山岳地方サパに挑戦　その１３　サパ・最後の一日

2016/10/24 - 2016/10/24

　明日は移動日、ディエンビエンフーに行く日だ。
　出発は早朝なので、サパの探検は実質今日一日となる。
　サパは小さな町だけど、まだ歩いたことのない通りがある。
　サパの隅々まで散策してみることにした。

エリア サパ(ベトナム)

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 徒歩

　ロータスホテルを出ると、目の前にあるのはレンタルバイク。
　「今日も、どうだね？」
　と誘われる。
　

　中心部（教会のある広場）に向かう坂道。
　ラオチャイからやって来る、いつものお姉さんが歩いている。
　「これ、買ってよ。」
　「昨日、ラオチャイに行ってきたよ。ラオチャイでは、このポシェット、５００円だったよ。」
　「私は４００円だよ。買いなよ。」

　広場のバス乗り場には、いつも数台のバスが停まっている。
　みんなラオカイ行きのバスだ。
　土日が過ぎて平日に戻った町は、火が消えたように静まりかえっている。
　欧米人の姿はあるが、アジア系の団体客の姿が消えている。

　山際の裏通りを初めて通る。
　学校があった。
　朝礼なのか、生徒全員が校庭に集まっている。

　校長先生らしき人の長い話があり、続いて表彰式が行われている。
　呼ばれた生徒が前に出てきて、みんなの拍手を受ける。

　ベトナム人は真面目で規律正しい民族かと思っていたら、後方の生徒は玩具を出したり、悪戯したり、こそこそと話をしたりしていた。
　タイ人の子どもと同じだ。
　陽気な生徒は私に手を振ってくれる。

　バスターミナルに到達した。
　この大きな駅舎のような建物の中を、まだ見ていないことに気がついた。

　チケット売り場やバス会社の事務所かあるのかと思っていたら、市場だった。
　ガランとしていて寂しい市場だ。

　商品が並べられているが、目新しいものはない。
　町中の土産物屋と同じだ。

　その奥はフードコート・・・
　というより大衆食堂だった。
　

　ベトナム麺やぶっかけ飯と、地元の料理ばかりだ。
　ホテル街の通りでは、洋食系のレストランばかりだが、ここに来ればベトナムの大衆料理が食べられる。。
　値段も安い。
　しかし、食べたいからといってここまで歩いてくるのは、ちょっと遠い。

　市場の通路も賑わっている。
　風呂場にあるような低い椅子に、足を縮めて座りこんでいる姿が、これまた美味そうに見えてしまう。

　揚げたての豆腐は、よだれが出るほど美味そうだ。
　ベトナムには豆腐や豆腐を加工した料理が多い。

　繊維を縒って糸造りをしながら座っているおばさんも、市場に溶け込んでいる。

　市場のメインは生肉売り場で、市場の面積半分を占めている。
　どの店にも大きな肉の塊が積んであり、分厚い包丁で肉を切り落としながら商売をしている。
　このおばちゃんの店にはイヌが丸ごと置かれていた。

　こちらのおばちゃんも、イヌをぶった切っている最中だ。
　前足、頭、胸、下半身と次々に分解されていく。
　気持ち悪いけど、その手さばきには見とれてしまう。

　ああ、もうこんなになってしまった。
　スーパーの肉は、発泡スチロールのトレイに包装され、元の形は想像もできず、動物と言う感覚がなくなっているが、ここではそれがむき出している。
　日本の庶民が忘れてしまったものが、ここにある。
　このおばさんの野生的な逞しさに感嘆する。

　市場の残り半分は野菜売り場で、次から次へと客がやってくる。

　大量の野菜や果物を買い込んで、バイクの前や後やハンドルに、思い切り乗せて走り去っていく人が多い。
　飛び交っているお札も半端ではない。

　時間のたつのも忘れて市場を歩いていると、道路の向かいから怒鳴り声が響いてきた。
　すごい声量だ。
　それも激しく、痛烈で、１００ｍ先まで届くようなののしり合いだ。
　見れば、二人ともおばさんではないか。

　赤い服のおばさんはこの食堂の経営者で、立ったり座ったり、手を振り上げたり、歩き回ったりして、鬼のような顔でまくし立てている。
　通りかかる人や、たまたま近くにいた人は、関わりを避けて見て見ぬふり。

　片や紺色ジャンパーのおばちゃんは、一軒とばした別の店の経営者で、これまた負けてはいない。
　近寄って一発触発かと思えば、離れたり、また近づいたりを繰り返し、延々と騒動は続く。
　ご近所どおしでこんな喧嘩をして、大丈夫なのか。
　私は３０分以上も、結末を楽しみに付き合ってしまったが、途中であきらめた。

　ベトナム女性のはげしさと怖さを実感しながら公園に戻ると、そこは花畑があること気がついた。

　記念写真を撮る人やら、のんびり散歩する人やらで、市場とは違って欧米風の世界だ。

　フランス女性が一人きりで、細かな文字で日記をつけている。
　この雰囲気がなかなか良い。

　もちろん釣り人もいる。
　バケツの中に入っていたのは、小さなフナに似た魚だった。

　公園脇の大通りを、ガイドをつけた欧米人がトレッキングに出発していく。
　向かう先はシンチャイ村だろう。

　池の北側には小学校があって、元気に体操する子どもたちの姿があった。
　さぼったり、適当に手足を動かしている子が目立つ。
　大勢過ぎて、先生の目は届かない。

　体操が終わると、教室に戻るよう伝達されたのに、遊び足りない子どもは走り回っている。

　「カメ・ハメ・ハー！」
　と気玉を発する男の子。
　ドラゴンボールごっこだ。
　日本のアニメはベトナムでも人気がある。

　太極拳でも習っているのか、蹴り上げる足は高く伸び、動作は本格的だ。
　本気で蹴り上げた足が、友だちの頭を強打して、ぶっ倒してしまう。
　心配する加害者とその友人たち。
　被害者は泣きべそをかきながらも起き上がり、みんなに慰められながら教室の向かう。
　日本なら、「いじめ」として問題になるのだろうか。

　ホテルに戻ると、二階はてんてこまい。
　廊下には塗料の缶やモップが散乱し、部屋の中の家具がゴタゴタと置かれている。　

　足の踏み場もない中を、従業員達が動き回っている。

　壁を塗り替え、清掃しているのだ。
　作業しているのは全員ホテルの従業員で、２階の部屋をリニューアルするんだと、はりきっている。

　天井も塗り替える。
　ポトポト落ちる塗料が服に付き、腕は疲れて汗がにじむ。
　床やベッドにはシートが被せてある。

　傷んだ窓は修理して・・・

　照明器具やコンセントなど、細かな部分も磨き上げ・・・

　どうにか落ち着いたのは夕方近くだった。

　その頃から細かい雨が舞い降りてきた。
　ベトナムに来て初めての雨だ。
　あたり一面、霧に包まれたサパもいい。

　塗り替えの終わった部屋を覗いてみる。
　ここは3つもベッドがある。
　でも料金はすべて10ドルとか・・・

　雨はすぐ止み、濡れた道路を村里に帰る親子が歩いている。
　明日は移動日。
　これがサパの見納めかと思うと、寂しくなる。

　こういった子どもを見るのも今日限り。

　教会では結婚式を終えた二人が記念撮影をしている。

　最後の夜はお洒落なレストランで・・・

カウマイ通り 散歩・街歩き

　パンプキンスープに・・・

　春巻きと野菜カレー、パンケーキが運ばれてきて・・・・
　もちろんビール付き。
　これで９０００００ドン（４５０円）だから、至ってこの町は良心的。
　なんと心地好く、去りがたい町なこと。
　
　この夜、まとまった雨が降った。
　明日は大丈夫だろうか。

この旅行記へのコメント （1）

• trat baldさん 2016/11/30 08:50:26

  段々と濃く深くなったのに御仕舞かぁ、、、、

  訪れた土地の本質を見つけるには矢張り時間が要りますね。
  ポシェットの価格交渉でも書けば一行だけど相応の時間が触れあいに有ったと思います。
  観光客用の表面のサパと市場を中心に垣間見える庶民の暮らしとが微妙に融合して不思議な街だけど暮らしてみたくなる！