秋の中東北、秘湯とレトロ旅館を巡る旅　５．猊鼻渓と平泉

2021/10/23 - 2021/10/23

２０２１年１０月２３日　晴れ
　先ず名勝猊鼻渓に立ち寄り、その後吉川英治の「新平家物語」や高橋克彦の「炎(ほむら)立つ」の舞台になった平泉一帯の史跡を訪ねる。
　「新平家物語」には、義経の奥州落ちや平泉での最後についてそれほど詳しく書かれていない。これに対し「炎立つ」では、奥州における安倍氏から藤原氏までの１５０年にわたる興亡を三部作でドラマチックに描いている。
　奥州の俘囚安倍氏と源氏との長い闘いと安倍氏の滅亡（１，２，３）、出羽清原一族の内乱から奥州藤原氏の成立（４）、義経の奥州落ちから奥州藤原氏の滅亡（５）。特に３の最後、安倍貞任と藤原経清が討死する場面では、思わず眼がしらが熱くなった。
　平泉を見学するには、事前に「炎立つ」を読むことをお勧めします。
　　
　
【旅程】
　10/21　神戸空港→花街空港→大沢温泉・湯治屋（泊）
　10/22　大沢温泉・湯治屋→山の駅「昭和の学校」→鉛温泉藤三旅館（立寄り湯）→夏油温泉・湯元夏油（泊）
★10/23　夏油温泉・湯元夏油→猊鼻渓→平泉（中尊寺、毛越寺、達谷窟毘沙門堂、厳美渓）→温湯温泉・佐藤旅館（泊）
　10/24　温湯温泉・佐藤旅館→大湯温泉・安部旅館（立寄り湯）→小安峡→泥湯温泉（湯巡り）→河原毛地獄→瀬見温泉・喜至楼（泊）
　10/25　瀬見温泉→中山平温泉（湯巡り）→鳴子峡、尿前の関→東鳴子温泉（湯巡り）→東鳴子温泉・高友旅館（泊）
　10/26　東鳴子温泉・高友旅館→重伝建「金ヶ崎町城内諏訪小路」→花巻空港→伊丹空港

エリア 平泉(岩手)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: レンタカー
• 旅行の手配内容: 個別手配

　９：１４　夏油温泉を出発。この頃には雨が上がり陽が射してきました。

夏油温泉 元湯夏油 宿・ホテル

　夏油温泉を下る山道。

　現れた絶景に、度々車を停めては写真撮影。

　携帯電話の通信圏内になりました。今日宿泊を予定している栗駒山の須川高原温泉に電話したら、現在雪で道路が閉鎖されて復旧は不明とのこと。
　やむなく宿泊をキャンセルし、明日宿泊予定だった温湯温泉佐藤旅館に電話して、今日に変更してもらいました。これで安心。

　夏油温泉から胆沢や江刺等「炎立つ」の舞台になった土地を通り、約２時間で猊鼻渓の観光船乗り場に到着。船に乗り込みます。紅葉の時期で満席、臨時便も出ています。
　

猊鼻渓舟下り 乗り物

　猊鼻渓は北上川支流・砂鉄川沿いに、高さ５０ｍを超える石灰岩の岸壁が約２ｋｍにわたって続く渓谷で、国の史蹟名勝天然記念物に指定されています。

　凌雲岩。緑が目立ち紅葉には少し早かったかな。

猊鼻渓 自然・景勝地

　水面に浮かぶ野鴨。

　そそり立つ岩にはそれぞれ名前が付けられています。船頭さんが説明してくれましたが、あまり覚えていません。

　よく見ると人の顔に見える。「いろんな形から人の顔を連想するのは人間の特性」と、チコちゃんは言ってました。

　毘沙門窟

猊鼻渓 自然・景勝地

　岩の中に毘沙門天。お賽銭を投げる人あり。

　行く手に垂直の大岩壁が見えてきました。

　なかなかの迫力。

　壮夫岩です。

　ここにも人面相。

　少婦岩。この辺りの風景が最高。この先で下舟。

猊鼻渓 自然・景勝地

　しばらくは川に沿って歩きます。

　大迫力の錦壁岩

　川の水が澄んでいます。

　５分余り歩くと屏風のような大岩壁に行きつきました。

猊鼻渓 自然・景勝地

　圧倒的な迫力で迫ってきます。１枚の写真に納まりきれない。

　これが大猊鼻岩。

　猊鼻渓の「猊」は獅子、すなわち獅子の鼻です。その獅子の鼻がこれ。

猊鼻渓 自然・景勝地

　灰色の岩壁に茶色の岩、苔が毛のようでなかなかリアル。

　帰りは同じコースを、船頭さんが唄う民謡「げいび追分」を聞きながら。
　動画でもどうぞ。

　https://youtu.be/iOB_t7ENhHc

猊鼻渓 自然・景勝地

　９０分の舟下りでした。よかった！。評価は★★★★。

　猊鼻渓から平泉までは３０分足らず。中尊寺の駐車場に車を停めて昼食。

泉橋庵 支店 グルメ・レストラン

　是非食べたかったのが名物わんこそば。天ぷら付きで頂きました。

　中尊寺の金色堂を目指してスタート。５０年ぶりの再訪です。

　ここは最近読み終えた「新平家物語」でもしばしば登場する場所。興味津々。

　弁慶堂か、行ってみよう。

　弁慶堂

　中に義経と弁慶の木像が安置されています。

　東物見台。ここから高館と衣川がよく見えました。

　高館落城の時、弁慶は主君のため最後まで奮戦し、最後は衣川の中の瀬に仁王立ちになり、全身に矢を受けて絶命しました。ＮＨＫの大河ドラマ「義経」の最後のシーンを覚えています。

　ベテランガイドさんから説明を聞く高校生。

　薬師堂。中尊寺の建物の多くは江戸時代後期から明治に再建されたものです。

薬師堂 寺・神社・教会

　中尊寺の山門

　本堂。
　中尊寺は山全体の呼称で、多くの堂宇からなっており、本堂はその中心です。

中尊寺 寺・神社・教会

　本尊は丈六の釈迦如来。若いカップルは何を祈っているのか。

　大日堂

　そして国宝の金色堂。内部は撮影禁止。全面に金箔を貼った阿弥陀堂は圧巻でした。また併設された宝物館「讃衡蔵」には、奥州藤原氏三代の資料と多くの宝物が展示されていました。

　丁度高橋克彦の「炎立つ」を読んでいる途中です。前九年の役から後三年の役をテーマに、藤原清衡が奥州藤原氏を開く過程を描いた小説です。

　金色堂の建つ一帯には多くの堂宇があります。ここは１７１９年の再建の釈迦堂。

　本尊は釈迦三尊

　旧覆堂。、既に鎌倉時代に金色堂を風雪から護るための建物が建てられました。

　経蔵

　能楽殿

白山神社神楽殿 名所・史跡

　芭蕉の像と碑。芭蕉は平泉で２つの有名な句を残しました。

　「夏草や　兵どもが　夢の跡」
　「五月雨の　降り残してや　光堂」

　中尊寺全体の評価は評価は★★★

　中尊寺から毛越寺にやって来ました。

毛越寺 寺・神社・教会

　特別史跡、特別名勝、世界遺産と３つの額があります。

　本堂に行く途中の目立たない場所に、芭蕉の句を新渡戸稲造が英訳した石碑がありました。
　
　「夏草や　兵どもが　夢の跡」
　「The summer grass
'Tis all that's left
Of ancient warriors' dreams. 」

　毛越寺の開山は嘉祥３年（８５０年）。藤原氏二代基衡から三代秀衡の時代に多くの伽藍が造営され、往時は中尊寺をしのぐほどの規模だったそうです。

毛越寺 寺・神社・教会

　本堂のご本尊は薬師如来。

　奥州藤原氏滅亡後、度重なる災禍に遭い殆どの建物が焼失しました。今は池を中心とする浄土庭園と平安時代の伽藍遺構が残っています。

毛越寺浄土庭園 公園・植物園

　浄土庭園を一周します。左の杉木立の間に見えるのは本堂。

　開山堂。大師像の他にも、藤原三代（清衡、基衡、秀衡）の画像を安置。

　金堂円隆寺跡。礎石が残るのみ。

毛越寺浄土庭園 公園・植物園

　行者堂。

　浄土庭園を一周しました。リーフレットには「池を中心とした浄土庭園と平安時代の伽藍遺構が、ほぼ完全な状態で保存されています。」とのことですが、ウーン、感動は今一つ。コスパを考えると評価は★★。

毛越寺浄土庭園 公園・植物園

　これから今日の宿泊地温湯温泉佐藤旅館に向かいます。その途中で気になる場所に立ち寄ります。
　その一つが毛越寺から５ｋｍの達谷窟毘沙門堂（たっこくのいわや　びしゃもんどう）。

達谷窟毘沙門堂 寺・神社・教会

　征夷大将軍坂上田村麻呂の創建と伝えられ、急峻な壁面を掘った中に朱塗りの毘沙門堂が建てられています。

達谷窟毘沙門堂 寺・神社・教会

　前九年の役、後三年の役では源頼義、義家父子が戦勝を祈願して寺領を寄進。奥州藤原氏の時代には初代清衡公、二代目基衡公が七堂伽藍を建立しました。

　しかし昭和２１年に火災で焼失。現在の建物は昭和３６年に再建されたものです。

　もう一つの見どころは大岩壁に刻まれた大摩崖仏「顔面大仏」

達谷窟毘沙門堂 寺・神社・教会

　ズームアップ。

　この大仏は前九年の役、後三年の役で亡くなった霊を弔うため、源（八幡太郎）義家が馬上から弓張で彫り付けたと伝えられています。

　毘沙門堂の前に蝦蟇ケ池弁天堂。達谷窟毘沙門堂の評価は★★★。

　もう１か所は達谷窟毘沙門堂から３ｋｍの厳美渓。

　磐井川の急流によって削られた岩肌が特徴の渓谷です。

厳美渓 自然・景勝地

　しかし急峻な渓谷美はほんの一部。前後は緩やかな流れです。

　磐井川に架かる天工橋からズーム撮影。

厳美渓 自然・景勝地

　対岸に川に沿った遊歩道らしきものがありますが、ごく一部を除き見通しはききません。その代わりに川を横断するロープを使って団子を届ける「空飛ぶ団子」なる奇妙なものが。
　わざわざ時間を割いて訪れる価値はなく、評価は★★。

　ここから今日の宿まで山越えで４７ｋｍのロングドライブ。

　岩手県から宮城県へ。ナビはかなり狭い道路に導きます。まぁ、対向車が殆ど来ないのでいいが。

　１７：４４　温湯温泉・佐藤旅館に到着した時にはすっかり暮れてしまいました。今日の走行距離は１３４ｋｍ。

温湯温泉 佐藤旅館 宿・ホテル