2017/07/13 - 2017/07/18
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binchanさん
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7月13日木曜日、15:40。
水は天から落ちてきて、山から海へと注ぎます。水を巡るにあたっては水源地から探訪を始めたいところですが、日程の都合でいきなり最終消費地から始まります。
これから向かうのは「台塑関係企業麥寮工業園區」。台塑グループの臨海工業区域です。
1954年の台塑(台灣塑膠公司:台湾プラスチック)創業から始まり、現在では化学繊維、石油精製、電子部品、重工などの分野でも台湾を代表する企業グループになりました(台塑関係企業)。
1980年代、台湾の工業化にともない、不足していた石油化学原料の供給のために大規模な工業区域の建設が計画されました。これほどの大規模工業区域の建設はもちろん行政も絡んでいます。当初の建設予定地用低地は宜蘭縣内でしたが環境問題で取りやめとなり、次に桃園の観音が候補に挙がるもやはり同様の問題で建設は断念。1991年、ここ雲林縣の臨海部に建設が決定しました。
工業区域は中心のプラントが「中華民國第六套輕油裂解廠」というので、略して「六輕」とも呼ばれています。「輕油裂解廠」は直訳すると「ナフサ接触分解プラント」ですが、多分一番近い日本語は「石油化学コンビナート」なんじゃないかと思います。間違っていましたらご指摘いただけるとうれしいです。(輕油はナフサのこと。日本語の軽油は中国語では柴油。)
22.55平方キロを埋め立て、独自の発電所や港を備え、総工費7,551億台湾元をかけた一大事業です(台塑石化HP参照)。地元に雇用を生み出す反面、環境汚染などの負の影響も大きいとされています。ウィキペディアによるとph値12.5を超える有害廃棄物は屋外に13階建てビルと同じ高さにまで積み上がり、硫黄酸化物の排出量は全台湾の5.86%に及び近隣住民には肺癌が増えているなどの実態があるとのこと。企業側も環境対策をとってはいるようですが、この規模の工業区域が環境に無関係ではいられません。
この年、環境問題を取り上げたドキュメンタリー映画「天空からの招待状」の監督が次回作撮影中のヘリ事故で亡くなりました。次回作がセメント大手企業による環境破壊を取り上げる内容だったらしく、ヘリの事故そのものが企業に仕組まれたものでないかという憶測まで飛び、セメント大手はかなり叩かれていましたが、台塑グループも同様に環境問題ではよく叩かれている企業です。
化学工業には原料や電力が不可欠ですが、もちろん「水」の確保も重要です。毎日40万トンの水を消費しているのだそう。雲林は平野が多く、近くに工業区域専用のダムを作ることなどはできません。地下水もすでにくみ上げ過多で地盤沈下が進んでいます。
六輕開発と同じ時期、台湾最大の河川「濁水溪」の中流域に堰を造るという計画が進行していました。2001年、台湾最大の取水量を誇るこの堰(集集攔河堰)が完成し下流にある雲林、彰化の水不足は解消され、六輕にも水を供給できるようになりました。
「環境破壊の堰から環境汚染の工場に水を供給」という見方があることは確かですが、ここでは人間の叡知と挑戦の軌跡として見て行きたいと思います。
さて、やっと水を巡る旅とこの工業区域がつながりましたね!
参考:
http://www.fpcc.com.tw/tc/index.php
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 10万円 - 15万円
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
また前置きが長くなりました。
15:40、斗六のホテルにチェックイン。
16:30、日統客運のバスターミナル(斗六站)にやってきました。 -
斗六駅前(前站)は道が狭く込み入っているため、駅前すぐにバス停はありません。主な路線の「斗六火車站バス停」は駅裏(後站)にあります。
そんな駅前でこの日統客運斗六站は、最も駅前に近いバス停です。しかしここを発着するバスはわずかに2路線。台北へ行く7000と六輕への7011だけです。 -
バスが駅前を通り抜けるのは大変で、多くの路線は雲林國中や科技大といった郊外を始発とし、広めの通りを通って市街地の混雑を避けます。
写真は日統斗六站前の道。手前の広い通りは大同路、パラソルが立ち並んでいる路地は愛國街。地元に愛される商店街って感じです。 -
日統客運站の待合所。
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停牌。日統客運は英語名SOLAR BUS。
-
16:40、7011バスが到着。
始発雲林國中を16:20発の班次。早めに着いてしまっても、このバス停の発車時刻16:40までは待っていてくれるようです。悠遊カードで乗車します。 -
17:14、西螺に到着。
写真は台西、國光、員林、台中客運の合同轉運站(バスターミナル)。なぜか日統だけハブられてますね。日統は西螺地政バス停が轉運站の最寄です。 -
車窓の風景。
雲林ではこういった立派な三合院がたくさん見られました。廃墟になっているものから新築の立派なものまでさまざま。 -
17:52、六輕バス停下車。
実際にバスが停まったのは本来のバス停よりも工業区域に近い交差点。
斗六から乗っていたお客さんはみんな西螺あたりで下車してしまい、ここで下車したのは途中から乗ってきたおじさん一人と私だけ。工場に出勤するその人のために、より工業区域に近いところで停まってあげたんだと思います。 -
総面積26.03平方キロの工業区域の入口。
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工業区域と市街地を区切るように走る排水溝。これも雲林の水の最終地点の一つです。
低地である雲林の平野は一度浸水してしまうとなかなか排水できないんだそうです。そのため用水路とは別に排水路がいたるところに張り巡らされています。
この排水溝はこの先で施厝寮大排水に合流し海に注ぎます。 -
さすがに工業区域の中には入れません。周りを散策してみます。
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行政大樓。
何をするところでしょう?一般社員らしい人も出入りしていたので、総務的な部署があるとか? -
Formosaガソリンスタンドでおなじみ台亞石油も台塑グループの一つです。
奥に立ち並ぶ工業設備がいいですね~。もっとかっこよく撮れればなあ。陽が落ちた後だともっといい感じ? -
社員さんたちが待っているのは通勤バス?ちょうど終業時刻だったようです。
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行政大樓の裏にある阿媽公園。(媽は実際は女ヘンに麼)
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噴水の先には思源廣場。
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公園見取り図。広いので手前だけのほうだけ見ます。
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思源は飲水思源のことですね。
阿媽とは台塑グループの創業者、王永慶の母親のことです。 -
廣場の先には銅像。
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壁には「勤勞樸實」の四文字。
樸實は飾り気がなく実直であること。 -
王永慶は日本時代の1917年の生まれです。貧しい茶農家に生まれ、茶園の雑工、米屋を経て、戦後(1954年)アメリカと中華民国政府による援助制度を利用して一代でこの大企業を築き上げた立志伝中の人物です。
父親が若いうちに病気になってしまったため、母親(阿媽)が大変な苦労をして永慶ら兄弟を育てたそうです。 -
銅像の基台にあった碑文を全文撮影してみました。
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享年109歳ですって。
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野菜の種をまいているところでしょうか。
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阿媽から見た行政大樓。
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公園を散策。
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ぷち緑色隧道の散策路。
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大通りに戻ってきました。
奥に見える建物は「長庚醫院雲林分院」。台湾にたくさんある長庚醫院も台塑グループの一員です。長庚は王永慶の父親の名前。父親を記念して創られた病院なんですね。
7011バスの終点はあの病院。最初地図で見た時は、どうして市街地からかけ離れた工業地帯に病院があるんだろうと不思議に思っていましたが、なるほど従業員の福利厚生の一環と考えると合理的な場所です。
ちょうどこのころ、長庚醫院の医師が次々とやめてしまうというニュースがありました。内部でもめてるかな? -
駐車場の端っこに工業区域内の地図がありました。
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そろそろバス停に戻ります。
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だんだん日が傾いてきました。
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排水路の橋で東の方を見たら、遠くに風力発電の風車が。
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復路のバス停にやってきました。
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ちゃんとここでバスが停まってくれるのかな、と不安に思っていましたが、帰宅する従業員さんらしき人も数人待っていて安心しました。
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18:22、斗六行き7011バスがやってきました。長庚醫院18:20発の班次です。
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車窓には立ち並ぶ風車。
六輕の北東、濁水溪の河口にある台電麥寮風力発電廠。橋から見えた風車はこのうちの一つでしょう。
つづく
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この旅行記へのコメント (2)
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- 櫻さん 2017/08/01 20:30:53
- レベルが違う…。
- なんか、大学の研究チームか何かの調査報告書を読んでいるようです。
芋頭食べて芋頭田見てる程度で、「私はこんなに芋頭を愛しているのよ〜」
と騒いでいる自分が恥ずかしい…。
binchanさんを見習って、私ももっと芋頭について熟知しないと。
台湾という国(と言っておきましょう、敢えて)について、
「水」という面から考えさせていただくのも新鮮です。
一概に「台湾が好き」と言っても、その好きな部分はホント人それぞれ
なんですね〜。
計画段階で「あら、こんな所もある」「あらら、ここも面白そう」って
アレコレ行きたい場所候補が増えて行っちゃうのも分かります〜。
ある程度削っても、でもできるだけ多くの候補地に行きたいから、結局
ぎゅうぎゅう詰めのハードスケジュールになっちゃったり。
亡くなった映画監督のニュースはネットでチラッと見ました。
裏にはそんな「〜かもしれない」黒い噂があったんですね…。
- binchanさん からの返信 2017/08/01 20:50:29
- RE: レベルが違う…。
- 櫻さん、コメントありがとうございます。
この旅行記はツッコむところですよ〜。最初からこだわりすぎておかしなことになっちゃってますよ〜。
でも、芋頭については櫻さんにぜひ研究していただきたい!
敢えて芋は食べない私ですが、櫻さんの芋頭愛にほだされて、食わず嫌いは卒業しようかなと思っている今日この頃。
常識を打ち破る芋料理、栄養的な評価がございましたらお願いします。
(いや、私があるがままの芋頭を愛せばいいのか!?)
台湾での食べ歩きに冷たすぎる自分を少々反省していますので、今後はちょっとはいいもの食べようと思ってます。
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