2019/03/02 - 2019/03/17
5位(同エリア100件中)
ウェンディさん
- ウェンディさんTOP
- 旅行記377冊
- クチコミ2248件
- Q&A回答132件
- 1,993,516アクセス
- フォロワー343人
幼い頃に読んだ世界の不思議話。
イースター島のモアイ、ストーンヘンジ、エジプトのピラミッド等、子供心にその謎解きに非常にワクワクしていました。
中でも、古代地底人とかムー大陸とかのヘンテコ考古学などはその摩訶不思議な説に幼心をときめかせたものです。
ムー大陸などは完全に想像物語ですが、高校生の時にゴンドワナ大陸やパンゲア大陸はどうやら本当に実在した大陸であるという事を地学で学びました。
更に、2億年前のゴンドワナ大陸が、20世紀(高校時代は20世紀でした)にも未だに存在しているという事も・・・。
一時は将来の仕事として考古学の研究者を考えたことのある私は、古生代の名残を残すゴンドワナが今なお実在するなんて…と、地学の授業に目がキラキラ♪
3月に旅したベネズエラ・ギアナ高地は、2億年前に起きた地球の大地殻変動である大陸大移動の際に奇跡的に残され、古生代からの生き残りの生物や植物たちが独自の進化を遂げた土地でした。
そんな不思議エリアでのトレッキング4日目はなんと1日で33kmを歩く強硬トレッキングで、ロライマ戦艦の果てにあると言われる絶景;The Prow(西語:La Proa)を目指して歩きます。
The Prowは日本語でネット検索をしてもその情報は全く得られない場所で、ネット情報が得られないどころか、ベネズエラのプロのトレッキング・ガイドですら数年に1回そこへ行くかどうかというレアな場所です。
しかし、噂を信じるならばテプイの上をベネズエラを抜けブラジルを通り、ガイアナ側へと入ったThe Prowへたどり着くまでの光景、そしてThe Prowからの景色は滅多に見ることのできない絶景だと云われている場所でもあります。
The Prowへのトレッキングは相当厳しいものでしたが、変わりゆく景色を眺めながら、くじけず、楽しく、真っ黒に日焼けしながらも歩いてきました。
この世界の果て、テプイの果てのThe Prowへの道のり、ゴンドワナが残した世界の果ての絶景;The Prow。
The Prowへと辿り着く事の出来た日本人は、もしかすると、私たちが初めてなのかもしれません。
そんなThe Prowへ挑戦した1日(The Prowまでの道のり)を旅行記で紹介します。
【表紙写真:クワティ・ホテルにて ロライニートから昇る朝陽を眺める】
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 4.5
- 交通
- 3.5
- 同行者
- カップル・夫婦
- 一人あたり費用
- 50万円 - 100万円
- 交通手段
- 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
☆★☆2019年3月-ギアナ高地トレッキング 旅程☆★☆
・3/2 NRT18:25-DFW-MIA21:38 マイアミ宿泊
・3/3 MIA- BLA(ベネズエラ)プエルトオルダス宿泊
・3/4 Paraitepuiへ移動(9時間)パライテプイ宿泊
・3/5-3/11 ロライマ山 6泊7日 トレッキング
3/5 Day1:パライテプイ村→クカナン・キャンプ
3/6 Day2:クカナン・キャンプ→ロライマ・ベースキャンプ
3/7 Day3:ロライマ・ベースキャンプ→カラカス・キャンプ
□3/8 Day4:カラカス・キャンプ→The Prow→クワティ・キャンプ
3/9 Day5:クワティ・キャンプ→プリンシパル・キャンプ
3/10 Day6:プリンシパル・キャンプ→クカナン・キャンプ
3/11 Day7:クカナン・キャンプ→パライテプイ村
・3/12 Puerto Ordasへ移動(9時間) プエルトオルダス宿泊
・3/13 エンジェルフォールへ カナイマ宿泊
・3/14 エンジェルフォール遊覧飛行 プエルトオルダス宿泊
・3/15 BLA18:00-MIA21:00
・3/16 MIA06:50-CHI-
・3/17 NRT15:30
☆★☆2019年3月-ギアナ高地トレッキング 旅行記☆★☆
【1】旅の序章 -アクセス・安全情報・トレッキング準備編
https://4travel.jp/travelogue/11487969
【2】ロライマ・トレッキング Day1 -プリプリ悪魔の洗礼
https://4travel.jp/travelogue/11491355
【3】ロライマ・トレッキング Day2&3 -魔境の台地へ
https://4travel.jp/travelogue/11524363
【4】ロライマ・トレッキング Day3(PM) -水溜まりの楽園
https://4travel.jp/travelogue/11525847
【5】ロライマ・トレッキング Day4 -世界の果てThe Prowへ
https://4travel.jp/travelogue/11536306
【6】ロライマ・トレッキング Day4&5 -サイバー攻撃で通信がダウン
https://4travel.jp/travelogue/11539851
【7】ロライマ・トレッキング Day5&6-不思議な絶景のロライマ山
https://4travel.jp/travelogue/11715107
【8】ロライマ・トレッキング Day6・7&帰路 -拷問坂を往く
https://4travel.jp/travelogue/11772791 -
3月上旬にベネズエラ入りをした私たちは、中華マフィアが支配する無法地帯の町;Las Craritasを通り抜け、ロライマ山トレッキングの基地となるパライテプイ村で現地先住民民族;ペモン族のポーターを雇い、6泊7日のトレッキングをスタートさせた。
ロライマ山頂まではパライテプイ村から2泊が必要で、ようやくテーブルマウンテンであるロライマのテプイの上に辿り着いたのが1日前のこと。
昨日は、のんびりとテプイの上を散歩し、ゴンドワナが残した奇跡の進化を目の当たりにし、そのAmazingな世界を愉しんだ。
トレッキング4日目(ロライマ山頂滞在2日目)となるこの日は、旅の中でも一番のロング・トレックとなる日。
軍艦型をしたロライマの山頂をその端まで歩き、多分、本邦初公開となるであろう世界の果て;The Prowまでの道を歩く。 -
イチオシ
2019年3月8日 ロライマ山トレッキング4日目
起床は朝の5時。
目覚めた時はまだ星が瞬く未明の天だったが、テントの中で着替えをしている内にあっという間に東の空が明るくなり始めた。
空には雲一つない。
これは、私たちがロライマの山の神様に歓迎されている証拠。
今回、私たちのポーターをしてくれているのは原住民族のペモン族のファミリーで、ペモン族は古くからロライマ山を神の山として信仰している。
一般的にはテプイ=テーブルマウンテンと訳すが、もともとテプイという単語はペモン族の古語で、ペモン族の中でテプイと言えば”神が座す土地”を指す。
つまり、ロライマ・テプイはロライマ神が支配する山(土地)という意味となるのだ。
そのペモン族の彼らが言うには、ロライマ山が朝から雲一つなく晴れる時は、それは山神の心が落ち着いているからだという事だった。
ロライマの神は気まぐれで嫉妬深く、山神の気に染まない人物が山の上へとやってくると、彼女(ポーターのアレックスは神の事をElla(英語のSheに相当する三人称主語)と称していた)は嵐を起こし、雨を降らせ、その人間を頂上から排除しようとするらしい。
因みにロライマ山の山頂域では発してはいけないタブーの言葉が存在する。
どんな言葉かって?
嫉妬深い女神さまが山神といえば、タブーの言葉はただひとつ。
---他の神(テプイ)を褒める言葉だ。
ギアナ高地の台地;テプイにはそれぞれ固有の神がいらして、特にロライマ山の上では他の神様の噂は禁物。
ロライマ山の上でうっかりと他のテプイの名を口にしようものならば、無事に下山できる保証はなくなってしまう…そんな風にポーターたちは話していた。 -
朝焼けの中に浮かび上がるキャンプ・サイト(カラカス・ホテル)からロライマの台地を見下ろす。
他の惑星の大地に居るのだ・・・と言われたら信じてしまいそうな程、地球離れした光景だった。 -
3月のロライマ山頂の夜間気温は10℃前後で、就寝時の服装は冬用の登山パンツに暖かい長袖トレーナーが必要だった。
しかし、日中は30℃近くまで気温が上昇するので、朝起きたら最初にすべきことは日中に適した服装への着替えだ。
そして、着替えの次にすべきなのはトイレ。
トイレは1つしかなく、それを総勢8人(私、相棒、ガイド、ポーター5人)が利用するので、トイレが空いていたら行ってしまう方が良い。
トイレと言ってもロライマ山のトイレは草原トイレではなく、ちゃんとした個室タイプ。
秘境のロライマ山の上に個室トイレ!!!とは驚きの情報だと思うが、個室トイレは移動式トイレで、私たちと共に一緒に山の上を動いている。
ロライマ山では、人間に属する物質は何ひとつ残してくることは出来ないというルールがある。
勿論、私たちの排泄物も残してはならないモノの一つで、このトレッキングでもポーターの一人が小さなトイレ用のテントを運んでくれて、その小テントの中で用を足す。
排泄物は小さなビニル袋に脱臭剤と共に入れ、麓まで持って帰らなければならない。
写真は、トイレからの帰路に見つけた岩陰の小さな植物。
なんだかナウシカの世界に出てきそうな植物だった。 -
昨日は夕方まで白い霧が辺りを覆い隠していたので、景色の遠望は出来なかったのだが、この日はテプイの上は雲一つない晴天。
カラカス・ホテルの高台の上からお向かいにあるクカナン山のテプイが見えた。
(ロライマ山の上ではキャンプ場の事を通称ホテルと呼ぶのが習わしで、全てのキャンプ場に○○ホテルの名前が付けられている) -
そして、カラカス・ホテルのキノコ岩をクルリと廻り込むと、雲海の向かいにクカナン山と本日のトレッキングの目的地であるThe Prowが見えるポイントを発見!
目の前に見えるThe Prow。
近くに見えるが実はかなりの距離があり、辿り着くまでは約23kmを歩かなければならない。 -
そんな朝の景色を眺めていたら、朝食の時間。
この日の朝、ポーターさん達は4時半ごろから起床し、水たまりに飲料水を汲みに行ったり、揚げパンを作ったりと大忙し。
朝食は揚げパンの中にチーズや蜂蜜を入れたものだ。
(ロライマ山上での飲料水についてのメモ:ロライマ山頂には河川が無く、飲料水は雨水がたまった昆虫や両生類が生息する水溜まりの水をそのまま飲む。煮沸はしないが、お腹を壊すことはなかった) -
朝6:15、ロライマ山からの日の出。
実際のこのエリアでの平地の日の出は6時位なのだが、私たちが居るのは山の上なので、少しだけ日の出が遅かった。 -
食事が終了したら、すぐに出発の時間。
私たちが食事をしている間に、ポーターのアレックスとエルナンがテントの撤収を終えていて、出発の準備はバッチリ。
朝日が照らし始めたばかりのテプイの上を歩き出す。 -
歩き出してすぐに小さな野草にトラップされた。
朝日の射し込む角度は低く、朝の光は足元の小さな植物にとってはスポット・ライト。
昨日の午後には暗がりにいて見つけることの出来なかった植物たちが、此処にいるよ!とアチコチで自己主張を始めていた。 -
5分位歩いて後ろを振り返ると、カラカス・ホテルのキノコ岩が青空の中に浮かび上がっていた。
確かにキノコの傘状に張り出した岩屋根のあるカラカス・ホテルの立地は風雨をしのげるシェルターを兼ねたキャンプ場としては最適だ。
ロライマの台地の上、特にテプイの中央部では屋根のあるキャンプ地を探すのは至難の業。
登山者の多い時にはキャンプ場のとりあい合戦になることもあるそうだ。 -
ロライマ山の山頂はけっしてだだっ広い平らなスペースではなく、凹凸が激しく、岩あり、谷あり、池あり・・・と起伏に富んでいる。
-
通りかかった池でガイドのFelixが何を発見!
-
Felixが見つけたのはトンボの幼虫のヤゴ。
なんだ…トンボかぁ…なんて思ってはいけない。
ヤゴの大きさは8cm程と大きめで、ロライマ山で独自の進化を遂げたトンボだそうだ。
その成虫の姿をぜひ見てみたかったのだが、残念ながら成虫のトンボには出会えなかった。 -
アップダウンが激しい道を歩く。
衣類等の重い荷物はポーターさんが持っていてくれているので、背中のバックパックには雨具や水筒等の歩く時に最低限に必要なものだけ。
だから、多少の悪路もそれなりのスピードで歩くことができる。
小さな木があるところでガイドのFelixが足を止めて、ほら、此処を見てごらん♪と声をかけてくれた。 -
イチオシ
Felixが見つけたのは、ロライマ山で独自の進化を遂げたカエルのオリオフリネラ。
オリオフリネラは卵から直接カエルの姿で生まれてくるオタマジャクシにならないカエルで、その手足の掌には水かきをもたない。
そしてジャンプをするための強靭な後ろ足の筋肉も無い。 -
オリオフリネラには昨日の午後にも出会ったが、昨日は会えたことに興奮して詳細な部分までの観察は出来ていなかった。
だけど、心に余裕のあるこの日はじっくりと木の上を移動するオリオフリネラの様子を観察。
オリオフリネラは、両手両足の指を器用に動かして細い木の枝の上をバランスを取りながら上手に移動していった。 -
そして、オリオフリネラを観察していた私はこのカエルが何かに似ていることに気が付いてしまった。
オリオフリネラが似ているその何かとは…宇宙人。
アメリカ映画(エリア51の類)に出てくる初期の頃の宇宙人の目とオリオフリネラの顔の雰囲気がそっくりだ。
オリオフリネラがロライマ山域で独自の進化を遂げた蛙として発見されたのはつい最近の事で、それは、アメリカ映画において宇宙人の姿形がが具現化された時よりもかなり後の時代の話だ。
アメリカの映像デザイナーが、まだ発見されていないオリオフリネラの顔を宇宙人のデザインに用いたとは考えにくい。
偶然の一致なのだろうが、アメリカ人の考えた宇宙人の顔つきと何千年も下界から切り離されたテプイの上で独自の進化を遂げた蛙の顔つきが似ているだなんて…不思議で面白い。 -
ロライマ山の上では多種多様な植物が息づいているが、その中で人間が口にしても中毒を起こさないのは数種類しかなく、その1つがこの写真でワサワサと生えている緑の板状の葉を持つ植物。
ガイドのFelixによるとアロエに近い植物で、その葉に水分をたっぷりと蓄えているとのことだ。 -
植物の可食部は根元の白い部分で、Felixが味見をした残りを齧らせてもらったが、青臭さはそんなには無く、ジューシーな食感。
ロライマ山頂で遭難しても、山の台地には水たまりが沢山あるので飲料水には困ることは無く、よほどのことがない限りこの植物のお世話になることは無いと思われるが、危機に面した時には役立つ情報かもしれない。 -
この日、私たちが朝6:40というかなり早い時間にキャンプ地を出発した理由。
その理由は、この日の歩行距離がトレッキングの中でも最長の33kmだから。
ロライマ山トレッキング4日目のこの日は、ロライマ山の北端にあるThe Prowと呼ばれる岬を目指していた。
The Prowがあるのはロライマ山を軍艦に例えるならば、船の舳先部分。
直線距離ならばそんなに遠くないのだが、山あり谷ありのテプイの上では歩ける場所が限られてしまい、The Prowへと辿り着くのに23km、そしてThe Prowから本日のキャンプ地であるクワティ・ホテルまで戻るのに10kmの距離がある。 -
行き方としては、カラカス・ホテルからブラジル・ガイアナ・ベネズエラ国境があるトリプルポイントを目指し、そこからは本日の宿でありクワティ・ホテルに行き、荷物をデポし、身軽になってThe Prowへと向かう。
The Prowはロライマ・トレッキングの団体ツアーでは難易度が高すぎてその旅程には含まれることがない場所で、ただでさえ日数が必要なロライマ山トレッキングで更にThe Prowまで足を延ばすトレッカーは、よほどのモノ好きか絶景マニア位しかいない。
多分、私たちはその両方が当て嵌るのかな。
自身の足で行ける範囲に絶景と呼ばれる自然の造形があるならば見たい!し、そこまで行ったことがある旅人が少ない・・・なんて聞いてしまったら、なおさらチャレンジしたくなるもの。
そのThe Prowへと向かう。 -
ロライマ山の西側壁近くを歩いている時に雲海の向こうに見えたのは、お隣テプイのクカナン(Kukanan)山の北端で、その背後には遠く見えるのがイルー(Ilu)テプイだ。
-
ロライマの山頂の砂は基本は黒っぽい色をしているのだが、時折、赤味(ピンク色)を帯びた砂や、白い砂がある。
白い砂はなんとなく想像がついたのだが、赤い砂は何に由来するのか分からなかった。
ガイドのFelixの説明では、赤い砂はなんと季節風に乗ってサハラ砂漠から飛んでくるそうだ。
最初に地質学者がロライマ山でこの赤い砂を見つけ、その成分を分析し、サハラ由来の砂だと判明したとのことだが、まさかの事実だった。 -
白い砂は、紛れもなくロライマ山由来で、その主成分はケイ素(Si)。
ロライマ山の岩は石英を多く含み、トレッキングルートの岩には石英の結晶体である水晶が埋まっている。
その石英が砕けたモノがこの白砂だ。
石英は鉱床の様に黒岩と黒岩にサンドイッチされたようにその層があり、ケイ素が多い岩には白と黒のシマシマ模様が出来、その表面は砕けたクリスタルの結晶でキラキラと輝いていた。 -
歩き出して1時間半後の8時過ぎにこの日初めての15分休憩。
休憩なのだが、私にとってロライマの植物の観察タイムで全然休憩ではない。 -
地面に腹ばいになり、植物たちが作り出す神秘の小宇宙をじっくりと眺める。
(写真:ガイドのFelix撮影) -
地上10cmの小さな楽園。
太陽の光の角度はまだ低いので、小さな花にも十分にその光が届く。 -
イチオシ
岩に張り付いた花たちが朝の太陽の光を喜んでいる様にも見えた。
-
足元に咲いていたのは食虫植物のモウセンゴケ;ドロセラ・ロライマエ(Drosera roraimae)。
ドロセラ・ロライマエは、世界中でロライマ山とクカナン山にしか生息しない貴重な植物だ。
紅の花びらから放たれる粘液の粒が、そよ風に揺れてキラキラ輝く。
見た目はカワイイ花;ドロセラ・ロライマエだが、昆虫にとっては恐ろしい捕食者だ。 -
休憩時間なのに全く休まずに植物観察を続ける私を見たガイドのFelixは、私を手招き。
手招きされた岩陰を見ると丸い葉の植物が岩に張り付くように生息していて、この植物もロライマ山域でしか見ることのできない珍しい種類だそうだ。
この植物はサボテンの仲間なのだがサボテンという名に似合わずお日様が苦手で、必ず日陰になる場所で子孫を増やしている。 -
休憩をしていたら、キャンプ場の荷物を片付けしエリカ母さんから私たちのランチを預かって来たポーターのアレックスとエルナン兄弟が早駈けで到着し、此処からはルートをよく知っているアレックスが水先案内人となった。
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ロライマの山頂には特に定まったトレッキングルートは無い(一応、基本ルートらしきものはあるがトレイル上には突然大きな池が出来ていたりするので、歩くルートは臨機応変だ)。
目的地に向かうために歩きやすい道を選ぶのも私たちを案内するのもポーター業務の一つで、アレックスは時折高い岩の上から台地を見下ろし、ルート確認を行っていた。 -
The Prowまでの中間地点である三国国境エリアが近づいてくると少しずつ植生が変化してきた。
この写真はまだ三国国境を通過前、ベネズエラ側に居る時の様子だが、地面の緑色のエリアが前日の旅行記の台地と比較してゆっくりと増えているのが分かるだろうか。 -
緑地エリアが多くなったとはいうものの、国境エリアは基本はゴツゴツの黒い岩が聳える場所がその殆どで、岩を乗り越えたり、その間をすり抜けたりしながら国境ポイントを目指す。
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1回目の休憩から30分歩いた9時過ぎ、岩の向こうに小さな白い三角形の何かを見つけた。
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最初にソレを見た時、どこかのパーティのトイレ用テントか?と思ってしまったが、近づくにつれ、白い物が何であるか分かった。
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イチオシ
白い三角標は三国国境地点を表すモニュメントで、通称;トリプル・ポイント(Triple Point)と呼ばれていて、ベネズエラ・ブラジル・ガイアナの3国がそれぞれ1面ずつを担当し、その面は支配する国内を向いている。
個人的には、ロライマ山の山頂に設置するのならばWhiteなんていう人工的な色ではなく、もっとナチュラルな色で国境モニュメントを作ってほしいところだが、“白”という色には意味がある・・・と云うのがガイドのFelixの説明。
どんな崇高な意味があるのかと思い、その先の話を聞いたのだが…。
トリプル・ポイントに白という人工的な色を使った理由は、ヘリコプターでロライマ山からの景色を楽しむ遊覧飛行のお客さんが国境ポイントを上空から見つけやすいようにするため・・・という何とも商業的な理由で、なんだかなぁ…という感じだった。
観光収入的には大事なところなのだろうが、やはり白ではなく、せめて茶色などの自然な色合いにしてほしいかな。 -
この日はまだ先が長いので、トリプル・ポイントのモニュメントでの滞在時間は5分だけで、そのまま歩き続ける。
トリプル・ポイントまではベネズエラ国内を歩いていたが、トリプル・ポイントから先はブラジル側へと突入。
歩いてベネズエラ国境・ガイアナ国境・ブラジル国境を超えたわけだが、ブラジルに入国するのにビザは必要なかった。 -
ブラジル側へと入ると、道は岩の上を飛びながら歩く状態で、高さが人の背丈の何倍もある大きな岩の上をバランスを取りながら進んでいく。
岩と岩の間には50cm以上の隙間があるところがあり、そんな部分はポーターのアレックスの手を借りて体重移動。
岩の間を自力で飛べないこともなかったが、万が一失敗して岩から滑り落ちたら打撲だけでは済まない怪我となるのは確実だった。 -
大きな岩のエリアを抜けると、目の前に広がっていたのは、本当にココはロライマ山のテプイの上???と疑いたくなる風景だった。
トレイルの脇に広がっていたのは、しっかりと下草の生えた森。 -
ベネズエラ側にもそれなりに植物は沢山生えていたが、しっかりとした木々が生い茂る森がブラジル側にはあるなんて…。
殺伐とした、大きな石がゴロゴロとする光景が広がると思い込んでいたロライマ山の山頂。
そこに緑豊かな森が出来上がっているだなんて、旅の前には全く予想もしていなかった。 -
ロライマ山の形はトリプル・ポイントの南側で少し折れ曲がった形となる。
どうやらその形が小さな気候変化をテプイの上に招き、ブラジル川での山頂に木々が木陰を作る森を作り出したらしい。
森の中からは小鳥の鳴き声が聞こえていた。
不変に見えるロライマの山頂でも、ゆっくりとその環境は変化してきているようだ。 -
森を抜けると目の前に現れたのが、岩が連なる場所。
私たちを先導するポーターのアレックスとガイドのFelixは、その岩壁の方に向かって歩いていく。
今度は、その岩壁越えですか…。 -
残念ながら、今回は私の予想は大外れ。
この岩壁は実は今晩のキャンプ地で、その名はクワティ・ホテル。
折り重なるようになった岩壁の間には隙間があり、隙間を通って潜り込んだその内側は、洞窟の様に大きな空洞になっていて、まるで秘密基地。
今晩はこのクワティ・ホテルにテントを張る。
緑地帯の多いブラジル側のテプイは雨の降りやすい場所でもあり、しっかり屋根のあるシェルターを確保するのは非常に重要な部分。
此処からThe Prowまでのルートにはこのような雨を遮ることのできる洞窟は他にはなく、クワティ・ホテルが唯一の所だそうだ。 -
クワティ・ホテルは日本語での情報が一切ない場所で、且つ、結構面白い場所だったので旅行記でもゆっくりと紹介したいのだが、書きだすと長くなるので、その紹介は次の旅行記で。
ただ、ダイジェストとして一つだけ。
クワティ・ホテルはロライマの美しい朝日を見たい方にはお勧めの場所で、ロライニート(Rorainito)と呼ばれる小さなテプイから昇る朝陽を運が良ければ、眺めることができる。 -
The Prowへと向かうこの時のクワティ・ホテルでの滞在は5分だけ。
背中に担ぐバックパックの中からこの日の午後に必要のないものをすべて取出し、キャンプ地にデポし、背中の荷物を極力軽くして歩き出す。
今朝の歩きだしからクワティ・ホテルまでの距離はおよそ13kmで、そこを3時間半で歩いてきた。
ココまででも結構疲れているのだが、クワティ・ホテルから目指すThe Prowまでは片道10km;往復20kmの道のりだ。
更に、気温はこれからどんどん高くなっていき、体力消耗が激しい時間帯となる。
体力を少しでも温存するには、荷物は出来るだけ少なく軽い方がいい。 -
The Prowへのルートに定まった道はなく、目的地を目指し安全な場所を歩く。
ブラジル側のロライマ山頂はアップダウンが少なく、テプイの端から崖を駈け上ってきた白い雲が音もなく目の前を流れていく。
その光景は、まるでスイフトが想像したラピュタ島、ジブリのラピュタ島みたいで、なかなか感動的だった。 -
三国国境を超えた後のブラジル側・ガイアナ側のルートの特徴は、台地の上に大きな水の流れ(川)があったという点。
川とは言うがその勾配が殆ど無い台地なので、その流れは非常に緩やかだ。 -
水は茶色。
茶色だが非常に澄んでいて透明度も高い。
この水の発生源は、遥か下にあるジャングルやグランサバナの草原。
北部ロライマ山を囲む密林の水蒸気が上昇して雲となり、その雲が雨となってロライマ山に降り注いだもので、基本的には雨水が汚染される要素は何処にもない。
水が流れ込んだ大きな池も有り、その底までがクリアに見えた。
あまりに澄んで綺麗な水ので、その水を一口飲んでみたら、これがとても美味しくてびっくり。ロライマ山 山・渓谷
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イチオシ
茶色をしているので鉄分過多の水かと思いきや、そんなことはなかった。
鉄味が全くないわけではないが、この赤茶色は植物の根に含まれるタンニン(紅茶の渋と同じ成分)が溶けだした色だという事だ。
ロライマの山頂には魚はいなく、池の水がたんぱく質で濁ることは無い。
時間が十分にあるならば池で水遊びをしたかったが、この日の目的は水遊びではなく、The Prowなので、池では遊べなかった。
因みに池の深さは軽く10mはあるそうで、泳ぎに自信が無ければ入らない方が無難だという話だった。 -
水辺には、多分、昆虫も多いのだろう。
食虫植物のウツボカズラの仲間のHeliamphora nutans(以下、分かりにくいのでウツボカズラと表記)を発見した♪ -
イチオシ
ウツボカズラは水芭蕉のような形をしているが、その筒状になった壺の中に昆虫たちを誘い込む。
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この肉食植物の特徴は、壺の上部に飾りの様についた突起だ。
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10時半にクワティ・ホテルを出発した私たちがロライマ山の東の縁に出たのは1時間半後の12時前。
ロライマ山の縁と言うことは、垂直に落ちるその崖は800m以上の高さを持つ絶壁。
あまり縁を歩くのは危険なのだが、歩いているとついつい崖の方へと引き寄せられてしまう。 -
The Prowへの最終関門は、岩場。
-
そしてその岩地帯を乗り越えれば、
その先にあるのが、The Lost Worldの果て、
ロライマ戦艦の舳先であるThe Prowだ。
ネット上には全く日本語での情報のないThe Prow。
もしかして、ここまで歩いて辿りついた日本人は私たちが初めてなのかもしれない。 -
朝にカラカス・ホテルを歩き始めてから、約6時間後の12:30。
23kmを歩き、The Prowへと辿り着いた。
予定ではThe Prowへの到着は13時を軽く超える筈だったのだが、私たちのThe Prowへ行きたい!!!という熱意が足を高速回転させたようで、クワティ・ホテルから片道3時間と言われた道を2時間で歩いたらしい。
道案内をしてくれたポーターのアレックスも、自分が手加減せずに歩いたのにそのスピードについてこられただなんて、君たちは日本で何のスポーツをやっているの?と不思議そうにしていた。
私たちはスポーツジムで軽く運動する位で特別なトレーニングは何もしていない。
ただ、此処へと来たいという強い意思があっただけだよ。
と、アレックスには返事をしたのだが、彼は納得できないという顔だった。
まぁ、敢て何か理由を付けるならば、コレが大和撫子の真の実力だという事かな。 -
とりあえずThe Prowへと到着したからには、まずはテプイの北端へと行ってみる。 -
垂直に切り立つ北崖の800m下は、熱帯雨林であるアマゾン・ジャングル。
湧き上がってくる雲の隙間から、ジャングルの木々の緑色が透けて見えた。 -
ギリギリまで崖に近づいて耳を澄ますと、下からド・ド・ド・ド・ゴー・ゴー…という音が聞こえてきた。
その音は、風の音にしては迫力がありすぎて変だな?という感じ。
ガイドのFelixの説明では、アマゾンのジャングルへと流れ落ちる滝の音だという事だ。
もっと崖の傍へと近づきスリル感を味わいたかったが、チキンの私にはココまでが限界。
これ以上、北壁の縁に近づくのはもう無理だった。 -
ノルウェーのフィヨルドに浮かぶ恐怖の石球;シェラーグボルテンの岩の上にも立てた相棒は、もう少しだけ崖に近寄り、アマゾンのジャングルを見下ろしていた。
相棒いわく、そんなに怖くはないよ…とのことだったが、20cm先の足元が800mを超える断崖絶壁だと分かっている私の方がドキドキしてしまう。 -
崖の下からは、ジャングルの木々が吐き出す水分を纏った雲が次から次へと湧き上がってきて、遠くのテプイをフワフワの白いドレスで彩っていた。
-
The Prowからは、ユルアニ(Yuruani)、イルー(Ilu)、トラメン(Tramen)の3つのテプイが見える。
この3個のテプイを一望できるのは、ここ“The Prow”だけだ。 -
アマゾンの放った大きな呼気は私たちが立つロライマ・テプイの上にも登って来た。
目の前に駆け上がってくる白い雲。 -
地球の息吹、その呼吸を、肌で感じた・・・気がした。
-
私たちがThe Prowからの景色に感動している間に、ポーターのアレックスは昼食の準備をしてくれていて、振り向くとクスクス・ランチが出来上がっていた。
-
イチオシ
クスクスはパサパサしていることが多くあまり得意な料理ではなかったのだが、丸い地球を感じられるThe Prowの絶景を見ながら食べたクスクスは美味しかった!
-
The Prowでの滞在は、たった50分だけ。
もっと長くゆっくりと滞在したかったが、暗くなる前に、夕立の時間が来るまでに本日のキャンプ地に戻らなくてはならない。
ロライマ山の北端はアマゾンが近いこともあり、雨が多い。
一端、雨が降るとトレイルの途中にあった川や池が氾濫し、キャンプ地に戻れないだけではなく命の危険を伴う事になる。
だからThe Prowでの滞在は13時20分までとし、16時前には今晩のキャンプ地であるクワティ・ホテルに戻れるようにしなければならない。
ということで出発の10分前にはいつでも歩き出せる準備をしていたのだが、その時に、ガイドのFelixの様子が何だかおかしいことに、私は気が付いてしまった。
いっそのことトレッキング終了時まで何も気付かない方が精神衛生上、良かったのかもしれないのだが… -
イチオシ
ガイドのFelixは明らかに何かにイライラとしていた。
こんな素敵なところに居るのに、一体、何が彼をイライラさせているのか?
素直な私は、ダイレクトにFelixに「何かあったのか?」と問いかけた。
Felixの応えは短く「クレイジー・マドゥーロが、遣りやがった」と云うもの。
マドゥーロとはチャベス亡き後のベネズエラ大統領の後継者で、その政治は汚職と賄賂と軍事力の三本立てで、国民の大半は汚れきったその政治に辟易している…。
その彼が、現状以上に何を遣ったというのだろう???
? Que pasa en Venezuela ?
What’s happend?
一体、何が起きたって言うの!!!
Felixの発した言葉は、The Prowの絶景をも超える勢いで私に圧し掛かってきた。
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