夏の鳥海山「心字雪渓」を歩く

2021/07/18 - 2021/07/18

　鳥海山は，日本海に面した秋田側の鉾立や山形側の大平山荘から登るのが一般的ですが，その他にもいくつか登山ルートがあります．全国的には余り知られてはいませんが，鉾立や大平山荘の反対側にある，滝ノ小屋登山口からの湯の台ルートは，心字雪渓という大雪渓を歩くことが出来るので，お勧めルートです．私自身，このルートは今回が2回目でしたが，前回は心字雪渓を単純に往復しただけだったので，今回は河原宿小屋跡から月山森を抜けて千畳ヶ原に出て，鳥海湖を時計回りに回り，御浜小屋から七五三掛（しめかけ）を経て，伏拝岳（ふしおがみだけ）から心字雪渓を下って河原宿小屋跡に出るという周回ルートを歩いてみることにしました．この周回ルートは計13kmで，高低差は900mくらいです．千畳ヶ原などは非常に歩きやすくなっていますが，月山森から千畳ヶ原に出る下りは登山道の整備が余り良くなく，結構時間がかかりました．また7月中旬ですと，まだ登山道に雪渓が残るため，それなりに時間がかかります．私達は朝6時に滝ノ小屋登山口を出発して，17:00に戻ってきたので，計11時間で，ほぼヤマケイの標準時間通りでした．ですので，このルートで新山（鳥海山の頂上）まで行って日帰りで戻ろうとすると，かなり時間が必要で，御浜小屋辺りで一泊されるのが良いかと思います．
　心字雪渓は，夏山としては圧倒されるような迫力があり，白馬の大雪渓にも負けないくらいの雄大さがあります．白馬と比べれば登山客は遙かに少ないので，平日に行けば雪渓を独り占め出来ると思います．ただ，鳥海山の山開き前の6月ですと，まだ相当量の雪が残り，クレバスもあるので危険性も大だと思います．今回登山した7月中旬でもかなり雪渓が大きく，所々登山道も不明な場所がありました．ですが，下りは河原宿小屋跡が見えるので，方向を間違えなければ迷うことはないと思います．ただ，時々スノボなどで，意識的に登山道を外れて雪渓を降りる人がいて，非常に危険なため，そういう登山客は山岳ガイドの方が厳しく注意しています．なお，雪渓の上り下りですので，白馬の大雪渓同様アイゼンは必須です（借りられる場所はありませんので，持参する必要があります）．

エリア 鳥海山（山形側）(山形)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦
• 交通手段: 自家用車 徒歩

滝ノ小屋登山口の駐車場．県外のナンバーもありました．トイレあり．

こちらがトイレ．

登山口．登山届を提出するボックスがあります．

滝ノ小屋に向かいます．

このコースは湯の台コース

滝ノ小屋までは10分くらいで到着します．非常に近い．県外の方はここに一泊して登山しても良いと思います．

滝ノ小屋から先は暫く心字雪渓の雪解けで出来た沢伝いに歩きます．所々増水していて，沢を渡るのが大変でした．水は信じられないくらい冷たいので，落ちないように十分気を付ける必要があります．

暫く行くと，鳥海高原家族旅行村から登ってくる登山ルートと合流します．距離は滝ノ小屋登山口の方がずっと短いです．

河原宿小屋跡に到着．ここはトイレのみ使えます．

河原宿小屋跡から見た心字雪渓．ここからの鳥海山は本当に綺麗です．小屋跡のすぐ前に，心字雪渓の雪解け水で出来た沢があり，顔を洗ったり飲み物を冷やすにはとても良いです．冷たいので落ちないように要注意．

右に行くと真っ直ぐ心字雪渓ですが，左の月山森方面に向かいます．

月山森へのルート．

まだまだ雪渓があちこちに残っていました．

登山道は木道が整備されていて，とても歩きやすいです．この辺りは流石に百名山．

左が月山森．

木道を進みます．

たぶんボタ池．

ボタ池から見た鳥海山．

標識も沢山あって，道に迷う心配はありません．

月山森への道．月山森には行かずに，千畳ヶ原に向かいます．

千畳ヶ原への標識

千畳ヶ原までは急坂を降りる必要があります．がれきの中を進みます．

かなりの急坂で，いきなり歩きにくくなりました．

所々水が出ていて，濡れずに歩くのも大変でした．

坂を下りると千畳ヶ原．いきなり平らな木道が延々と続きます．

鳥海山の中でも屈指の景観．本当に気持ちが良いです．鉾立方面から来た場合には鳥海湖を回って下る必要があるため，訪れる人は少ない（鳥海山登山が初めての人はほぼ新山に向かうので，千畳ヶ原に下りてしまうと，御浜小屋に戻ってから，再び千蛇谷に下りて新山への登りを歩くとか，余りにも時間をロスしてしまい日帰りは難しくなります）．

千畳ヶ原と言うだけあって，ほぼ草原．ほぼ誰もいないところもスゴイ．

二の滝道との分岐点．8月には二の滝道を通って千畳ヶ原に再び来ることになりますが，その時には過酷な登山になるとは夢にも思っていませんでした．二の滝道を通る場合には，それなりの覚悟を・・・

千畳ヶ原から鳥海湖へ向かいます．また登りになります．このルートはアップダウンがあるので，ちょっと大変です．

仙人平の先で大きな雪渓が残っていて，登山道も分からなくなっていました．ここで，予定外のアイゼンを装着して歩きました．

雪渓を越えて，更に進みます．

やっと鳥海湖に到着．いつ来てもとても綺麗です．

鳥海湖 自然・景勝地

ニッコウキスゲがとても綺麗でした．

鳥海湖を時計回りに回り，

御浜小屋で休憩．ちょうどこの頃が12時でしたので，6時間ほどかかりました．御浜小屋は有人なので，宿泊の他食べ物，飲み物を購入可能です．

御浜小屋で昼食後に，御田ヶ原から山頂方向へ向かいます．

最もポピュラーな鉾立ルートの場合，御浜小屋で合流して，この道を山頂の新山に向かいます．途中まで石畳が整備されていて，とても歩きやすいです．

御浜小屋から1.3km来たところにある八丁坂．ここから山頂（新山）はまだ2.7kmあります．

千蛇谷の分岐．鳥海山の山頂である新山は，外輪山の中にあるので，新山に向かう場合には，ここから左にある千蛇谷に下りて，再び登るという，結構過酷なルートが待っています．私達は外輪山伝いに進みました．

外輪山は痩せ尾根で，こちらもそれなりのアップダウンがあります．

外輪山から見た新山．下に見える雪渓が千蛇谷．谷が深いので，下りて登るのは結構大変です．

やっと伏拝岳に到着．時刻は14時でした．伏拝岳から進んだところにある七高山からも新山に行けますが，こちらも一度下ってから登る必要があります．

伏拝岳から少し下ると大雪渓が姿を現します．ここから再びアイゼンを装着して，心字雪渓を下ります．

アップダウンが続いていたので，下りだけの道は楽ですが，急坂で結構滑ります．こうしてみると，心字雪渓は遙か下の方まで続いているのが分かります．夏の雪で表面が溶けているので，滑りやすく，それなりに注意が必要ですが，正規の登山ルートを歩いているのであれば，よほどのことがない限り，転倒しても滑り落ちることはありません．

途中，雪の上で休憩をとりながら，雪渓下りを満喫しました．

河原宿小屋跡に到着．

河原宿小屋跡に到着した頃に，ガスがなくなって心字雪渓の全貌を見ることが出来ました．沢で汗を拭き，夏の鳥海山を満喫して帰りました．