山岳地方サパに挑戦　その１７　ディエンビエンフー・午後の散歩

2016/10/26 - 2016/10/26

　墓地、博物館、Ａ１の丘・・・
　戦いの足跡を探してみたが、いま一つ戦いのイメージが湧いてこない。
　気分を変えて、町中を散策してみよう・・・と歩き出した。

エリア ディエンビエンフー(ベトナム)

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 徒歩

　南北に走る国道を歩くと、路地の奥に人だかりが見える。

　結婚パーティだった。
　終わるところで、花嫁さんが客を見送っている。
　その美しさに魅了されて、ずうずうしく近寄ってしまう。

　池のほとりでも新婚さんが記念撮影をしていた。
　高齢化、独身化の進む私の田舎では、久しく見ることのない未来へ夢ある場面。
　この若さも、もう手に届かない。
　「What beautiful ! You are very happy！」

　街路樹が茂るベトナムの通り。
　強い日差しを樹木が和らげ、散髪屋さんも気持が乗っている。
　ニンビンを思い出した。

　旧ムオンタイン橋を見に行く。
　砲撃を逃れて残った木製の橋だという。
　近づくにつれて歩道は市場状態に変わり、橋のたもとの広場は完全に市場となっていた。

　２００００ドン（１００円）札を出してバナナを買うと、食べきれないほどのバナナを渡された。
　ここの値段はばか安だ。

　大好きな揚げパンもある。

　ごつい刃物も並べられている。

　一人の男がバイクにくくりつけたイヌを売りに来た。
　丸焼きにしてあるのか、茹でてあるのか不明だが、表面はつやつやしている。

ニョ市場 市場

　見た目はおとなしそうなおばちゃんが、包丁を持つと、ばったばったと骨ごと断ち切っていく。
　内部は生肉のようだ。
　この解体はサパでも見ていたので、驚きはなかったが、飼われていたイヌのことを思うと胸がつまった。
　イヌは家族の一員や友だちではなく、人間の家来であり家畜なんだろう。

　商品を補給する人、運び去る人で道路は大混雑。
　まごまご歩いていると、バイクと接触してしまう。

　ベトナム人のエネルギーが、怒涛のように伝わってくる市場だ。
　TVドラマに出てくる日本の終戦直後の闇市も、きっとこんなふうだったんだろう。
　わずかではあるが、幼い日の匂いをかいだ気がした。

　市場は延々と続き、旧ムオンタイン橋のたもとに来てしまった。

　昔の姿が残されていると言うムオンタイン橋だ。

旧ムオンタイン橋 史跡・遺跡

　車は通行禁止。
　渡って良いのは自転車、バイク、徒歩だけだ。
　歩くだけで床板ががたがたと振動する。
　その時だった。
　床板の音を掻き消すような、猛烈な轟音が空気を震わした。

　何事だ！
　地震か！
　身をすくめると、頭のすぐ上を、爆音を響かせて双発機が通り過ぎていった。
　飛行場が数百メートル先にあることを思い出した。

　木造橋のすぐ南には水門のような構造物が見える。

　川の西側にはハイウェイかと間違うような、幅広い道路が整備されていた。
　ロンプラの地図にはこの道路は載っていない。

　西方にはラオスとの国境となる山脈が横たわっている。
　あの山岳地帯からも砲撃したのだろうか。
　実際の戦いは、映画やドラマやアニメの戦争とは、規模が違っているようだ。

　昨日食べた焼きそばが美味かったので、『Huten Anh GH』のレストランに行ってみると、フエンアイちゃんがニンニクの皮をむいていた。
　

　欧米人の客が出て行く。
　きっとこれから長距離バスに乗って、ハノイに帰るんだろう。
　お勘定の対応は、英語が少しできるフエンアイちゃんの仕事だ。
　１０歳ながら、この店の中軸をになっている。

　「今日の学校は午後の部だったので、今、帰ってきたばかりだよ・・・」
　と言いながら、また皮むきを始めた。
　この子の手には包丁は大き過ぎるようだが、器用に包丁を使っている。

　今日の焼きそばには、野菜がたっぷり乗っていた。
　アイちゃんとお喋りしながら食べる焼きそばは、高級ステーキよりも美味いのだ。
　片言英語どうしのお喋りは、ちぐはぐで、会話になっていないのだが・・・私もアイちゃんもそれで満足している。

　６時過ぎの公園は、警備員もチケット売りのお姉さんも消えていた。
　しめしめと丘に登っていく。

　ライトアップされた石段は幻想的過ぎて、陰影に目が狂い、足がすくみがちとなる。

　立ち止まって町の灯りを眺めれば、異次元の世界に来てしまった感覚にもなってくる。

　夢でも見ているかのように頂上に登ってしまった。
　銀色に光る像は、映画『エイリヤン』の怪物のようだ。

勝利の記念像 モニュメント・記念碑

　丘の上は町のざわめきも届かずに、シーンと静まり返っている。
　この丘も『Ａ１の丘』と同様に、激しい戦いの場であったに違いない。
　暗くてつまずきそうな丘の上を歩き回る。
　６０年の年月は、戦いの傷跡をすっかり消している。
　丘の裏にも町の灯りがチラホラ見えた。

　下界に下りる。
　７時ちょっと過ぎなのに、人の姿はすっかり消えて、車とバイクがまにまに通り過ぎるのみ。

　酔客の声やカラオケも聞こえない、静かなディエンビエンフー。
　閑散とした夜の道路に、清掃仕事の人の姿があった。
　ゴミ集めに廻っているこの人たちによって、町は清潔に保たれている。

この旅行記へのコメント （1）

• trat baldさん 2016/12/06 15:13:54

  もう表面的な旅行を超越して心のままの放浪だね。

  motogenさんが手に入れた形に無い物が大きすぎて羨ましいを通り越して嫉妬してる！
  ディエンビエンフーの10年後はどうなっているのかな、今と同じ情景が続くなら住民には申し訳ないけど最高の地だね。
  10年前の東南部のタイ〜カンボジア国境が思い出される、、、、