2019/06/17 - 2019/06/17
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ブリッヂ・トレック(橋梁旅行)さん
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福知山線旧線廃線跡を巡る旅、後半。特に分格ワーレントラスの第二武庫川橋梁は必見です。この橋を渡ると宝塚市に入り、生涯を桜の研究に捧げた笹部新太郎氏の演習林跡地を整備した桜の園もあり、紅葉だけでなく桜も楽しめるようです。
なお、トンネルの起点側(宝塚方)を入口、終点方(道場方)を出口と呼ばせて頂きます。
参考文献:1.わが国における鉄道トンネルの沿革と現状(第2報)
ー旧・京都鉄道、旧・阪鶴鉄道をめぐって-(土木学会)
2.明治時代に製作された鉄道トラス橋の歴史と現状(第4報)
----米国系トラス桁その1----(土木学会)
3.歴史的鋼橋調査台帳(土木学会)
4.鋼橋移設,既存ストックの有効活用(土木学会)
5.兵庫県内の主な産業遺産など6,7(神戸・兵庫の郷土史Web研究館)
※各隧道の延長等は参考文献1を参照しており、現地の看板とは若干の差異があります。
その1はこちら→ https://4travel.jp/travelogue/11508707
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- JRローカル 私鉄 徒歩
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-
◆廃線敷マップ
西宮市観光協会と宝塚市国際観光協会作成の地図です。
桜の園以外余計な物を書き込んでいないところに好感が持てます。
Mapの作成は面倒ですし折角作ってくださっているので、ハイキングコースの区間はこの地図を参照してください。宝塚駅にも置いてありました。 -
【溝滝尾隧道】(5号トンネル)
1898年頃竣工、1921年出口延長、1961年入口延長、1986年廃止。
延長:150.0m、坑門:RC、側壁:野石乱積み、アーチ:レンガ長手積み。
※各隧道の延長等は参考文献1を参照しており、現地の看板とは若干の差異があります。 -
側壁の野石乱積みが見事です!
坑内には架線も残っていました。通信線でしょうか。 -
イチオシ
第二武庫川橋梁が見えてきました。有名なアングルですが、白飛びしています。まだまだ勉強不足です。
この橋の中心辺りが西宮市と宝塚市の市境で、施設管理の境界線となっているようです。 -
その前に坑門を振り返ります。
出口側延伸部は坑門・側壁:整層切石積み、アーチ:レンガ長手積み、笠石が付いています。 -
イチオシ
【第二武庫川橋梁】
日立造船製、1953年竣工、下路曲弦分格ワーレントラス。
飯田線の万古川橋梁と同じ珍しい構造です。すばらっ!でも、万古川は1933年の設計。なぜ1950年代にもなってこのような古い構造形式を採用したのでしょうか。
※1961年竣工の大阪環状線安治川橋梁の検討案にも分格ワーレントラスが入っていた事が判明しました。
飯田線の旅はこちら→ https://4travel.jp/travelogue/11391486 -
もう一つの謎が桁長です。初代の第二橋梁は1898年The Phoenix Bridge Company製ピン結合250ft曲弦分格プラットトラス(ペンシルバニアトラス)で、我が国初の分格トラスでしたが、支間長は77.254mでした。これに対し二代目の本橋は72.0mと、5m以上短い桁を使用しています。桁が短くなった分、円柱連結型(円形井筒)の橋台を追加して桁を受けています。
-
新旧のスケルトンを描いてみました。
他の橋からの流用でもなく、なぜわざわざ短い桁を採用したのでしょう。構造的に弱点のある旧橋架替の為、別の橋用に製作した桁を急遽流用したのでしょうか。
※参考文献2,3より作図しています。 -
橋台の増築状況等、河原に降りて横から観たかったのですが、フェンスをよじ登らずに河原へ降りるのは無理っぽいのでやめておきました。河原へ降りて横から本橋を撮っている人もいるのですが・・・この橋だけで良いので、横へ道を作って展望台の設置をお願いしたいものです。非常に貴重で見応えのある橋です。
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【長尾山第一隧道】(6号トンネル)
1898年頃竣工、1986年廃止。
延長:306.8m、坑門:野石乱積み、側壁:野石乱積み、アーチ:レンガ長手積み。
レンガ5重巻きの外側に切石が巻かれていて要石もあるように見えます。意匠を重視しない経営陣に対する現場のささやかな抵抗でしょうか。或いは、構造的により強度を増す必要性があったのでしょうか。 -
お城の石垣のような見事な石積み!さすが姫路城のある兵庫県です。この隧道は出口側から雨水が流入して枕木や道床が流されてしまい、普通は見えるはずのない側溝が丸出しになっています。野田尾隧道(11号トンネル)と同一構造ならインバートがあるはずなので、そう簡単に圧潰することはないかと思いますが、ささっと通過することをお勧めします。
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【千苅導水路 第二水管橋】
1916年竣工、下路曲弦プラットトラス+下路プレートガーダー。
すばら!
〔近代化産業遺産〕 -
沢の通水の為か、待受け擁壁下部がアーチになっています。
-
枕木製のベンチが置かれています。ここが一番見晴らしの良い休憩処です。紅葉の時期はさぞかし良い眺めになることでしょう。
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桜の園入口
桜の研究に生涯を捧げた笹部氏の演習林が再整備され、桜の園として保存されています。 -
【橋梁】(正式名称不明)
1898年頃竣工、上路プレートガーダー。
6角形断面の橋脚が石積みではなくコンクリート造なので、桁も開業時のものではないかも知れません。 -
レンガ積み!嵩上げしたように見えます。
-
橋の上流にはレール製のスリットダムが設置され、流木や落石から橋を守っています。土石流は無理かな。
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【長尾山第二隧道】(7号トンネル)
1898年頃竣工、1986年廃止。
延長:148.9m、坑門:野石乱積み、側壁:レンガイギリス積み、アーチ:レンガ長手積み。
土砂の流入で側壁1/3位まで埋まっています。 -
阪鶴鉄道で天神川隧道とここだけが側壁もレンガ積みでした。
なお、アーチ部はモルタルで全面覆工され、一見するとコンクリート造と区別が難しいトンネルが多いですが、延伸部と後から造った北山隧道以外のアーチ部は全てレンガ積みです。 -
【開渠】(正式名称不明)
1898年頃竣工、上路プレートガーダー。
石積の橋台です。 -
【長尾山第三隧道】(8号トンネル)
1898年頃竣工、1921年出口延長、1961年入口延長、1986年廃止。
延長:91.2m、坑門:RC、側壁:野石乱積み、アーチ:レンガ長手積み。 -
入口が9.9m、出口が22.2m延伸されています。
中央下に基準器が写っていますが、これはいけません。レトロ感をぶち壊すので全て撤去してほしいです。つまづいて怪我をする危険性も。 -
出口側延伸部は、坑門・側壁:整層切石積み、アーチ:レンガ長手積みとなっており、溝滝尾隧道延伸部と同一仕様になっています。
往時はこの坑門の上から上り列車を撮る撮影スポットになっていたようです。 -
【新田川橋梁】(正式名称不明)
改修されているかも知れません。 -
ハイキングコースの終点です。この先に『さくらや』という食事処があったのですが、代わりに畑熊商店という店ができ、賑わっているようです。何しろ他に飲食店は1軒もありません。
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【新田川橋梁】
1898年頃竣工、1986年廃止、2017年改修。上路プレートガーダー。
位置は少し変わっていますが、旧橋の桁を改修して道路橋(歩道)として再利用しているようです。
この僧川(ぼうさんがわ)の少し下流に新田川が注いでいますが、なぜこの橋に新田川橋梁の銘板が付いているのでしょうか。JRから兵庫県に移管された際に錯誤があったのでしょうか。 -
【温泉橋】
1934年竣工、6径間RC桁橋。
この橋のたもと辺りに駅本屋があったと思われます。 -
【旧武田尾駅跡】
温泉橋の先に1面2線のホームと側線があったようです。 -
◆Map4 旧武田尾駅
旧武田尾駅の配線略図を描いてみました。青線は島式ホーム、起点方の側線脇谷側には貨物用ホームもあったようです。
※全Mapの権利帰属は、画像©Google、地図データ©Google です。 -
イチオシ
【千苅導水路 第一水管橋】
1916年竣工、下路プラットトラス+下路プレートガーダー。
線路を跨ぐ為に上を渡していた水管橋もそのままです。福知山線の橋梁は起点側(下流側)から第一、第二と数えていますが、水管橋は千苅堰堤に近い方(上流側)が第一となっていて対照的です。
〔近代化産業遺産〕 -
名塩隧道・第二武庫川橋梁(新)
ダムの建設計画があった為、水没しないよう高い位置を通っています。 -
武田尾駅(新)
ハイキングの皆さんはここで終わりですが、さらに先へ行ける所まで行ってみます。武田尾駅 駅
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◆Map5 僧川橋梁~大茂山隧道
旧線のルートをGooglemapに点線で図示してみました。
往時は僧川~武田尾駅間の谷側一段低い土地に集落がありましたが、2014年8月の台風11号で浸水被害を受け、河川改修事業で約5m嵩上げされ集落はなくなっています。 -
川沿いの一本道が廃線跡のようです。
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更に進むとトンネルと吊橋が見えてきました。
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イチオシ
【草山隧道】(9号トンネル)
1898年頃竣工、1921年入口・出口延長、1986年廃止。
延長:241.7m、坑門:整層切石積み、側壁:野石乱積み、アーチ:レンガ長手積み。延伸部は側壁も整層切石積みです。 -
途中でT字に改修され坑口が追加されています!直進方向はゲートが設置され、工事車両以外通行止めになっていました。
ピンボケですみません。 -
【武田尾橋】
2006年竣工、トラス補剛吊橋。
左へ曲がるとすぐにトンネルの出口となり、吊橋がありました。2004年の台風23号で流され、架け替えられたものです。トンネルはこれ以上進めないので、川沿いの道を進んでみます。
この橋を渡って右手に武田尾温泉があり、桜博士笹部氏をモデルにした小説『櫻守』を書きあげた水上勉氏が滞在していた「マルキ旅館」があったのですが、河川改修工事が完了するまで閉館しているようです。 -
イチオシ
ずーっと進むと未舗装の山道へ入ってしまいました。引き返して少し下っている道へ進むと草山隧道の出口に辿り着く事ができ、ガードマンさんに断って場内に入らせて頂きました。鋼板か何かで閉塞していたのでしょうか、アングルの枠が設置されていましたが、坑口は健在です。
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【第三武庫川橋梁跡】
草山隧道出口の反対側を見ると、ありました!
1898年頃竣工、1952年頃架替、1986年廃止。上路プレートガーダー(1)+下路平行弦プラットトラス(2)。
架替後は上路プレートガーダー(1)+下路プレートガーダー(2,3)と思われますが、橋脚は2基共撤去されていました。 -
スケルトンを描いてみました。
1898年A & P Roberts Company, Co., Pencoyd Iron Works製造、120ft単線下路平行弦プラットトラスが第四武庫川橋梁共に架かっていました。1952,53年まで使われていましたが、短縮改造のうえ1954年に第三は弥彦線西川橋梁、第四は土讃線洲津川橋梁にそれぞれ転用され、両者とも健在のようです。
※第四が西川橋梁へ転用との説もありますが、参考文献3,4の記述を採用しています。
※参考文献2より作図しています。 -
【大茂山隧道】(10号トンネル)
1898年頃竣工、1921年入口延長、1986年廃止。
延長:259.9m、坑門:整層切石積み、側壁:野石乱積み、アーチ:レンガ長手積み。
橋台のすぐ先に坑門があるのですが、廃線巡りはやはり冬に来ないとだめですね。
こちらも桁を架け替えた際に橋台を増築して桁長の変化に対応したようにも見えます。
この先は先ほどの吊橋を渡っても行けそうにないので、道場駅からアタックする必要がありそうです。帰路に着きます。 -
第一武田尾隧道
1986年頃竣工。
2面2線の駅が半分程隧道内に。 -
もう少しじっくりこの駅を観たかったのですが、昼食もとらずに4時間も歩いてお腹が空いていたので、丁度来た列車に乗ってしまいました。2時間コースのはずですが、その前後も観て廻ったせいか、倍の時間掛かってしまいました。
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土石流被災跡
以前から観たかった第二武庫川橋梁が観られて大満足の旅でした。武庫川渓谷は2004年台風23号・2014年台風11号を始め何度も水害に逢っており、また落石の被害も多く、河川改修や隧道延伸・ルート変更等、自然との闘いを感じる旧線でした。
廃線跡有効活用の貴重な事例として、いつまでも一般公開が続くことを祈ります。紅葉の時期にまた来たいと思います。
《トータル 橋13、トンネル10、他6》を巡る旅でした。
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この旅行記へのコメント (2)
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- 横浜臨海公園さん 2019/06/25 16:05:57
- 第2武庫川橋梁の謎
- 橋梁学会さま、こんにちは。
旅行記を拝見させて頂きました。
実は、小生も該橋梁に就いて、長年疑問を抱き続けております。
鉄道用橋梁とは申せ、昭和28年(1953年)にもなって溶接では無く鋲結合の桁製造など考えにくい点が多く、小生、一時は戦前製造部材のストック活用かとも考えた事がございます。
横浜臨海公園
- ブリッヂ・トレック(橋梁旅行)さん からの返信 2019/06/25 20:46:32
- Re: 第2武庫川橋梁の謎
- 横浜臨海公園様、こんばんは。
国鉄の橋梁設計は工務局設計課に一元化し、技術の蓄積と一貫性を持った設計を実現し、新しい設計を取り入れて発展していきましたが、この橋梁についてはその一貫性が感じられず、何か別の要素が影響して不本意な設計となってしまっているような印象を受けました。全く不可思議な橋梁です。
いつも旅行記をご覧いただき、ありがとうございます。
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