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ナヴォナ広場の観光後ホテルに戻り一休み。<br /><br />夕食後、宮下規久郎氏(神戸大学大学院准教授、イタリア西洋美術史)による、ボルゲーゼ美術館の歴史の概略と、ベルニーニ、カラヴァッジョを中心に、ボルゲーゼ美術館の展示作品の解説講義を受け、いよいよ”貸し切りの”ボルゲーゼ美術館へ。<br /><br /><br />ここで気が付いたのだが、ボルゲーゼ美術館へ向かうのは、同じ旅行会社のツァーながら、コースを異にする5~6ツァーが合流し、今夜のボルゲーゼ美術館と明日のヴァチカンには、行動を共にすることになっているらしい。<br /><br />お蔭で貸し切りとは云え、大集団での見学であることに変わりはない。 <br /><br />広大なボルゲーゼ公園の一角にあるボルゲーゼ美術館へは、公園内を回遊する、遊園地の機関車の様な、無料サービスバスで。<br /><br />ボルゲーゼ美術館は17世紀の初め、当時のローマ教皇パウルス5世の甥、枢機卿のシピオーネ・ボルゲーゼが、良き時代のローマ皇帝に倣って建てた、バロック様式の白亜の別荘ヴィラ・ヴォルゲーゼ跡で、我々は午後7時半の入場で、辺りの暗闇の中でもその豪華さを感じることが出来た。<br /><br />宮下規久郎氏によると、シピオーネ・ボルゲーゼは枢機卿と云うよりは優れた美術収集家であった。<br /><br />少年時代のベルニーニの才能を見出し、第2のミケランジェロにせんと援助する。<br /><br />ベルニーニにも期待に応え、バロック様式と云われる、動的な様を繊細に表現したボルゲーゼ美術館の至宝、”アポロとダフネ”、”プロセルピナの略奪”、”ダヴィデ”を制作。<br /><br />一方16世紀末ローマに現れたカラヴァッジョの、宗教的なテーマの独自の解釈と、陰影の際立つ、臨場感溢れる表現がシピオーネ・ボルゲーゼの目を射止める。<br /><br />サンピエトロ大聖堂から異端作品として取り除かれた、異教徒の象徴である蛇を、聖母と幼児が踏みつけるカラヴァッジョの”パラフレニエーリの聖母”に目をつけ、ボルゲーゼに引き取ったのもシピオーネであった。<br /><br />しかしながらシピオーネは美術収集に熱心なあまり、権力にものを言わせかなり強引な手段も使う。<br /><br />ラファエロの”キリストの埋葬”はペルージャの教会から強奪まがいの手段で、ドメニキーノの”ディアナの狩猟”は交渉に応じないドメニキーノを牢にぶち込んでウンと云わせている。<br /><br />もう一つのシピオーネの収集した美術の特徴は、枢機卿と云う肩書からは異様とも云える、テッツィアーノの”聖愛と俗愛”やクラナッハの”ヴィーナスと蜂の巣を持つキューピット”に代表される官能的な絵の多いことにあると云う。<br /><br />イスラエルの俗悪化した聖職者達を嫌悪して、啓蒙活動をし、磔刑に処せられたイエスが元祖の宗教界のお偉方の話でなく、何時の時代かのローマ皇帝様の話かと思って聞いてしまった。<br /><br />さて貸し切り見学だが、予想に反し大人数の為、宮下規久郎氏の熱弁も、氏の声の聞こえる範囲は限られ、目的の絵画にやっと近づけた時には、宮下氏はすでに別な場所の別の絵画の解説を始めており、広大な館内をその追いかけっこをしている様な有様。<br /><br />疲れもあり、お蔭で残念ながら館内の印象はベルニーニの彫刻群以外は余り強くない。<br /><br />諦めて売店の図録を探したが、日本語の図録は品切れであった。<br />(帰国後ネットも含めて探し回ったが、見つからなかった)<br /><br /><br />宮下規久郎氏は「カラヴァッジョ」(西洋絵画の巨匠⑪)の序文に、カラヴァッジョについて次の様に書いておられる。<br /><br />「(カラヴァッジョは)・・天才であると同時に、人格が破綻した殺人者であり、”呪われた画家”・・作品の不気味なまでの迫力もそこから来ている・・その芸術は美術史上もっとも宗教的であり、実は静謐な美に満ちている。このパラドックスがカラヴァッジョの魅力である。」<br /><br />「美術品を散逸させてはならない」というシピオーネの遺言を守るため、ボルゲーゼ家の子孫は、20世紀の入り、別荘ヴィラ・ヴォルゲーゼと全コレクションを、僅かな金額で国に譲渡した。<br /><br />ボルゲーゼ美術館は、常識をはるかに逸脱した、美術に対する妄執をした人々の結晶の集積であり、そのお蔭で皮肉なことにボルゲーゼ美術館は今なお予約無しでは入館さえできない人気を誇る。<br /><br />可能であれば私も再度訪れてみたい美術館。<br /><br />館内は撮影禁。<br /><br /><br />ベルニーニの彫刻は下記からの借用。<br /><br />Booking site Borghese Gallery Galleria Borghese - The collections<br />http://www.galleriaborghese.it/borghese/en/edefault.htm<br /><br /><br />シピオーネの肖像は下記から借用。<br /><br /><br />【ボルゲーゼ美術館】シピオーネ・ボルゲーゼの肖像|ベルニーニの作品<br />http://matome.naver.jp/odai/2128452112602681301/2128462062904455503<br /><br /><br />ベルニーニの自画像は下記から借用。<br /><br />美術館 Collection<br />http://art.xtone.jp/artist/archives/gian-lorenzo-bernini.html<br /><br /><br /><br />絵の大半はヴァーチャル絵画館から、一部はウイキペディアから借用。<br /><br />ヴァーチャル絵画館<br />http://art.pro.tok2.com/<br /><br />

第2部ヴァチカンを飾る、4人の天才を巡るローマ美術散歩10ボルゲーゼ美術館貸し切り見学

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2012/03/13 - 2012/03/13

3408位(同エリア6770件中)

WT信

WT信さん

ナヴォナ広場の観光後ホテルに戻り一休み。

夕食後、宮下規久郎氏(神戸大学大学院准教授、イタリア西洋美術史)による、ボルゲーゼ美術館の歴史の概略と、ベルニーニ、カラヴァッジョを中心に、ボルゲーゼ美術館の展示作品の解説講義を受け、いよいよ”貸し切りの”ボルゲーゼ美術館へ。


ここで気が付いたのだが、ボルゲーゼ美術館へ向かうのは、同じ旅行会社のツァーながら、コースを異にする5~6ツァーが合流し、今夜のボルゲーゼ美術館と明日のヴァチカンには、行動を共にすることになっているらしい。

お蔭で貸し切りとは云え、大集団での見学であることに変わりはない。

広大なボルゲーゼ公園の一角にあるボルゲーゼ美術館へは、公園内を回遊する、遊園地の機関車の様な、無料サービスバスで。

ボルゲーゼ美術館は17世紀の初め、当時のローマ教皇パウルス5世の甥、枢機卿のシピオーネ・ボルゲーゼが、良き時代のローマ皇帝に倣って建てた、バロック様式の白亜の別荘ヴィラ・ヴォルゲーゼ跡で、我々は午後7時半の入場で、辺りの暗闇の中でもその豪華さを感じることが出来た。

宮下規久郎氏によると、シピオーネ・ボルゲーゼは枢機卿と云うよりは優れた美術収集家であった。

少年時代のベルニーニの才能を見出し、第2のミケランジェロにせんと援助する。

ベルニーニにも期待に応え、バロック様式と云われる、動的な様を繊細に表現したボルゲーゼ美術館の至宝、”アポロとダフネ”、”プロセルピナの略奪”、”ダヴィデ”を制作。

一方16世紀末ローマに現れたカラヴァッジョの、宗教的なテーマの独自の解釈と、陰影の際立つ、臨場感溢れる表現がシピオーネ・ボルゲーゼの目を射止める。

サンピエトロ大聖堂から異端作品として取り除かれた、異教徒の象徴である蛇を、聖母と幼児が踏みつけるカラヴァッジョの”パラフレニエーリの聖母”に目をつけ、ボルゲーゼに引き取ったのもシピオーネであった。

しかしながらシピオーネは美術収集に熱心なあまり、権力にものを言わせかなり強引な手段も使う。

ラファエロの”キリストの埋葬”はペルージャの教会から強奪まがいの手段で、ドメニキーノの”ディアナの狩猟”は交渉に応じないドメニキーノを牢にぶち込んでウンと云わせている。

もう一つのシピオーネの収集した美術の特徴は、枢機卿と云う肩書からは異様とも云える、テッツィアーノの”聖愛と俗愛”やクラナッハの”ヴィーナスと蜂の巣を持つキューピット”に代表される官能的な絵の多いことにあると云う。

イスラエルの俗悪化した聖職者達を嫌悪して、啓蒙活動をし、磔刑に処せられたイエスが元祖の宗教界のお偉方の話でなく、何時の時代かのローマ皇帝様の話かと思って聞いてしまった。

さて貸し切り見学だが、予想に反し大人数の為、宮下規久郎氏の熱弁も、氏の声の聞こえる範囲は限られ、目的の絵画にやっと近づけた時には、宮下氏はすでに別な場所の別の絵画の解説を始めており、広大な館内をその追いかけっこをしている様な有様。

疲れもあり、お蔭で残念ながら館内の印象はベルニーニの彫刻群以外は余り強くない。

諦めて売店の図録を探したが、日本語の図録は品切れであった。
(帰国後ネットも含めて探し回ったが、見つからなかった)


宮下規久郎氏は「カラヴァッジョ」(西洋絵画の巨匠⑪)の序文に、カラヴァッジョについて次の様に書いておられる。

「(カラヴァッジョは)・・天才であると同時に、人格が破綻した殺人者であり、”呪われた画家”・・作品の不気味なまでの迫力もそこから来ている・・その芸術は美術史上もっとも宗教的であり、実は静謐な美に満ちている。このパラドックスがカラヴァッジョの魅力である。」

「美術品を散逸させてはならない」というシピオーネの遺言を守るため、ボルゲーゼ家の子孫は、20世紀の入り、別荘ヴィラ・ヴォルゲーゼと全コレクションを、僅かな金額で国に譲渡した。

ボルゲーゼ美術館は、常識をはるかに逸脱した、美術に対する妄執をした人々の結晶の集積であり、そのお蔭で皮肉なことにボルゲーゼ美術館は今なお予約無しでは入館さえできない人気を誇る。

可能であれば私も再度訪れてみたい美術館。

館内は撮影禁。


ベルニーニの彫刻は下記からの借用。

Booking site Borghese Gallery Galleria Borghese - The collections
http://www.galleriaborghese.it/borghese/en/edefault.htm


シピオーネの肖像は下記から借用。


【ボルゲーゼ美術館】シピオーネ・ボルゲーゼの肖像|ベルニーニの作品
http://matome.naver.jp/odai/2128452112602681301/2128462062904455503


ベルニーニの自画像は下記から借用。

美術館 Collection
http://art.xtone.jp/artist/archives/gian-lorenzo-bernini.html



絵の大半はヴァーチャル絵画館から、一部はウイキペディアから借用。

ヴァーチャル絵画館
http://art.pro.tok2.com/

同行者
カップル・夫婦(シニア)
交通手段
鉄道 高速・路線バス 観光バス
旅行の手配内容
ツアー(添乗員同行あり)

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  • ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ<br /><br />”アポロとダフネ”<br /><br />・・この作品はベルニーニがシピオーネの為に制作したもの・・

    ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ

    ”アポロとダフネ”

    ・・この作品はベルニーニがシピオーネの為に制作したもの・・

  • ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ<br /><br />”プロセルピナの略奪”

    ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ

    ”プロセルピナの略奪”

  • ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ<br /><br />”シピオーネ・ボルゲーゼの肖像”<br /><br /><br />

    ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ

    ”シピオーネ・ボルゲーゼの肖像”


  • ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ<br /><br />”ベルニーニ自画像”

    ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ

    ”ベルニーニ自画像”

  • オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ<br /><br />”病める少年バッコス”<br /><br />

    オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ

    ”病める少年バッコス”

  • オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ<br /><br />”静物<br />

    オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ

    ”静物

  • オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ<br /><br />”果物かごを持つ少年””<br />

    オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ

    ”果物かごを持つ少年””

  • オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ<br /><br />”パラフレニエーリの聖母”<br /><br />

    オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ

    ”パラフレニエーリの聖母”

  • オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ<br /><br />”執筆する聖ヒエロニムス”<br />

    オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ

    ”執筆する聖ヒエロニムス”

  • オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ<br /><br />”ダヴィデとゴリアテ”<br />

    オッタヴィオ・レオーニ・カラヴァッジョ

    ”ダヴィデとゴリアテ”

  • ラファエロ・サンティ<br /><br />”キリストの埋葬”

    ラファエロ・サンティ

    ”キリストの埋葬”

  • ドメニコ・ザンピエーリ<br /><br />”ディアナの狩猟”

    ドメニコ・ザンピエーリ

    ”ディアナの狩猟”

  • ティツィアーノ・ヴェチェッリオ<br /><br />”聖愛と俗愛”

    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

    ”聖愛と俗愛”

  • ルーカス・クラナッハ<br /><br />”ヴィーナスと蜂の巣を持つキューピット”

    ルーカス・クラナッハ

    ”ヴィーナスと蜂の巣を持つキューピット”

  • コレッジョ<br /><br />”ダエナ”

    コレッジョ

    ”ダエナ”

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