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サン・ピエトロ大聖堂の北側に、壁も屋根も何の装飾も無い、無機質極まりない茶褐色の倉庫のような、大聖堂から見れば、実に小さい、東西が長い長方形の建物が有る。<br /><br />これがその天井画と壁画で、ヴァチカンで最も世界に知られ、世界から観光客が押し寄せるシスティーナ礼拝堂。<br /><br />9世紀のサラセン人のヴァチカン略奪に始まり、16世紀の神聖ローマ皇帝カール5世の脅威に曝された時代、ヴァチカンは防衛の為要塞化された建物が次々と建設されたが、宮殿の礼拝堂も例外で無かった。<br /><br />システィーナ礼拝堂の外観はその名残りという。<br /><br />サン・ピエトロ大聖堂からシスティーナ礼拝堂には、大聖堂入口右手の緩やかなセットバックしたような長い登り階段で繋がる。<br /><br />ヴァチカンが現在のローマ芸術の殿堂になった切っ掛けは、15世紀半ば、芸術を愛し、擁護した教皇ニコラス2世に始まる。<br /><br />ニコラス2世の後継者、ヴァチカン図書館創設者でもあるシクトウゥス4世は、宮殿の礼拝堂をわが名を取ってシスティーナ礼拝堂と改め、ペルジーノに命じて、壁を旧・新聖書のエピソードで飾らせた。<br /><br />現在ミケランジェロの天地創造で埋め尽くされている天井は、当時は青地に星が描かれていた。<br /><br />1502年、シクトウゥス4世の甥、ユリウゥス2世が教皇となる。<br /><br />ユリウゥス2世はサン・ピエトロ大聖堂建設開始の実質的指導者であり、ミケランジェロとラファエロを見出し、ミケランジェロにはシスティーナ礼拝堂の天井画を、ラファエロには宮殿を飾る壁画と天井画を描かせ、そして自分が収集した古代彫刻を中心に、ヴァチカン美術館へと繋がる彫刻庭園を開設する。<br /><br />ユリウゥス2世在籍の10年間が現在のヴァチカンの美の殿堂の基礎を造ったと云えるだろう。<br /><br />1508年、ミケランジェロはそのユリウゥス2世にシスティーナ礼拝堂の天井画の作成を命ぜられる。<br /><br />ユリウゥス2世の命じた天井画の主題は”12使徒”。<br /><br />反骨精神旺盛なミケランジェロはユリウゥス2世の命が嫌で、ユリウゥス2世の留守中に 一旦フィレンチェに逃げ帰るが連れ戻され、4年を掛けて描いたのがユリウゥス2世も完成するまで想像もできなかった”天地創造”。<br /><br />ミケランジェロは旧約聖書を読めた人がその物語上で知ったとしも、これまで誰も描くことを考えたことも無かったであろう天地の創造者にして、人間を誕生させた造物主の神を描いた。<br /><br />”天地創造”が完成した1512年、この礼拝堂は被昇天の聖母に捧げられ、教皇は晩祷を捧げたという。<br /><br />私は10年前この天井画を見上げ、感動。<br /><br />その感情が今回の旅行参加を促した主たる要因であり、今回の旅では昼間と夜の2回、天井画の下に立つ機会に恵まれた。<br /><br />お蔭で初回の時よりは少し冷静に天井画を眺める余裕が持て、”天地創造”の中央の宇宙の創造、生命の誕生、ノアの箱舟等のよく知られた神話も楽しみながら眺めた。<br /><br />”天地創造”を完成させた30数年後、齢60才のミケランジェロはパウルス3世からシスティーナ礼拝堂の祭壇側の壁画の描き換え命ぜられ、6年の歳月を掛け、”最後の審判”を描き上げる。<br /><br />当時これを見た教会関係者は、教皇がミサを執り行う会場の正面の祭壇画が素っ裸なのは問題だとして、下腹部を布で覆わせたそうだが、30年前天井画が完成した際もその後にも、造物主の神の姿を描いたことに対する、批判があったという記事は見当たらない。<br /><br />ユダヤ教も、イスラム教も未だに偶像崇拝禁止を厳しく守っているようだが、同じ神を祖とするキリスト教だけが、人間と神の性位を両有すると云うイエス像は兎も角、造物主の神の像を、ミケランジェロの独創の画とは言え、キリスト教の大本山ヴァチカンに掲げている。<br /><br />教皇様始めカトリック教会の方々はそれだけ頭が柔軟だと云う事なのだろう。<br /><br />主よ!あなたの為に神殿まで建てたソロモン王が偶像崇拝に走ったのを怒り、あなたは古イスラエルを北イスラエル国と、南ユダ国に分割しさえしたのに、ヴァチカンの天井に主であるあなた自身の偶像が描かれたのに、あなたはなぜ沈黙し続けているのですか?<br /><br /><br />しかし聖書を信じようと信じまいと、絵画として見る者にとって、システィーナ礼拝堂の”天地創造”と”最後の審判”は、これだけで1日立ち尽くしていもまだ足りない魅力に満ちている。<br /><br /><br />”天地創造”の絵画4枚と”最後の審判”の絵画は下記からお借りしました。<br />ヴァーチャル絵画館にはこの他にもシスティ-ナ礼拝堂の絵画を沢山収録して居られます。<br /><br />是非訪れて見て下さい。<br /><br />ヴァーチャル絵画館<br />http://art.pro.tok2.com/<br /><br /><br /><br /><br />

第2部ヴァチカンを飾る4人の天才を巡るローマ美術散歩14ヴァチカン市国その3システィーナ礼拝堂のミケランジェロ作"天地創造"と"最後の審判"

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2012/03/14 - 2012/03/14

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WT信

WT信さん

サン・ピエトロ大聖堂の北側に、壁も屋根も何の装飾も無い、無機質極まりない茶褐色の倉庫のような、大聖堂から見れば、実に小さい、東西が長い長方形の建物が有る。

これがその天井画と壁画で、ヴァチカンで最も世界に知られ、世界から観光客が押し寄せるシスティーナ礼拝堂。

9世紀のサラセン人のヴァチカン略奪に始まり、16世紀の神聖ローマ皇帝カール5世の脅威に曝された時代、ヴァチカンは防衛の為要塞化された建物が次々と建設されたが、宮殿の礼拝堂も例外で無かった。

システィーナ礼拝堂の外観はその名残りという。

サン・ピエトロ大聖堂からシスティーナ礼拝堂には、大聖堂入口右手の緩やかなセットバックしたような長い登り階段で繋がる。

ヴァチカンが現在のローマ芸術の殿堂になった切っ掛けは、15世紀半ば、芸術を愛し、擁護した教皇ニコラス2世に始まる。

ニコラス2世の後継者、ヴァチカン図書館創設者でもあるシクトウゥス4世は、宮殿の礼拝堂をわが名を取ってシスティーナ礼拝堂と改め、ペルジーノに命じて、壁を旧・新聖書のエピソードで飾らせた。

現在ミケランジェロの天地創造で埋め尽くされている天井は、当時は青地に星が描かれていた。

1502年、シクトウゥス4世の甥、ユリウゥス2世が教皇となる。

ユリウゥス2世はサン・ピエトロ大聖堂建設開始の実質的指導者であり、ミケランジェロとラファエロを見出し、ミケランジェロにはシスティーナ礼拝堂の天井画を、ラファエロには宮殿を飾る壁画と天井画を描かせ、そして自分が収集した古代彫刻を中心に、ヴァチカン美術館へと繋がる彫刻庭園を開設する。

ユリウゥス2世在籍の10年間が現在のヴァチカンの美の殿堂の基礎を造ったと云えるだろう。

1508年、ミケランジェロはそのユリウゥス2世にシスティーナ礼拝堂の天井画の作成を命ぜられる。

ユリウゥス2世の命じた天井画の主題は”12使徒”。

反骨精神旺盛なミケランジェロはユリウゥス2世の命が嫌で、ユリウゥス2世の留守中に 一旦フィレンチェに逃げ帰るが連れ戻され、4年を掛けて描いたのがユリウゥス2世も完成するまで想像もできなかった”天地創造”。

ミケランジェロは旧約聖書を読めた人がその物語上で知ったとしも、これまで誰も描くことを考えたことも無かったであろう天地の創造者にして、人間を誕生させた造物主の神を描いた。

”天地創造”が完成した1512年、この礼拝堂は被昇天の聖母に捧げられ、教皇は晩祷を捧げたという。

私は10年前この天井画を見上げ、感動。

その感情が今回の旅行参加を促した主たる要因であり、今回の旅では昼間と夜の2回、天井画の下に立つ機会に恵まれた。

お蔭で初回の時よりは少し冷静に天井画を眺める余裕が持て、”天地創造”の中央の宇宙の創造、生命の誕生、ノアの箱舟等のよく知られた神話も楽しみながら眺めた。

”天地創造”を完成させた30数年後、齢60才のミケランジェロはパウルス3世からシスティーナ礼拝堂の祭壇側の壁画の描き換え命ぜられ、6年の歳月を掛け、”最後の審判”を描き上げる。

当時これを見た教会関係者は、教皇がミサを執り行う会場の正面の祭壇画が素っ裸なのは問題だとして、下腹部を布で覆わせたそうだが、30年前天井画が完成した際もその後にも、造物主の神の姿を描いたことに対する、批判があったという記事は見当たらない。

ユダヤ教も、イスラム教も未だに偶像崇拝禁止を厳しく守っているようだが、同じ神を祖とするキリスト教だけが、人間と神の性位を両有すると云うイエス像は兎も角、造物主の神の像を、ミケランジェロの独創の画とは言え、キリスト教の大本山ヴァチカンに掲げている。

教皇様始めカトリック教会の方々はそれだけ頭が柔軟だと云う事なのだろう。

主よ!あなたの為に神殿まで建てたソロモン王が偶像崇拝に走ったのを怒り、あなたは古イスラエルを北イスラエル国と、南ユダ国に分割しさえしたのに、ヴァチカンの天井に主であるあなた自身の偶像が描かれたのに、あなたはなぜ沈黙し続けているのですか?


しかし聖書を信じようと信じまいと、絵画として見る者にとって、システィーナ礼拝堂の”天地創造”と”最後の審判”は、これだけで1日立ち尽くしていもまだ足りない魅力に満ちている。


”天地創造”の絵画4枚と”最後の審判”の絵画は下記からお借りしました。
ヴァーチャル絵画館にはこの他にもシスティ-ナ礼拝堂の絵画を沢山収録して居られます。

是非訪れて見て下さい。

ヴァーチャル絵画館
http://art.pro.tok2.com/




同行者
カップル・夫婦(シニア)
交通手段
観光バス
旅行の手配内容
ツアー(添乗員同行あり)

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