ポルトガル縦断の旅の続き（15）マドリッドから城壁の街アビラを訪れ、聖テレサに祈りを捧げるも体調を崩す。

2001/10/12 - 2001/11/04

サンティアゴからのホテルトレインのコンバートメントは快適でシャワールームまで完備されていました。シャワーを浴びてスッキリしてから車掌さんにいただいたウイスキーの水割りを飲みながら車窓の景色を楽しみました。この日は満月だったので月明かりに浮かぶガリシア地方の風景は荒涼としながらも幻想的な美しさでした。残念ながら写真にはうまく収められませんでした。夜明けの素晴らしい景色を眺めているとマドリッドに到着しました。そのままチャマルティン駅に荷物を預けて、同じ線路をアヴィラまで戻ります。この後セゴビアなどを廻ることを考えるとこの方が荷物が少なくて助かりました。ボルダロ社の巨大な花活けやナザレのセーターにポルトワイン5本は必要ありません。初めて乗ったスペインのインターシイティは映画が流され飛行機並みの列車でした。アヴィラ駅からバスターミナルに寄って、明日のバスの時間を確認してからホテルにチェックインしました。クラシックなホテルは中世の館がそのまま残されていました。城壁内の中世の町は人通りも少なく閑散としていました。この町は城壁で囲まれた美しい街として知られていますが、キリスト教徒からすると聖テレサに由来する聖地でもあります。教会で聖アガタに参拝しましたが、夜になると具合が悪くなって寝込んでしまいました。以前ギリシャのスパルタで感じたような寒気を感じました。そのままクラシックなホテルの部屋で一晩中唸っていました。

エリア アビラ(スペイン)

• 旅行の満足度: 4.5
• 観光: 4.5
• ホテル: 4.5
• グルメ: 4.5
• ショッピング: 4.0
• 交通: 4.5

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 30万円 - 50万円
• 交通手段: 鉄道 高速・路線バス
• 航空会社: エールフランス
• 旅行の手配内容: 個別手配

アヴィラの鉄道駅からブラブラとバスターミナルへ行って、翌日のセゴビア行きのバスの時間を確かめて城砦へ向かいます。城壁の手前にあるサン・ヴィセンテ教会に立寄りました。
西暦４世紀に聖ヴィセンテとサビーナとクリステタの妹たちの3人がここで殉教したそうです。正確なその場所は教会の奥・アプスの南側部分の地下に今も残る岩場だったとされています。

ファサードの扉は昨日までいたサンティアゴ・デ・コンポステーラ大寺院の「栄光の扉」のようにも見えます。

カタルーニャの山間部やフランス南部のロマネスク教会と同じ雰囲気を感じさせます。

美しい回廊が設えてあります。朝早い到着なので観光客はまだいません。

花崗岩で造られた重厚なアヴィラの城門です。今までいろいろな町を訪れましたがこれほど完璧に残された城砦は初めてです。ロードス島やキプロス島の城塞を思い出します。

ホテルは城門を潜った左側、カテドラルの正面の中世のお屋敷ホテルです。ヴァル・デラ・バノスはパラシオと名前が付くだけあって、甲冑が飾られたり中性の趣が感じられます。流石に10時過ぎではと思ったけれど、フロントのおじさんは気持ち良く部屋に通してくれました。普通ならチェックアウトで混む時間だろうと思ったけれど、お客の姿は全く見掛けられませんでした。

荷物を置いて場内の観光に出ました。街中にも人影は少なくタイムスリップしたようです。まずはアビラ大聖堂です。この聖堂は12世紀初めに建設がはじまり、ロマネスクとゴシックが混在した様式で14世紀に完成しました。生まれたばかりのゴシック建築の実験舞台となり、スペイン初のゴシック建築の大聖堂としても有名です。
この大聖堂最大の特徴は後陣にある大きな半円形のシモロと呼ばれる塔が、城壁と連結した珍しい建築スタイルになっていることです。

海沿いを旅したポルトガルからスペインに入って、内陸のカスティーリャまで来ると日差しは途端にきつくなります。しっとりした湿度のあった大西洋岸の気候が懐かしく思えます。

城門を出て周辺の草地を歩いてみます。城内にいるより城塞都市の全景を見たいと思いましたが、表に出てみるとその大きさに驚かされます。

街外れのクワトロ・ポステスという４本柱の展望台までやってきました。ここはローマの遺跡のようです。遺跡が目当てというよりも、ここからの眺めが見たかったのです。

クワトロ・ポステスからのアヴィラ市街の眺めです。アヴィラを紹介する写真のほとんどがここからの眺めです。

アヴィラやこの辺りの町はコウノトリが有名です。塔の上や建物の上に巣が架けられています。

残念ながら時期的なものか時間が悪かったのか姿は見えませんでした。ただ、これだけ巣があるという事はどれだけのコウノトリがアフリカから渡ってくるのでしょう。

日本の秋を思い出させるようなスプレー菊の花が売っていました。何となく昔祖母や叔母と一緒に行った枚方の菊人形展を思い出しました。

荒涼としたカスティーリャの風景です。

城内に戻って木陰で一休みしました。おじいさんとおばあさんはここで何十年も同じような昼下がりを楽しんでいるのでしょう。

聖テレサ修道院 へ行きました。テレサは少女時代に何度か家出をし、荒野の殉教地を探して歩きました。両親に問題児の収容施設に入れられてしまいますが、ここも抜け出して、アビラにあるカルメル会の御托身女子修道院に入ります。

修道院で彼女は病気に苦しみます。病気の初期には信仰書「信仰入門書」 を読む中で、崇高な宗教的恍惚感を繰り返し経験します。ローマのサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会コルナロ礼拝堂の壁面に設置された祭壇（エディクラ）の装飾彫刻群の中央を占める「聖テレジアの法悦」という作品が有名です。バロック期のイタリア人彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの傑作です。

ダン・ブラウンの「天使と悪魔」の映画版で、ラングドン教授が三人目の枢機卿が火炙りにされる中で助けようとする場面で出てくる彫刻です。

そのテレサが幼少期を過ごした生家跡に、彼女の死後に建てられたバロック様式の修道院が聖テレサ修道院です。堂内奥にはテレサが生まれた場所があり、聖地として巡礼する人が後を絶たないそうです。祭壇には彼女が抱きしめながら息を引き取ったと伝えられる十字架があり、隣の美術館には聖女にまつわる品々が展示されています。修道院としては簡素な感じですが、この後沢山の欧米人団体がやってきたので人気もあるのでしょう。

夕方まで城内の教会を訪ね歩きました。城壁はローマ帝国時代に建造された石塀の跡に沿って建てられていて、全長約2.5kmに及びますが歩いてくれば良かったと後悔しています。

マジパンのお菓子を見るとシチリアを連想しますが、イベリア半島ではどこにでもあるのですね。見た目は綺麗だけどどうも好きになれません。パラシオには併設のレストランがあったので夕食を楽しみにしていたのですが急に具合が悪くなり部屋で臥せっていました。
残念なアヴィラの夜でした。

翌朝はバスターミナルへ向かいセゴビアへ移動です。
サン・ヴィセンテ教会の写真を撮ってアヴィラを後にします。

翌朝は体調は良くなっていたので助かりましたが、マドリッドに戻ってからまた具合が悪くなるのでした。