ダブル台風と一緒に、長浜・福井・能登で車中泊（4/17）朝倉市の一乗谷、そこは栄華と滅亡を想像させる谷間だった

2018/08/22 - 2018/08/22

　信長に滅ぼされた浅井氏の小谷から、同じく信長に滅ぼされた朝倉氏の一乗谷に向かう。
　今回は廃虚への旅だ。
　司馬遼太郎の『国盗り物語』を読んでいた頃は、私は大の信長信奉者であったのだが、今、誰も彼もが信長ファンとなり、イケメン武将だと騒ぎ立てるゲーム女子まで現れると、天邪鬼な気持ちかむくむくと沸き上がり、
　「もしかして信長は、人の命や家来を大切にしない、大量虐殺者ではなかったのか？」
　などと考えるようになっている。

エリア 福井市(福井)

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 交通手段: 自家用車

　憧れの日本海の岸を走る私たちは、休憩スペースを見つけると立ち止まって、

　その景色に見とれ、感動し、
　太平洋と同じ海なのに、違った景色に思えてしまうのです。

　海岸線は複雑で起伏があり、道はアップダウンの連続で、

　崖崩れから逃れるためのシェードや、トンネルが連続し、

　その間隙から現れる景色の、何と素晴らしいことか。

　そんな時、道の駅が出現して、

道の駅 河野 道の駅

　開店前でトイレしか使えないが、しばし休憩。
　『道の駅 河野』で、敦賀と鯖江の中間地点だ。

　このキャンピングカーのナンバーは室蘭。
　「北海道からだよ！」
　「すごい！」
　と驚くが、

　考えてみれば敦賀や舞鶴は、北海道とフェリーで結ばれていて、往来は簡単なのだ。

　ぎっしり荷物を詰め込んでやって来ていたおじさんは、山口ナンバーで、
　保冷パックからバナナや食料を取り出して、朝食の準備中。
　私たちは山陰地方を走る旅も夢見ている。
　「山陰を通って、山口まで行く道は、どうですか？」
　と声をかけると、
　「走りやすく、よく整備された道ですよ。ぜひ、おいでください。」
　と、道路事情や車中泊のノウハウを、懇切丁寧に教えてくれた。
　道の駅で出会う人は、みんな良い人です。

　案内板を見ると、目の前の半島の先端にあるのは、敦賀原子力発電所。
　「もんじゅ」や「ふげん」がある所ではないか！
　なんだ、こんな所にあったのか！

　目を凝らして半島の先端を探る。
　核のゴミ、廃炉・・
　これは電力会社で解決できるはずはなく、結局は国が膨大な税金で行うことになるわけで、捨場には外国に頼らざるを得なくなり、とんでもなく国民の負担になる悪魔の施設だ。
　頭の良いはずの官僚や政治家や電力会社は、一体何を考えているのか？
　きっと裏の裏の、国民には言えない話があるはずだ。　
　考えればイライラ感は増大し・・
　でも景色は素晴らしく、将来のことは考えないことにしよう。

　https://youtu.be/Uf5RxFp58Ao

　鯖江を通過して福井市となり、市街に入っていくと、
　暑い！
　暑い！
　そんな街中も、エアコンなんぞは使わずに、一乗谷に滑り込んだ。

　「道の駅河野」から46㎞、「道の駅みずどりステーション」からは80㎞走ったことになる。

　台風によるフェーン現象で、能登は今年一番の暑さを記録し、
　輪島は39℃を上回り、ここ福井も38℃となっているようだ。
　たまらない。
　何という時期にやって来たのだ！
　冷房の効いた遺跡資料館がありがたい。

福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館 美術館・博物館

　資料館の入場料は100円、一乗谷復原町並とのセットが230円と勧められ、セット券を購入。
　おなじみの巻物や絵図や、
　

　手紙や陶磁器や刀剣類が陳列されていて・・

　仏像などもあるが、目のない私たちには、猫に小判で、
　この価値が分かるようになりたいとは思うものの、どうにもならず、

　朝倉屋敷の模型には感心するが、上手くできているね・・
　と眺めるだけだったのに、

　私をとりこにしてしまったのはDVDの映像だ。
　朝倉氏全盛時代の一乗谷を復元させたCGは実にみごとなもので、その解説も驚きの連続。

　戦国時代には、この谷に華やかな都が築かれていたこと、
　京の公家文化に劣らない優れた文化が、この地で育まれていたことなどが、
　映像と共に生き生きと頭の中に飛び込んできて、それが新鮮そのもので、
　谷間の地形を生かした砦だろう・・と考えていたのが大間違いだったことに衝撃を受ける。
　ましてや北陸に、こんなみごとな文化の花咲く都市ができていたなんて。

　武士やその郎党一族はもちろん、高度技術を持つ職人や、裕福な商人が集まって活気あふれる町ができ、
　京の都からは貴人や文化人が頻繁に訪れ、海と川を利用した交易も盛んで、

　小さな谷間でありなから、豊かな生活空間が完成されていたことは、驚きを超えて発する言葉もない。
　自分たちの東海地方こそが唯一の発展地域と思っていた自分が情けない。
　世界の広さを知らなかった鎖国時代の田舎侍のようだ。

　砦の城は山の上に築かれていて、

　当主の朝倉氏や重臣、武将たちが住む屋敷は谷間にあり、
　朝倉屋敷は、謁見する建物、政務を執る建物、客殿、住居が配置された大邸宅となっている。
　朝倉氏はれっきとした守護大名で、血筋を重んずる中世では別格の存在として敬われ、
　浅井長政もその尊厳と威光を感じていたはずだ。

　別の立体スクリーンには、一乗谷の歴史や見どころなどを特撮映像にして映し出していたが、残念ながらこれは撮影禁止だった。
　これもあまりにも素晴らし映像で、内容も好奇心を掻き立てるものばかりで、ちょっと一休みと入った資料館なのに、時間を忘れて延々と見続けてしまった。

　DVDでありがたい知識を得、利口になって一乗谷現地に移動する。
　資料館から2㎞。
　一乗谷川に沿って登って行くと、両側に発掘された住居跡がずらりと並んでいた。

　住居跡を見るのは無料だが、復原させた街並みエリアに入るはチケットが必要だ。
　ここがそのエリアの入り口らしい。

一乗谷朝倉氏遺跡(庭園) 名所・史跡

　チェックを受けて入って行くと、復元された土壁の住居が並んでいる。

　ポスターに出ている通りはここに違いない。
　映画のセットみたいだが、実に上手にできている。
　ただ日差しが強く、燃えるように暑い。

　家屋は飾りではなく、内部もそれなりに造られていて、

　井戸やら、生活道具やらも備えられている。

　電線やビルのない山の風景も良い。
　遠方まで遺跡地域として保存されているのか、谷間そのものが当時の雰囲気を残してくれている。
　こんな場所、そうそうあるものではない。

　と、向こうから「安寿と厨子王丸」の世界を思わせる、赤と薄紫の衣装をまとった少女と、それを撮影する夫婦が現れた。
　モデルかな？
　撮影代が必要かな？
　遠くからそっと写真を撮った。
　話しかけると、孫に貸衣装を着せて嬉しそうなご夫婦だった。　

　出口付近に冷房の効いたカフェがあって、貸衣装屋も兼ねていた。
　おばさんに冷たい飲み物を勧められたが、高かったので遠慮した。
　気の良いおばさんで、商売根性も見せず、話を聞かせてもらい、

　展示してある資料などを眺め、

　遺跡の中心となる朝倉屋敷跡に移動する。

　門をくぐると、

　グランドのような広～い屋敷跡があり、

　小高い斜面に登って、

　屋敷跡を見下ろすと、

　柱の跡が広場一面に広がっていた。
　巨大な屋敷だったんだなあ！
　DVDの映像を思い出し、感心しながら眺めていると、

　学芸員らしき３人が、案内板を磨いたり、柵を点検をしたり、年輩の学芸員が若い女性に指導していた。
　これは良い人たちに出会ったぞ！
　とばかりに、発掘前の状態や、発掘調査の様子などを質問すると、朝倉氏の滅亡していく過程までをも、詳しく説明してもらえたのだった。

　専門家の話は深みがあり面白い。
　学芸員の仕事はさぞかし楽しいだろうな・・と興味を持ったが、コツコツと細かな作業を持続させるのが苦手な私には、無理だろう。

　暑かったけども、時空を超えたかっての一乗谷に思いを馳せ、現実と妄想が入り乱れた気持ちのまま、一乗谷を後にする。
　次は天空の城・大野城だ。