ静止画にするかというと動画にすると始まりと終わりができるからだ。見る人はそこを期待し、それを読み取るものでしかなくなってしまう。そしてライブ感がなくなる。ところが静止画だと、そこにある木や石や建物、すべてに完全にマッチングする3次元の空間が成立する。ということは絵の中に入れる、住めるということ。絵の一部に自分がなる。」 -
長谷川章氏が語るデジタル掛軸のコンセプトを100%理解できている自信はないが、2001年宇宙の旅のラストシーンを思い起こしたということは、氏がデジタル掛軸に込めた思いに一定の共感ができたと言ってもあながち言い過ぎではなかろう。
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話は少し逸れる。長谷川氏がデジタル掛軸のコンセプトで、静止画にした理由を語っているが、これは玄白の写真観と相通じるものがあり、とても共感できる。
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最近は、SNSや動画投稿サイトが大流行りで、写真という静止画像は動画に押され気味という感がなくもない。だが、美しい自然の風景なり人々の一瞬の表情を切り取る写真は、動画では表現できない空間や時間の広がり、物語性を見る人に呼び起させる力を持っていると思うのである。それゆえ、たまに遊びでタイムラプス動画を撮ることもあるが、基本は静止画の写真にこだわりたいと思っている。
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動画は、長谷川氏が言うように具象的すぎて、見る人の自由を制限してしまうと思うのである。偏見だとお叱りを受ける覚悟で強いて言えば、芸術性、精神性という観点からは動画は写真に及ばない。
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パターンは数分おきにガラッと変わるが、その間のパターンは実は厳密には静止画ではなく、地球の自転速度に合わせてゆっくり動いているという。映像を始めと終わりという時間、スクリーンや建物という映像を映し出す空間の枠を取り除き、果てしなく広がる時空間への没入感を感じてもらうという氏のコンセプトに見る人を引き込む仕掛けのひとつなのである。
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一見すると、プロジェクションマッピングのようなものと思えるのだが、決定的な違いがある。プロジェクションマッピングは、建物のような立体的なものをスクリーンに仕立て、その形状に合わせて映像を投影する。つまりマッピングしているのである。その映像が具体的なものであれ、幾何学的パターンであれ、映像を一定の空間に押し込めているのである。
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一方、デジタル掛軸は、投影されるスクリーンが柱であれ、天井であれ、壁であれ、実体としての境界に関係なくパターンが投影される。マッピングされているわけではないのである。
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それゆえ、映像は抽象的幾何学模様にならざるを得ないのである。
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イチオシ
長谷川氏は、デジタル掛軸のコンセプトを語る言葉の中で仏教用語である「色即是空」という言葉を使っているが、もちろん、デジタル掛軸に仏教臭さがあるわけではない。
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だが、本来の意味とは違う言い回しかもしれないが、デジタル掛軸の100万通りと言われる極彩色のパターンは、言わば「光の曼陀羅」といってもよいかもしれない。
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平日ということもあり、来場者はそれほど多くない。
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ほとんどの人は、わぁ~きれいとか、なんだこれは!と言いながら10分程度で立ち去っていく。
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そんな中、次から次へと変わるパターンを飽きもせず、一時間ほどじっくりと眺めていたのだった。そう、2001年宇宙の旅のラストシーンを思い出しながら・・・
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地下空間の気温は7℃。軽装で来たので体が冷えてきた。そろそろ夢想から覚めて戻ることにしよう。もう一度2001年宇宙の旅を見てみようかと思いながら・・・
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