![2022年の11月下旬の旅行で男鹿半島を訪ねました。その時に行った「男鹿真山伝承館(なまはげ館)」でのなまはげ習俗を体験したことが印象に残り、2月の11日に行われる「なまはげ柴灯まつり」をどうしても見てみたいと思うようになりました。東京からは数社が1泊2日のツアーを開催していましたが、ご多分には漏れずお祭りのツアーはかなりの割高になっていました。マイレージの期限もあり、秋田まではANAの特典航空券で往復して、全国旅行支援の適用になるホテルを予約しようと思いました。そしていろいろ調べてみると読売旅行社で秋田駅前発の1日ツアーがあることが分かりました。どうせ行くなら数日間滞在したいと思い、さらに調べていると「なまはげ柴灯まつり」の前日の10日の夜に「冬の風物詩!上桧木内の紙風船上げ 日帰り」というツアーが同じ読売旅行社であることが分かりました。そこでこの2つのお祭りと秋田市内の観光を組み合わせて3泊4日の旅行の計画を立てました。2023年になってからの全国旅行支援では秋田県は早くに開始が決定していたのでホテルの予約はスムーズでした。問題だったのは読売旅行社の日帰りツアーの催行決定が、旅行に出かける直前だったことでした。調べてみると男鹿半島ヘは自力で行くことはできますが、秋田市内から上桧木内まで行って、祭りを見た後に戻ることは不可能でした。これは前の旅行の門司港に滞在中にも毎日のように旅行会社のHPを確認していました。出発の当日の東京は快晴で、空港と機内からの眺めは最高でした。秋田空港手前から雲に覆われ、初日の秋田は曇天のようです。空港からはリムジンバスに乗ってJR秋田駅西口に向かいました。バスを降りて数分で予約していた「ANAクラウンプラザ秋田」で荷物を預かってもらいます。<br />そしてタクシー乗り場から川反(かわばた)の「濱乃家」に向かいます。事前に予約してありましたが、お昼の入店のリミットぎりぎりでした。少し遅れての到着でしたが気持ちよく応対していただき、個室で食事を楽しみます。おかみさんが付きっきりで、楽しいお話を聞かせていただきました。料理も素晴らしく、きりたんぽ鍋がメインではありますが、2月の節分をテーマにした料理も素晴らしかったです。店を出る際に廊下の奥に太鼓橋が見えたので尋ねてみると、女将さんが料亭の中を案内してくださいました。表通りまで見送っていただいて、歩いて「秋田市立赤れんが郷土館」に向かいます。雪の積もった昼間の飲み屋街の風情もなかなか良かったです。旧秋田銀行本店本館だった郷土館の建物は素晴らしく、今年は森岡が注目されていますが、秋田も同じくらい素晴らしいと思います。さらに別棟にあった「勝平得之記念館」も素晴らしく、その版画に見入ってしまいました。これまで全く知らない作家でしたが、昔の風俗を見ていると幼い頃に横手を旅したことが思い出されます。残念ながら写真撮影が禁止でしたが、もっと知ってもらえればよいと思いました。復刻版でしたが、この日の夜に行った飲食店に飾ってあり、ご主人にお願いして写真を撮らせていただきました。<br /><br />](https://cdn.4travel.jp/img/thumbnails/imk/travelogue_album/11/81/42/650x_11814230.jpg?updated_at=1678978328)
2023/02/09 - 2023/02/09
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2022年の11月下旬の旅行で男鹿半島を訪ねました。その時に行った「男鹿真山伝承館(なまはげ館)」でのなまはげ習俗を体験したことが印象に残り、2月の11日に行われる「なまはげ柴灯まつり」をどうしても見てみたいと思うようになりました。東京からは数社が1泊2日のツアーを開催していましたが、ご多分には漏れずお祭りのツアーはかなりの割高になっていました。マイレージの期限もあり、秋田まではANAの特典航空券で往復して、全国旅行支援の適用になるホテルを予約しようと思いました。そしていろいろ調べてみると読売旅行社で秋田駅前発の1日ツアーがあることが分かりました。どうせ行くなら数日間滞在したいと思い、さらに調べていると「なまはげ柴灯まつり」の前日の10日の夜に「冬の風物詩!上桧木内の紙風船上げ 日帰り」というツアーが同じ読売旅行社であることが分かりました。そこでこの2つのお祭りと秋田市内の観光を組み合わせて3泊4日の旅行の計画を立てました。2023年になってからの全国旅行支援では秋田県は早くに開始が決定していたのでホテルの予約はスムーズでした。問題だったのは読売旅行社の日帰りツアーの催行決定が、旅行に出かける直前だったことでした。調べてみると男鹿半島ヘは自力で行くことはできますが、秋田市内から上桧木内まで行って、祭りを見た後に戻ることは不可能でした。これは前の旅行の門司港に滞在中にも毎日のように旅行会社のHPを確認していました。出発の当日の東京は快晴で、空港と機内からの眺めは最高でした。秋田空港手前から雲に覆われ、初日の秋田は曇天のようです。空港からはリムジンバスに乗ってJR秋田駅西口に向かいました。バスを降りて数分で予約していた「ANAクラウンプラザ秋田」で荷物を預かってもらいます。
そしてタクシー乗り場から川反(かわばた)の「濱乃家」に向かいます。事前に予約してありましたが、お昼の入店のリミットぎりぎりでした。少し遅れての到着でしたが気持ちよく応対していただき、個室で食事を楽しみます。おかみさんが付きっきりで、楽しいお話を聞かせていただきました。料理も素晴らしく、きりたんぽ鍋がメインではありますが、2月の節分をテーマにした料理も素晴らしかったです。店を出る際に廊下の奥に太鼓橋が見えたので尋ねてみると、女将さんが料亭の中を案内してくださいました。表通りまで見送っていただいて、歩いて「秋田市立赤れんが郷土館」に向かいます。雪の積もった昼間の飲み屋街の風情もなかなか良かったです。旧秋田銀行本店本館だった郷土館の建物は素晴らしく、今年は森岡が注目されていますが、秋田も同じくらい素晴らしいと思います。さらに別棟にあった「勝平得之記念館」も素晴らしく、その版画に見入ってしまいました。これまで全く知らない作家でしたが、昔の風俗を見ていると幼い頃に横手を旅したことが思い出されます。残念ながら写真撮影が禁止でしたが、もっと知ってもらえればよいと思いました。復刻版でしたが、この日の夜に行った飲食店に飾ってあり、ご主人にお願いして写真を撮らせていただきました。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 4.5
- 交通
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 観光バス タクシー ANAグループ 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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午前6時の「メトロポリタンホテル池袋」、羽田空港へは大江戸線の大門経由でモノレールというルートもありますが、電車の混雑を考えると空港の出発ロビーまで運んでくれるリムジンバスが便利です。
ホテルメトロポリタン 宿・ホテル
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今回はずっと繰り越していたマイレージの特典航空券を利用して秋田空港を往復します。そろそろ特典航空券を利用しないとコロナ禍で溜まったポイントが無駄になってしまいます。
羽田空港 第2旅客ターミナル 空港
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出発までかなり時間があったので「つきじ亭」で軽く朝食をとることにします。
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と思いながらメニューを見たらかけそばと牛丼のセットになりました。
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妻は月見そばです。揚げ玉は自由にいただけるのでかけそばでもタヌキそばになります。基本は立ち食いそばなので蕎麦の香りなどは期待できませんが美味しかったです。
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天気も良かったので展望デッキにも出てみます。「東京ゲートブリッジ」がきれいに見えました。
羽田空港第2旅客ターミナル 展望デッキ 名所・史跡
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千葉方面のビルも蜃気楼のように海上に浮かび上がっています。
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空気が澄んでいるので「スカイツリー」の細部も望遠レンズできれいに写せました。
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離陸する飛行機はいくつになっても写真に納めたくなります。
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3月には冬の道東の流氷クルーズに行く予定です。
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ANAの秋田便は沖止めなのでバスに乗っての搭乗となります。
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沖止めの機体の搭乗は面倒ではありますが、飛行機に乗る臨場感が感じられるので嫌いではありません。
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昔はみなこうやって飛行機に乗り込みましたし、記念写真も撮れるので楽しいです。
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遊んでいると最後の搭乗になりますが。次のバスが到着したので早く乗りましょう。
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秋田への往路はA席とB席を指定してありました。天候次第ですが、飛行機の中から眺める景色が大好きです。
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快晴の朝なので富士山もきれいに見えました。これだけでなんか得した気分になれます。
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「船の科学館」は臨海副都心という言葉や周辺の建物、住所も無かったこの東京港の埋立て地に昭和49年の1974年に開館しました。当時中学生で話題になったことをぼ得ていますが、行ったことはありません。現在は船の形を模した本館の展示公開を休止し、初代南極観測船「宗谷」を中心とした屋外展示になっているようです。
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丹下健三の設計したフジテレビの社屋とレインボーブリッジもきれいに見えます。防波堤とお台場の名前の由来となった「第六台場」もうまく納まりました。
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「スカイツリー」は背が高いので、手を伸ばせば届きそうな気がします。
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西に目をやると富士山がさらに美しく見えます。これだけ空が澄んでいるのも久しぶりな気がします。
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何度見ても独立峰の富士山は美しいと思います。
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今年の夏には50年ぶりに登ってみようかと考えていますが、メタボ状態なので登れる自信はあまりありません。4歳と6歳、9歳と12歳の4回登って3勝1敗の成績です。
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遠くに雪を頂いた日本アルプスの山並みが見えますが、遠すぎてどの辺りか分かりません。北アルプスであればその多くを父と登っています。
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関東平野を超えると上越の山々が見えてきて、快晴の空から冬らしい風景に変わっていきます。
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すっかり雲で覆われてしまいました。
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着陸前の風景はまだ真冬のようです。今回は冬の秋田の祭りを見るための旅です。
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秋田空港に到着しました。
秋田空港 空港
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荷物を受け取ってインフォメーションで地図を貰って、スタンプを押していたらバスの出発の時間になってしまいました。すでにかなりのお客さんが乗っていてほぼ満席です。
秋田駅 駅
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秋田駅西口の終点でバスを降り、歩いて数分の所にある「ANAクラウンプラザ秋田」が今回の宿泊先です。まだ午後1時なのでチェックインは出来ず、荷物だけ預けてタクシー乗り場に向かいます。
ANAクラウンプラザホテル秋田 宿・ホテル
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出発の1週間ほど前に予約をしようと思い電話した「濱乃家」は当初翌日か翌々日で考えていましたが、金曜日は臨時休業で、土曜日は予約でいっぱいということで到着してすぐになりました。
料亭 濱乃家 本店 グルメ・レストラン
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午後0時30分がランチの最終入店時間でした。思っていたよりもすごい料亭なのにびっくりしました。大正7年の1918年に東北有数の本格的な数寄屋造りの料亭として創業された店です。
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大きくて立派な玄関で靴を脱いで、案内されたのは個室でした。ランチの「きりたんぽ」のコースなので、大部屋で提供されるのかと思っていました。
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座敷でもテーブル席だったので椅子に座ってらくちんでした。テーブルには食事の用意がされていました。被せ紙には秋田の名物が描かれています。湯沢の犬っこ祭り、横手のかまくら、秋田市の竿燈、秋田蕗ときりたんぽ。
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今回はきりたんぽのコースなので、土鍋の中身が気になるようです。
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初代のご主人は「本当に美味しいきりたんぽ鍋を作り続ければ、秋田の伝統の味は守り続けられるのではないか。」と、料亭では異例である家庭料理の「きりたんぽ鍋」を提供し始めたそうです。
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覆い紙の下にはこんなお料理が隠れていました。おかみさんが料理について説明してくださいましたが、書き留められなかったので2回説明していただきました。
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備前風の小鉢にはふぐの塩辛です。甘味が先に立って、後から塩辛と感じるほのかな塩味です。つい先日は下関で”ふく三昧”でしたが、秋田でもいただけました。
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京風の瓢の透かしの入った小鉢は切り干し大根のなますといくらの和え物です。
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これは冷酒にしないといけません。ビールの次は秋田の地酒の「刈穂六舟(ろくしゅう)」にしました。全ての酒を伝統の酒槽でしぼり、六舟の名前は現存する6つの酒槽(さかふね)に由来します。すっきりとした喉越しを感じながら、秋田は日本酒の宝庫だよなと昨年暮れの旅を思い出します。
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能代春慶塗の丸盆には扇面の皿と枡形の吹き墨の器が乗っています。訪れたのは2月9日でしたが、節分をあしらった料理でした。柊の葉の上に乗った桝の中には節分の豆のように、うるいと大豆の酢の物が盛り付けてあります。おかみさんの説明でなるほどと思ったのが海老の天婦羅で、あられを衣にして、鬼の金棒に見立ててあります。
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染付の洗面には節分なので鰯の梅煮、菜の花のサーモン巻、蟹のクリーム寄せ、梅の形にした山芋の甘酢漬けです。どれも美味しくてこの料亭の歴史を感じます。
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頃合いを見計らっておかみさんがきりたんぽの用意をしてくださいます。「全国ご当地お鍋ランキング」の第2位に選ばれた濱乃家名物の「きりたんぽ鍋」です。最高級のササニシキを食感が残るように半づきにし、秋田杉の串に手づくりで巻きつけ、こんがり焼いたきりたんぽです。
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湯沢市三関地区は明治22年に関口村、上関村、下関村の3つ区域で三関村として発足した旧町村で、この地は”三関セリ”の産地として有名です。新鮮なセリが鍋に入れられます。
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この店では葛切りを使うそうですが、鍋に入れてしまうと出汁を吸いすぎてしまうので、鍋から出汁をかけてと手間をかけて準備してくださいます。
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きりたんぽを食べるのはいつ以来だったか記憶が定かではありませんが、子供の頃に父はどこかのデパートで買い求めてきて、急に晩御飯で食べたのを覚えています。
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このお店のきりたんぽ鍋は美味しかったです。比内地鶏のスープの味は忘れられません。今回初のいぶりがっこと野沢菜の漬物も美味しいです。秋田市内にはきりたんぽを食べさせる店はいくつもあると思いますが、時間があるならばここはおすすめです。
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帰り支度をしていると奥に太鼓橋と擬宝珠高欄が見えたのでおかみさんにお尋ねすると、「簡単にご案内しましょうか?」とおっしゃるのでお言葉に甘えます。ここだけのでも料亭の建築がただ者ではなくて、趣向に凝らせたものだと感じます。
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すぐに頭に浮かんだのは大阪の飛田新地の「鯛よし百番」の建物です。そして先日見学してきたばかりの門司港の「三宣楼」、小樽の「海陽亭」が思い出されます。
「鯛よし百番」:https://4travel.jp/travelogue/11723795
「三宣楼」:https://4travel.jp/travelogue/11810598 -
2階には小さな3つの座敷があり、それぞれが「松の間」「竹の間」「梅の間」になっています。梅の間の障子窓には咲き誇る梅の木がシルエットになっています。
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竹の間の床柱や長押(なげし)は孟宗竹やいくつかの種類の竹が使われています。格天井の枠は四角い竹が使われています。これはタケノコに四角い枠を被せて、竹を四角く成長させたものです。
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この部屋の障子の外には竹の意匠がシルエットになっています。昼間は透かしになりますが、夜はどうなんでしょう。
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障子の桟も遊び心が感じられます。竹を縦に割って、節までもスライスして桟に組み入れています。その意匠は欄間の彫刻に繋がっています。
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まるで巨大な影絵を見ているようです。そのうち雀でも飛んできそうな気がしてきます。
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外に積もった雪に当たった太陽光線が反射して驚くほど明るく感じます。おかみさんは「電気もつけずにすいません。」とおっしゃいますが、照明をつけたらすべてが台無しになるなと感じました。まさに雪見障子の面目躍如です。
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歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」を思い出させるシルエットです。障子の縦桟は小雨のように見え、階段室の下地窓は稲光のようです。
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梅の間の床柱はもちろん梅の古木です。障子の内側は槍梅が見事に彫り上げられています。壁の漆喰も紅梅色になっているようです。
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最近張り替えたという襖も雲母で梅の花が押されています。これも外光が当たってきれいに反射しています。もちろん引手も梅の形をしています。
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最後に2階の大広間を見せていただきます。書院障子には天女が舞っています。
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65畳の大広間は一見シンプルな意匠ですが、格天井も細かい細工が施され、吊り下げられた照明も大正期前後の頃のものだと思います。障子の桟も縦残だけがダブルになって、組子になっています
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建物の中に路地をあしらえてお茶室もあるようです。雪の多い地方ならではの工夫なのかもしれません。
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女将さんにお礼を申し上げて午後の観光に向かうことにします。秋田に来てここへ来ることが出来てよかったと思います。
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女将さんに表通りまでお見送りいただきました。最近そんなお店も少なくなりました。今はもうありませんが、京都の烏丸仏光寺にあった「桜田」さんというお店は祖母や叔母と縁のあるお店で何度か2人を連れて行ったことがあります。お店を出て四条通までかなりの距離があるのですが、通りに出るまでお見送りいただいて恐縮したことを思い出します。何しろ祖母の両手を引きながらの後ろ歩きなので、ずっと顔を合わせる形になります。
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「濱乃家」を出るとその周辺は川反(かわばた)と呼ばれる飲食街です。こんな雪の積もった飲食街を歩くのは久しぶりのような気がします。晩御飯もこの辺りまで来ようと思っています。
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なれない雪道を数分歩くと「秋田市立赤れんが郷土館」に着きました。郷土館といっても明治45年の1912年に建てられた「旧秋田銀行本店」で、昭和44年まで銀行として使われていました。建設費は当時の約4万9千円で、現在の貨幣価値に換算すると50億円ほどだったようです。昭和56年の秋田銀行創業100周年と秋田市制施行90周年を記念して秋田銀行から市へ寄贈され、昭和60年から「赤れんが郷土館」として一般に公開されています。
秋田市立赤れんが郷土館 美術館・博物館
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外観は当時の秋田県技師の山口直昭、内装は星野男三郎が設計しています。レンガ造りの2階建ての外観はルネッサンス様式を基調とし、基壇は灰色の寒風石の切り積み、1階が白磁器タイルで仕上げ、2階の仕上げレンガタイルは大阪から運ばれてきた高級品だそうです。構造体となる赤レンガは秋田でレンガ積み建築物を一手に引き受けていた楢山愛宕下の「かめ座」で焼かれたものです。
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北欧ルネッサンス風の外観は、2階の窓は楣(まぐさ)のある架構式で、1階はアーチ式とスタイルが変わっています。
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重厚な扉を押して中に入ると、寒冷地の建築にある風除室が設けられていました。入り口の階段や側石、帯石は秋田の男鹿半島の寒風石が使われています。写真には写っていませんが、屋根のスレートは宮城県石巻市の雄勝石が使われていました。
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正面入口を入るとそこは旧営業室で、明治期に建てられた同じ時代の銀行建築によく似ていると思いました。小樽にある日本銀行小樽支店などの内装が思い出されます。
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当時の上棟棟木と竣工棟木も残されていました。洋風建築でありながらも日本建築の決まりごとは踏襲されているのだと感じます。
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漆喰の白い壁に施された装飾は、複雑で華麗なバロック様式を表現しています。
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福島県産の霞石を使用したバロックスタイルの暖炉はフィレンツェで見たメディチ家の墓標のようにも見えます。
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営業室の空間は2階までの吹き抜けになっていて、忍冬唐草(にんどうからくさ)模様のレリーフが美しい天井には豪華なシャンデリアが吊るされています。
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今年になってNYタイムズが選ぶ「今年行くべき世界の旅行先」2位に盛岡が選ばれていますが、同じくらい秋田も魅力があると感じます。
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頭取室の暖炉はさらに豪華で、バロックスタイルを岐阜県産の紅縞石と薄雲石で構成されています。扉を含め総欅造りの重厚なインテリアに仕上がっています。
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廊下の開口部のアーチの装飾はハンガリーの世紀末建築を連想させます。レヒネル・エデンの設計した郵便貯金局や地質学研究所と工芸美術館を思い出させます。
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1階の奥には秋田の工芸品の展示コーナーがありました。秋田の蕗摺りというものを初めて知りました。これは魚拓のような形で蕗の葉をそのまま絹地などに摺り染めたものです。秋田蕗という名前ですが、北海道に自生する蕗の多くは秋田蕗で、コロポックルもこの葉の下に棲んでいます。
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秋田焼きという明治の中頃に始まった焼き物でだそうです。当初は楽焼のようなものでしたが、後に素焼きに達磨や蛙のりっやい彫刻を施し、茶器が造られるようになりました。お茶を注ぐたびに達磨の目が飛び出すアイディアが奇抜です。
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日本各地の土人形には以前より興味があり、機会があれば買い求めたりしています。八橋(やばせ)人形も秋田県を代表する伝統玩具の1つです。粘土の合わせ型を用いて形を作り、素焼きしたものに絵付けをして仕上げています。約240年前の安永年間から天明の頃に京都伏見の人形師がこの地で焼いたのが始まりといわれます。
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天満宮の信仰や山王祭の賑わいと共に盛んになり、城下町の久保田では男の子の宮参りには天神人形、女の子の節句には雛人形を飾って祝ったそうです。菅原道真は牛に乗った「牛乗り天神」の姿で現されています。
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江戸から明治期に作られていた古八橋人形は金銀を使わず、白と黒、朱と緑青、黄と群青の6色のみが使われたようです。
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無印良品の福缶にもこの八橋人形が使われたことがあるようです。2014年に最後の職人さんが亡くなり、伝承会が引き継いでいるということです。
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秋田の文字をデザインした秋田銀行の古い行章も展示してあります。
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貴賓室の床は欅の寄木板張りという高級感のある内装になっています。上部のクロスは手描きで、ギリシャ風の月桂冠を図案化しています。補修工事の際も柿渋塗りで復元されています。
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蛇紋岩で造られた重厚な暖炉も設けられています。
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非常に豪華な印象を与えます。この当時の秋田銀行のVIP顧客はどんな人たちだったのでしょう。
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2階の廊下からも営業室の吹き抜け空間がきれいに眺められました。
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階段は寒水石で造られています。寒水石は茨城県北部から産する結晶質石灰岩の石材名のことです。
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2階の見学を終えて、別館の「勝平得之記念館」の見学に移ります。
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残念ながらこの展示室の中は全て撮影禁止でした。勝平得之(かつひらとくし)は家業である紙漉き業と左官業の傍ら絵を描いていたところ、竹久夢二の絵に惹かれて浮世絵版画を始めます。このときに色刷版画の研究をし、1928年に自画、自刻、自刷の彩色抜法を完成させます。以後は故郷である秋田の情景を描き続けました。
勝平得之記念館 美術館・博物館
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昭和10年の1935年に秋田県を訪れたドイツの建築家のブルーノ・タウトと知り合いになり、作品が世界に紹介されました。「ケルン東洋美術館」には代表作およそ70点が保存されているそうです。
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今回ここへ来るまで全く知らない作家でしたが、妻もその作品に魅了されました。事務所で数種類の絵葉書セットが販売されていたのでそのすべてを買い求めました。
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ブルーノ・タウトが秋田へ来た話もここで初めて知るとこになり、次に行った「旧金子家住宅」の屋根の上に置かれた防火用の甕に惹かれたということも知りました。3月の下旬には熱海にある「旧向井熱海別邸」へ行く予定ですでに予約もしてあります。ここの地下室はブルーノ・タウトが内装を設計したもので、タウトが日本国内に残した唯一現存する建築作品です。
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ここでは作品の写真を撮ることが出来ませんでしたが、夜に食事に行った川反の「秋田川反漁屋酒場」の店内には20枚ほどの版画が展示してあり、店のご主人にお願いして写真を撮らせていただきました。新しい発見ばかりの秋田の旅が進んでいきます。
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