2023/02/04 - 2023/02/04
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たびたびさん
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京都冬の旅の初日は、妙心寺の塔頭、寿聖院、玉鳳院です。
ところで、妙心寺には46もの塔頭があるのですが、そのうち常時拝観が可能なのは退蔵院、大心院、桂春院の三つ。この他に定期的に拝観可能になるのが東林院、大法院。大雄院もほぼ定期かな。そして、京の冬の旅で過去公開されたことがあるのを調べると、隣華院2012年、霊雲院2016年、養徳院2017年、東海庵2018年、龍泉庵2019年、天球院2019年、麟祥院2019年といったところ。どの塔頭を見るかに拘らずどこでもいいと考えればそれなりに多いような気もするし、一つ一つ特定の塔頭で考えるとやっぱりかなり稀な公開というような気もするし、どう受け止めるかは微妙な感じですね。
さて、一つ目の寿聖院は、石田三成が父、正継の菩提寺として創建した寺で、見どころは、三成自筆の書状や土佐派によるものと伝わる石田正継像、三成の肖像画など。また、最近のものですが、村林由貴の襖絵、「稲穂に雀図」「風浪双鯉図」もなかなか見事ですね。
関ヶ原の戦いで家康に敗れた石田三成ですが、第一印象として、こうしてそれなりの遺品が残されているというのは、そこまで大罪人としての扱いではないですね。それどころか、関ヶ原の戦いの後、寺の伽藍は解体され境内も4分の1に縮小されたということですが、そもそも三成の長男である石田重家は出家してこの寺の三代目住職となっていて、むしろかなりの温情措置を感じます。そして、たぶん以降もこの寺には石田三成ゆかりの寺としての自負があったはずですが、徳川幕府もそれを厳しく咎めるまでではなかったのでしょう。ところで、豊臣秀吉の方についてはそうではない。徳川幕府は、京都においても秀吉の痕跡を極力消そうとしていて、秀吉にゆかりの品々もその所持など大っぴらにはできないという状況が続きました。秀吉人気が反徳川幕府の動きにつながらないよう警戒したためのようですが、石田三成にはそのような影響力はないとドライに考えたこともあったかもしれませんね。戦国時代の終焉は関ケ原の戦いという戦いでしか全うされなかったのですが、その戦いは本来は家康対反家康の戦い。しかし、それをなんとなく石田三成対反石田三成の戦いの構図に持って行けたのは家康にとってはけっこうラッキーだったかも。あまり積極的な評価はされていない石田三成ですが、時代の歯車を一つ進めた功績はあると思います。なお、永徳設計の庭園もアピールされていましたが、そちらは見ごたえとしてはイマイチです。
二つ目の玉鳳院は妙心寺でも最古の塔頭。妙心寺は建武年間に花園法皇の離宮を禅寺に改めたものですが、その伽藍の隣りに建てられたのが始まりです。今回の見どころは、狩野派、狩野安信や狩野益信による襖絵「麒麟図」「竜図」「山水図」で彩られた寝殿造の方丈に花園法皇の木像を祀る昭堂や開山堂。庭の奥にある豊臣秀吉の子、鶴松の霊屋、武田信玄・勝頼父子の供養塔、織田信長・信忠父子の供養塔もちょっと珍しいかもしれません。ただ、まずインパクトがあるのはこの悠々とした境内の広さ。いち塔頭とは思えないくらいのスケールですね。普段は外観である白い塀に設けられた平唐門と向唐門のセットが独特の威厳を感じさせるだけなのですが、そこからする想像をはるかに上回るもの。それを実体験しただけで、十分に価値があったように思います。
ちなみに、花園法皇のことですが、時代は亀山天皇から始まる大覚寺統(南朝)と後深草天皇に始まる持明院統(北朝)が交互に天皇になるという南北朝時代。花園天皇は北朝の天皇であり、譲位したのは南朝のあの後醍醐天皇です。後醍醐天皇は鎌倉幕府を倒し、建武の新政を実現するのですが、ご存じの通り、足利政権が誕生し、長い抗争の時代が続きます。元は離宮ですから一見平和そうな歴史に思えてもそう簡単ではない。北朝はその正当性に弱みがあったし、緊張感と隣り合わせの歴史だったかもしれません。
ついでに付け加えると、亀山天皇の離宮から始まったのが南禅寺、嵯峨天皇の離宮から始まったのが大覚寺。大覚寺では、亀山天皇の子、後宇多天皇が再興し、院政を敷くことになりました。いずれも言わば南朝側のお寺です。
そして、後半は嵐山へ。かねてから気になっていた福田美術館と嵯峨嵐山文華館を訪ねます。
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妙心寺や嵐山へは北野白梅町から嵐電で向かいます。
その前に、北野天満宮にもちょっと立ち寄り。
「梅花祭」「梅苑 花の庭公開」の大きな幟が立っていました。梅花祭は、狭義だと2月25日の上七軒の芸舞妓さん総出で行われる野点茶席とかのことだと思いますが、その前後に梅苑花の庭公開が行われているんですね。 -
楼門から
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イチオシ
三光門を通って
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本殿に参拝。
この本殿は慶長12年(1607年)、豊臣秀吉の遺命により秀頼が造営したもの。桃山らしい豪華な意匠で国宝です。
ちなみに、太宰府天満宮の本殿は天正19年(1591年)、筑前国主だった小早川隆景が造営したものですから少し早い時代。こちらは国の重要文化財です。 -
改めて、梅苑に向かいます。
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ここが入り口です。
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イチオシ
入ってすぐにあるのが紅梅殿。菅原道真の邸宅の名前を冠した建物で、優雅なものですねえ。
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前庭の方は、曲水の宴でもできそうな。北野天神縁起絵巻等を参考に造られたという船出の庭です。
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奥の方に進むと谷の方に降りていく地形。お土居ですね。
本能寺の変の教訓を受けて、秀吉が造らせた京都の市街を守る土塁の跡。それが残る貴重な場所なのです。 -
こんな巨木も立っていて、古い遺構であることを感じます。
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谷の方も含めて
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菅公ゆかりの梅50種約1,500本があってそれなりなんですが、
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まだ開花している花は少なめでまだまだといった感じです。
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ちょっと無理やりですけど
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咲いているのは
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これくらいかな。
ただ、桜は満開がいいですけど、梅は一輪でもちゃんと風情があって奥ゆかしい。気持ち的にはほどほどになれたかなと思います。 -
最後に茶屋の方に寄って
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昆布茶をいただいて、さくっと終了です。
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では、嵐電に乗って、妙心寺に向かいます。
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妙心寺駅で下車して。
妙心寺の前にちょっと寄り道。仁和寺の東側にある五智山 蓮華寺です。天喜5年(1057年)、後冷泉天皇の勅願により創建、仁和寺の奥の院ともされた寺。今は真言宗御室派の別格本山というお寺。 -
ざっくりした雰囲気の境内には、本堂前に見どころの五智如来石像(大日如来、阿弥陀如来、釈迦如来、宝生如来、薬師如来)。寛永18年(1641年)、仁和寺から五智山蓮華寺の寺号を認められた際に造られたものということです。
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では、妙心寺。
北総門から入ると参道の両側にはずらりと塔頭が並びます。塔頭の多い妙心寺ならではの眺めですね。 -
北総門から入って右側二つ目のお寺が金牛院。前身は松濤庵とも言われるようですが、1650年の創建。
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お茶会等で時々公開されるという情報もありますが、基本は非公開。ただ、山門から中を覗くとかなりきちんと整備されて気持ち良さげな路地庭園。奥に見える建物も随所に気品があって美しいです。
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では、寿聖院へ。
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ここから中へ入りますが、中は撮影禁止。
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手前に、石田三成一族の墓地があって、宝篋印塔が整然と並びます。ちなみに、石田三成の墓は大徳寺三玄院の方。なので、こちらはそれ以外の方々です。
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同じ一角にあるこのひときわ大きな墓は関ヶ原合戦後も寿聖院を支援した藪内匠正照の墓。中村一氏に仕え、中村家が改易になると細川忠興に仕えるという武勇の人物のようです。
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では、続いて玉鳳院に向かいます。
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その途中。
聖澤院は、妙心寺法堂の西側。白い5本線の入った塀の塔頭です。創建は1523年。妙心寺の13世、東陽英朝を開山として、東陽の塔所となるというのが経緯。 -
門から覗くと目の前すぐが本堂ですが、涼し気な木々が上手に目隠しとなっていました。
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悠々とした仏殿を眺めながら
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さらに進んで、玉鳳院の通りです。
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玉鳳院の白いく長く続く塀と
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唐門の構えは威厳があって、
他の塔頭と比べてもここは格段に立派です。 -
さて、ここが入口。ここから先は撮影禁止。まあ、仕方ありませんね。
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イチオシ
こちらは、玉鳳院の向かい側といった場所の衡梅院。蓮池にも面しています。
妙心寺第16世雪江宗深の塔所で、基本非公開。もともとは、細川政元が文明12年(1480年)、花園天皇離宮跡に開いたもの。
なお、雪江宗深は、応仁の乱で灰燼に帰した妙心寺の復興に心血を注いだ再中興開山と仰がれている人物のよう。門前に詳しい説明の駒札が立っています。 -
そこから北へ向かう少し狭い通りですが、
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これは東海庵。冒頭触れましたが、京都冬の旅で公開されたことも。見どころは、江戸時代後期に造られた方丈庭園「白露地の庭」、書院西庭の「東海一連の庭」、坪庭の「中庭」の3つの庭です。妙心寺系のお寺には東海派というのがあるようで、公開している大心院もそうなんだとか。こちらも美しい枯山水庭園が見どころです。
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2018年の京の冬の旅では、相国寺の塔頭、林光院と妙覚寺を見てからここに回ったのですが、その時はタッチの差で間に合いませんでした。そんなこともまた思い出してしまいます。
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妙心寺から嵐山に到着です。
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嵐山駅を降りるとすぐに目に入ってくる京友禅の図柄を使った色鮮やかなポール群。ただ、これがあることにもう慣れてしまっていて、これにKIMONO FORESTという名前が付いているとは知りませんでしたね。じっくり眺めるものではないとも思いますが、改めて眺めると一つ一つの柄もそれなりにきれいです。
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渡月橋の方に歩いて。
車折神社 嵐山頓宮は、渡月橋を渡らずに桂川沿いに上流へ向かおうとしたところ。赤い板塀に囲まれた小さなお社がありました。ちなみに、頓宮というのは御旅所のこと。車折神社は、嵐山では桂川に船を浮かべての三船祭というのもありますから、それとも関係しているかもしれません。 -
渡月橋を後にして、さらに上流の方に進みます。
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ほどなくして、これが福田美術館。2019年にオープンしたまだ比較的新しい美術館で前々から気になっていましたが、今回やっと初訪問です。
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建物は近代的でコンクリート打ちっぱなしが心地よいですね。美術館は建物も重要です。ちなみに、福田美術館は、アイフルの創業者、福田吉孝が設立。近代の京都画壇の作品を多く所蔵しているのが自慢のようで、期待が高まります。
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展示室へ。
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ここの美術館は撮影が可。それもいいですね~
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菱田春草「群鷺之図」
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菱田春草は、横山大観、下村観山らと並ぶ明治期の天才画家。「黒き猫」が代表作として有名ですけど、私的には断トツで「落葉」ですね。永青文庫で拝見しましたが、晩秋の枯れ木の林をモチーフにしたその圧倒的な描写力にはリアルな凄味がありました。対して、これは穏やかな作風。菱田春草はこういう作風もけっこうありまして、ゆったり横長の構図がらしい工夫なのかなと思います。
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小林古径「扇売」
新潟には小林古径記念美術館という美術館があって、郷土の誇りとなっています。私はこういう線の鋭い画家は嫌いじゃないですね。 -
松林桂月「松竹図屏風」
松林桂月のイメージは、関西の裕福な商家が保有しているイメージ。どこか福福としている雰囲気があると思います。 -
山口華楊「紅梅」
丁寧に描いてあるようですけど、まあ、小品の部類かな。 -
東山魁夷のシリーズはいくつもあって
「緑岡」 -
「青きドナウ」
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「緑の朝」
しかし、何か変。
青や緑の美しさが足りないような。。東山魁夷にしては色の輝きを感じない。気が抜けたみたいでどうしたんでしょうね~ -
イチオシ
加山又造「紅白梅」
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「雪の朝」
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「静物」
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「日輪」
それぞれ分からなくはないですけど、加山又造なら青い目の猫とか。青や紫がもっと鮮やかで目の覚めるような作品があるんですけどね。 -
小野竹喬「四季屏風」
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「新冬」
小野竹喬も岡山の笠岡市の誇り。地元には笠岡市立竹喬美術館があって、そのあまりの立派さに驚きました。作品はだいたいこんな風に純朴な感じです。
ほか、川合玉堂「三保・富士」、奥田元宋「山雲紅樹」等々。
ただ、それなりのネームはあるのですが、感覚的にはちょっとバラツキがあるし、代表作と言えるレベルの作品はあまりないようにも感じました。奥田元宋はある程度大作じゃないと真価が分からないのは仕方ないにしても、東山魁夷もどうしてこんなに映えないのかはやっぱり不思議です。いろいろ揃っているようでいて、作品のレベルに差もあるし並べ方もあるのかもしれませんが、どっちにしてもコレクションとしてのまとまりもないように感じます。正直、イマイチ感動が薄いというのが感想です。例えば、代表作とかは少なくても、ああ、この人はこういう絵が好きなんだなあとかの目線がしっかりしていればまた違いまけど、そういう目線も特に感じませんしね。
ちょっと比べるのは酷かもしれませんが、東京だと五島美術館とか根津美術館という大御所の美術館があります。根津美術館はオーナーが好きな目線がはっきりしていて楽しいし、五島美術館は好きなものではないが貴重で自分が手に入れて保存したいというものも混じっていて、そのコレクションには使命感みたいなものが感じられる。やっぱりそれぞれ世界観があります。最近、小樽の似鳥美術館を拝見しましたが、絵の配置もいいし、とにかく自分の眼鏡にかなうものを厳選していてとても伝わるものがありました。
私がキャッチできていないだけかもしれませんが、いずれにしても、これではあまりいただけないという評価にしかならないです。 -
なんか疲れてしまったので、この辺りで昼飯にしましょう。
嵐山熊彦は、桂川沿いを少し戻ったところ。しっかりした構えのお店です。ちなみに、隣りは嵐山吉兆ですが、まあ、ここなら比較的気軽でしょう。 -
広々したテーブル席の店内では仲居さんが何人もいて丁寧に対応してくれるし、懐石料理のランチです。
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私一人ならもっと適当にしていたでしょうけど
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まあ、妹も一緒なので少しは気を使わないといけません。
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ただ、福田美術館がちょっと期待外れだったので、どうしたものか。
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気持ちを切り替えたかったんですが
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イチオシ
どうにも気になる。昼飯の後は嵯峨嵐山文華館も回るつもりなのですが、あんまりテンションが上がりません。
それでも、お料理の方は縁起物のちょろぎがさりげなく添えてあったり、 -
それなりに目を楽しませてくれるし
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お腹がいっぱいになってくると、
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少し元気が出てきましたよ~
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それに、今日のメインは、あくまで京の冬の旅。
当たり外れがあるのもよくあることですからね。やっぱり、ここで気を取り直してもうひと踏ん張りといきましょう。 -
嵯峨嵐山文華館は、福田美術館の少し先です。
こちらは、百人一首をテーマにした美術館。任天堂元社長の山内溥氏が私財を投じて建設されたのですが、その後、紆余曲折があり、現在は福田美術館の福田吉孝氏が理事長となったようです。 -
企画展は「絵で知る百人一首と伊勢物語」。
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三幅の掛け軸が並んでいて
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イチオシ
「無礼講の図」
幸野楳嶺とその弟子、谷口香嶠、菊池芳文、竹内栖鳳ほか5人が六歌仙の歌人を一人づつ描いたという共作。酒の席で筆を執って、その勢いで描いたというのも面白いですね。
いきなりテンションアップですよ~ -
「貝合せの図」
上村松園に次ぐ女流画家といわれた伊藤小坡の作品。これも繊細な筆使いがいいですね。 -
「三十六歌仙図屏風」
池田孤邨は酒井抱一に学び、兄弟子は鈴木其一ですから、琳派の真っただ中にいたということですね。
多くの人物を一つの画面に窮屈にならないよう。立体的な構図で工夫をしているのが、これも面白いです。 -
イチオシ
「小倉色紙 朝ほらけ」
伝 藤原定家
小倉百人一首は藤原定家の選。伝とはいえ、これはたまりません。 -
「12月10日付け書簡」
藤原為家は定家の三男。藤原家が和歌とともに鞠道にも重きを置くようになった元祖だそうです。 -
「六歌仙図」
菊池契月は、幸野楳嶺門下の菊池芳文のこと。四条派の系譜だと思いますが、バリバリの京都画壇です。 -
イチオシ
金地だと虎や松の襖絵がお馴染みですが、
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六歌仙をこうして描くとまた新たな境地かな。
六歌仙が人間のようであり、特殊能力を持った神のような存在にも見えてきて、はっとするような感覚です。 -
ほか
浮世絵風の六歌仙や -
絵巻物に
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色紙の歌人たち。
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いろんな遊び心があって、楽しさ満載ですね。
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これも見どころの一つ。歌を添えた歌人の人形。
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イチオシ
天智天皇
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ -
持統天皇
春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山 -
柿本人麻呂
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む -
山部赤人
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ -
喜撰法師
わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり -
小野小町
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに -
僧正遍昭
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ
万葉の時代の歌がおおらかでいいですね。春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山とか。情景も鮮やかだし、歌の響きも明瞭です。 -
こちらは二階の大広間。
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イチオシ
「芥川」
小林古径 -
「かづけもの」
菊池契月
この二つの作品も百人一首の世界を遊ぶ感じがして、とてもいい。福田美術館で見ていたら、印象は全然変わっていたでしょう。
いずれにしても、三十六歌仙に因んだ絵画や色紙などは王朝絵巻の華やかで奥ゆかしくてあわれを感じる世界感。最後の三十六歌仙のちょっとデフォルメを効かせた人形たちもユーモアがあって楽しいですね。コンセプトがはっきりしていて、ここでしか味わえない楽しさがあると思います。嵯峨嵐山文華館。やっと気分が晴れた思いです。 -
嵯峨嵐山文華館で気分がよくなったところで、嵐山公園の方へも足を延ばします。
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嵐山公園には津崎村岡局の銅像というのがありまして。
こんなしわしわのおばあさんの銅像ですが、これは西郷隆盛も褒め称えたという維新の女傑。尊王攘夷派の公家であった近衛忠熈に仕え、維新の志士や公家との連絡役としても活躍。安政の大獄では捕えられ、江戸に送られるも顔色ひとつ変えなかったという逸話も残ります。京に戻った後は直指庵で余生を過ごし、88才でその生涯を閉じました。
明治維新は維新の志士の働きだけでは実現していない。いろんなところで庶民の支援がないとやっぱり前には進まない。そういう象徴的な人物ではないかと思います。 -
嵐山から大宮に戻ってきて、今度は壬生辺り。
旧前川邸は、文久3年(1863年)から2年間、新選組の屯所となった建物。壬生の地が京の町はずれであり、かつ、二条城にも近いという点が決め手となったようです。 -
京都に入った新撰組は、前川邸を中心に八木邸、南部邸、新徳禅寺に分宿し、ここからスタートを切ることに。
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建物はそういう意味で歴史的なものですが、内部は非公開。玄関の方で新撰組のグッズをちょっと販売するショップをやっているだけです。
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すぐ近くには京都清宗根付館という根付の専門美術館もあります。
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ここが入口で、内部は残念ながら撮影不可。
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ただ、根付なんて古くさいだけのものとイメージしていましたが、邸内に展示されている現代根付400点はなんとも美しいものですねえ。本当にため息が出るしかない。気が付くとこのかつての武家屋敷も格調が高い雰囲気があるし、それも見どころですね。
最後、根付の製作をビデオで拝見しましたが、何をしているのか分からない作業の連続で、それを重ねた先に手品のように見事な作品が出来上がる。こういうジャンルは何というのでしょうか。工芸品、美術品、芸術品とか。それもはっきりしませんが、当たり外れでいうとここは大当たり。とにかく一見の価値ありの美術館です。 -
では、壬生寺へ。
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壬生塚 歴史資料室は、壬生寺の境内の隅っこ。壬生狂言の関係や新撰組ゆかりの品々を展示するのが歴史資料室。それを抜けた先にあるのが壬生塚で、新選組隊士11名の墓所には近藤勇の胸像や遺髪塔、顕彰碑などが建っています。後世に整備されたものですが、壬生寺に行ったら一度は見るべきかなと思います。
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ところで、壬生寺の節分会は、2月2~4日。そのうち、2~3日に有名な壬生狂言が行われます。
節分でもやっぱり人気なのは狂言の方。それがなければただ穏やかな境内だったかなと思います。 -
ちなみに、壬生狂言は、一般的な狂言と違って、無言劇。演じ手も檀家の方とか素人が行うもの。仏事に近いものだと思います。
で、年に3回行われるのですが、正月の狂言は1種類ということもあって無料。ただ、今回、節分で訪ねて初めて知りましたが、会場では撮影は禁止なんですね。どうりでネットでも写真を見ないはず。やっとその理由が分かりました。 -
京都市中央卸市場は、丹波口駅のほど近く。そっけないコンクリートの建物があるだけで、場外市場もないし、周囲には賑やかなお店があったりもしません。夕方だったし、よけい閑散といった感じ。いずれにしても、観光の対象にはならないと思います。
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ここまで来たら、嶋原の方にも行ってみましょう。
この大銀杏は、樹高20m、幹回り3.5m、樹齢300年以上という大木。かつての花街、島原の市街のシンボルの一つなんですが、正直言えばちょっと不自然な感じで立っています。というのも、もともとは島原住吉神社境内にあったのですが、明治の廃仏毀釈で住吉神社は廃され、この銀杏だけが残ったんですね。まあ、よく切り倒されなかったというところかもしれません。 -
これは、角屋もてなしの文化美術館。
揚屋の建物を保存したもので、一階奥の大広間やそれ続く日本間の豪華な鳳凰の襖絵とかとても瑞々しくて見応えがあります。 -
新撰組の大事件、芹沢鴨の粛清の際には、ここの大広間で大宴会をやって、芹沢は酔いつぶれて屯所に帰る。その寝静まったところに襲撃を受け、惨殺されることとなりました。
もちろん新撰組だけでなく、西郷隆盛とかも出入りしていたという歴史の場所。往時の雰囲気は色濃く残っていると思います。 -
これはお茶屋の輪違屋。角屋と違って、こちらは現役です。
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嶋原の大門を出て
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東に向かう通りが嶋原商店街。少し遅い時間だったこともあるのでしょうが、商店街というには寂しい通りですね。お店ももともとポツンポツンしかないんだと思います。
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商店街の中ほどにみやこ食堂という大衆食堂があって、せっかくなのでそこで晩飯を食べることにしました。みやこ食堂は、嶋原商店街の中ほどにある昔ながらの大衆食堂。
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親子丼ぶりをいただきました。出汁が少し効かせてあるような気もしましたが、手早くさっと作りましたという感じ。まあ、それも京都らしいかな。常連さんがポツポツいて、ディープな匂いもプンプンです。
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今日のホテルはホテル京阪京都駅南。
京駅周辺にはホテル京阪がいくつかありますが、ここは駅を出てすぐ先。かなり近いので、荷物を預けて取りに行くとかの場合、特に便利です。やっぱり京阪なので、部屋はしっかりしているし、フロント周りもゆったりしていて、少しくらい混みあっても気にならないです。
さて、明日の京の冬の旅は東本願寺です。
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