ヤマトタケルの家路15　終焉の地

2019/11/12 - 2019/11/12

旅に出たならば、帰らねばなりません。
東征のあとの、ヤマトタケルの家路を辿ります。

ヤマトタケルは能褒野で薨去します。日本書紀によれば、年30。
能褒野周辺では、ヤマトタケル終焉の地といわれるところが4カ所あります。
東国の旅からもどり、この地までたどり着き、故郷を目の前にして力尽きた旅人の哀切な物語は、人々の記憶に残ります。そういう伝承がこの地に多かったのではないでしょうか。
そのなかには、天皇への復命かなわず、この地で果てた高貴な旅人もいたでしょう。
ヤマトタケルがそうでありました。

参考、引用資料については
「ヤマトタケル紀行・家路１」
に列挙してあります。

エリア 亀山(三重)

• 旅行の満足度: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 交通手段: 自家用車
• 旅行の手配内容: 個別手配

ヤマトタケル終焉の地とされる4カ所です。

能褒野墓
三重県亀山市田村町1393

白鳥塚古墳
三重県鈴鹿市加佐登町2010

武備塚
三重県鈴鹿市永澤町2201

双児塚古墳
三重県鈴鹿市永澤町2527

日本書紀によれば、「（景行天皇）はヤマトタケルを伊勢国の能褒野（のぼの）の陵（みささぎ）に葬られた」となっております。その能褒野の陵が、時代がかわり不明となり、白鳥塚古墳、武備塚、双児塚古墳のいずれかが、近世以降ヤマトタケル終焉の地、白鳥の陵とされ、議論されてきました。しかし明治12年（1879年）宮内省はそれまで候補地になっていなかった丁字塚古墳をヤマトタケルの陵と定めました。理由は丁字塚古墳がこの地域で最大規模の古墳だからだといわれております。実際の被葬者は不明です。

能褒野墓全景
4世紀末築造といわれる、墳丘長90メートルの能褒野王塚古墳です。別名を丁字塚古墳。

☆☆☆

ヤマトタケル終焉の地とされる他の3カ所も訪ねてみました。

双児塚古墳

石碑が建っているだけでした。

雑草が茂っておりました。

隣は、車のジャンク屋でした。
ウイキペディアによれば、明治初めに伊勢亀山藩が日本武尊墓として政府に申請ました。
塚の背後に何かあるかと、妻が周囲を調べましたが、何もありません。明治初めはどうであったか分かりませんが、現在のこれをヤマトタケルの最期の地とするのは、タケルが気の毒です。

お墓がいくつもあるってことは、タケル様を我が土地に、我が村にと引っ張り合っているということですから、これは大変な人気の証明ということになります。
でもその人気にかげりかな？
表はジャンク屋、裏に回ると畑で、その端に森がありました。が、いかにも私有地。畑が邪魔して森の中にも入れない。きっとこの森が何かだったのでしょうが、ほったらかしでした。
タケルとしては、こうまでされることはない！とむくれるところ。
タケルイノチの歴女の方々、ここはひとつがんばらねば！
By妻

長瀬神社

神社の背後に武備塚（たけびづか）があります。

鈴鹿山地を背後に、茶畑がひろがるのどかな田園です。

ここは広々と明るいところで、タケルの妻子が泣きながら白鳥を追いかけ、稲の切り株で足から血を流し、尚おいかけたところか、と、よく手入れされた田と茶畑を見ました。
我が夫、我が父の化身を信じて、まだうら若い妻や幼い子供達が泣きながら白い鳥を追いかける姿が、遠ざかってゆきます。柔らかな日の光が降りそそぐ、暖かな日の揺らめきのようでした。
タケルのお墓は、ここでもいい。
By妻

鎌ヶ岳だと思います。

参道の右に、

「日本武尊御陵道」とあります。

江戸末期に、亀山藩が武備塚をヤマトタケルの墓と主張したそうです。
「今なお尊の陵については諸説があります」と、長瀬神社としては、能褒野王塚古墳を能褒野墓とした宮内省の決定に不満そうです。
古来丁字塚古墳は、ヤマトタケルの墓の伝承地でもなかったので、明治政府の決定に不満であったのは理解できます。

旧地名に「大字永澤字北能褒野」とあるので、「能褒野の陵」と名乗る根拠はあるわけです。

拝殿と、

小さな本殿。
ご祭神は倭建命。

その奥、本殿によりそうように武備塚がありました。

高さ5メートルくらいの小さな塚でした。

巨木が根を下ろしておりました。

樹齢は数百年でしょうか。

木立に覆われ、はたして古墳か自然の塚か、分かりません。

でも静かな杉林に囲まれ、「ここがあなたのお墓ですよ」とヤマトタケルに言ったとしても、「いいんじゃない」とこたえそうです。いずれにしても、衣冠しか葬られていないのです。

近くの幼稚園の子供たちが散歩に来ていました。
タケルさん、今となっては、子供たちと楽しく遊んでやってください。

白鳥塚古墳

古くからヤマトタケルの墓と伝承があり、明治初年には明治政府もこの古墳を能褒野墓と認定していました。学問的には、5世紀前半に造られた、鈴鹿川流域を支配していた首長の墳墓と考えられるそうです。

この石碑と、

しめ縄がなければ、自然の丘と変わりません。

堂々たる古墳で、古くから能褒野墓と伝えられたのも分かります。

小路が古墳を取り巻いておりました。

2段の墳丘をもち、その境が小路となっております。

白鳥塚古墳は、加佐登神社本殿の北にあります。

加佐登神社。ご祭神は日本武尊です。

昔、ヤマトタケルとオイディプスの共通点という話を読んだことがあります。オイディプスは父親殺しの予言を受けて異国に棄てられ、色々あった末、結局は予言を成就してしまうギリシャ神話の英雄です。
ヤマトタケルとオイディプスは足が腫れる。タケルは三重のところで、二重に折れる脚が三重にのくだり。オイディプスは棄てられるとき足裏に針で印をつけて足が腫れてしまうというところ。
また2人とも父親と確執がある。というのですが、そうですかね。その話は続いて、オイディプスが予言通り母親と結婚するという悲劇は、ヤマトタケルにおいては、タケル物語の最初に双子の兄オオウスノミコトが父に献上された美女を横取りするエピソードに変化しているというのです。なんか、無理矢理の共通点。と言うか、共通したらどうなの？という気がしますけどね。
でも確かにオイディプスが我が運命を呪い、人生に絶望し、自ら盲いて荒れ野をさまようところは、ヤマトタケルの死に至るまでの苦しみの描写みたいではありますが。
私はむしろ、ヤマトタケルはヘラクレスと似ていると思うのです。両方とも双生児だった以外何も類似のエピソードはないのですけれど。自分の能力を過信するところ、すーぐ調子に乗るところ。そしてずるいくらい知恵が回るかと思えばお間抜けなところ。
あっ、これって人間だれでも多かれ少なかれ、そういうところあるね。
そういうところが人気の所以か！
By妻

この旅行記へのコメント （5）

• 前日光さん 2020/09/03 16:45:35

  武備塚古墳、イイ感じ～(^_^)v

  こんにちは、しにあの旅人さん。
  今日も蒸し暑いですね！
  台風１０号がまた甚大な被害をもたらしそうで心配です。
  
  タケルくんのお墓、候補がたくさんありますねぇ。
  そりゃあ日本武尊ですから、そうですよね。
  私はタケルくんよりもスサノオくんの方が好きだったのですが、この一連の旅行記を拝読するうちに、タケルくんも人間的で、完璧じゃない所がいくつもあって、なかなかいいんじゃないと思うようになりました。
  能褒野というのがタケルくんの終焉の地であることは、うっすらと知っていましたが、最期の地がまたしても謎？
  白鳥になって飛んで行くタケルくんは、まさにすべての苦悩から解き放たれたようで、哀しくも美しいと思います。
  武備塚は周囲が広々としていて、茶畑なんかがあったりして、私が東大阪で見た推古天皇陵の広々と明るくて、どこかもの悲しい感じと似ていると思いました。
  古代人のお墓は、こんな風に大らかな明るさに満ちた所であってほしいというのが、個人的願望です。
  
  もう少しで、このシリーズも終了とのこと、その後のシベリア鉄道で行くパリも気になりますが、奈良旅もアップされるのでしょうね？
  １０月に再訪する前に。
  
  
  前日光

  しにあの旅人さん からの返信 2020/09/03 17:45:15

  Re: 武備塚古墳、イイ感じ～(^_^)v

  昨年の台風でだいぶやられたので、台風はもうたくさんです。来ないで欲しいなあ。
  
  飛鳥奈良旅は、シベリア鉄道の後になります。10月10日に三重県の斎王宮で飛鳥時代の斎宮跡発掘調査の講演会がありまして、申し込んであります。この内容で飛鳥旅の内容を変えないといけないので、その後になっちゃう。
  
  それとは別に、Goto下の奈良飛鳥という緊急速報を帰ってきたらすぐUpしようと思っています。
  Gotoなんちゃらで前回と同じホテルを予約したら、本当に35％引いてくれました。何も手続きなし、ホテルが35％引きのお値段を出してきます。
  これを利用しない手はないと思います。
  

• kummingさん 2020/09/01 15:39:06

  終焉の地？

  ヤマトタケルの家路、シリーズもいよいよ大詰めに差し掛かっている？
  日本書紀、古事記など無知文盲の領域、かつ地図が読みないおばちゃん故、今日までコメント控えておりましたm(._.)m
  その人気故に終焉の地、我も我もと手が上がり、確定出来ないのでしょうか？
  カエサルだってお墓がないのですね～、事情は違えど、人気者あるある♪かも！
  今日は、イイね、ポチ一番乗りを記念して、コメント投稿に踏み切った次第です(笑)
  落胆、傷心を引きずりつつも、最近、妄想旅を企画し始めて遊んでいる私です♪
  渡航制限、出入国後2週間の自己隔離、ワクチン、3大テーマの解消はいつのことやらT_T

  しにあの旅人さん からの返信 2020/09/01 16:07:07

  Re: 終焉の地？

  家路はあと2回までにこぎつけました。もっかBy妻と校正の真っ最中。
  そのあと飛鳥奈良の予定なのですが、どうしても調べ残しがあるので、10月にもう一度行く予定です。高速をまっすぐ走るだけならBy妻も運転できることが分かりました。最低速度違反に気をつけます。スピード違反というと速度オーバーですよね。最低速度違反は何ていうんだろう。速度ダウン？
  
  3大テーマの解消を待っていたらキリがないので、3密回避を徹底してリアル旅か、妄想旅か、昔の写真を無理やり引っ張り出すか。最近の4トラの皆さんの傾向としては、昔の写真派が多いようです。私も飛鳥奈良の準備ができるまで、ものすごい昔の写真で頑張るつもりです。
  セピアなんてもんじゃなく、真っ茶色に褪色したやつを使っちゃうもんね。
  文句はコロナに言ってくれと、開き直る。
  
  妄想旅旅行記楽しみ！

  kummingさん からの返信 2020/09/01 16:53:58

  1974年(°_°)

  タケル君シリーズも優良愛読者の愛と理解を得て絶好調のしにあの旅人さんご夫妻^ ^
  その前日光さんへのコメントを覗き見して、昔の写真ブログ、1974年版？制作の予定ありと^o^
  その頃純情無垢な高校生だった私としては、興味津々^o^
  そんな時から世界を股に、野を駆け巡っておられたのですね(°_°)
  最低速度制限より、昨今問題の煽り運転にご注意あそばして、行ってらっしゃいませ～♪
  P.S. 妄想旅遊びは、旅程をあ～でもないこ～でもない、といじくる1人遊びの事です。なのでブログにはなりませんm(._.)m